シューマン 2010/河村尚子 ピアノ・リサイタル
いずみホールへ。
河村尚子は兵庫県西宮市生まれ。5歳の時に父親の仕事の関係でドイツのデュッセルドルフに移り住み、現在もドイツに拠点を置き活躍中。時折日本に帰国するというスタイルを取っている。
- メンデルスゾーン/厳格なる変奏曲
- シューマン/クライスレリアーナ
- シューマン/アベッグ変奏曲
- シューマン/フモレスケ
彼女のピアニズムの特徴はペダルを踏む回数が少なく、余分な感傷を排しているところにある。
メンデルスゾーンは厳かな曲で、力強い。バッハのコラールやフーガを意識して作曲されていると感じられた(彼は100年ぶりに「マタイ受難曲」を蘇演している)。その特徴は河村さんの資質によく似合う。
「クライスレリアーナ」は正確無比な表現力で感情に流されず、指が走らない。硬質な抒情があった。
「アベッグ変奏曲」は20歳の作品。なんと作品番号1!シューマンは医学生の友人アウグスト・アベッグを「A-B-E-G-G」という音名に置き換え、これを主題としたピアノ作品を書いた。カチッとした演奏で音の粒が揃っている。
「フモレスケ」は河村さんがクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝した時に弾いた曲だそう。その演奏が余りにも美しく、審査員たちが次々に涙を流したという逸話が残されている。
キリリとして高潔、そして清楚。あくまで楽譜に忠実、禁欲的ですらある。僕は澄み切った空気を体全体に感じた。これぞ正しく十八番!絶品。
「トロイメライ」は一音一音が研ぎ澄まされている。音量は絶妙にコントロールされ、無限のニュアンスがあった。
ショパンは抑制された抒情があり、魂の震えがあった。まるで綱渡りをしているようなバランス感覚。
河村尚子、恐るべき逸材である。僕が今まで聴いた日本人ピアニストの中で間違いなくNO.1。早速、来年4月14日(木)にザ・フェニックスホールで開催される彼女のリサイタルのチケットを抑えた。
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コメント
はじめまして。私もその日、いずみホールに行ってました。
河村尚子さんの演奏、素晴らしかったですね。同じように感じてらっしゃる方がいらして、なんだかうれしくてコメントさせていただきました。
投稿: かくれ里からおせっかい | 2010年11月13日 (土) 23時40分
コメントありがとうございます。
この翌日、早速ザ・フェニックスホールに河村さんのリサイタルを申し込むため電話を掛けたら、「昨日の反響が凄くて、問い合わせが殺到しています」とオペレーターの女性が教えてくれました。
投稿: 雅哉 | 2010年11月14日 (日) 00時25分