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2010年12月

2010年12月31日 (金)

2010年映画ベスト30+α

今年、劇場公開された新作で僕のお気に入りを列挙してみよう。それぞれタイトルをクリックすれば、映画のレビューに飛ぶ。

  1. 告白
  2. ハート・ロッカー
  3. 川の底からこんにちは
  4. インセプション
  5. 瞳の奥の秘密
  6. おとうと
  7. ノルウェイの森
  8. (500)日のサマー
  9. 第9地区
  10. 悪人
  11. シャネル&ストラヴィンスキー
  12. 人生万歳
  13. 借りぐらしのアリエッティ
  14. クレイジー・ハート
  15. プレシャス
  16. のだめカンタービレ 最終楽章(後編)
  17. パレード
  18. 17歳の肖像
  19. マイレージ、マイライフ
  20. フローズン・リバー
  21. インビクタス/負けざる者たち
  22. プリンセスと魔法のキス
  23. 最後の忠臣蔵
  24. トイ・ストーリー3
  25. シングルマン
  26. ラブリーボーン
  27. 白いリボン
  28. ゴールンデンスランバー
  29. アリス・イン・ワンダーランド
  30. クロッシング
  31. 僕のエリ 200歳の少女

リドリー・スコット監督の「ロビン・フッド」は現時点で未見なので、後日またランキングが変わるかも(1月1日に鑑賞予定)。

スウェーデン映画「僕のエリ 200歳の少女」はハリウッド・リメイク版"Let Me In"の評判がすこぶる高く、スティーヴン・キングが2010年のベスト・ワンに推したくらいだからとても愉しみだ。しかし、ちゃんと日本で公開されるのかな?

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人生万歳

評価:B+

Whateverworks

原題は"WHATEVER WORKS"-「何があろうと上手くいくなら、それでいいじゃない」といった意味。映画公式サイトはこちら

ウディ・アレンが1970年代に執筆していた脚本を2009年に映画化。

主人公が神経質な知識人というのはアレン自身が主演する時によくある設定で、若い娘にしか恋愛感情を抱けないというのも彼の実人生を彷彿とさせる。

ある意味、現代版「マイ・フェア・レディ」と言えるプロットで、映画中に「ピグマリオン」(「マイ・フェア・レディ」の下敷きになったバーナード・ショーの戯曲)についての言及もある。そして本作ではヒギンズ教授とイライザが結婚したその後も描かれることになる。ちなみにアレンは「僕が考える最も優れたブロードウェイ・ミュージカルは 『マイ・フェア・レディ』『ザ・ミュージック・マン』そして 『ガイズ・アンド・ドールズ(野郎どもと女たち)』さ」と語っている。

「マッチポイント」(2005)以降、ロンドンやバルセロナなどヨーロッパで映画製作を続けていたアレンが久しぶりにホームグラウンドのニューヨークに戻って撮った作品であり、全篇が非常にリラックスした雰囲気に満ちている。

軽い恋愛コメディだが、アレンらしい人生讃歌になっていて愉しめた。たまにはこういう肩の力が抜けた作品もいい。「生きてさえいれば、なんとでもなる」そういう気持ちにさせられた。

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白いリボン

評価:B

カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞。米アカデミー外国語映画賞にもノミネートされたドイツ映画。

Weisse

映画公式サイトはこちら

第一次世界大戦前夜のドイツの村が舞台。ミステリ仕立てで様々な事件が起こるが、最後まで謎解きはされない。

その不気味さ、村に蔓延る「悪意」が、後に登場するナチズムへの序曲となっている。

いや、確かにその意図は理解出来るし、見応えある作品ではあるが、テーマ自体は目新しいものではない。僕は新鮮味を感じなかったし、それ程面白いとも思わなかった。実際、退屈した観客が多かったようで、映画館の3カ所くらいから高鼾が聞こえてきた(これだけ寝る人が多い映画も珍しい)。まぁ、その程度の代物である。

カラーで撮影し、それをデジタル処理でモノクロに変換。非常に鮮明で美しい白黒映像はアカデミー撮影賞にもノミネートされた。「ノルウェイの森」同様、デジタル上映でこそその威力を最大限に発揮するだろう。

Weisse_2

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最後の忠臣蔵

評価:B

ハリウッド大手のワーナー・ブラザースが企画から製作まで担当したローカル・プロダクションの第1弾。

映画のボーダレス化は顕著である。日本人俳優がハリウッドや中国映画に出演するのも珍しくなくなったし、「ノルウェイの森」のトラン・アン・ユン監督はベトナム出身のフランス人である。こうした国際交流が映画のクオリティを押し上げるのなら、大歓迎である。

Saigo

映画公式サイトはこちら。討ち入りの後日談を描く。

脚本は「ツィゴイネルワイゼン」「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜」の田中陽造。それを20人以上で検討・修正したという脚本重視のハリウッド方式が見事に功を奏した。人形浄瑠璃「曽根崎心中」と絡めた構成もいい。

監督の杉田成道はテレビドラマ「北の国から」の演出で知られるテレビ・ディレクター。「優駿」(1988)の頃はテレビ的撮り方が気になったが、今回はしっかり映画らしいスケール感があった。撮影監督が「たそがれ清兵衛」「武士の一分」「沈まぬ太陽」の長沼六男。雪景色や竹林など日本の自然がたいそう美しい。美術装置も重厚で素晴らしい。

役所広司、佐藤浩市、安田成美など役者陣も充実しているが、何といっても白眉は可音(かね)を演じた桜庭ななみだろう。その可憐で凛とした佇まいにやられちまった!

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ミュージカル「RENT」オリジナル・キャスト〜アダム・パスカル&アンソニー・ラップ /ライヴ !

12月25日シアターBRAVA !へ。

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ミュージカル"RENT"のオリジナルキャストで、映画版にも出演したアダム・パスカルアンソニー・ラップのライブ。各々のバンドを率いての来日である。

僕はアダム・パスカルがブロードウェイでミュージカル「アイーダ」(ラダメス役)出演中の2001年に観たことがある。

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シアターBRAVA !は1階席が半分埋まるくらいの寂しい入り。

まずアダム・パスカルがギターの弾き語りで

  • ミュージカル「キャッツ」から”メモリー”

そこへアンソニー・ラップが加わり、

  • Solsbury Hill(ピーター・ガブリエル)

次にアダムが細長いエレキ・ベースに持ち替え単独で、

  • ミュージカル「キャバレー」から"I Don't Care Much"
  • ミュージカル「ウエストサイド物語」から"マリア"
  • "Merrily We Roll Along"から"Not A Day Goes By"
    (スティーブン・ソンドハイム)
  • Fade Out(オリジナル曲)
  • Single Drop of You(オリジナル曲)
  • Love Will Always Come Back(オリジナル曲)
  • Red Hill Mining Town(U2)
  • "Sunday in the Park with George"より"Sunday"
    (スティーブン・ソンドハイム)

U2の"Red Hill Mining Town"は、なんとアダムが1995年にRENTのオーディションで歌った曲だそう。

アダム以外はピアノとドラムスのみのトリオで、全体にJAZZっぽい雰囲気。伸びやかな声。高音は一体どこまで出るのかというくらい音域が広い。

続いてゲスト高良結香のコーナー。彼女は沖縄出身でブロードウェイ・リバイバル版「コーラスライン」(コニー・ウォン役)のオリジナル・キャスト。

3曲歌ったが自分の曲ばかりでミュージカルはなし。せめて「コーラスライン」のナンバーくらいは聴きたかった。彼女は自分がどうしてこの場にいるのか、その求められている役割を理解しているのだろうか?"Stand up, Okinawa"という普天間基地問題に関するメッセージ・ソングなど愚の骨頂。1970年代じゃないんだから。曲自体も魅力がなくウンザリした。

そしてアンソニー・ラップの登場。ロックンロールのスタイルで、

  • Living Alive(オリジナル曲)
  • Then Again(オリジナル曲)
  • Creep(レディオヘッド)
  • "Hedwig and the Angry Inch"より"Origin of Love"
  • Now I Know(オリジナル曲)
  • Losing My Religion(R.E.M)
  • "Perfect"also known as"The Stalker Song"(オリジナル曲)
  • Chasing Cars(Snow Patrol)
  • Visit To You(オリジナル曲)
  • New Alarms(オリジナル曲)

R.E.Mの"Losing My Religion"はアンソニーがRENTのオーディションで歌った曲。

そして最後はお待ちかね、怒濤のRENT祭だ!

