ショパン国際ピアノ・コンクール2010入賞者ガラ・コンサート
ザ・シンフォニーホールへ。
2010年ショパン国際ピアノ・コンクール入賞者たちによるコンサート。ラファウ・ブレハッチが優勝した2005年のガラ・コンも5年前に聴いた。その時の会場は現在改築中のフェスティバルホールだった。
今回はマルタ・アルゲリッチ以来実に45年ぶりとなる、女性の優勝者誕生ということで大いに話題となった。
プログラム順に感想を述べよう。青字はアンコール曲。
フランソワ・デュモン<第5位、フランス出身>
- 子守歌
- ポロネーズ 第6番「英雄」
- ドビュッシー/月の光
「子守歌」は繊細なタッチ。しかしポロネーズになるとミス・タッチが目立つ。テクニックがないからゆったりしたテンポ。それでも手がもたつき、誤魔化すためにメダルを踏み過ぎ。むしろその曖昧模糊とした響きは「月の光」に似合っていた。
ダニール・トリフォノフ<第3位・マズルカ賞、ロシア出身>
- 3つのマズルカ op.56より第1番、第2番
- マズルカ風ロンド
- タランテラ
- J.S.バッハ(ラフマニノフ編)/パルティータ第3番よりガヴォット
「前座」の下手くそとは打って変わり、この人はテクニシャン。音が立っている。リズムに乗り颯爽として、その指から紡ぎ出される音楽は蝶が舞うように軽やか!別のコンクールなら彼が優勝しても少しもおかしくないと感じられた。
ルーカス・ゲニューシャス<第2位・ポロネーズ賞、ロシア出身>
- ポロネーズ 第5番
- 12の練習曲 op.10より第2番
- 12の練習曲 op.25より第4番
- 12の練習曲 op.25より第11番「木枯らし」
- レオニード・デシャトニコフ/映画「Target」より"Foxtrot"
力強く剛直なタッチ。まるでディーゼル機関車が除雪しながらグイグイ走っているでいるような印象。これぞリヒテル、ベルマン、ブロンフマンらに綿々と受け継がれて来たロシアのピアニズム!アンコールもジャズっぽくて粋だった。
インゴルフ・ヴンダー<第2位・幻想ポロネーズ賞・協奏曲賞、オーストリア出身>
- ピアノ協奏曲 第1番(バデレフスキ版)
- モーツァルト(ヴォロドス編)/トルコ行進曲
磨かれた音で端正な演奏。イントネーション、メリハリがはっきりしていて楷書的。しかし一方で、情緒が不足しているように想われた。言い換えるなら面白味に欠けるんだなぁ。技術的には申し分なく、特にアンコールは超絶技巧で良かった。
ユリアンナ・アヴデーエワ<第1位・ソナタ賞、ロシア出身>
- ピアノ協奏曲 第1番(ナショナル・エディション)
- J.S.バッハ/パルティータ第1番よりジーグ
ヴンダーよりテンポは速め。精緻な演奏で抒情的。ショパンの音楽が有する無限のニュアンスがしっかりと伝わってくる。その表情の微かな移ろいが繊細に描かれ、もう泣きたくなるくらい美しい!第2楽章に心が震え、この曲に陶酔を感じたのはこれが初めて。第3楽章は力まず、pp(最弱音)が際だつ。シルクの肌触り。いや〜もう、圧巻。彼女以外の優勝はあり得ないと得心が行った。
総評としてはアヴデーエワ、ゲニューシャス、トリフォノフが特に素晴らしかった。
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