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2010年9月

児玉宏/大阪交響楽団 ~英雄たちの軌跡~

ザ・シンフォニーホールへ。

児玉 宏/大阪交響楽団の定期演奏会を聴く。

Osaka

  • ビゼー/歌劇「カルメン」より
  • プッチーニ/歌劇「蝶々夫人」より
  • R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」

ソプラノ独唱は佐藤しのぶ

カルメン」はまず《前奏曲》から躍動する音楽、引き締まったリズムに魅了される。四半世紀以上に渡りドイツの歌劇場で叩き上げてきた児玉さんの独壇場である。そして真紅のロングドレスを身に纏った佐藤さんが登場して《ハバネラ》を歌い、《第2幕への間奏曲》《ジプシー(ロマ)の歌》へと続く。オーケストラは歯切れ良くソリストに寄り添い、そして弾ける。鮮烈なカルメンであった。

蝶々夫人」では一転、カンタービレをたっぷりと聴かせ、児玉さんの魔法のタクトから雄弁でドラマティックな音楽が紡ぎ出される。プッチーニの原曲に手を加えないまま編纂したダイジェスト・バージョンで《蝶々さんの登場》《愛の二重唱》《ある晴れた日に》《アブラハム・リンカーン号の帰還》《ハミング・コーラス》《愛の家よ、さよなら》《かわいい坊や》などが演奏された。佐藤さんは今度は無垢な純白のドレス姿で2曲を歌った。

プログラム後半の「英雄の生涯」には内側から沸き起こる、マグマのような熱気があった。冒頭の《英雄のテーマ》からホルンと中低弦が力強く旋律を奏で、木管主体の《英雄の敵》には鋭さがあった。いくら大音量になろうと各声部は明快に鳴り渡り、曖昧さは皆無。くっきりとしたリズムを刻みながらもその音楽には柔軟性があり、指揮者 対 オーケストラの丁々発止のやり取りがスリリングであった。

日本のカルロス・クライバー=児玉 宏。その巧みな手綱さばき、オーケストラ・コントロール術、そして天才的なひらめきと感性。改めて感服すると共に、大阪でその演奏が聴けることの至福を噛み締めた。

次回は10月7日(木)、児玉さんの十八番・ブルックナーだ!詳細はこちら

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スティーグ・ラーソン(著)「ミレニアム 《1》 ドラゴン・タトゥーの女」

世界的大ベストセラーとなった「ミレニアム」三部作の第一巻「ドラゴン・タトゥーの女」を読了。スウェーデン発のミステリー小説というのも珍しい。

謎が魅力的だし、最後の意外な展開にはドキドキ、ワクワクした。スケールも大きい。充実した満足感があった。

ちなみに日本では「このミステリーがすごい!2010年版」読書のプロが選ぶベストテンで「ドラゴン・タトゥーの女」が第2位、「ミレニアム2 火と戯れる女」が第9位、「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」が10位と、3冊全てがランクインするという快挙を成し遂げた。

作者のスティーグ・ラーソンは「ミレニアム」出版前に50歳という若さで亡くなった。どうしてこんな早死にしたんだろうと調べてみたら、死因は心筋梗塞で、彼は日にタバコを60本吸うヘビースモカーだったそうである。そして生前、口にするものといえばピザにケンタッキーフライドチキンにコーヒーだったとか。なるほど。

「ミレニアム」三部作は母国スウェーデンで映画化され、今年日本でも公開された。ハリウッド・リメイク版も既に撮影が開始されている。監督は「セブン」「ゾディアック」「ベンジャミン・バトン」のデヴィッド・フィンチャーなので、大いに期待出来る。ジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィスト役は007シリーズでお馴染みのダニエル・クレイグ。肝心のヒロイン「ドラゴン・タトゥーの女」を演じるのは→この人。いいんじゃない?

さっ、続きの「火と戯れる女」を読もっと!

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大阪市音楽団/第2回 さわやかウインド・コンサート

大阪市鶴見区民センターへ。

Sawayaka

司会は落語家の笑福亭岐代松さん(今回はスーツ姿)。中学校は水泳部だったが、大阪府立淀川工業(現在は工科)高等学校の3年間は吹奏楽部に所属されていたそう。現在は噺家ロックバンド「ヒロポンズ・ハイ」のドラマーもされている。その写真は→こちら岐代松さんが現役の1970年代後半、既に丸谷明夫先生率いる淀工は毎年吹奏楽コンクール全国大会に進出していたが、まだ銀賞や銅賞の時代だった。淀工が破竹の金賞連覇を勝ち取るようになるのは1980年(自由曲「大阪俗謡による幻想曲」)以降のことである。

まず鶴見区内中学校5校の有志で結成された花博20周年記念フェスティバルバンド(指揮:吉田行地)の演奏で、

  • スーザ/行進曲「美中の美」
  • 久石譲(作)後藤洋(編)/となりのトトロ
    ~コンサート・バンドのためのセレクション~

スーザははきはきと元気な演奏。

「トゥーランドット」のアレンジで一世風靡した後藤さん。トトロの編曲は中学生でも吹ける易しい譜面でありながら、洗練され楽しいものに仕上がっている。特に”風の通り道”から”ねこバス”に移行するところが巧みで、”ねこバス”のJAZZYな雰囲気に後藤さんのセンスが光る。

出演した中学生計53名のうち男子は3人。「となりのトトロ」が公開されたのは1988年だが、クラリネットの女の子1人を除き、全員が映画を観たことがあるとのことだった。