  • "RENT"より"Without You"(アンソニー)
  • "RENT"より"What You Own"(アンソニー&アダム)
  • "RENT"より"One Song Glory"(アダム)
  • "RENT"より"Another Day"(アンソニー)
  • "RENT"より"Seasons of Love"(全員)

やっぱりミュージカルはオリジナル・キャストに限る。2人とも全然声は衰えていないし、見た目も若々しく、蘇ったRENTの夢を堪能した夜だった。

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2010年12月30日 (木)

2010年、印象に残ったコンサート&コンクールの名演を振り返る

さて、今年僕が聴いた演奏会のベストテンを列挙する。各々のタイトルをクリックすればレビューに飛ぶ。なお、ジャンルはクラシック・古楽・吹奏楽が中心である。

  1. P.ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルのシューマン・プロジェクト
  2. シューマン2010/河村尚子 ピアノ・リサイタル
  3. 吹奏楽版「ロード・オブ・ザ・リング」!/大阪市音楽団 定期
  4. 延原武春/大フィルのウィーン古典派シリーズ III
  5. パユ×ピノック/J.S.バッハのフルート・ソナタ
  6. 森 麻季 ソプラノリサイタル
  7. 忘れられた作曲家”タニェエフ”~児玉宏/大阪交響楽団
  8. シューマン2010/ツィメルマン&ハーゲン弦楽四重奏団
  9. ショパン誕生200年記念/仲道郁代プレイエルを弾く
  10. 佐渡裕プロデュースオペラ「キャンディード」

オーケストラ3、室内楽1、独奏3、オペラ1、声楽1、吹奏楽1と比較的バランスのいい選択になったと思う。

やっぱり今年のNO.1はヤルヴィ。交響曲作曲家としてのシューマン像を根底から覆す画期的名演だった。河村尚子はシューマン弾きとして天下一品であることを見事に証明した。市音は吹奏楽究極の名曲2曲を鮮やかに披露。延原/大フィルはベートーヴェンの交響曲第8番がスケールの大きな音楽であることを示した。「キャンディード」は佐渡さん入魂の指揮ぶりと、演出、歌手陣が素晴らしかった。

更にコンサート・ベスト20(NEXT 10)を順不同で列記する。

次点としてこれも是非挙げておきたい。

全日本吹奏楽コンクール高校の部ベスト・スリーは

全日本マーチングコンテストのベスト・パフォーマンスは

本当に今年は桐蔭の強さを見せつけられた年であった。

逆に今年最悪だった演奏会は以下の通り。

  1. 中村紘子(独奏) ショパン/ピアノ協奏曲第1番
  2. ヴィンシャーマン/大フィルのバッハ ロ短調ミサ

中村紘子の力任せで乱暴なショパンはお粗末としか言いようがない。ヴィンシャーマンの解釈は「化石」。極めて退屈なバッハだった。

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ゲルハルト・ボッセ/大フィル 第9シンフォニーの夕べ

ザ・シンフォニーホールへ。

ゲルハルト・ボッセ/大阪フィルハーモニー交響楽団

  • ベートーヴェン/交響曲第9番 「合唱付き」

を聴く。合唱は大阪フィルハーモニー合唱団および大阪音楽大学合唱団。大阪フィルハーモニー合唱団はアマチュアだが、それに声楽専攻の学生が加わることにより、極めて質が高く迫力ある合唱となった。

ボッセは御年88歳。歩くのも覚束なく、指揮台に上がるのも危なっかしい感じで、椅子に座っての指揮。

しかしその指先から紡ぎ出される音楽は生き生きとして覇気がある。比較的早めのテンポで音尻はスッと減衰し、歯切れがいい。弾むようなアクセントも効いている。

大フィルも自発的によく反応し、充実した演奏を展開した。すこぶる聴き応えのある第九であった。

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2010年12月28日 (火)

姉様キングス/ホワイトフェイスクリスマス

クリスマス・イヴの夜は天満天神繁昌亭へ。

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姉様キングスは落語家・桂あやめさんと林家染雀さんのユニット。シャンソンを歌うときはマダム・アヤメビッチミス・ジャクリーヌと名前を改める。

  • 桂さろめ/セールスウーマン(あやめ 作)
  • 林家染雀/質屋芝居
  • 桂あやめ/シックス・アンドウジシティ(あやめ 作)
  • サンデー西村/バイオリン漫談
  • 姉様キングス/音曲漫才
  • ミツコデラックス(桂三金)/デブ漫談
  • ミス・ジャクリーヌ、マダム・アヤメビッチ、(伴奏)サンデー西村
    /シャンソンショー

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シックス・アンドウジ・シティ」は過激なガールズ・トークが展開されるR指定作品。1996年に創った「ヰタタ…セクスアリス」の改訂版で僕はその初演から聴いているが、さらに工夫が加えられ面白くなっていた。ただ登場人物が4人というのはごちゃごちゃしていて、落語として分かりにくい。

染雀さんの落語は普通。

中入りを挟み、お待ちかね!姉様キングスの登場。あやめさんによると、将来は染丸師匠も引き込んで「姉様キングダム」にしようと計画を練っているとか。

都都逸、どんどん節、阿呆陀羅経など、「反社会的」な音曲漫談を展開。聴衆を爆笑の渦に巻き込む。

三金さんが女装したミツコデラックスは不発。もっと毒を吐いた方が良かったのでは?

続いてド派手な衣装に身を包んだミス・ジャクリーヌ、マダム・アヤメビッチが登場しただけで場内が沸く。

オリジナル曲「エクスタシーいくよくるよ」の後、染雀さんがB型肝炎で入院したことを「サントワマミー」のメロディーの乗せて唄う「Hépatite B(エパティット・ベー)」。この歌詞が悶絶するほど可笑しい。

さらに笑福亭仁鶴「おばちゃんのブルース(おそうじオバチャン)」、笑福亭鶴光「イザベル 関西編」(シャルル・アズナブール 作曲)、あやめ監督の映画「あなたのためならどこまでも」の挿入歌(リピート山中 作曲)、オリジナル曲「いんじゃもん de コマンタレブー」が歌われた。

終わってみれば21時半。危険で充実した3時間だった。

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2010年12月26日 (日)

笑いのタニマチ ~笑福亭仁智の新作道場~ (12/21)

薬業年金会館5F和室へ。客は80人くらいの入りでぎゅうぎゅう。約半数を女性が占める。

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全員自作の落語。

  • 桂三四郎/かずとも
  • 笑福亭仁智/株式会社ニコニコ警察
  • 笑福亭たま/伝説の組長
  • 笑福亭仁智/ワイドショー忠臣蔵(仮)

かずとも」はおばあちゃんのお通夜に参列した少年の巻き起こす騒動を描く。今年5月に繁昌亭で鶴瓶さんと共演した時に何かを掴んだ三四郎さん。今回もマクラから抜群の面白さだった。彼は今、最も注目すべき若手である。

