2010年 R.シュトラウスの旅〜大植英次/大フィル 定期
ザ・シンフォニーホールへ。
大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団(コンサート・マスター:長原幸太)で、
- R.シュトラウス/交響詩「ドン・キホーテ」
- R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
チェロ独奏:堤 剛、ヴィオラ独奏:小野眞優美
「ドン・ファン」はまことに優雅な演奏。大フィルからこんな音が紡ぎ出されるとは!また堤さんのチェロが雄弁だった。
「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭、宇宙の起源・人類の夜明けを描く場面からオーケストラはよく鳴り、ド迫力。腹にズシンとくるサウンド。「世界の背後を説くものについて」「大いなる憧れについて」ではグレゴリオ聖歌が登場し、ヴァイオリンが美しく歌い上げる。清浄な祈り。そして「快楽と情熱について」で音楽はうねり、次から次へと波濤が押し寄せる。「科学について」「病から回復に向かうもの」は半音階と全音階を組み合わせたフーガが厳めしく錯綜し、「舞踏の歌」では一転、優雅なウィンナ・ワルツとなる。そこには花の香りが漂い、成る程これが後の楽劇「ばらの騎士」に直結しているのだなと感じさた。終曲「さすらい人の夜の歌」は12回鐘の音が鳴り、音楽は静かに、静かに、謎めいた響きを残しながら虚空へ消えてゆく。
指揮者が手を下ろし、それを固唾を飲んで見守っていた聴衆の拍手が鳴り始めるまでの無音が素晴らしかった。
大植&大フィルの蜜月が充実期に入ったことを伺わせる、手応えのある演奏会だった。
余談だが、「ツァラトゥストラはかく語りき」はスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」の冒頭で使用されたことは余りにも有名(試聴はこちら)。実は当初、「欲望という名の電車」「スパルタカス」で知られる作曲家アレックス・ノースが音楽を担当し、一部録音も終わっていた。しかしそれを気に入らなかったキューブリックはノースの音楽を却下、イギリスからアメリカへプレミア上映に向かう船の中で編集作業を行い、既成の音楽に置き換えた。ノースの失われた音楽はこちらで聴くことが出来る。
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コメント
雅哉さん、おはようございます。
>大植&大フィルの蜜月が充実期に入ったことを伺わせる、手応えのある演奏会だった。
同感です。やっと、ここまで戻ってきた、という思いがあります。
来季のプログラムも発表になり、バーンスタインのシンフォニーが入っているのがうれしいと思いました。
投稿: ぐすたふ | 2010年11月13日 (土) 10時19分
ぐすたふさん、コメントありがとうございます。
大植さんがバーンスタインを振る時は、「生誕90年」も「没後20年」も敢えて避けてきました。恐らく佐渡裕さんを強く意識してのことなのでしょうね。
「不安の時代」小曽根さんのソロを含め、とても愉しみです。
投稿: 雅哉 | 2010年11月13日 (土) 19時19分