続いて吉田行地/大阪市音楽団の演奏で、

  • ギリングハム/ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス
  • スパーク/ハーレクィン(ユーフォニアム独奏:池田勇人)
  • チャイコフスキー(作)木村吉宏(編)/序曲「1812」
  • オットー・M . シュワルツ/80日間世界一周
  • ボック(作)後藤洋(編)/「屋根の上のヴァイオリン弾き」メドレー
  • モリコーネ(作)ロングフィールド(編)/映画「ミッション」より
     ”ガブリエルのオーボエ”
    (オーボエ独奏:福田 淳)
  • J.ウィリアムズ(作)ラヴェンダー(編)/映画「ジュラシック・パーク」サウンドトラック・ハイライト
  • スーザ/星条旗よ永遠なれ(アンコール)

ギリングハムは打楽器が大活躍して見ていて面白い。華やかなファンファーレ、そして引用される古いスペインの聖歌"Come, Christians, Join to Sing"の旋律が真に美しい。

「オリエント急行」「宇宙の音楽」で有名なイギリスの作曲家スパーク。「ハーレクィン」を今回聴きながら感じたのは、彼は稀代のメロディ・メーカーだなということ。前半のゆったりしたバラードは哀愁を感じさせ、後半のおどけた仮面劇はユーモラス。曲調は「ホラ・スタッカート」を彷彿とさせるロマの音楽。

そして重厚な「1812年」。岐代松さんは淀工時代に同じ編曲でこれを演奏されたことがあるそう。

80日間世界一周」は有名なヴィクター・ヤングによる映画音楽ではなく、2008年に作曲された吹奏楽オリジナル作品。ロンドンの時計塔「ビッグベン」→フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」→アラビア風旋律→象の鳴き声とボンゴのリズム→エキゾチックなムード→「ニューヨーク・ニューヨーク」のテーマなどが次々に登場し、音楽で世界一周を体感。

名曲「ガブリエルのオーボエ」は歌心に満ち、雄弁に語りかけてくる福田さんの演奏が素晴らしい。

「ジュラシップ・パーク」はラプトルの不気味なモチーフから始まり、”ジュラシック・パーク視察旅行” を経て、勇壮で金管が輝かしいメイン・テーマへと続く。 そして穏やかなラスト・シーンの後は再びメイン・テーマが登場し、格好いい市音の演奏で締めくくられた。この編曲も良かったなぁ。

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北村英治 at ロイヤルホース 2010

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大阪・梅田のロイヤルホースへ。

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JAZZクラリネットの第一人者、北村英治さんのライヴを聴く。

北村さん以外にビアノ、ドラム、ベースという編成のカルテット。

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第1ステージ(19:00-20:00)

  • Rose Room
  • 忘れがたきニューオリンズ
    (Do You Know What It Means to Miss New Orleans?)
  • 恋人よ我に帰れ
  • Someday Sweetheart
  • Misty
  • A列車で行こう

第2ステージ(20:30-21:30)

  • アヴァロン(Avalon)
  • 虹の彼方に
  • 星影のステラ
  • ビギン・ザ・ビギン
  • バードランドの子守唄
  • For Eiji(クラリネット奏者バディ・デフランコが北村さんのために書いた曲)
  • Memories of You
  • Sing,Sing,Sing

第3ステージ(22:00-23:00)

  • Smiles
  • 身も心も
  • 黒いオルフェ
  • 小さな花(Sop Sax奏者シドニー・ベッシェ 作曲)
  • ディア シドニー(ボブ・ウィルバーがベッシェに捧げた)
  • チェロキー
  • スターダスト
  • 世界は日の出を待っている

ボサノヴァ調で耳に心地よい「For Eiji」や「黒いオルフェ」、そして「チェロキー」の疾走感。クラリネットの柔らかい音色、豊かな低音部に魅了された。

北村英治さん、御年81歳。足取りも確かで、まだまだお元気。抜群のスウィング感で速いパッセージも軽々と吹きこなす。

食事と酒を愉しみながら、計3時間のライヴを堪能した。

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あやめ 遊方 2人会 ~今宵、カキイロの月の下で~ /玉造・猫間川寄席

9月20日(月)繁昌亭へ。

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  • あやめ、遊方/ご挨拶
  • 月亭遊方/ハードボイルド・サザエさん
  • 桂あやめ/居酒屋1969
  • 桂あやめ/シックス・アンドウジシティ(ヰタタ…セクスアリス)
  • 月亭遊方/ラジオドリームで恋をして

全て自作のネタ。

ふたりが「ペーパー・ムーン」の出囃子で登場。この落語会は《夜》《R-18指定》がテーマであると。

そして数日前にあやめさんと遊方さんがデジタル・カメラで撮ったオープニング映像(染雀さん編集)が流れる。

一旦引っ込み、「Mr.ムーンライト」の出囃子で遊方さん登場。座布団なしで、立ったままアイロン台をカウンターに見立てて「ハードボイルド・サザエさん」。関西弁ではなく、標準語で喋る遊方さんに少々違和感あり。成人したカツオと、サザエさん一家の物語。発想は面白い。

続いてあやめさん、東京のお笑い芸人と違って、関西人は最後に必ず落ちをつけるということに関して、それは「言葉の供養」であると。上手いこと言うなぁ。

居酒屋1969」は1970年の歌や番組は決して認めず、あくまで60年代にこだわる居酒屋のおやじが愛しくて可笑しい。

先日、創作落語の会でお披露目した「シックス・アンドウジシティ」は1996年に創った「ヰタタ…セクスアリス」の改訂版だそう。これは小さな椅子に座って、喫茶店でのガールズ・トーク(登場人物4人)が展開される。前回より内容が膨らみ、より過激に。良かった!

