東野圭吾(著)「新参者」
「容疑者Xの献身」で直木賞を受賞した東野圭吾の「新参者」を読了。この小説は雑誌「このミステリーがすごい!2010年版」で国内第1位となった。(刑事)加賀恭一郎シリーズのひとつである。
僕は以前、東野の最高作は「白夜行」(「このミス」第2位)であると書いた。
今回の新作はその「白夜行」に決して引けを取らない傑作であると断言しよう。
舞台となるのは東京の下町。まだ人情に厚い市井の人々が生活している。ミステリー好きの方はここまで書けばピンと来るだろうが、すなわち宮部みゆきが最も得意とするテリトリーである。
連作短編形式で、それぞれ異なる人々にスポットが当てられる。そして彼らから見た「新参者」=警部補・加賀恭一郎が語られてゆく。主人公を外側から客観的に語らせる手法はまさに「白夜行」のそれである。
骨格となる殺人事件はあるが、各々の短編では「日常の謎」がひとつひとつ加賀の手で鮮やかに解明されてゆく。ミステリーのジャンルとしては北村薫の世界(「空飛ぶ馬」など”円紫師匠とわたし”シリーズ)に挑戦した形だ。
つまりこの小説を一言で表現するならば東野圭吾+宮部みゆき+北村薫の融合である。
何という手だれ、卓越した技巧であろうか!ベテラン作家・東野圭吾の筆力につくづく感服した次第である。
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