仁智さんの一席目は警察も民営化された社会を舞台に。落語「ぜんざい公社」とは逆転の発想。給料は歩合制となり、複数の民間警察がしのぎを削る。追い詰められた犯人は「よその警察に捕まったるからな!」と凄む。逮捕されるごとにカードにポイントが貯まったり、キャンペーンがあったりなど風刺が効いている。

たまさんの「伝説の組長」は鉄板ネタ、傑作。通常、夜這いの場面で三味線が入るが今回はなし(笑いのタニマチは全て既成の音源を使用)。

仁智さん二席目のネタおろしは、忠臣蔵の時代に新幹線やテレビ・ワイドショーがあったらという設定。時代劇は珍しく、その理由は「だって侍言葉は噛むもん」と。「わしも千両で雇われたんや」と落語「動物園」のパロディがあったり、「寝床」を彷彿とさせる言い訳合戦があったり。討ち入りがテレビ中継され、一躍人気者に。赤穂浪士 47士=AKR47として秋元康プロデュースで芸能界デビューという展開には笑った。

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2010年12月25日 (土)

文我・三象・宗助/怪しい三人会

ワッハ上方5Fワッハホールへ。

Ayasi

  • 笑福亭生寿/子ほめ
  • 桂 宗助/けんげしゃ茶屋
  • 桂 三象/シルバーウェディングベル(三枝 作)
  • 桂 文我/富久
  • 文我、三象、宗助/爆笑鼎談
  • 三象、宗助/本格派新舞踊

けんげしゃ茶屋」は宗助さんの描く旦那が、意地悪だけど品があって良かった。

三象さんは落語家になってからも谷町九丁目のセブンイレブンでレジ打ちのバイトをしていたそう。またスナックのカウンター嬢(←本人談)もしていて、お客さんのカラオケに合わせて踊りを披露。でも店が狭いのでドアを開けて道路でされるとか。なんだか生き様そのものが落語だなぁ。

文我さんの「富久」はコミカルな人物描写で愉しい一席。

文我さんの勧めで三象さんに踊りを習っている宗助さんを文我さんが「三象一門」と紹介すると、とても嫌がる宗助さん。そこで「三象一味」と言いなおし、場内爆笑。宗助さんが「(人に勧めるだけじゃなく)あんたも習ったらどうですか」と水を向けると「この人の所に稽古に行くぐらいなら、どんなツライ兵役でも耐える自身があります」と文我さん。

そしてお待ちかね!三象&宗助の踊りで「矢切の渡し」。これがもう抱腹絶倒。この世のものとは思えない”異界の訪問者”=三象さんの手を引く、真面目な顔をした宗助さんが最高に可笑しい。熱狂した観衆はアンコールを要請。宗助さんが「もう、勘弁してください!」と土下座する一幕も。今月閉館するワッハホールが異様なくらい盛り上がったひと時だった。

来年からここは吉本の劇場として再出発する。それに伴い同ビル地下の「baseよしもと」が閉館となり、NMB48(秋元康プロデュースAKB48の大阪版)劇場に生まれ変わるようだ。

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2010年12月22日 (水)

荘村清志 ”アルハンブラの想い出”

大阪倶楽部へ。

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日本を代表するクラシック・ギタリスト荘村清志(しょうむら きよし)さんのコンサート。

  • バリオス/マドリガル、ラ・ギタリータ、郷愁のショーロ
  • ラインハルト(ディアンス編)/ヌアージュ(雲)
  • ディアンス/20通の手紙より
  • イルマール/バーデン・ジャズ組曲
    (休憩)
  • 賢王アルフォンス/聖母マリア
  • スペイン民謡/映画「禁じられた遊び」より”愛のロマンス”
  • タレルガ/アルハンブラ宮殿の想い出
  • グラナドス/アンダルーサ(スペイン舞曲集)
  • アルベニス/グラナダ、セビリア(スペイン組曲)
  • マイヤーズ/映画「ディア・ハンター」より”カヴァティーナ” (アンコール)
  • カタロニア民謡「聖母の御子」 (アンコール)

バリオスはパラグアイの作曲家。乾いた響きに哀愁が滲む。

ラインハルトの「ヌアージュ」はJAZZ。それをクラシック・ギターで弾けるようアレンジされたもの。爽やかに一陣の風が吹き抜ける。

20通の手紙」からは7曲 ー シドニー(友人)への手紙、セーヌ(河)への手紙、黒い手紙(アフリカ大陸へ)、ジャック・カルティエへの手紙(カナダ国歌のアレンジ)、北東(ブラジル)への手紙、フリア・フロリダ(バリオス作曲)への手紙、イサーク・アルベニスへの手紙。バラエティに富み、親しみやすい楽曲。

バーデン・ジャズ組曲」はブラジルのギタリスト(ボサノヴァの巨匠)、バーデン・パウエルへのオマージュ。

プログラム前半はノリのいい、近代ギター音楽を堪能した。

打って変わって後半は、過去へとタイム・スリップ。

聖母マリア」は12世紀アンダルシアの音楽。味わい深い古楽の響き。

アルハンブラの想い出」は遠方へのあこがれ。

グラナドスアルベニスはスペインを代表する作曲家。「アンダルーサ」はスペイン映画「エル・スール」でとても印象的に使われていた。

やっぱりスペインの音楽はギターが一番、その持ち味を発揮するなぁと感じられた冬の夜であった。

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2010年12月21日 (火)

蘇る「書生節」!/田辺寄席(12/19)

地域寄席、第555回田辺寄席へ。

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  • 桂 文太/開口0番
  • 桂さろめ/セールスウーマン(あやめ 作)
  • 桂 文太/百人坊主
  • 桂 春駒/神様のご臨終(三枝 作)
  • 旭堂南海・宮村群時/書生節
  • 桂 文太/一人酒盛

文太さんの開口0番は干支について。十二支のうち兎と羊は落語に登場しないそう。また上方四天王について「豪快な松鶴」、「知的な米朝」、「華麗な春團治」、「はんなりした文枝」と紹介。成る程、それぞれの特徴が的確に表現されている。

さろめさん(山形県出身)は標準語での口演。古典だと違和感があるが、あやめ師匠の新作なら問題なし。化粧品販売員の噺で上司の嫌味な感じが彼女のニンに合っている。

百人坊主」は初めて聴いた。最後はシュールな光景が広がってこれは面白い!

明治末期から大正時代に流行った書生節の詳しいことは→上方書生節協会HPへ。旭堂南海さんは講談師。ミュージシャン・宮村群時さんは桂しん吉さんと組んで元祖お囃子カントリー「ぐんきち」というバンドもされている。ヴァイオリンを弾きながら唄うというスタイルは西洋にはなく、日本独特だそう。「金色夜叉」「ハイカラ節(自転車節)」「のんき節」「東京節」などが披露された。大正デモクラシーの香りがした。

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神田山陽 登場!/第5回 なんことけいこ 〜忠臣蔵の巻〜

動楽亭へ。

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講談師・旭堂南湖さんと浪曲師・春野恵子さんの会。

  • 旭堂南湖/講談 殿中松の廊下
  • 春野恵子/浪曲 梶川大力の粗忽(曲師:一風亭初月)
  • トークコーナー 恵子のギモン 〜なんこ兄おしえて!〜
  • 旭堂南湖/講談 梶川与惣兵衛

正面の舞台には講談用の釈台、また反対側・会場後方には浪曲のテーブル(演台)が置かれ、それぞれ客がくるっと半回転して愉しむという趣向。なお今回初めて知ったが、浪曲は立って演じるのが本来の姿だそう(繁昌亭では舞台の都合上座っている)。