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9月22日(水)は第57回 猫間川寄席(玉造・さんくすホール)へ。

  • 笑福亭呂竹/相撲場風景
  • 桂 宗助/次の御用日
  • 桂 文我/裏の松風
  • 桂 団朝/秘伝書
  • 桂 文我/とろろん

今年で5年目の猫間川寄席、ネタの重複なしで250席に達したという。文我さんによると「東西の落語を合わせると500くらい噺があるので、まだまだ大丈夫」とのこと。

けったいなネタをされることの多い文我さん、だれも演じ手がないものは速記本を手掛かりに発掘しておられるそう。鈴鹿在住の芸能史研究家・前田憲司さんの力を借りることもあるというお話があった。

とろろん」の舞台となるのは静岡・丸子(まりこ、鞠子とも書く)の宿。喜六・清八の旅もので、大変珍しい噺。

宗助さんは甲高い声の「アッ!」が愉しい。また登場する丁稚の可愛らしいこと。

こういう落語会も貴重であり、ありがたい。

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井上道義/オーケストラ・アンサンブル金沢 大阪定期

ザ・シンフォニーホールへ。

Inoue

井上道義/オーケストラ・アンサンブル金沢の演奏で、

  • メンデルスゾーン/弦楽のための交響曲 第10番
  • ラヴェル/ピアノ協奏曲
  • 武満徹/3つの映画音楽
     訓練と休憩の音楽~「ホゼ・トーレス」より
     葬送の音楽~「黒い雨」より
     ワルツ~「他人の顔」より
  • モーツァルト/交響曲 第39番

1曲目と3曲目が弦楽合奏のみ。メンデルスゾーンは14歳の作品で、序奏付きの単一楽章。短調で美しい楽想。上昇音階がモーツァルトを彷彿とさせる。瑞々しい演奏だった。

ラヴェルのピアノ独奏は菊池洋子さん。軽やかなタッチで曖昧さは皆無、一音一音が立っている。

ラヴェルの母親はバスク人であった。バスク地方とはフランスとスペインの国境付近を指し、ラヴェル自身もスペイン国境に近いシブール村に生まれている。だから彼の作品はスペイン音楽への憧れが強く、その特徴はこのコンチェルトの第1楽章にも如実に表れている。

また1920年代後半にガーシュウィンとの出会いがあり、JAZZの洗礼を受けたことも見逃せない。ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」初演が1924年であり、ラヴェルのピアノ協奏曲は1931年に完成している。その歴史的背景を踏まえれば、第1楽章がスペイン音楽とJAZZの融合であることが理解できるだろう。「のだめカンタービレ」にも登場する、まことに愉しい音楽である。また、第3楽章には「ゴジラ」のテーマ(伊福部昭 作曲)とそっくりのフレーズが出てくるのも面白い。

武満の「ホゼ・トーレス」はJAZZの手法が用いられ、「他人の顔」ワルツはシャンソンなので、ラヴェルとの関連性があって巧みなプログラム構成。「他人の顔」は糸が絡みつくような粘っこい解釈で、まるで大植英次/大フィルのマーラー5番を聴いているみたいな既視感(デジャヴ)があった。

モーツァルトはバロック・ティンパニを使用(元・読売日本交響楽団の菅原 淳さんが担当)、弦は対向配置でヴィブラートを抑制したピリオド・アプローチ。速めのテンポで句読点がくっきりし、颯爽とした生気溢れる演奏。

アンコールは、

  • グリュンフェルト/オペレッタ「こうもり」によるパラフレーズ(菊池)
  • モーツァルト/行進曲 ニ長調 K.215(井上/OEK)
  • 鈴木行一(編曲)「六甲おろし」(井上/OEK)

六甲おろしの編曲が凝っていた。客席も手拍子でノリノリ。実に愉快なコンサートだった。

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ヴィンシャーマン/大フィルの古色蒼然たるバッハ

ザ・シンフォニーホールへ。

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ヘルムート・ヴィンシャーマン指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団・合唱団

  • J.S.バッハ/ミサ曲 ロ短調

バッハ四大宗教曲といえば「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「クリスマス・オラトリオ」そして「ミサ曲 ロ短調」を指す。僕はその全曲を生で聴いたことがある。主に鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンと延原武春/テレマン室内オーケストラ・合唱団の演奏で。つまり耳に馴染んでいるのは古楽器による演奏、あるいはモダン楽器によるピリオド奏法ということになる。

今回のヴィンシャーマンはバロック・ティンパニ以外はモダン楽器、古典的対向配置ではなく通常配置、弦は恒常的ヴィブラート(continuous vibrato)を掛け、レガート気味に弾く奏法であった。つまりカール・リヒターの時代、50年前のスタイルである。

冒頭のキリエからずっこけた!むちゃくちゃテンポが遅い。まるで晩年のリヒターみたい。

ドイツ生まれのヴィンシャーマン、御年90歳。1920年生まれだから、同郷のカール・リヒター(1926年生まれ)より年長である。ちなみにリヒターがミュンヘン・バッハ管弦楽団を創立したのは1953年、ヴィンシャーマンがドイツ・バッハ・ゾリステンを創立したのが60年である。

バッハはピリオド・アプローチが当たり前という現代において、彼みたいに最新の研究成果とは無縁の世界に生き、古臭いスタイルを守っている化石みたいな指揮者がいることにまず驚かされた。

音楽は弛緩し生気に欠け、こんな冗長で退屈なバッハは初めて聴いた。大フィルもバロック音楽に真剣に取り組みたいのなら、トン・コープマンとかフランス・ブリュッヘン、ジョン・エリオット・ガーディナーなど古楽系の指揮者を招聘した方がいいのではないだろうか?

