延原武春/大フィルのウィーン古典派シリーズ III
いずみホールへ。
延原武春/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:長原幸太)の特別演奏会を聴く。以前の感想は下記。
今回のプログラムは
- ハイドン/交響曲 第45番「告別」
- モーツァルト/管楽器のための協奏交響曲 K.297b
- ベートーヴェン/交響曲 第8番
ハイドンは小気味よく、切れのある演奏。最弱音から最強音までのダイナミクスの変化が鮮明。またクラシカル・ティンパニの響きが効果的。第1楽章は嵐の如く、第2楽章には幽(かそけ)き雰囲気があった。終楽章は厳しい表情で始まり、それが突如穏やかなアダージョに。ここで楽員が1人ずつ去ってゆき、最後に2人のヴァイオリンのトップだけが残るという趣向だが(これが「告別」という名の由来となった)、照明が落とされ、各奏者がキャンドル風の灯り(叩くと点く仕組み)を吹き消して去っていったのが印象的だった。
モーツァルトの協奏交響曲は自筆楽譜がないことから長らく「疑義ある作品」とされてきたが、アメリカの2人の研究家がコンピューターを用いた統計学的手法により原曲がモーツァルトの真作であることは間違いない、と結論づけた。しかしオーケストラの譜面は従来のモーツァルトの作風からかけ離れており、「恐らくクラリネットを含む4人のソロのパート譜のみが生き残り、それに対して後世の誰かがオーケストラ・パートを付加したのではないか」と推論している。
ソリストはオーボエ:大森 悠、クラリネット:金井信之、ファゴット:久住雅人、ホルン:村上 哲。全員大フィルの首席奏者である。
オーケストレーションは生彩を欠くが、モーツァルト本人の手によるものではないから仕方ないだろう。しかしソロは生き生きとしており、そこにはアンサンブルの妙、悦楽があった。
休憩を挟みベートーヴェン。プレ・トークで延原さんは、第8交響曲を舞曲として捉えていると語られた。「第1楽章はクーラント、第2はエコセーズ(スコットランド舞曲)、第3はメヌエット、終楽章はブーレ。第7番がバッハの《イギリス組曲》に相当すると見なせば、こちらは《フランス組曲》と言えるでしょう」「第7と比較し8番は小さな作品と捉えられがちですが、そんなことはありません。もっとスケールの大きなものだと考えています」
初演で追加されていたというコントラファゴットも今回使用された(初演に使われたパート譜は失われている)。
第1楽章から強烈なリズム感に満ち、激しい音楽が展開された。第2楽章は鋭く、第3楽章はコントラファゴットの動きが新鮮で弾力ある表現。そして電撃的な第4楽章!このシンフォニーに対する従来のイメージを根底から覆す、究極の名演であった。
是非大フィルには、延原さんとベートーヴェン交響曲全集をレコーディングしてもらいたいと希う。
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