劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」
四季劇場[秋]へ。
平日夜の部。2階は先生に引率された高校生の団体が入っていたが、1階席の入りは3割くらい。
「サウンド・オブ・ミュージック」を観劇しながら今までどれくらいこのミュージカルを愛してきたか、その想い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡った。
僕が映画「サウンド・オブ・ミュージック」を初めて観たのが中学校1年生の時。それは文化祭の8mm上映で、しかも30分たらずのダイジェスト版だった。まだビデオデッキが一般に普及していない時代の話である。どうしても全編が観たいという想いが膨らんだ。
中学3年の頃、地元岡山大学の映画研究会が土曜夜に一晩映画館を貸し切って映画4本をオールナイト上映するというイベントがあり、そのトップバッターが「サウンド・オブ・ミュージック」だった。僕は父親に頼んでそれに連れて行ってもらった(勿論、1本だけ観て帰った)。深く感銘を受け、決意した「よし、将来この映画がロケされたオーストリアのザルツブルクに行くぞ!」と。
高校生の頃はサントラLPレコード(CDは未だなかった!)を繰り返し聴き、歌詞対訳を見ながら「ドレミの歌」「エーデルワイス」「全ての山へ登れ」等のナンバーを英語で暗記した(今でも歌える)。
大学に合格した僕は、そのお祝いとしてレーザーディスクを買ってもらった。最初に購入したソフトが「風と共に去りぬ」と「時をかける少女(大林宣彦 監督)」、そして「サウンド・オブ・ミュージック」である(その後ワイドスクリーン版を買い直し、現在はDVDを所有)。
大学の卒業旅行で念願のザルツブルクへと行くことが叶い、漸く少年の日の約束を果たすことが出来た。現地では「ドレミの歌」の場面で登場するミラベル公園を歩き、「サウンド・オブ・ミュージック」半日バス・ツアーで結婚式のシーンが撮影された郊外の教会も訪れた。満席のバス・ツアーで日本人は僕ただ一人だった!そうそう、「私のお気に入り」の歌詞に出てくるシュニッツェル(子牛のカツレツ)も現地で食べた。
さて、舞台版を観るのは今回初めてだった。愉しみにしていたのは、映画化にあたりカットされた2つのナンバーがどういった状況で歌われるのかを確認することだった。
第一幕、エルザとマックスの歌"How Can Love Survive"そして第二幕、エルザ、マックス、そし大佐の3重唱"No Way to Stop It"である。
しかし、な、なんと、あろうことか劇団四季バージョンでもこの2曲はカットされていた!ロイド=ウェバーがプロデュースしたロンドンのプロダクションではちゃんと歌われたようだ。
日本の法律では、児童が午後9時以降、舞台に立つことは禁じられている。ソワレ(夜の部)の開演は午後6時半。ちょうどカーテンコールの時に9時を廻った。
つまり、カットしなければ子供たちが最後まで出られなくなる。しかし集客を考えれば開演時間を早めることも難しい。そういう事情での、やむを得ぬ措置なのであろう。とても残念だ。
それにしても驚いたのは映画との違いである。舞台版では冒頭修道院の場面でいきなり「私のお気に入り」が歌われる(マリア、修道院長)。マリアがトラップ大佐の家に到着し、子供たちと対面した場面で「ドレミの歌」が歌われたのにも面食らった。また映画版で「私のお気に入り」が登場する嵐の場面において代わりに歌われるのが「ひとりぼっちの羊飼い」。僕は断然映画の順番の方がいいと思った。脚色したアーネスト・レーマンの偉大さを改めて認識した次第である。舞踏会の夜にマリアが一旦トラップ家から逃げ出す経緯も、舞台と映画では異なっている。
マリア:井上智恵、トラップ大佐:村 俊英という組み合わせは、僕が10年前に名古屋ミュージカル劇場で観た「オペラ座の怪人」(クリスティーヌ、ファントム)と同じだった。
井上さんの伸びやかな歌声は昔から好きなので不満なし。村さんは歌は上手いが、演技が硬いかな。7人の子供たちはなかなか好演。
ただ、大人の役者たちによる独特の「四季喋り」(母音法)が不自然で耳障りだった(確かに台詞は聞き取り易いが)。むしろ子供たちの方が、癖がなく素直な発声で良かった。また「さようなら、ごきげんよう」(SO LONG,FAREWELL.)の振付が素晴らしく、彼らが可愛らしかった。
カラオケ上演の大阪四季劇場とは違い、生オーケストラが演奏。但し、弦楽器の各パートは一人ずつなので音がペラペラ。もう少しここに予算を費やして欲しいところである。
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