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第1回 桂文珍 新根多御披露目の会/立川談春 独演会@兵庫芸文

9月18日(土)、トリイホールへ。

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  • 桂文珍/最近思うこと〜終の棲家(あこがれの養老院)
  • 桂楽珍/弁天うどん
  • 桂文珍/代書屋

文珍さんは今年5月にトリイホールに出演し、客席が近い親密な空気が気に入られたそう。ここなら細かいニュアンスが伝わるし、いろいろな試み、捻ったことが出来るだろうと。

最近思うこと」では大阪ミナミの変貌をエッセイ風に語りながら途中、普天間基地移設問題に揺れた徳之島(楽珍さんの故郷)のことや、民主党代表選のことなど得意の時事問題へと縦横無尽に脱線し、愉しませてくれた。そして自然な流れで老いをテーマにした自作「終の棲家(あこがれの養老院)」へ。

楽珍さんは繁昌亭の独演会でネタおろしする予定だった自作「弁天うどん」。まだまだ未完成。

そして再び文珍さん登場。4日前に(三代目)桂春團治師匠に稽古をつけて貰ったという「代書屋」。依頼人のすっ呆けた味がなんとも可笑しい。また、御年80歳の春團治さんが稽古場で61歳の文珍さんと一対一で向き合って、照れながら演じてくれた様子を活写され、このエピソードも興味深く傾聴した。

翌日は立川談春 独演会@兵庫県立芸術文化センターへ。

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  • 厩火事
  • 居残り佐平次

前座もなく、それぞれのネタを1時間ずつたっぷりと。

談春というひとは、「物語る力」を持った噺家であると改めて痛感させられた。

特に以前「文七元結」を聴いた時に、彼の高座から「生きろ!」という力強いメッセージが伝わってきた。そういうパワーを再び貰った、ひと時であった。

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桂文我「柿ノ木金助」(其の二)/繁昌亭四周年特別公演

9月14日梅田・太融寺へ。

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  • 桂雀五郎/青菜
  • 桂 文我/柿ノ木金助(其の二)
  • 桂こごろう/へっつい盗人
  • 桂 文我/風の神送り

幻の噺「柿ノ木金助」(其の一)を聴いた感想はこちら。前回のあらすじも文我さんは詳しく語られ、すっかり忘却のかなたにあった内容を想い出した。今回は旅先の冒険談みたいな感じでいまひとつ。後の展開を期待しよう。

こごろうさんは持ち時間が足りなかったのか「へっつい盗人」を半ばまで。「エッ、こんなところで終わり!?」と、もの足りなかった。

風の神送り」は初めて。面白い噺ではないが、当時はこんな風習があったのかと興味深く聴いた。

翌15日は繁昌亭四周年特別興行へ。

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  • 笑福亭たま/陰陽師(たま 作)
  • 林家染二/俥屋いらち俥
  • 桂枝三郎/紙屑屋天下一浮かれの屑より
  • 月亭八方/秘伝書
  • 白浪五人男(三枝・春之輔・染丸・小枝・米団治) 
  • 姉様キングス(音曲漫才)
  • 桂春之輔/まめだ
  • 桂三枝/ぼやき酒屋(三枝 作)

たまさんはマクラを振らず、いきなり自作へ。彼の傑作「伝説の組長」「胎児」「ベルゼバブの蠅」ほどのパンチ力はない。

染二さんは「いらち俥」の前半部のみ。上手い人だが、このネタはオーバーアクトが鼻につく。too much.

枝三郎さんはハメモノ(音曲)に合わせて踊る場面の所作がなってない。荒い芸。

八方さんはローマに旅行したマクラから「秘伝書」へ。もっと大きなネタが聴きたかったけれど、記念イベントという趣旨だからこれも仕方ないか。

噺家が本格的な歌舞伎の格好をした鹿芝居「白波五人男」はすごく良かった!特に米團治さんは素が男前だけに、こういう扮装をさせると一段と華がある。またお客さんから一点ずつ物を借りて、それにかけて口上を述べる場面では、さすが三枝さんの機転が利き、お見事だった。

姉様キングスも抜群の面白さ。都都逸、ストトン節、「てん」尽くしの阿呆陀羅経など、てんこ盛り。

まめだ」は1966年、三田純市が桂米朝に書き下ろした新作落語。数少ない秋の噺。

ぼやき酒屋」は三枝さんの自作「にぎやか寿司」のバリエーションという感じ。常に一定の質以上の新作を200席以上、発表されてきたその姿勢には頭が下がる。

これで木戸銭2,500円は申し訳ないような充実した内容だった。

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心洗われる「田園」~延原武春/大フィルのウィーン古典派シリーズ II

