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2011年1月17日 (月)

ソーシャル・ネットワーク(デジタル上映)

「ソーシャル・ネットワーク」はアカデミー作品賞・監督賞の最有力候補。映画公式サイトはこちら

本作がオスカーを獲る意義は2点ある。まず第1に、ここ数年、作品賞は「ノーカントリー」(2007)、「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)、「ハート・ロッカー」(2009)といったインディーズ/独立系映画会社が席巻してきた。だから久しぶりのメジャー系受賞(ソニー・ピクチャーズ)ということになる。

第2に、インターネットを題材にした映画がアカデミー作品賞を受賞するのはこれが初めて。それだけ今の時代を反映していると言えるだろう。その走りとなったのはメグ・ライアンとトム・ハンクス主演、ノーラ・エフロン脚本・監督のロマンティック・コメディ「ユー・ガット・メール」(You've Got Mail, 1998)あたりだろうか?あの頃はまだ「出会い系サイト」という言葉すらなかった。

さて、「ソーシャル・ネットワーク」の話に戻ろう。

評価:A+

The_social_network

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)“フェイスブック”誕生の裏側を描く。日本のSNSとしてはミクシィ(mixi)が有名。

Facebookの創業者で、この映画の主人公マーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)はハーバード大学2年生。ボストン大学に在学している彼の恋人エリカ(ルーニー・マーラ)とカフェバーでのマシンガントークから幕を開ける。この雰囲気が何だかハワード・ホークス監督の「ヒズ・ガール・フライデー」(1940)を彷彿とさせる。次第に二人の会話は喧嘩腰となり、エリカはもう帰って勉強すると言い出す。

マーク「君は勉強する必要なんてないよ」
エリカ「(ムッとした口調で)どうして!?」
マーク「だって君はボストン大学だから」

ここでエリート学生の不遜さ、無神経ぶりがしっかりと描かれる。

むしゃくしゃして酔っ払ったマークは大学の寮に戻るとブログにエリカの悪口を書き、ハーバード中の寮の名簿をハッキング、女子学生たちの写真を並べて彼女たちのルックスをランク付けするサイト“フェイスマッシュ”(Facemash)を立ち上げる。これはたった2時間で22,000アクセスに達し、マークの名前はハーバード中に知れ渡ることになる。

このエピソードを観ながら僕は「嗚呼、あるある!」と首肯した。日本の大学においても、男子学生が3人集まれば女子の品評会になる。高校の卒業アルバムを持ち寄って「どの子が一番可愛いか」人気投票している連中もいたっけ。そして当然、彼らはマーク同様に女子学生から顰蹙を買い、軽蔑の視線を浴びることになる。こうしたリアルさが本作の面白さである。

マークには劣等感があった。ハーバード大学には上流階級のファイナルクラブが8つあり、入会には個人の能力、家柄や資産などの厳しい審査が行われる。学内男女のインターネット上における出会いの場“ハーバードコネクション” を運営している資産家の息子ウィンクルボス兄弟(双子)はルーズベルト大統領も会員だったという最古のクラブ“ポーセリアン”のメンバーであり、マークの友人エドゥアルド(アンドリュー・ガーフィールド)にも“フェニックス”から入会の誘いがあるが、マークにはない。

エリカを見返してやりたいとか、階級差別志向で排他的なファイナルクラブへの反感という個人的感情がFacebook誕生へ結びついていく経緯が非常に丁寧に、説得力を持って描かれる。脚色を担当したアーロン・ソーキンの上手さが冴える。

Facebookはインターネットという仮想現実上で「友達になる」、つまり人と人を結びつけるコミュニケーション・ツールである。しかし映画の主人公はFacebookが世界的に広がってゆく中で恋人を失い、たった一人の親友エドゥアルドとも決別し、どんどん孤独になってゆく。なんという人生の皮肉。

僕がデヴィッド・フィンチャー監督の才能に最初に瞠目させられたのはキリスト教の七つの大罪をモチーフにしたサイコ・スリラー「セブン」(Se7en, 1995)であった。アメリカ合衆国で実際に起きた連続殺人事件を題材にした「ゾディアック」(2007)も印象深い。両者は現代社会の闇を描き、底知れぬ不気味さと不安感に満ちていた。ある意味、「ソーシャル・ネットワーク」もそれに繋がるものを僕は感じる。とにかく、モデルとなった人物全員が生きている中で、これだけ人間を深く掘り下げた映画を世に問うた意気込みと、その卓越した成果を大いに讃えたい。また音楽が全編、コンピューター・ミュージック仕立てになっているのも相応しい。必見。

本作はデジタル撮影され、フィルムレスで編集された。その過程はこちらのサイトに詳しく記載されている。僕は「ノルウェイの森」をフィルム上映版とデジタル上映版の両方観たが、クオリティの差は歴然としている。デジタル撮影されたものをフィルム上に焼き直すと、輪郭が曖昧になり、フィルターがかかった様に画面全体がぼんやりしてしまうのだ。「ソーシャル・ネットワーク」のデジタル上映版は細部までくっきりとし、特に夜の暗い場面における解像度が鮮明だった。もし環境が可能ならば是非こちらをお勧めする。

最後に余談。デヴィッド・フィンチャー監督の次回作はスウェーデン発のミステリー「ミレニアム」3部作のハリウッド・リメイク「ドラゴン・タトゥーの女」。現在、撮影中である。そのヒロイン、リスベット・サランデルを演じるのは「ソーシャル・ネットワーク」のエリカ役ルーニー・マーラ。可愛い女優さんである→こちら。彼女がリスベットとしてどう変貌するか、その写真が公開された→こちら!いや~凄い。メイクひとつでこんなに変わるものか。映画公開がとても愉しみだ。

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