丸谷明夫×下野竜也/吹奏楽とオーケストラの邂逅、そして大フィル待望の「大阪俗謡による幻想曲」!
兵庫県立芸術文化センターへ。
下野竜也/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏、監修・司会が大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部の丸谷明夫 先生(丸ちゃん)で、オーケストラと吹奏楽が出会う祭典。客席の約半数は中高生が占めた。
この企画は3回目。以前の様子は下記に書いた。
今回のゲストはジャズ・トロンボーン奏者の中川英二郎さん。
曲目は、
- フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」より
”夕べの祈り” ”夢のパントマイム” - 大栗 裕/大阪俗謡による幻想曲
- シャーマン兄弟(中川英二郎 編)/チム・チム・チェリー
- モンティ(中川英二郎 編)/チャルダッシュ
- 兼田 敏(中原達彦 編)/シンフォニック・バンドのためのパッサカリア(管弦楽版)
- J.S.バッハ(ストコフスキー 編)/前奏曲 ロ短調
- レスピーギ/バレエ組曲「シバの女王ベルキス」
- ヴォーン・ウィリアムズ/イギリス民謡組曲(アンコール)
「ヘンゼルとグレーテル」は大フィル自慢の弦を生かしたものに。柔らかく、厚みのある音色が魅力的。
「大阪俗謡による幻想曲」の演奏史は下記記事で詳しく語った。
丸ちゃんは吹奏楽コンクールの自由曲として本作を演奏する際、演奏時間を12分から8分に短縮する許可を得るために作曲家を訪ねたエピソードを披露。「大栗先生の話はここでは言えない事ばかり」だそう。また下野さんは故・朝比奈隆に大栗はどういう人だったか訊いたところ、「あいつはちゃらんぽらんな男だった」と。
演奏は鋭く、バーバリズム(野性味)があり、ストラヴィンスキーの「春の祭典」を彷彿とさせるものだった。各フレーズのイントネーションがくっきりし、終盤の加速がもの凄く、鬼神が下野さんに乗り移ったのではないかというくらいの入魂の指揮ぶり。2000年にNAXOSにレコーディングされた下野/大フィルの同曲は締まりのない凡演だったが、今回は見違えるようであった。
中川さんは6歳の時ベニー・グッドマンの「シング、シング、シング」を聴いてトロンボーンの魅力に目覚めたそうである。その頃は体が小さく、スライドを伸ばすと手が届かなかったとか。「チム・チム・チェリー」は静かに始まり、次第に盛り上がる。「チャルダッシュ」の前半はオリジナルに忠実でオーソドックスなアレンジだが、後半からJazzyでノリノリになり、雰囲気が一転。中川さんのプレイは音の大きさに圧倒される。アンコールは無伴奏で「アメイジング・グレイス」を。
兼田敏の「パッサカリア」は”吹奏楽の神様”こと屋比久勲 先生が十八番にしている曲。鹿児島情報高等学校に赴任された最初の年(2007年)にもコンクール自由曲でこれを取り上げている(九州大会・銀賞、翌年から全国大会へ)。
今回は管弦楽への編曲版で、弦が加わると古の響きがして印象がガラッと変わった。こういう企画も面白い。
ストコフスキー編曲のバッハは弦のみの演奏。静謐でビロードの肌触り。
プログラム最後はクラシック界では殆ど取り上げられず、吹奏楽で有名になった「ベルキス」。第1曲「ソロモンの夢」は幻夢的で真に美しい。主席チェロ奏者・近藤さんが弾くソロが雄弁だった。第3曲「戦いの踊り」は金管が重厚な響きを奏で、第4曲「狂宴の踊り」で音楽は猛り、熱狂は頂点に。
アンコールの「イギリス民謡組曲」は丸谷先生の指揮で。縦が引き締まった、気持ちのよい演奏であった。
また一年後の《スペシャルライブ》がとても愉しみである。
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