いずみホールへ。

Nobu

日本テレマン協会を主宰し、バロック音楽の専門家でもある延原武春さんと大阪フィルハーモニー交響楽団ががっぷり四つに組む「ウィーン古典派シリーズ」全8公演、第2回目を聴く。シリーズ第1回目の感想はこちら

  • ハイドン/交響曲 第7番「昼」
  • モーツァルト/ホルン協奏曲 第1番(ホルン:池田重一)
  • ベートーヴェン/交響曲 第6番「田園」

今回の客演コンサートマスターは広響のコンマス、田野倉雅秋さん。ユーベル・スダーン率いる東京交響楽団の客演コンマスも務められているそう。

ハイドンはコンチェルト・グロッソ(合奏協奏曲)として捉えられ、最前列にコンチェルタンテ(独奏)を受け持つ第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの奏者各1名、その後ろにリピエーノ(全奏)が控えるという配置。また第3楽章には珍しいコントラバスのソロもあり、アンサンブルの愉しさを満喫。

強弱のメリハリがくっきりした解釈で歯切れがいい。ソリスト以外は基本的にノン・ヴィブラート奏法。特に第2楽章アダージョ、音が真っ直ぐ伸びるピュア・トーンの美しさが際立つ。

モーツァルトは覇気がある演奏。硬いゴムボールが弾けるような解釈だった。

そして「田園」。作曲者自身が記したメトロノーム記号を遵守した、速めのテンポによる第1楽章から、その快活さに魅了される。田舎を散策する清々しさ!

第2楽章「小川の情景」もノン・ヴィブラートが効果的で、澄んだ水のような響きにため息が出る。厚化粧を落とした素顔のベートーヴェンがそこにいた。彼の肉声に耳をすますひと時。

第3楽章、農民たちの活き活きした踊りを経て、第4楽章「雷雨、嵐」。この楽章だけ登場するバロック・ティンパニが絶大な効果を上げる。パンチがある演奏。

そして第5楽章、生命の讃歌。音尻は溜めず、スッと減衰する潔さ。そのハーモニーの美しさに心洗われるようだった。

いつもとは、ひと味もふた味も違う大フィル。本当に素晴らしいシリーズである。次回は12月3日(金)の予定。

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深津絵里、妻夫木聡 主演/映画「悪人」

まず初めに、「告白」と今回の「悪人」で立て続けに人間の暗い部分、悪意を描き、それをしっかり商品としてヒットさせた東宝・川村元気プロデューサー(31歳)の勇気と決断力、そしてその手腕に拍手を送りたい。

評価:B+

Aku

映画公式サイトはこちら

「パーク・ライフ」で芥川賞、「パレード」で山本周五郎賞を受賞した吉田修一の小説「悪人」は2年ほど前に読んだが、陰鬱な内容で好きにはなれなかった。

しかし作家自らシナリオを担当した(監督の李相日と共同脚本)映画版はとっても良かった。プロットは当然同じだが、やはり小説と映画は全く別物だなと実感。

特にクライマックス、五島列島の断崖に立つ大瀬崎灯台の荒涼とした風景がすこぶる印象的。これぞ映像の力だと唸らされた。

モントリオール国際映画祭で主演女優賞を受賞した深津絵里が素晴らしいのは無論のことだが、それ以上に僕が感銘を受けたのは殺される保険会社OL役の満島ひかり。彼女の存在感はもの凄い。映画「川の底からこんにちは」の時よりも濃い目の化粧で、いかにも”九州の田舎娘”という雰囲気を巧みに醸し出している。人生どん詰まり。でも、見栄を張らなければ生きていけないーそういう女の哀しさが滲み出す。演技するために生まれてきたー満島ひかりはそんな女優である。

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静と動~佐渡裕/PACの武満&ホルスト

兵庫県立芸術文化センターへ。

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佐渡 裕/兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)定期演奏会を聴く。

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  • 武満徹/From Me Flows What You Call Time
    ~5人の打楽器奏者とオーケストラのための
  • ホルスト/組曲「惑星」

武満の「フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム」はニューヨークのカーネギー・ホール100周年記念として委嘱されたもの。この曲は佐渡さんが来年、ベルリン・フィル定期でも指揮する予定。1990年の初演者でもある打楽器アンサンブル「ネクサス」が来日し、PACオケと共演した。

佐渡さんのプレトークがあったが、それによるとMeとは「劇場」のことだそう。つまりタイトルは「劇場から”時間”と呼ばれるものが流れ出す」という意味になる。兵庫芸文5周年のシーズン幕開けに相応しい作品と言えるだろう。

曲のモティーフは完全5度の範囲にある5つの音。チベットの遊牧民による占い(風の馬)で掲げられる5色の旗から発案されている。それぞれの色は次のものを象徴している。

=水、=火、=大地、=風、=それらを統合する空・空気・エーテル・無

序奏が終わると「ネクサス」の5人が手に持った鉦を鳴らしながら1階客席後方より登場、通路を歩いてそのままステージへ。各々上述した5つの色の衣装を身に着けている。

また3階席後方両サイドに沢山のベルが設置され、それが青・赤・黄・緑・白のリボンでステージまで結ばれており、奏者がそのリボンを引っ張って鳴らす場面もあった。

その独特なサラウンド音響は劇場の空間ならではで、生演奏の醍醐味を堪能した。これは家庭のステレオ装置では再現不可能であろう。

武満の音楽は美しく静謐。音符の行間=無音までも愉しめるよう設計されている。やはりこういう発想こそが日本人ならではと言えるだろう。

素晴らしい演奏だった。こういう滅多に聴けない作品を取り上げてくれるから佐渡/PACはありがたい。この点では大植/大フィルも見習って欲しいものだ。

一方、「惑星」は佐渡さんらしく大雑把で、凡庸なリズム感のオーソドックスな演奏。ただフル・オーケストラが鳴らす大音量はド迫力であった。武満の静からホルストの動へ。その対比が鮮やか。

