ウッドストックがやってくる!
評価:B
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「ブロークバック・マウンテン」で米アカデミー監督賞を受賞したアン・リーはカメレオンみたいな人である。台湾時代に撮った「恋人たちの食卓」は料理人を主人公にしたホームドラマであり、アメリカ・イギリス合作の「いつか晴れた日に」はジェーン・オースティン 原作の文芸もの。「楽園をください」ではアメリカ南北戦争を描き、アカデミー外国語映画賞を受賞した「グリーン・デスティニー(臥虎蔵龍)」はワイヤーアクションを駆使した武侠映画。そし てアメコミ「超人ハルク」映画化を経て同性愛のカウボーイを主人公にした「ブロークバック・マウンテン」に至る(台湾時代にもベルリン国際映画祭・金熊賞を受賞したゲイ映画「ウエディング・バンケット」を撮っている)。その後は男女の激しい性愛を描く「ラスト、コーション(色|戒)」(ヴェネチア国際映画祭・金獅子賞)を世に問うといった具合。で今回はウッドストックだ。
ウッドストックは「愛と平和」を謳い、1969年に3日間開催された野外ロック・フェスティバル。これを記録した映画はアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門で受賞、編集を担当したのがマーティン・スコセッシ(後に「タクシー・ドライバー」「ディパーテッド」を撮る)である。
ウッドストックはヒッピー文化が頂点に達したイベントであり、反ヴェトナム戦争、ドラッグ、フリーセックスの文脈で語られることも多い。そのあたりのことが「ウッドストックがやってくる!」でも巧みに描かれていた。
この映画にコンサートの場面は一切登場しない。あくまでもバック・ステージでどのような出来事が起こっていたのかに焦点が当てられる。そのドタバタは喜劇的であり、面白い。特に主人公がラリって、周囲が色彩豊かになるサイケデリックな演出はさすがアン・リーだなと嬉しくなった。
「自由」は度を過ぎると、「無秩序」、「カオス(混沌)」に至る。その境界線を行き来するのがこのイベントの実態だったと言えるだろう。しかし観ていて、「何だか登場人物たちが皆、楽しそうだな」と感じた。そういう心地よさがこの映画にはある。良いか悪いかは別にして、これも青春の一風景であるのだろう。
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