静と動~佐渡裕/PACの武満&ホルスト
兵庫県立芸術文化センターへ。
佐渡 裕/兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)定期演奏会を聴く。
- 武満徹/From Me Flows What You Call Time
~5人の打楽器奏者とオーケストラのための - ホルスト/組曲「惑星」
武満の「フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム」はニューヨークのカーネギー・ホール100周年記念として委嘱されたもの。この曲は佐渡さんが来年、ベルリン・フィル定期でも指揮する予定。1990年の初演者でもある打楽器アンサンブル「ネクサス」が来日し、PACオケと共演した。
佐渡さんのプレトークがあったが、それによるとMeとは「劇場」のことだそう。つまりタイトルは「劇場から”時間”と呼ばれるものが流れ出す」という意味になる。兵庫芸文5周年のシーズン幕開けに相応しい作品と言えるだろう。
曲のモティーフは完全5度の範囲にある5つの音。チベットの遊牧民による占い(風の馬)で掲げられる5色の旗から発案されている。それぞれの色は次のものを象徴している。
青=水、赤=火、黄=大地、緑=風、白=それらを統合する空・空気・エーテル・無
序奏が終わると「ネクサス」の5人が手に持った鉦を鳴らしながら1階客席後方より登場、通路を歩いてそのままステージへ。各々上述した5つの色の衣装を身に着けている。
また3階席後方両サイドに沢山のベルが設置され、それが青・赤・黄・緑・白のリボンでステージまで結ばれており、奏者がそのリボンを引っ張って鳴らす場面もあった。
その独特なサラウンド音響は劇場の空間ならではで、生演奏の醍醐味を堪能した。これは家庭のステレオ装置では再現不可能であろう。
武満の音楽は美しく静謐。音符の行間=無音までも愉しめるよう設計されている。やはりこういう発想こそが日本人ならではと言えるだろう。
素晴らしい演奏だった。こういう滅多に聴けない作品を取り上げてくれるから佐渡/PACはありがたい。この点では大植/大フィルも見習って欲しいものだ。
一方、「惑星」は佐渡さんらしく大雑把で、凡庸なリズム感のオーソドックスな演奏。ただフル・オーケストラが鳴らす大音量はド迫力であった。武満の静からホルストの動へ。その対比が鮮やか。
新しいシーズンが始まり、メンバーの入れ替わりもあったので、名刺代わりにアンコールあり。
- ホルスト/吹奏楽のための第2組曲より 第1楽章(管・打楽器のみ)
- ホルスト/セントポール組曲より 第1楽章(弦楽器のみ)
これが生き生きした演奏で、とても良かった。
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