新しいシーズンが始まり、メンバーの入れ替わりもあったので、名刺代わりにアンコールあり。

  • ホルスト/吹奏楽のための第2組曲より 第1楽章(管・打楽器のみ)
  • ホルスト/セントポール組曲より 第1楽章(弦楽器のみ)

これが生き生きした演奏で、とても良かった。

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大阪クラシック 2010 《最終日》/大阪に響け、友愛のハーモニー!

大阪クラシック最終日、《第87公演》@三菱東京UFJ銀行。”ハーモニー(調和)”をテーマに一週間、のべ5万人以上の集客があったイヴェントもいよいよフィナーレである。北は岩手県盛岡市、南は佐賀県からわざわざ来た人もいたという。

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大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
  • チャイコフスキー/幻想序曲「ロミオとジュリエット」
  • 大阪市歌
  • ラヴェル/ボレロ
  • 夕やけ小やけ/七つの子/ふるさと(アンコール)
  • 外山雄三/「管弦楽のためのラプソディ」より”八木節”(アンコール)

外国生活が長く、日本語が聞き取りにくい大植さん。コンサートマスターの長原幸太さんから「ゆっくり喋りなさい」と言われたそう。

ドン・ファン」はテンポが変幻自在でドラマティックな演奏だった。終盤、フライングの拍手を指揮者が手で制す。

ロミオとジュリエット」について大植さんは、派手に終わる初稿と、静かに、ふたりの魂が浄化される終結部が追加された改定稿との違いについて語られた。「この終わりの部分は”祈り”、”愛”、そして”ハーモニー”が描かれているんです」と。

冒頭部、ロレンス神父草庵の場面は速めのテンポで軽やかに。主部に入り、情熱的な第1主題が現れても押さえ気味の演奏。しかし甘美な第2主題を経て、再び第1主題が戻ってくると次第に音楽は動的になり、激しさを増してゆく。

ここで平松・大阪市長が初日に大植さんから送られたネクタイを身に付けて登場。

「素晴らしいですね”ハーモニー”。(橋下知事と)喧嘩している場合じゃないですね」会場から笑いが起こる。

そしてプログラムに印刷してある歌詞・楽譜を見ながら聴衆も共に「大阪市歌」を斉唱。

ボレロ」について大植さんは「この曲はリズムとメロディで始まりますが、次第にハーモニーが加わってきます。ホルンが登場する場面は倍音が吹かれます」と解説。

さらに日本で唯一シンバルの製造を行っている“KOIDEシンバル”(大阪府大阪市平野区)と、会場に来られている小出社長の紹介もあった。

力強く、高らかに鳴り響く「ボレロ」であった。そして恒例のアンコールで〆。

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本当に充実して愉しい一週間だった。大植さん、そして大フィルの仲間たち、ありがとう。そして来年もよろしく!

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大阪クラシック 2010 《5日目》大植英次、最初で最後のドヴォルザーク/交響曲 第8番

第53公演》@中之島ダイビル

ヴァイオリン:崔 文珠(客演コンサートマスター)、田中美奈
ヴィオラ:上野博孝、松本浩子
チェロ:近藤浩志、石田聖子 で、

  • ブラームス/弦楽六重奏曲 第1番

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ヴァイオリンの崔さんとチェロの近藤さんがなんてったって名手なので、そのふたりが全体を引き締め、豊かな音色で深みのある素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

アンコールは第2楽章を再び演奏。近藤さんが「この楽章は映画『ベニスに死す』で使われ、有名になりました」と仰ったが、近藤さん、正しくはルイ・マル監督のフランス映画「恋人たち」(1958)です。「ベニスに死す」はマーラー/交響曲第5番 第4楽章アダージェット。

ここで大植さん登場。

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「僕はこの楽章が大、大好きなんです!」と感極まって、泣き出す大植さん。まことに愛すべき人だ。そして各楽員にシャネルの香水をプレゼント。何故シャネルなのか?は、大阪クラシック《4日目》の記事をお読み下さい。

第57公演》@カフェ・ド・ラ・ペ

佐久間聡一、田中美奈(ヴァイオリン)、鈴木華重子(ピアノ)で、

  • モシュコフスキー/2本のヴァイオリンとピアノのための組曲
  • J.S.バッハ/2つのヴァイオリンのための協奏曲 第2楽章(アンコール)

モシュコフスキー(1854-1925)という作曲家、初めて聴いた!こういう体験も大阪クラシックの醍醐味。ロマンティックで情熱的な曲だった。

第62公演》@ザ・シンフォニーホール

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満席、またまた補助席と立ち見が出た。

土岐祐奈(ヴァイオリン)、大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
  • ドヴォルザーク/交響曲 第8番
  • ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 第10番(アンコール)