同じ題材を講談と浪曲で聴き比べるというのはとても面白い。結構話の展開が違っている。

南湖さんによると講談の忠臣蔵は事件の史実を扱った「本伝」、四十七士個々を描いた「義士銘々伝」、その周辺を扱った「外伝」とあるそう。

トークコーナーでは東京からのゲスト神田山陽さんが登場。東京にあった唯一の講談専門寄席小屋「本牧亭(ほんもくてい)」が閉場した時(1990年)の想い出、入門当時客の平均年齢は75歳くらいだったこと、またたった一人の前で演じたこともある等といったことを語られた。

さらに山陽さんは講談・鼠小僧外伝「鼠小僧とサンタクロース」の一部を披露。鼠小僧とサンタの乗った橇が江戸の空を飛び、途中、忠臣蔵の討ち入りを上空から目撃するあたりまで。目くるめくスピード感があり、圧巻だった。

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2010年12月20日 (月)

笑福亭枝鶴 襲名披露興行/繁昌亭昼席(12/16,19)

12月16日、繁昌亭昼席。

T4

  • 笑福亭生寿/平林
  • 笑福亭由瓶/看板の一
  • 笑福亭鶴二/米揚げ笊
  • 豊来家玉之助/太神楽
  • 笑福亭鶴志/時うどん
  • 月亭八方/稽古屋
  • 枝鶴襲名披露口上
  • 笑福亭松枝/袈裟御前
  • 桂春之輔/まめだ
  • 笑福亭枝鶴/禁酒関所

由瓶さんは気っ風・威勢がいい高座。

鶴志さんはゆったりしたテンポで豪快。「これぞ笑福亭」という芸。

八方さんは肩の力が抜けた、柔らかく滑らかな口演。

口上で八方さんは先代の枝鶴(現・枝鶴の師匠)と初対面の時、「八方くん、君には言っておきたいことがある……。2万円貸して」と言われ、次に会った時に「この前の2万円は必ず返すから、とりあえずもう3万貸して」と言われたそう。勿論それらは返してもらっていないと暴露。噺家の口上は笑わせてくれるから愉しい。

12月19日の昼席。

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  • 笑福亭鉄瓶/平林
  • 笑福亭生喬/犬の目
  • 笑福亭伯枝/田楽喰い(ん廻し)
  • 笑福亭鶴笑/紙切り
  • 笑福亭岐代松/時うどん
  • 桂春團治/高尾
  • 枝鶴襲名披露口上
  • 笑福亭福笑/葬儀屋さん(福笑 作)
  • 桂春之輔/お玉牛
  • 笑福亭枝鶴/竹の水仙

伯枝さんは中華料理や新幹線を素材に「ん廻し」を展開。これは新鮮だった。

春團治さんの高座は何度も聴いているが「高尾」は初。ラッキー!名人芸を堪能。

竹の水仙」のサゲは「大工だけにのみくち(酒の飲み口と、大工道具のノミをかけている)がしっかりいたしております」だった。この噺は講談から落語に移植されたもので、元々オチはない。調べてみるとどうやら先代の枝鶴が得意としたネタらしく、初代・京山幸枝若(浪曲師)から直々に稽古をしてもらったという。これがさらに「小つる」時代の現・枝鶴さんへ口伝されたということらしい。

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2010年12月18日 (土)

新世紀落語の会(12/17)

繁昌亭へ。

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全員自作ネタ。

  • 林家笑丸/余興屋
  • 桂あさ吉/新LOVE八卦
  • 桂 三風/世代哀歌(ジェネレーション・エレジー)
  • 旭堂南湖/サイレント・クリスマス(講談)
  • 桂梅團治/切符

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笑丸さんは得意の「後ろ紙切り」(お題はうさぎ)を披露。もう少し他の演芸も見たかったな。

あさ吉さんはマクラで、入門直後に習った小噺「くちなし」の英語バージョンと、韓国語の小噺を披露。

南湖さんは長男が誕生したマクラをたっぷりと。本編は短かったが、味のある一席。

切符」は梅團治さんが鉄道落語会で演った新作のうち、生き残ったネタ。古典「住吉駕籠」の酔払いが登場する場面を模した繰り返しあり。なんと大阪から東京までの東海道線の全駅を列挙するくだりがあり、これは圧巻。いかにも鉄ちゃんらしい作品だった。

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遊方・八天 IN 徳徳亭/月亭遊方のゴキゲン落語会

12月15日(水)、トリイホール下の徳徳亭へ。

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とくとく寄席「年忘れ!八天噺」18時半開演。

  • 月亭天使/子ほめ
  • 月亭八天/高尾
  • 笑福亭生寿/二人ぐせ
  • 月亭八天/夢の革財布

子ほめ」は長めの20分。八天さんの弟子・天使さんは初めて聴いたが、視線が定まらず目が泳ぎ、未だ会話という感じがしない。

生寿さんは福笑さんに初めてカラオケに誘われたエピソードを披露。宴は23時から翌3時半まで延々と続いたそう。駄目出しをされないよう気を使い、ロック好きの福笑さんに合わせ甲斐バンドの「HERO(ヒーローになる時、それは今)」を選んだら、ご満悦だったそう。また福笑さんはアニメソング「セーラームーン」などを唄われたとか。

客の入りは16人で、八天さんはそれが気に入らなかった様子。マクラで愚痴ってた。彼の高座には稽古に裏打ちされた確かな上手さがあった。なお、「夢の革財布」は江戸落語の「芝浜」。

T2

引き続き「とくとくレイトショー」最終回、21時20分開演。こちらの入りは10人。

  • 月亭遊方/寄合酒

当初遊方さんは自作「虚礼困惑騒動」も用意されていたが、マクラが盛り上がったため、一席のみに変更。

12月3日に遊方さんのところへ弟子見習いが入門。大分県出身で7年間、漫才コンビ「はだか電球」で活躍した人(今年コンビ解散)だそう。米朝師匠にも事始めで挨拶を済ませたとのこと。

また若い頃、八方師匠の付き人としてなんば花月で南野陽子や早見優に遭遇した時のエピソードや、撮影現場で松田優作に話しかけられたという”とっておきの話”をされた。

遊方さんの古典は珍しい。「寄合酒」は独自の工夫が随所に盛り込まれ、愉しかった。

翌16日は「月亭遊方のゴキゲン落語会」@ワッハ上方4階・小演芸場

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遊方さんワン・アンド・オンリーの会。

  • 開幕前戯噺(遊方の日常あれこれ)
  • 奇跡のラッキーカムカム(遊方 作)
  • てんのじ小屋(遊方 作)

てんのじ小屋」は遊方さんが大好きなウディ・アレン監督「おいしい生活」のパロディ。遊方さんによるとアレン作品は非常に落語的で、「カサブランカ」のハンフリー・ボガートに憧れる主人公が登場する映画「ボギー!俺も男だ」は落語「時うどん」「昭和任侠伝」に通じるものがあると。言われてみれば確かにその通りだなぁ。「てんのじ小屋」とは昔、桂あやめさんが席亭を務められていた寄席小屋「茶臼山舞台」がモデル。初演時には遊方、あやめ、三金、たま、南湖ら噺家・講談師が実名で登場したそうだが、今回は名前が替えられていた。

秀逸だったのは「奇跡のラッキーカムカム」。”身につけているだけで幸せになれる!”が謳い文句の縁起物をテーマにした作品。桂三四郎さんが一番好きなネタだそうで、彼の会でもこれを演って欲しいと指定されるとか。その気持ちよく分かる。本当に面白いもん。他力本願な人間の心の弱さを突く傑作だった。

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2010年12月16日 (木)

