亜門版「ファンタスティックス」2010
シアタードラマシティへ。
宮本亜門が演出するミュージカル「ファンタスティックス」を観劇。ブロードウェイでこの作品を見逃してしまった痛恨の出来事や、日本での出会いについては下記記事に詳しく書いた。
僕はこの亜門版を2003年の初演、05年の再演と観ているが、観れば観るほど味わいが増し、感動が深化するスルメのような作品。もしかしたら現時点で一番好きなミュージカルかも知れない。結局、大掛かりなバリケード(レ・ミゼラブル)とか、天井から巨大なヘリコプターが下りてくる仕掛け(ミス・サイゴン)、豪華なシャンデリア(オペラ座の怪人)なんて必要ないんだ。シンプルな物語と、素敵な楽曲さえあればいい。
菱形の舞台があり、美術装置は何もない。それを客席(ステージシート)が取り囲む。やがて8人の役者たちが登場し、2つの箱を置き、そこから色々と小道具を取り出す。オーケストラピットは4人で演奏(エレクトーン2台、ピアノ、パーカッション→写真はこちら)。たったそれだけの空間に虹のように七色の照明が当てられると、そこに魔法が生まれ、イマジネーションの世界が無限に広がってゆく。
物語の主人公は家が隣同士の青年(マット)と少女(ルイザ)。大人に憧れ、ちょっと背伸びしたくなる年頃。しかし彼らを結び付けようとする父親たちの浅はかな計画にむきになって怒り、反発した青年は未知なる世界へ飛び出してゆく。やがて現実を知った彼は傷つき、心が折れて帰郷する。再会した二人は初めて本当の幸せとは何かに気付く。そして「トライ・トゥ・リメンバー」の美しい旋律が劇場を優しく包み、観客の魂を浄化する。
なんて清々しく、愛すべき作品だろう!心打たれる名作である。
亜門版の初演でエル・ガヨ(ナレーター)を演じたのは山路和弘。マット:井上芳雄、ルイザ:高塚恵理子で、05年の再演ではルイザが大和田美帆に代わった。
そして2010年版はエル・ガヨが鹿賀丈史、マット役をテノール歌手・田代万里生(「マルグリット」でミュージカル・デビュー) 、ルイザは神田沙也加が演じた。特に若い二人が新鮮でよかった。歴代のベスト・キャストじゃないかな。田代くんは兎に角、イケメンだし歌唱力がある。同じく東京芸大声楽科を卒業した人気のミュージカル・スターといえば石丸幹二や井上芳雄が思い出されるが、彼らは声量がなく、線が細いので僕は余り好きではない。その点、田代くんの歌声は文句の付けようがない。神田沙也加は彼女のデビュー作「INTO THE WOODS」(宮本亜門 演出)を観ているし先日の「ピーターパン」も観劇したが、今回のルイザが一番のはまり役だと想った。音程は些か怪しく、声も出ていない。でも台詞は上手いし、とにかく可愛い!もうそれだけで他の全てを大目に見ようという気になってしまう。さすが一度は映画「ドラゴンヘッド」で主役を張っただけのことはある(相手役は妻夫木聡)。それから彼女は金髪がよく似合う。
「可愛いことは正義である」という真実を痛感した夜だった。
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