フィンランドと日本人についての考察/尾高忠明のシベリウス~大阪交響楽団 定期
ザ・シンフォニーホールへ。
尾高忠明/大阪交響楽団でフィンランドの作曲家、ジャン・シベリウスの音楽三昧。
- 組曲「カレリア」
- ヴァイオリン協奏曲(独奏:戸田弥生)
- 交響曲 第2番
シベリウスはヨーロッパ大陸で人気がない。カラヤンこそレパートリーにしていたが、トスカニーニ、フルトヴェングラー、ワルター、セル、ベーム、ショルティ、アバド、ムーティら巨匠たちがこの作曲家を取り上げることは稀だった。しかし一方、イギリスでは愛されている。コリンズ、ビーチャム、バルビローリ、デイヴィス、ラトルら英国の指揮者たちが得意としている。
日本人もシベリウスの音楽をこよなく愛す民族である。嘗ては近衛秀麿、渡邊暁雄というスペシャリストがおり、そのポジションを現在引き継いでいるのが尾高忠明さんである。
フィンランドを構成する主要な民族がフィン人。言語的にアジア系のウラル語族であり、日本語に似たところがある。
日本画家・東山魁夷はフィンランドに魅せられ、「白夜の旅」という著作もある。詳しくはこちら。
僕が大好きな作家・福永武彦(代表作「草の花」)は遺作長編「死の島」でシベリウス論を展開している。
また吉松隆はシベリウスの申し子みたいな作曲家だし、ピアニスト舘野泉はフィンランド在住。
さらにフィンランドで生活する日本人を描いた「かもめ食堂」という映画もあった。
このように、シベリウスの音楽とフィンランドの風土は日本人を惹きつけてやまない「何か」があるのであろう。
さて、コンサートの感想に移ろう。
「カレリア」組曲は間奏曲、バラードの仄暗い音色に魅了された。行進曲で音楽は弾け、優雅に展開。
コンチェルトは戸田さんのソロが素晴らしい。鋭く研ぎ澄まされた響き。熾火の如く静かに燃える。第2楽章は哀切な歌を雄弁に、そして直向(ひたむき)に奏でる。
シンフォニーには勢いと情念が感じられた。第2楽章はパンチの効いた主題と厳粛な主題が交差し、荒々しい第3楽章は雪崩の如し。そして生命の歓喜を歌う第4楽章で力強いクライマックスを築く。
さすが尾高さんの解釈は万全で文句なし。是非次回は交響曲第5-7番あたりが聴きたいな。あっ、「レミンカイネン組曲(四つの伝説曲)」もいいね!
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コメント
エンターテイメント日誌 様
フルトヴェングラー、セルに関してですが、
シベリウス音源は、いくつか残されています。
以下に記載があります。
フルトヴェングラー
2008年版ディスコグラフィ(word,web形式)
http://www.k2.dion.ne.jp/~ahsd2720/
セル
ディスコグラフィ
http://fischer.hosting.paran.com/music/Szell/discography-szell-2.htm
投稿: Sze | 2013年6月 7日 (金) 04時24分
Szeさま、ご教示ありがとうございました。確認致しました。
フルトヴェングラーはシベリウスの交響曲をレコーディングしていませんが、「エン・サガ」とヴァイオリン協奏曲のレコーディングはあったのですね。本文を「この作曲家を取り上げることはなかった」から「この作曲家を取り上げることは稀だった」に変更致しました。
投稿: 雅哉 | 2013年6月 7日 (金) 19時39分