村上春樹(原作)/映画「ノルウェイの森」

評価:B+

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映画公式サイトはこちら

まずは13年前に僕が村上春樹さんと交わしたメールの内容を紹介した、下記記事からお読み下さい。

今回映画を観て改めて気付いたこと。直子は幼馴染のキズキを愛していながら、彼とセックスすることが叶わなかったが故に、次第に精神を病んでゆく。これは映画「草原の輝き」(1961)でナタリー・ウッドが演じたヒロインの設定とほぼ同じである。

死んだキズキとセックスできなかったことが悔恨の念として重く直子にのしかかる。そして物語の終盤、直子を失ったワタナベは自分が彼女の魂を救済出来なかったことを悔み、放浪の旅に出る。旅から戻ったワタナベは下宿の前で待っていたレイコとセックスをする。この場面の解釈については原作ファンの間でも長年に渡り議論の的となった。映画でワタナベを演じた松山ケンイチはインタビューの中でこう語る。

たとえば直子を失ったときのレイコさんとのセックスの意味は、原作を読んだときは全く理解できなかった。けれど、芝居をしていくうちに、2人が直子の死を受け入れて生きていくために必要だったんだと気づいた。それと同時に原作の持つテーマの深さにも気づいたんです。

落ち込んだレイコの気持ちはワタナベとのセックスで救われる。そのことは同時にワタナベの贖罪に繋がり、彼は直子の呪縛から開放され、ようやく緑と正面から向き合えるようになる……という作品構造がこの映画を通して僕には初めて理解出来たのである。

ウォン・カーウァイ監督「花様年華」や日本映画「空気人形」で知られる撮影監督リー・ピンビンは今回、フィルムではなくバイパーというHDカメラを使用している。品質を考えればフィルム上映ではなく、デジタル上映している映画館で観るべきだろう。

画面全体を覆いつくす圧倒的グリーンが素晴らしい。トラン・アン・ユン監督は自然描写(演出)が巧みである。梢を渡る風、しとしとと降る雨(むせるような湿度)、深深(しんしん)と降り積もる雪の音。各々が印象深い。また直子が草原を歩きながらワタナベに告白する5分間の長回しが凄かった。

音楽は村上春樹さんもよく聴くというロックバンド「レディオヘッド」のギタリスト、ジョニー・グリーンウッドが担当。特に直子の死後、ワタナベが放浪する場面で、彼の叫び声を入れず、音楽がそれを代弁している場面が心に響いた。

ただ残念だったのは、音楽の先生という設定のレイコさんがギターの弾き語りで「ノルウェイの森」一曲しか歌わないところ。原作で彼女はビートルズのナンバーを沢山歌うのだが、版権が高すぎてこれ以上は難しかったんだろうなぁ。

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ワタナベを演じた松山ケンイチは受け身の芝居という難しい役どころを見事にこなした。感情の抑制具合が絶妙で素晴らしい。 

直子役の菊地凛子の顔は僕が好きなタイプではないが、彼女の演技には文句の付けようがない。そういう意味でメリル・ストリープとか大竹しのぶに似たタイプの女優である。

緑を演じる水原希子はハッキリ言って日本人に見えない(彼女はアメリカ人の父と韓国人の母をもつ)。でも、綺麗だから許す。美は他の価値観全てを超越する。

また、永沢役の玉山鉄二が虚無的な雰囲気を醸し出しており、中々良かった。

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2010年12月14日 (火)

史上最狂の笑福亭

繁昌亭へ。

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S2

  • 笑福亭枝鶴/ご挨拶
  • 笑福亭鶴瓶/CHINGE(くまざわあかね 作)
  • 笑福亭松枝/蔵丁稚
  • 笑福亭福笑/宿屋ばばぁ(福笑 作)
  • 笑福亭松喬/花筏
  • 笑福亭枝鶴/質屋蔵

CHINGE」はネタおろしから聴いているが、マネージャーとの会話などにギャグが追加されており、さらに一層面白くなっている。

松枝さんは忠臣蔵に関する幾つかの小噺をマクラに。下ネタ連発なのがいかにも笑福亭らしい。

福笑さんの新作は這いつくばって登場する今にも死にそうな老婆が最高に可笑しい。

松喬さんは登場するや否や、「今回の面々の中で私が一番まとも」と言い、場内大うけ。内弟子時代、福笑さんにいじめられたと言いつつ、「播州弁が残る私に対し師匠から『なにわことばを覚えなさい』と言われ、福笑兄さんがチクチク指導してくれた。そのおかげで今日の私がある」とも。

調べてみると僕は今まで松喬さんの高座を11回聴いている。うち「花筏」が3回。遭遇率27%。出来れば別の噺が聴きたかった。

蔵丁稚」と「質屋蔵」はどちらも”丁稚”と”三番蔵”が出てくるのだけれど、これはネタが付く(一つの落語会でよく似た噺をする)ことにはならいのだろうか??・・・笑福亭の会なのだから、ひとつは「酒の噺」が聴きたかったなぁ。

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2010年12月13日 (月)

第十一回 笑福亭鶴志一人舞台(12/12)

繁昌亭へ。

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笑福亭鶴志さんの落語会。

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  • 桂   福丸/桃太郎
  • 笑福亭鶴志/くしゃみ講釈
  • 揚野  バンリ/お笑い曲芸
  • 笑福亭鶴志/市助酒
  • 笑福亭鶴志/堀川 (半ば)

前座の福丸さんは、「第三桂福丸(けいふくまる=漁船の名前)」とか、海老蔵ネタなど工夫が加えられ、さらに面白くなっていた。

雀々さんとか吉弥さんの畳み掛けるような「くしゃみ講釈」とは異なり、鶴志版はゆったりとしたテンポ。大声で豪快な高座。これはこれで面白い。

堀川」は半ばまでの口演。向かい同士に住むドラ息子ふたり、「酒極道」と「腕力極道」のエピソードが分離したまま回収されず、なんとも中途半端な印象だった。

今回一番の収穫は「市助酒」。これは鶴志さんの師匠・六代目松鶴がよく掛けていたというネタ。鶴志さんは「おもろいことも何ともありゃせん」と繰り返し仰っていたが、どうしてどうして。酔っ払いは笑福亭のお家芸だけに絶品。昔の船場商家の雰囲気がすごくよく活写されていた。これが初体験だったが、これから何度でも聴きたい噺だった。

また通路には、第五回 繁昌亭大賞の面々が張り出されていた。

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松田理奈ヴァイオリン・リサイタル/ツィゴイネルワイゼン

昔からクラシック音楽業界には”美人演奏家”というジャンルが存在する。実力はそれほどでもないが、容姿で人気があるタイプである。

しかし最近は日本の優れた音楽教育の結果、見た目の美しさと内面的実力を兼ね備えた演奏家もちらほら出てくるようになった。

現在、世間の注目を集めている美貌のヴァイオリニストと言えば、日テレ「NEWS ZERO」のキャスターとしても活躍中の宮本笑里、そして南紫音、松田理奈らがそれに該当する。

その松田理奈のリサイタルを兵庫県立芸術文化センターで聴いた。ピアノ伴奏は江口玲。入場料はA席2,000円、B席1,000円。

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  • モーツァルト(クライスラー編)/「ハフナーセレナード」より”ロンド”
  • グルック(クライスラー編)/歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」より”メロディ”
  • ポンセ/エストレリータ
  • マスネ/タイスの瞑想曲
  • サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
    (休憩)
  • ザイ/無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番「バラード」
  • ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ 第3番

プログラム前半は普段クラシック音楽を聴かない人々にも親しみやすいポピュラーな小品を並べ、後半は渋めの、自分が本当にやりたい勝負曲で真価を問うという、したたかな構成。

