生誕200年 ツィメルマン&ハーゲン弦楽四重奏団のシューマン
いずみホールへ。「シューマン2010」のシリーズ第1回を聴く。
クリスチャン・ツィメルマン(ピアノ)、ハーゲン弦楽四重奏団の演奏で、
- バツェヴィッチ/ピアノ五重奏 第1番
- ヤナーチェク/弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」
- シューマン/ピアノ五重奏曲
グラジナ・バツェヴィチ(1909-1969)はポーランドの女性作曲家。プログラムの田村 進さん(東京音楽大学名誉教授)による曲目解説には、「新古典主義の手法で貫かれている」と書かれているが、全然そんな風には聴こえなかった。むしろ後のポーランドの作曲家ヘンリク・グレツキ(1933- )に近い響きを感じた。
なお、ツィメルマンもポーランド出身。18歳の時ショパン国際ピアノコンクールに史上最年少で優勝している。
実演を聴くのは今回初めてだったのだが、彼が弾き始めてもなかなかその特徴を掴むことが出来なかった。タッチが歯切れよいわけではない。ポリーニやアムランのように無機質で研ぎ澄まされた、純度の高い音がするのでもない。逆に、アルゲリッチみたいに火の玉の如く熱い演奏が展開されるわけでもない。
この得体の知れなさは一体何なんだ?僕は戸惑った。そして次第に見えてきたのは、この人はペダルを細かく多用するピアニストなのだということ。タッチは丁寧で、響きは柔らかくまろやか。芳醇な味わいがある。
一方、ハーゲン弦楽四重奏団は「クロイツェル・ソナタ」で激しく、ほの暗い情念を感じさせる作品世界へと聴衆を導いた。切れ味鋭く、時に昂ぶり、神経を逆なでするような音色を奏で、狂気の世界へと突き進んでいく。凄みのある演奏だった。
そしてシューマンのピアノ五重奏へ。控えめで、調和を大切にするツィメルマン。自己主張はあるが、しっかり息が合っているハーゲンの面々。絶妙なアンサンブルであった。
多分この曲を、これ以上のレベルで聴ける機会はもう一生ないだろうと感じた夜だった。
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