笑福亭鶴瓶 2連発!/繁昌亭朝席、昼席(桂塩鯛襲名披露興行)
1月30日(日)、繁昌亭へ。午前10時開演の朝席。
- 森乃石松/動物園
- 笑福亭学光/鼓ヶ滝
- 笑福亭枝鶴/初天神
- 笑福亭鶴志/平の陰(無筆の手紙)
- 笑福亭鶴瓶/お直し(ネタおろし)
「朝から笑福亭」は鶴志さんによる命名。この言葉のニュアンス、意味合いはお客さんで決めてくれと。その第一回目。
鶴瓶さん出演ということで、立ち見も出る大入り満席(続く昼席も同様)。「兄さんのおかげで今日は一杯のお越しですが、(鶴瓶さんの出ない)来月第二回のお客さんは2~3人やと思います」と鶴志さん。
「鼓ヶ滝」は元々、講談ネタ。
笑福亭鶴光さんの十八番。お家芸を堪能。
「初天神」はみたらし団子の件まで。
鶴志さんの大声で豪快な芸が良かった。「ヨッ、Mr. 笑福亭!」(←鶴志さんが楽屋で、そう呼んでくれと言ったそう。本人は否定)
鶴瓶さんの「お直し」はネタおろし。3年ほど前、南光さんから勧められたものだそう。元々は江戸の噺を上方に移殖。新地を舞台に、吉原から来た花魁という設定で、彼女のみ江戸弁、その他の登場人物は大阪弁(なにわことば)に。江戸の「けころ」(「蹴転がる」が由来。江戸時代最下層の女郎のこと)は上方で「どぐろ」と言ったという話も盛り込まれた。役者としても活躍する鶴瓶さんだけに、演じ分けが巧みで聴き応えある一席。
昼席も立ち見が出た。
- 桂 鯛蔵/動物園
- 桂ひろば/狸賽(たぬさい)
- 桂 出丸/寄合酒
- 桂 米平/立体紙芝居「シンデレラ」
- 桂小春團治/祇園舞妓自動車教習所(小春團治 作)
- 笑福亭鶴瓶/転宅
- 襲名披露口上
- 桂ざこば/ざっこばらん(我が弟子達)
- 桂春之輔/まめだ(三田純市 作)
- 桂 塩鯛/はてなの茶碗
鯛蔵さんの「動物園」で登場する園長さんは「前田一郎」。朝席・石松さんの「動物園」園長は「河村はん」(桂三枝さんの本名)で、主人公に紹介状を持たせたのが「長谷川はん」(五代目桂文枝の本名)だった。調査したところ、石松さんは三枝さんの弟子・枝三郎さんにこのネタの稽古をつけてもらったそう。
ひろばさんが入門した時、芸名の候補が他に3つあり、「なんば」「ふろば」「はかば」だったとか。
僕は今まで小春團治さんの新作を面白いと思ったことがないのだが、その理由が今回分かった気がした。噺にリアリティがなく、かといって(「粗忽長屋」「綿医者」みたいに)シュールと言えるほどぶっ飛んでもいない。何だか中途半端な印象。
鶴瓶さんの「転宅」は純情な泥棒の笑顔が可愛らしい。
襲名披露口上の〆は大阪締め。しかし「手締め」というのは本来、江戸の言葉で、上方では「手打ち」というのが正式なのだそう。つまり大阪打ち。
ざこばさんが塩鯛さんを弟子に取ったのは30歳の時だそう。「どうしてわしのところへ来たんや?米朝師匠に頼んだらええのに」と言うと、既に行ったが(二人が内弟子修行中で手一杯だと)断られた。「だったら枝雀兄ちゃんのところに行けばええ」と言うと、雀々さんが修行中なのでやはり断られたと。そこでざこばさんは米朝宅に塩鯛さんを連れて行き、弟子にしてやって欲しいと直談判したが、「お前が取れ。師匠になるというのもいい勉強になるから」と諭されたのだとか。当時ざこば宅は手狭だったので通い弟子に。しかし近所に借りたアパートの敷金や家賃、食費などは全てざこばさんが支払った。やがて数年経ち塩鯛(当時、都丸)さんが売れてくると、まとまったお金を包みざこばさんの家を訪ねてきて「師匠、本当にありがとうございました。これでは足りないかも知れませんが、今までお世話になったお礼です」……「そういう男なんです」と、ざこばさん。さらにざこばさんは既に辞めた弟子や、最近入門したばかりのあおばさんについてのいろいろなエピソードを面白おかしく語られた。
続く膝代りの春之輔さん。「まめだ」は秋の噺だし、しかも「狸賽」とネタがついて(かぶって)いるのだが……。
塩鯛さんの「はてなの茶碗」は行商の油屋が威勢があって気風がよく、さらに小市民の哀感も漂う。トリとして文句のない高座だった。
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