モーツァルトグルックマスネでは深みのある甘く豊かな音色で聴衆を魅了。また彼女の奏でるハーモニクス(フラジオレット=倍音)はとても美しい。

メキシコの作曲家ポンセでは芯がしっかりして強靭な音を聴かせた。

ツィゴイネルワイゼン」は冒頭から野太い音を奏で、劇的な表現力でロマ(ジプシー)の濃厚さが醸し出されていた。

ブラームスではこの作曲家固有のメランコリーが感じられ、陰影のある音楽が展開された。非常に聴き応えのある演奏であった。

M02

松田理奈、25歳。天は彼女に類希なる美貌と才能を授けた。この世の中って、やっぱり不公平に出来てるよなぁと感じた、日曜の昼下がりであった。

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2010年12月11日 (土)

樫本大進×コンスタンチン・リフシッツ によるベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ

いずみホールへ。

試用期間を経て、この度ベルリン・フィル第1コンサートマスターへの就任が正式に決まった樫本大進さんとウクライナ生まれのピアニスト、コンスタンチン・リフシッツのデュオ・リサイタルを聴く。

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オール・ベートーヴェン・プログラムで、

  • ヴァイオリン・ソナタ 第1番
  • ヴァイオリン・ソナタ 第5番「春」
  • ヴァイオリン・ソナタ 第10番

「春」はつい先日、神尾真由子さんで聴いたが、目が覚めるような名演であった(来年はヒラリー・ハーンでも同曲を聴く予定)。

樫本さんの弾くヴァイオリンは穏やかで豊かな音がする(使用楽器は1674年製アンドレア・グヮルネリ)。しかし全体的に大人しく、なんだか物足りない。

神尾さんのヴァイオリンにあって、樫本さんには感じられないもの。それはパッション強い意志である。

ベルリン・フィルのコンマスってこの程度のものかと些かガッカリしたが、考えてみれば安永 徹さんをはじめとする歴代のコンマスの中でソリストとして目覚しい活躍をした人はいない。せいぜい弦楽四重奏団止まりである。だから元来こんなものなのだろう。

一方、リフシッツのピアノは剛直で力強く、切れがある。カチッとしてダイナミックな音作りは同じウクライナ出身のロシアのピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルのそれを彷彿とさせた。

樫本さんはリフシッツについてインタビューの中でこう語っている。

その演奏は驚異的な集中力に支配され、ある種の狂気をただよわせる。ベートーヴェンの作品の奥にもそうした狂気が横たわっている。だからぼくも狂気を感じさせる演奏をしたい。

確かにピアノからはその”狂気”がひしひしと伝わってきたが、残念ながらヴァイオリンからは感じ取ることが出来なかった。

樫本さんのソロ・リサイタルには今後二度と足を運ぶことはないだろう。しかし、リフシッツは是非また聴いてみたい。そんなことどもを想った夜だった。

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ユベール・スダーン/大阪交響楽団 定期

ザ・シンフォニーホールへ。

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ユベール・スダーン/大阪交響楽団で、

  • ベートーヴェン/序曲「コリオラン」
  • ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第4番
  • フォーレ/組曲「ペレアスとメリザンド」
  • ルーセル/交響曲 第4番

ピアノ独奏は小菅 優

オランダ出身の指揮者スダーンは2004年から東京交響楽団の音楽監督に就任し、同楽団を一気に日本一のレベルまで引き上げた《オーケストラ・ビルダー》としての評価が高い。音楽評論家が選んだ「レコード芸術」誌オーケストラ・ランキングで東響はNHK交響楽団を抜かし、No1の評価を得た(ちなみにこの時、関西のオケは一票も入らなかった)。

スダーンと言えばハイドンやモーツァルトでオケにピリオド(ノン・ヴィブラート)奏法を要求することで有名だが、ベートーヴェンは普通にヴィブラートをかけて演奏したので、むしろ驚いた。これはベートーヴェンの時代で方法論を切り替えるのか、今回は手兵の東京交響楽団ではなく、客演だからそこまで求めなかったのかは不明。

小節の頭は音を叩きつけるように奏で、音尻はあくまで短い。荒々しいまでに振幅の大きな音楽が展開された。

小菅さんのソロは繊細だがタッチに力強さがなく、歯切れの悪い曖昧な演奏に終始した。多くの女性ピアニストが抱える問題点が浮き彫りにされる結果となった。

むしろアンコール武満徹/Rain Tree Sketch 1の方がペダルを踏みっぱなしで、彼女の資質にあっている気がした。

良かったのは後半のフランスもの。スダーンのフォーレは甘くなく、各声部の旋律線がくっきりと浮かび上がる。「前奏曲」から恋人たちの心臓の鼓動が聴こえるよう。「シシリエンヌ」は速めのテンポでリズミカル。ああ、これは舞踏曲なんだなぁと初めて気が付いた。「メリザンドの死」では決然と死を受け入れる高潔なヒロイン像が見えた。むしろそこには生の輝きがあった。

ルーセルはマグマが噴出するような凄まじいエネルギーが感じられる演奏。どんどん変化するリズムが面白い。

スダーンという人はリズム感が抜群な指揮者であることを認識した夜だった。

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2010年12月 8日 (水)

映画「草原の輝き」から、村上春樹(著)「ノルウェイの森」へ

松山ケンイチ、菊地凛子主演の映画「ノルウェイの森」がいよいよ今週末から公開される。

そこで是非、「ノルウェイの森」と併せて観て頂きたい作品をご紹介しておきたい。1961年のアメリカ映画、エリア・カザン監督「草原の輝き」である。

Splendor

主演はナタリー・ウッドとウォーレン・ベイティ。

村上春樹・川本三郎(共著)講談社「映画をめぐる冒険」の中で村上さんは「草原の輝き」について次のように語っている。

あるいは僕の涙腺が弱すぎるせいかもしれないが、観るたびに胸打たれる映画というのがある。『草原の輝き』もそのひとつである。『アメリカン・グラフィティ』を観たときもふとこの映画のことを思いだして哀しい気持ちになってしまった。僕はナタリー・ウッドの演技を観て感心した記憶は殆どないが、この映画だけは唯一の例外である。青春というものの発する理不尽な力に打ちのめされていく傷つきやすい少女の心の動きを彼女は実に見事に表現している。

ナタリー・ウッドについての村上さんの意見に対し、僕は全く同感である。「理由なき反抗」や「ウエストサイド物語」の彼女は少しもいいとは想わないが、「草原の輝き」の彼女は、本当に凛とした佇まいで美しい。パーフェクトである。

「草原の輝き」はハイスクールに通う男女の恋愛が描かれる。しかし、ふたりが結ばれることはない。

ひとは愛する相手を傷つけないでは生きていけない。たとえそれが親子であろうと。ヤマアラシのジレンマ。そういう人間存在の哀しみが、この作品にはある。そしてそれは間違いなく「ノルウェイの森」へと繋がってゆく。

「草原の輝き」で引用されるワーズワースの詩は次のような内容である。

What though the radiance which was once so bright
Be now for ever taken from my sight,
Though nothing can bring back the hour
Of splendor in the grass, of glory in the flower;
We will grieve not, rather find
Strength in what remains behind...

かつては目を眩(くら)ませし
光も消え去り
草原の輝き 花の栄光
再びそれは還(かえ)らずとも
なげくなかれ
奥に秘められたる力を見いだすべし
(高瀬鎮夫訳)

これは正しく「ノルウェイの森」の主題と直結しているのではないだろうか?

