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2010年11月 2日 (火)

第58回全日本吹奏楽コンクール高校の部を聴いて 2010 《前編》

毎年書いていることだが、アマチュア演奏家の実力を左右するのは次の2点であり、楽器経験年数などは全く関係ないというのが僕の信念である。

  1. 指揮者の指導力
  2. 練習量

つまり、コンクールの演奏に対したとえ悪口を書いたとしても、それはあくまで先生(プロ)に向けた言葉であり、これまで死に物狂いで頑張ってきた生徒さんたち(アマチュア)へのものでは決してない。どんな結果が出たとしても、全ては先生(指導者)の責任である。

F01

さて、東京・普門館で開催される全日本吹奏楽コンクール 高校の部、昨年は波乱の年であった。まず演奏順で朝一番に登場した柏市立柏高等学校(市柏)があり得ないミス・ジャッジで銅賞という辛酸を舐めた。また、埼玉栄高等学校が銀賞という結果も納得出来るものではなかった。

審査員を務めた作曲家の西村朗さんは「どの学校も90~95点の仕上がり。選曲と細部の表現の繊細さが最後の勝負だった」と講評している。つまり選曲で評価が左右されたことを認めているのだ。考えてみればおかしな話である。

しかし今年は市柏も埼玉栄も金賞だったし、昨年のような不可解なジャッジは概ねなかった。審査員に作曲家がいなかったのも(曲の好みに惑わされないという点で)良かったのだろう。東海大附第四や習志野が銀賞だったのも妥当な結果と僕は受け止めた。

それでは感想を恒例に従い北から地区別に書いていこう。

F02

北海道代表 北海道旭川商業高等学校 金賞 / 東海大学付属第四高等学校 銀賞

旭川商業の自由曲はマスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より(宍倉 晃 編)。2年前に埼玉栄が全日本で初演したアレンジ。金賞ではあったが、どうもぼやけた印象で、もう少し軽やかさが欲しいと想った。

東海大附第四課題曲IIはゆっくりめのテンポ。北らしい雄大さはあるが、マーチという事を考えた場合、この悠々自適さは果たしてどうなのだろう?と疑問も感じた。自由曲はハチャトゥリアン/バレエ音楽「ガイーヌ」より。滔々とした大河の流れ。全体に大人しい印象で、アルメニアの民族色とかハチャトゥリアン固有のバーバリズム(野蛮性)が感じられなかった。

 

東北代表 福島県立磐城高等学校 銀賞 / 秋田県立秋田南高等学校 銀賞 / 山形県立山形中央高等学校 銅賞

僕の聴いた印象では今年の磐城は金賞に十分値する演奏だった。課題曲IVから荒ぶる魂が感じられ、激しいマーチ。自由曲C.T.スミス/華麗なる舞曲はパンチが効いており、畳み掛ける迫力、音圧が凄かった。野性味溢れ勢いのある演奏。超難曲だが、目立ったミスもなく、そのド迫力に痺れた。ここは男子生徒が学ランというのもいいね!

秋田南もいい演奏だった。課題曲VはJAZZYな雰囲気が上手く醸し出されていたし、ドラム・ソロが超かっこいい!アンサンブルも揃っていた。自由曲はラヴェル/管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」。編曲は同校出身の作曲家・天野正道さん。このアレンジが見事だった。冒頭、霧の中からウィーンの舞踏会が浮かび上がってくる情景が鮮やかに描かれ、優雅なワルツに聴き惚れた。

山形中央課題曲IIはリズムが少々重たかったかな?自由曲のR.シュトラウス/アルプス交響曲はアインザッツの不揃いが気になった。

 

北陸代表 石川県立小松明峰高等学校 銀賞 / 富山県立高岡商業高等学校 銅賞

小松名峰はそつがない演奏。自由曲はシュミット/「ディオニソスの祭り」。例えば、強烈なアクセントとか、もう少し何か(something)が足りないと想った。

高岡商業課題曲IIはよく揃い、歯切れがいい。自由曲はヤナーチェク/シンフォニエッタより。これはメリハリが乏しく、金管のファンファーレが雑に聴こえた。ただ、フルート・ソロの超絶技巧が見事だった。

 

東関東代表 柏市立柏高等学校 金賞 / 常総学院高等学校 金賞 / 習志野市立習志野高等学校 銀賞

市柏(いちかし)の課題曲IVは切れがあり、強弱のコントラストがお見事。高揚感に溢れた演奏だった。石田修一先生は今年も新曲に果敢に挑戦。自由曲は長生淳/トリトン・デュアリティ。美しく叙情的な旋律から始まる。海のうねりが感じられ、やがて戦闘シーンのような音楽へ。ここで金管の咆哮が凄かった。文句なしの

常総学院課題曲Vは音のバランスやフレーズの息遣いが繊細にコントロールされていた。自由曲リスト/バッハの名による幻想曲とフーガ(田村文生 編)は精緻な演奏。

習志野は柔らかい音でよく溶け合う。強弱もよくついていた。ただ例年と比較すると「おや?これがあの習志野のサウンド??」という違和感を覚えたのも確か。金賞を意識して守りに入ったのか、伸びやかさに欠ける印象を受けた。また過去5回連続で指揮者の石津谷先生自ら自由曲の編曲をされて来たが、ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」よりは既成のアレンジ。これも引っかかった。本来の習志野らしさが希薄だった。石津谷先生、また全日本マーチングコンテストの方を期待しています!

 

東京代表 東海大学付属高輪台高等学校 金賞 / 東京都立片倉高等学校 金賞

高輪台は赤いブレザーが印象的。ここは以前、些か荒っぽい所があるが勢いのある演奏が特徴だと想っていたのだが、今回はむしろ丁寧で細やかな表情に気を使ったものに変化しているように感じられた。畠田貴生先生の心境の変化だろうか?昨年は東京都大会でまさかのダメ金に泣いたが、今年は見事に返り咲き。しかも自由曲にヴァン=デル=ロースト/交響詩「モンタニャールの詩」を持ってきた。全国大会、なんと初登場である!このチャレンジ精神に敬意を表したい。冒頭のウィンドマシーンに風を感じ、リコーダー四重奏(木管奏者持ち替え)の素朴な美しさに鳥肌が立った。コラールの響きがしみじみと胸に滲み、心打たれる名演だった。もう、聴いているうちに「コンクールの審査なんかどうでもいい!目の前にこれだけの感動的な音楽がある。それだけで十分だ」と想った。心から「ありがとう」と言いたい。

片倉の課題曲Vは鉄壁のアンサンブル。先鋭な演奏で文句なし。ドラム・ソロも素晴らしかった。自由曲ラヴェル/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲よりは繊細な出だしでチェレスタがいい(甘粕宏和 編)。微睡(まどろ)み、夢見るような情景が巧みに醸し出され、洗練された響きがあった。また”全員の踊り”では弾ける感じで熱狂的に終わった。これぞ王者の風格。

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審査結果発表の際、2階席後方に東海大附高輪台の生徒たちが横一列にずらりと立って並んでいた。そして彼らの歓喜の瞬間をテレビ・カメラがしっかり捉えた。日テレ「笑ってコラえて!」吹奏楽の旅 2時間スペシャルは11月3日(水)に放送される。お見逃しなく。

《後編》に続く。

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コメント

TV見て、とても感動しました。

投稿: | 2010年11月 3日 (水) 21時44分

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