ブラームスの交響曲は何故4曲なのか?(シューマンからモーツァルトへの旅)
ブラームスは生涯に4つの交響曲を書いた。
しかし面白いことに交響曲 第4番が初演されたのは1985年。ブラームスが亡くなるのは1897年である。つまり彼は晩年の12年間、一切シンフォニーに手を付けなかったことになる。クラリネット・ソナタが94年、「4つの厳粛な歌」が96年に発表されているので、作曲は続けていたことになるが……。
ブラームスがベートーヴェンを深く尊敬していたのは有名な話。しかし、ベートーヴェンのシンフォニーは9曲。では何故、ブラームスは4番で止めてしまったのか?
その謎を紐解く、面白い本がある。
作曲家・池辺晋一郎さんが書かれた「モーツァルトの音符たち」(音楽之友社、2002)である。
その第3章《「ジュピター」の偉大さ》(32ページ)に次のようなことが書かれている。
ブラームスの交響曲第1番はハ短調、第2番ニ長調、第3番ヘ長調、第4番がホ短調である。この4曲の調性の主音を順に並べるとド・レ・ファ・ミとなる。
これはなんとモーツァルト/交響曲 第41番「ジュピター」第4楽章の主題になるではないか!
さらに、ブラームスの先輩だったシューマンも4曲の交響曲を書いているが、その主音は第1番変ロ長調、第2番ハ短調、第3番変ホ長調、第4番ニ短調。これはド・レ・ファ・ミのちょうど1音(長2度)下になる。
ブラームスがシューマンの世話になり、その未亡人クララを生涯愛したことは有名な話。
これは決して、単なる偶然ではあるまい。
音楽史に秘められたミステリー。なんともスリリングで、魅力的な仮説ではないだろうか?
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