一路真輝 主演/ミュージカル「アンナ・カレーニナ」
トルストイの小説「アンナ・カレーニナ」は高校生の時に読んだ。息子がいる人妻・アンナと若き陸軍士官・ヴロンスキーとの恋(不倫)を軸に物語は展開していくが、実は影の主役としてレーヴィン(トルストイの分身)とキティの存在も忘れてはいけない。アンナとヴロンスキーは都会・社交界・退廃・影の象徴であり、レーヴィン&キティは田舎・農業の営み・健全な魂・光の象徴である。2組のカップルが並行して均等に描かれており、どちらが欠けてもそれは「アンナ・カレーニナ」とは言えない。
しかしこれを2時間程度の映画とか芝居にしようと考えると、とうしてもレーヴィン&キティのエピソードをカットせざるを得ない。ヴィヴィアン・リー主演のイギリス映画「アンナ・カレーニナ」(1948)等が詰まらないのは、そこに原因がある。
兵庫県立芸術文化センターへ。
公式サイトはこちら。ミュージカル「アンナ・カレーニナ」は1992年にブロードウェイで初演され、トニー賞で作曲賞・台本賞など4部門にノミネートされた。但し46回(6週間弱)しか上演されなかったそうで、興行的に成功したとは言えない。日本では2006年一路真輝/井上芳雄の主演で初演された。
脚本・作詞/Peter Kellogg (ピーター・ケロッグ)
音楽/Dan Levine (ダン・レヴィーン)
修辞・訳詞/小池修一郎
演出/鈴木裕美
このミュージカルは2組のカップルがバランスよく描かれ、台本が素晴らしい。トルストイが語ろうとしたテーマがしっかりと舞台に内包されている。音楽も良かった。特に気に入ったのがアンナとキティの2重唱。二人が全く逆の内容を歌っているのが面白い。
2007年度の菊田一夫演劇賞(「宝塚BOYS」と「ハレルヤ!」に対し)を受賞した鈴木裕美の演出は今回初体験。盆(回転舞台)を駆使したスピーディな展開で感心した。
主役は一路真輝と瀬奈じゅんのダブル・キャスト。瀬奈さんが以前演じたエリザベート(タイトル・ロール)の歌と所作が余りにも酷かったので、今回僕は一路さんを選んだ。
一路さんは「エリザベート」での共演がきっかけで内野聖陽と結婚、女児を出産した。夫の浮気騒動もあった。考えてみれば、「アンナ・カレーニナ」の逆パターン?そういう彼女の人生経験が、演技の深みを増しているように感じられた。実に見事であった。
伊礼彼方、葛山信吾、遠野あすか、春風ひとみ、山路和弘ら他のキャストも好演。充実した芝居を見せてくれた。また、「踊る指揮者」マエストロ・塩田明弘率いる楽団の演奏もブラヴォー!
第一幕の上演時間が95分で第二幕が85分だから合わせて丁度3時間。結構長い(「レ・ミゼラブル」並み)が、途中で飽きることは全くなかった。
名古屋公演を経て、3月2、3日は梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで大阪公演もある。必見!
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