土岐さんは1994年生まれの15歳。現在、桐朋女子高等学校音楽科の1年生。既にいくつかの国際コンクールで優勝している。これが日本デビューだそう。

大植/大フィル、コンチェルトでは柔らかい響きでニュアンス豊かな音楽を構築した。大植さんは要所要所でしっかりと独奏者を見つめ、完璧に寄り添う。お見事の一言。

ドヴォルザーク/第8シンフォニーは大植さんが桐朋学園で斉藤秀雄に指揮法を師事した時、恩師が最後に学生オケを振ったのがこの曲だったそう。だから今までこれを指揮するのを封印して来たし、これからも二度とないだろうと聴衆に語られた。

またこの第3楽章は8分の3拍子で、このリズムが用いられるのは他に、ドヴォルザークが尊敬していたブラームス 交響曲第3番 第3楽章があるというお話も。

第1楽章から大植さんの熱い想いが込められた気迫の演奏だった(勿論暗譜で指揮)。展開部は畳み掛ける勢いがあり、嵐の如し。このシンフォニーはまさに”生命の讃歌”だと、僕には感じられた。

第2楽章もボヘミアの自然が感興豊かに音のパレットで描かれる。

そして、清流のように美しい第3楽章を経て、第4楽章はずっしり重々しいテンポで開始される。「おっ、大植さん、またやる気だな!」と直感したとおり、終結部ではアクセル全快で音楽が大爆発。熱狂のうちに終わりを迎えた。ハッタリかまして大見得を切る、大植英次の面目躍如。ヨッ、千両役者!

アンコールはテンポを大きく動かし、デフォルメしたスラヴ舞曲。ここでは大植さん、やりたい放題。

それにしてもドヴォルザークのシンフォニーは名演だった。これが一回限りというのは余りにも勿体ない。是非また定期で聴きたいな。

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大阪クラシック 2010 《4日目》ピアノ・スペクタキュラー!大植英次、奮闘記

第47公演》@相愛学園本町講堂

田本摂理(クラリネット)、松隈千代恵(チェロ)、水垣直子(ピアノ)で、

  • ベートーヴェン/ピアノ三重奏 第4番「街の歌」
  • ツェムリンスキー/クラリネット、チェロとピアノのための三重奏曲

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濃厚な浪漫を感じさせるツェムリンスキーが良かった。この曲はブラームスが主催するコンクールで入選し、その推薦で出版までこぎつけたそうだ。

第1楽章は秋の憂愁。そして第2楽章にはあこがれや、慰めといった情感が匂い立つ。

ツエムリンスキー、大フィル定期でも是非取り上げて欲しい作曲家である。

第50公演》@ザ・シンフォニーホール

満席。補助席や、立ち見も出る大盛況。

ピアノ:伊藤恵、野原みどり、岡田将、大植英次、ヴァイオリン:神埼悠美、チェロ:近藤浩志、そして大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、

  • モーツァルト/3台のピアノのための協奏曲(伊藤・野原・大植
  • モーツァルト/ヴァイオリンソナタ 第28番(神崎・大植
  • サンサーンス/動物の謝肉祭より「白鳥」(近藤・岡田・大植
  • ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」(岡田・大植
  • ホルスト/組曲「惑星」より”火星”と”木星”(伊藤・野原・岡田・大植

なんと大植さんは最初から最後まで出ずっぱり!

コンチェルトでは大植さんがピアノと指揮を担当。モーツァルト20歳の作品で、溌剌とした演奏。第3楽章では音符がコロコロ転がるよう。

ヴァイオリン独奏の神埼さんは第1回星空コンサートで「チゴイネルワイゼン」を弾いた。現在大学生で、この10月からケルンに留学するそう。美音で雄弁な演奏だった。

名手・近藤さんのチェロは深い音色に魅了された。

春の祭典」と「惑星」は作曲家自身の手による2台のピアノ版。どちらも日本で滅多に演奏されないバージョンであり、ザ・シンフォニーホールでは勿論初演である。

大植さんは「春の祭典」の一部をピアノで弾きながら「これは不協和音に聴こえますが、実は完全三度なんです」などと解説。さらに続けて、次のようなことを語られた。

春の祭典」は1913年に初演されたが、客席から怒号と罵倒が飛び交い、殴り合いの喧嘩になるなど大混乱になったことは余りにも有名。その場にココ・シャネルも居合わせた。

1920年に再演された際、初演のスキャンダルのせいでストラヴィンスキーに支援しようとする人は誰もいなかった。その時、ココが彼に白紙の小切手を差し出し、「ここに貴方が必要な金額をお書きなさい」と言った。「ただし条件があります」

その条件とは、

  1. ココ・シャネルの名前を一切出さないこと。
  2. シャンゼリゼ劇場の5つの部屋(化粧室)にシャネルの香水NO.5を置くこと。

こうして「春の祭典」の上演と共に、シャネルNO.5の噂はあっという間にパリ中に広まったとか。

そして何と、大植さんから「本日ザ・シンフォニーホールにも5ヶ所、シャネルNO.5を置きました!是非香りを愉しんでください」と。

大植さんの弾く「春の祭典」は荒々しいがダイナミックで、マグマが噴出するような、すこぶる面白い演奏だった。途中激しく足踏みしたり、ピアノのサイドを手で叩いたりといったパフォーマンスも。

4人で弾いたホルストの「惑星」もド迫力!な、何なんだ、一体これは??もう二度と体験出来ない見世物だった。

最後に大植さんがピアノの上に水の入ったコップを置き、グレン・グールドの真似をしながら、2008年に新発見され、翌年に公開演奏されたモーツァルトのピアノ曲を弾かれた。本邦初演とのこと。

いやぁ、ただただ唖然として、興奮した夜だった。

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大阪クラシック 2010 《3日目》大植英次/大フィルの燃え上がるベートーヴェン!