ヒロインが精神を病み、療養所に入るという展開も両者は共通している。そもそもタイトル自体、「草原」(grass)と「森」(wood)は兄弟のような単語である。

「ノルウェイの森」のトラン・アン・ユン監督がメイン・ロケ地として選んだ砥峰・峰山高原は、どちらかというと「森」というよりは「草原」に近い。

いまから13年前、村上春樹さんは「村上朝日堂」というHPにおいて、読者からのメールに答えるというコーナーをされていた。そこへ僕は質問を出し、ご返事を頂いた。以下にその内容をご紹介しよう(掲載については当時の朝日新聞担当者から許可を得ている。無断転載禁止)。

At 1:59 AM 97.6.17, ************* wrote:
> 村上春樹様

> はじめまして。**と申します。**歳、**に勤務しています。

> さて、村上さんは著書「映画をめぐる冒険」で、映画「草原の輝き」について、ーこの映画のことを想うとき、いつも哀しい気持ちになる─というようなことを仰っていましたね。この映画は僕も大好きで村上さんの言葉がずっと心に残っています。小説「ノルウェイの森」でレイコさんはビートルズの曲を弾きながら「この人たちは確かに人生の哀しみとか優しさとかいうものをよく知っているわね」と云いますが「草原の輝き」を観るとあのレイコさんの言葉は、この映画の作者達への言葉にも想えるのです。僕は「草原の輝き」がこの小説に深い影を落としている、そんな気がして仕方がありません。是非このことに関して、村上さんのコメントを頂ければと想います。

> また、村上さんはもう自作の映画化は許可しないと仰っていますね。嘗て大森一樹監督が「羊をめぐる冒険」の映画化をを熱烈に希望されたそうですが、断られたと伺いました。しかし、ファンの勝手な想いとしては、例えば大森監督が「ノルウェイの森」を映画化したとしたら、日本版「草原の輝き」の様な、切実な青春映画が出来るのではという予感があるのですが・・。

こんにちは。「草原の輝き」はいい映画ですね。僕は大好きです。でも「ノルウェーの森」を書くときにこの作品を意識したかというと、とくには意識していません。映画と小説って、やっぱりリズムが違いますので。

僕はこの映画を見る前に、映画のシナリオを何度も何度も読んで、筋を覚えてしまっていました。それでそのあとで実物の映画を見たんだけれど、ぜんぜん違和感がなかった。イメージのまんまだった。不思議ですね。不思議じゃないのかな。

「ノルウェーの森」を映画にするつもりは、誰が監督をするとしても、いまのところありません。あれは活字だけでこそっと置いておきたいのです。

村上春樹拝

さて、あなたは映画「草原の輝き」と「ノルウェイの森」を観て、両者の関係をどうお感じになるだろうか?

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2010年12月 7日 (火)

福笑・鯉昇二人会

繁昌亭へ。

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東京から瀧川鯉昇(たきがわりしょう)さんを迎えての二人会。

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  • 笑福亭たま/近日息子
  • 笑福亭福笑/博士の新薬(福笑 作)
  • 瀧川鯉昇/二番煎じ
  • 瀧川鯉昇/粗忽の釘
  • 笑福亭福笑/崇徳院

たまさんはエキセントリックに、登場人物がキレまくる「近日息子」。実に愉快。

たまさんも福笑さんもマクラで海老蔵の話題。やはり旬の人だからなぁ。

福笑さんによると鯉昇さんは最初「春風亭柳若」と名乗っていて、次に「愛嬌」そして現在の名前となったそう。「昔の方が良かった。どんどんお客を愚弄する名前になっていく!」これには場内大いに盛り上がる。現在、東京の噺家の多くは古今亭志ん朝の影響を多かれ少なかれ受けているが、鯉昇さんはそれとは一切無縁で、カントリー風とも言える。鯉昇vs.福笑、「静と動」の違いを楽しんで欲しいと。

鯉昇さんが登場し座布団に座ると、しばし場内の様子を探るように見渡して無言。その「間」に笑いが起きる。こうして客を自分独自のテンポに引っ張り込む。飄々として、とぼけた味わいがある高座。あくまで穏やかで、そこには人間の可愛らしさがある。

粗忽の釘」は勿論、上方の「宿替え」。釘を打つ目的が箒を掛けるためではなく鯉昇版ではエキスパンダーというのが可笑しい。

トリは福笑さん。中国・広州で開催されたアジア大会に登場した「エチケットの天使」に欲情したこと、蓮舫議員が国会議事堂でVOGUEの写真を撮ったことに触れ、「美人は徳だ」ということをマクラに過激な「崇徳院」へ。福笑版では手伝いの熊五郎が若旦那の純愛物語を聴き、邪悪に笑う!熊の女房も史上最強の”鬼嫁”。そして最後、三日間大阪中を歩き回りくたくたに疲れ果てた熊の姿は、まるで”ラリってる”よう。さすが福笑さん、恐れ入りました。

死ぬほど笑った二時間半だった。

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2010年12月 6日 (月)

染丸・権太楼 二人会

繁昌亭へ。

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江戸の「爆笑王」と言われる柳家権太楼さんとの初見参!

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  • 林家花丸/鉄砲勇助
  • 柳家右太楼/のめる
  • 柳家権太楼/居残り佐平次
  • 林家染二/貧乏神(小佐田定雄 作)
  • 林家染丸/包丁

のめる」は上方の「二人癖」。江戸版は隠居との会話から始まり、構成(時系列)が異なる。

権太楼さんは今年の夏は暑かったという話題から、6月ごろにお天道さんと会話して「俺も頑張るから、お前も頑張れよ!」と言ったのが悪かったと。なんともユニークなマクラ。そして五千人を前にトリを務めた青空寄席のエピソードへ。「居残り佐平次」は顔の表情の変化が豊かで、緩急の使い分けが鮮明。比較的ゆったりと噺が始まり、会話のリズムが次第に加速してゆくあの快感!名人芸をたっぷり堪能した。

染二さんの描く「貧乏神」は頼りなく、ひょろひょろした印象。

染丸さんの「包丁」は義太夫のお師匠はんの描き方が絶品!男に媚びたりせず、きりりと「個」を確立した女性像がそこにくっきりと浮かび上がった。

大変中身が濃く、大満足の会であった。

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延原武春/大フィルのウィーン古典派シリーズ III

いずみホールへ。

延原武春/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の特別演奏会を聴く。以前の感想は下記。

Nobu

今回のプログラムは

  • ハイドン/交響曲 第45番「告別」
  • モーツァルト/管楽器のための協奏交響曲 K.297b
  • ベートーヴェン/交響曲 第8番

ハイドンは小気味よく、切れのある演奏。最弱音から最強音までのダイナミクスの変化が鮮明。またクラシカル・ティンパニの響きが効果的。第1楽章は嵐の如く、第2楽章には幽(かそけ)き雰囲気があった。終楽章は厳しい表情で始まり、それが突如穏やかなアダージョに。ここで楽員が1人ずつ去ってゆき、最後に2人のヴァイオリンのトップだけが残るという趣向だが(これが「告別」という名の由来となった)、照明が落とされ、各奏者がキャンドル風の灯り(叩くと点く仕組み)を吹き消して去っていったのが印象的だった。

モーツァルトの協奏交響曲は自筆楽譜がないことから長らく「疑義ある作品」とされてきたが、アメリカの2人の研究家がコンピューターを用いた統計学的手法により原曲がモーツァルトの真作であることは間違いない、と結論づけた。しかしオーケストラの譜面は従来のモーツァルトの作風からかけ離れており、「恐らくクラリネットを含む4人のソロのパート譜のみが生き残り、それに対して後世の誰かがオーケストラ・パートを付加したのではないか」と推論している。

ソリストはオーボエ:大森 悠、クラリネット:金井信之、ファゴット:久住雅人、ホルン:村上 哲。全員大フィルの首席奏者である。

オーケストレーションは生彩を欠くが、モーツァルト本人の手によるものではないから仕方ないだろう。しかしソロは生き生きとしており、そこにはアンサンブルの妙、悦楽があった。

