井上道義/オーケストラ・アンサンブル金沢 大阪定期
ザ・シンフォニーホールへ。
井上道義/オーケストラ・アンサンブル金沢の演奏で、
- メンデルスゾーン/弦楽のための交響曲 第10番
- ラヴェル/ピアノ協奏曲
- 武満徹/3つの映画音楽
訓練と休憩の音楽~「ホゼ・トーレス」より
葬送の音楽~「黒い雨」より
ワルツ~「他人の顔」より - モーツァルト/交響曲 第39番
1曲目と3曲目が弦楽合奏のみ。メンデルスゾーンは14歳の作品で、序奏付きの単一楽章。短調で美しい楽想。上昇音階がモーツァルトを彷彿とさせる。瑞々しい演奏だった。
ラヴェルのピアノ独奏は菊池洋子さん。軽やかなタッチで曖昧さは皆無、一音一音が立っている。
ラヴェルの母親はバスク人であった。バスク地方とはフランスとスペインの国境付近を指し、ラヴェル自身もスペイン国境に近いシブール村に生まれている。だから彼の作品はスペイン音楽への憧れが強く、その特徴はこのコンチェルトの第1楽章にも如実に表れている。
また1920年代後半にガーシュウィンとの出会いがあり、JAZZの洗礼を受けたことも見逃せない。ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」初演が1924年であり、ラヴェルのピアノ協奏曲は1931年に完成している。その歴史的背景を踏まえれば、第1楽章がスペイン音楽とJAZZの融合であることが理解できるだろう。「のだめカンタービレ」にも登場する、まことに愉しい音楽である。また、第3楽章には「ゴジラ」のテーマ(伊福部昭 作曲)とそっくりのフレーズが出てくるのも面白い。
武満の「ホゼ・トーレス」はJAZZの手法が用いられ、「他人の顔」ワルツはシャンソンなので、ラヴェルとの関連性があって巧みなプログラム構成。「他人の顔」は糸が絡みつくような粘っこい解釈で、まるで大植英次/大フィルのマーラー5番を聴いているみたいな既視感(デジャヴ)があった。
モーツァルトはバロック・ティンパニを使用(元・読売日本交響楽団の菅原 淳さんが担当)、弦は対向配置でヴィブラートを抑制したピリオド・アプローチ。速めのテンポで句読点がくっきりし、颯爽とした生気溢れる演奏。
アンコールは、
- グリュンフェルト/オペレッタ「こうもり」によるパラフレーズ(菊池)
- モーツァルト/行進曲 ニ長調 K.215(井上/OEK)
- 鈴木行一(編曲)「六甲おろし」(井上/OEK)
六甲おろしの編曲が凝っていた。客席も手拍子でノリノリ。実に愉快なコンサートだった。
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