休憩を挟みベートーヴェン。プレ・トークで延原さんは、第8交響曲を舞曲として捉えていると語られた。「第1楽章はクーラント、第2はエコセーズ(スコットランド舞曲)、第3はメヌエット、終楽章はブーレ。第7番がバッハの《イギリス組曲》に相当すると見なせば、こちらは《フランス組曲》と言えるでしょう」「第7と比較し8番は小さな作品と捉えられがちですが、そんなことはありません。もっとスケールの大きなものだと考えています」

初演で追加されていたというコントラファゴットも今回使用された(初演に使われたパート譜は失われている)。

第1楽章から強烈なリズム感に満ち、激しい音楽が展開された。第2楽章は鋭く、第3楽章はコントラファゴットの動きが新鮮で弾力ある表現。そして電撃的な第4楽章!このシンフォニーに対する従来のイメージを根底から覆す、究極の名演であった。

是非大フィルには、延原さんとベートーヴェン交響曲全集をレコーディングしてもらいたいと希う。

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2010年12月 4日 (土)

動楽亭昼席 (12/2)

動楽亭へ。

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客は30人強の入り。

  • 桂 小鯛/煮売屋
  • 桂 雀太/池田の猪買い
  • 桂よね吉/狸賽(たぬさい)
  • 桂 雀松/星野屋
  • 桂 宗助/天狗裁き
  • 桂ざこば/高津の富

雀太さんが面白かった。「緊張の緩和」=メリハリがしっかりしており、飄々として豪放磊落。摩訶不思議なマクラ(プリンに醤油をかけるとウニの風味がして、胡瓜に蜂蜜をかけるとメロン味になる)もいいなぁ。

よね吉さんは「せんとくん」と死闘を繰り広げたNHK「ぐるっと関西おひるまえ」のエピソードをマクラに。現在は関西の”ゆるキャラ”を紹介するコーナーがあるそうで、吹田市のイメージキャラクター「すいたん」の話題も。彼の高座は指と手の動きはしなやかで美しい。しかし、三ツ目の位置で前座ネタ「狸賽」だったのは少々ガッカリ。

雀松さんは「星野屋」を得意とされているだけに、軽やか。

宗助さんの演じる町奉行はきりりとしており、天狗は堂々とした威厳があった。

ざこばさんという人は噺の中に、粗暴で無茶なキャラクターが登場すると絶品なのだけれど、「高津の富」はそれほど弾けた人物が出てこないので、今回はわりとおとなし目。

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2010年12月 3日 (金)

これは事件だ!! パーヴォ・ヤルヴィ / ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団のシューマン・プロジェクト

いずみホールへ。

パーヴォ・ヤルヴィ / ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンによるシューマンの交響曲全曲演奏会を聴く。

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プログラムは、第一夜

  • 序曲、スケルツォとフィナーレ
  • 交響曲 第4番
  • 交響曲 第1番「春」

第二夜

  • 「マンフレッド」序曲
  • 交響曲 第2番
  • 交響曲 第3番「ライン」

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編成は50人前後。弦は対向配置。コントラバスは舞台下手(客席から向かって左手)にいた。

彼らがベートーヴェンを演奏する時は(羊腸を素材とする)ガット弦を張りノン・ヴィブラート奏法、そしてクラシカル・ティンパニ及び(ピストンのない)ナチュラル・トランペットを使用する。しかしシューマンの場合はモダン楽器を用い、通常のヴィブラートを掛ける演奏スタイルであった(ただし弦楽奏者は、高いほうの2線でガット弦を用いているそう)。

オーケストラの面々が舞台に登場。彼らが着席するとヤルヴィが颯爽と現れ客席に一礼、振り向きざまタクトが下ろされた。そう、なんとチューニングなしでいきなり演奏が始まったのである!これには度肝を抜かれた。吹奏楽では丸谷明夫/大阪府立淀川工科高等学校(淀工)とか、なにわ《オーケストラル》ウィンズがチューニングをしないことで有名だが、オーケストラでは初体験。

ヤルヴィはアクセントを強調し、動的で勢いのあるシューマンを展開した。小編成の機動力を活かし、疾風怒濤の解釈。胸がすく想いがした。

交響曲 第4番 第3楽章では初めて「ああ、これはダンス・ミュージックなんだ!」と納得出来る、そんな軽やかさがあった。第4楽章はドライブ感が凄かった。

そして流れるような交響曲 第1番「春」。そこには青春の息吹、輝きがあった。このシンフォニーが作曲されたのはシューマンが31歳の時。その前年に彼はクララと結婚し、たった1年間で140曲もの歌曲を生み出していく(その1840年は「歌の年」と呼ばれている)。そういった幸福感がこの交響曲には満ち溢れている。

シューマンの音楽には時折、気まぐれな遊び心が紛れ込み、唐突なフレーズが現れることがある。凡庸な指揮者だとその違和感を軽減しようと粉骨砕身するのだが、ヤルヴィは逆の方法論を採る。むしろ強調するのである。あるインタビューにおける彼の発言を引用してみよう。

ブラームスの態度は、何事においても“モデラート”(節度をもって)です。対してシューマンは、喜び、悲しみ、怒り、すべての感情を露わにし、躁状態と鬱状態の落差もまことに激しい。スキゾフレニック(分裂的)と言ってもよいくらいです。(中略)私たちはその過剰こそをはっきりと示すようにします。そこが魅力なのですから。

パンチの効いた快演だった。

第一夜、プログラムが終了しコンサートマスターが片手を広げ、他の楽員に示す。「えっ、5?」アンコールまず最初はブラームス/ハンガリー舞曲 第5番。ここでクララ・シューマンを愛したブラームスを持ってくるなんて、粋だね!緩急のコントラストが鮮明だった。

アンコール2曲目はシベリウス/悲しきワルツ。ヤルヴィはエストニア生まれ。シベリウスの祖国フィンランドはバルト海を挟んでエストニアの向かいに位置する。つまり両者は「環バルト海」と呼ばれる地域にあたる。そもそもパーヴォ・ヤルヴィという名前はフィンランドの名指揮者パーヴォ・ベルグルンドにちなんで名付けられたもの(父親は有名な指揮者ネーメ・ヤルヴィ)。だからこの曲はヤルヴィの名刺代わりと言えるだろう。繊細な演奏で、特に聴こえるか聴こえないか微妙なくらいの最弱音(ピアニッシモ)の美しさが際立っていた。

第二夜の「マンフレッド」序曲は瑞々しく、激情が迸る。

交響曲 第2番 第2楽章には疾走感があり、第3楽章アダージョ・エスプレシーヴォは透明で硬質な抒情があった。そして第4楽章アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェで音楽は爆発、それまで抑えられていたものが一気に開放される快感があった。

交響曲 第3番「ライン」 第1楽章は弦の切り込みが鋭く、第2楽章はシューマンの移り気、突拍子のなさを前面に押し出す解釈。第4楽章(Feierlich、荘厳に)は弦のノン・ヴィブラートの美しさ。そして第5楽章には生の輝き。アクセル全開で一気にゴールに駆け込んだ終結部が凄かった。

アンコールはブラームス/ハンガリー舞曲 第6番。これも極限までテンポを動かしたスリリングな演奏だった。

コンサートの後はサイン会もあった。ヤルヴィはビール「一番搾り」を片手に、気軽に応じてくれた。気さくな人だ。

ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルはシューマンの演奏史に新しい時代の到来を告げる、画期的解釈を聴かせてくれた。極めて充実した二日間であった。

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