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団によるベートーヴェン/交響曲 第7番の演奏は、3年前のチクルスで聴き、下記感想を書いた。

殆ど酷評と言ってもいい。

この時の大植さんの体調は最悪だった。持病の首(頚椎)の調子が悪く、腕を振るのがやっとという状態。今にも止まりそうな遅いテンポで、青息吐息だった。

しかしこの後、手術を受け、劇的なダイエットにも成功。スリムな体系となって現在は体もよく動き、元気溌剌である。今の大植さんなら違う演奏が出来るんじゃないか?という期待を僕は抱いた。

さらにマーラー/交響曲 第5番の例もある。以前フェスティバルホールで聴いたのと、昨年ザ・シンフォニーホールで聴いたものとは完全に別の音楽だった。

大植さんはカメレオンのような指揮者だ。同じ曲でも解釈がどんどん変化してゆく。だからもう一度、彼のベートーヴェンを聴く気になった。

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大阪クラシック 第38公演。"Nothing but Beethoven"と副題が付き、オール・ベートーヴェン・プログラム。

  • ロマンス 第1番(Vn. 独奏:黒田小百合)
  • ロマンス 第2番(Vn. 独奏:芝内もゆる)
  • 交響曲 第7番

客演コンサートマスターは崔 文洙(チェ・ムンス)さん。

中学校一年生の黒田さんは昨年、芝内さんは今年の星空コンサートに出演した。

大植/大フィルのバックは柔らかい音色で、若い彼女たちを優しく包み込むかのような演奏であった。

交響曲に入る前に、ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」の一部を演奏した上で、大植さんから「これがトリスタン・ハーモニー(和音)です」と。

次にベートーヴェン/交響曲 第9番 第4楽章の冒頭部(17小節目)が演奏され、トリスタン和音はこれを発展させたものだとの解説があった。

大植さんによると、ワーグナーはバイロイト祝祭劇場の起工式でこの第九を自らの指揮で演奏したという(帰宅して調べてみると、第九はこの劇場でワーグナー作曲以外に演奏が許されている唯一の曲だそうだ。フルトヴェングラーの名盤もある)。

そして「ベートーヴェンの第7番を"Dance Symphony"と呼んだのもワーグナーなんです」と。

弦は対向配置、コントラバスは最後方、横1列に並ぶ。今回はイヴェント性が高いので第1,3,4楽章の繰り返しは省略された。

第1楽章から力強く勢いがあり、熱い演奏が繰り広げられた。作曲家がスコアに記載したメトロノーム記号に即した体感速度。アタック、アクセントが鮮烈で、音楽が弾け、飛翔する。崔さんが激しく強奏するので、弓の毛がぶちぶち切れる。

第2楽章もテンポは速め。押しては返す波のような心地よいリズム感がある。

そしてダンサーたちが軽やかに踊り、躍動する第3楽章を経て、第4楽章は驀進する凄まじい迫力があった。大植さんが唸り、指揮台の上でジャンプする。爆走するベートーヴェン。こんなの聴いたことがない!

3年前に聴いた音楽と同じ演奏者とは俄に信じ難かった。少なくともこのコンビ、今年最高の名演であったと断言出来る。

大フィルの楽員自体、3年前とはベートーヴェンに対峙する意識、アプローチが違う。例えば音尻、弓を弦から離すタイミングが早くなり、歯切れのいい演奏になっている。

これは昨年、指揮者の延原武春さんと出会い、古典派の音楽をモダン楽器で演奏する時の古楽的方法論(ピリオド・アプローチ)を学んだこと、そして崔 文洙さんが客演コンサートマスターに就任されたことが大きいのではないだろうか。

”新生”大フィル、Ver.2.0。これは面白いことになってきた。

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第20回彦八まつり/落語家バンドステージ

彦八まつりは、大阪落語の始祖・米沢彦八が活躍した生國魂神社の境内に年に一度、上方の落語家が一堂に会し、一般の人々と交流を深める場である。

その彦八まつりで噺家バンドのステージを観た。

元祖お囃子カントリー「ぐんきち」

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寄席囃子とカントリーを融合させた曲。桂しん吉さんが笛とヴォーカルを担当。「生まれ変わったら阪急電車になりたい」という”鉄ちゃん”のしん吉さん。鉄道ソングをいくつか披露。

桂雀三郎 with まんぷくブラザーズ

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「やぐら行進曲」「二人のやぐら」「ヨーデル食べ放題」「江戸の人気者」などが演奏された。僕は雀三郎さんの落語をあまり面白いとは思わないが、歌手としては抜群。曲がいいし、何たって歌詞が可笑しい。またライヴを聴きたい。

ヒロポンズ・ハイ 

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上方の噺家だけで構成されたロック・バンド。メンバーは笑福亭福笑(ヴォーカル)、笑福亭岐代松(ドラム)、桂あやめ(アコーディオンとボーカル)、月亭遊方(ギター)、林家染雀(キーボード)、桂福矢(ギター)、林家市楼(ベース)。還暦を過ぎた福笑さん、ノリノリ。若い!

最後は桂文福とワ!!つれもていこら~ズが登場した。

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噺家さんの余芸を愉しんだ夜だった。

   

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大植英次 プロデュース/大阪クラシック2010 開幕!

大阪・御堂筋を舞台に展開される「大阪クラシック」、その熱い一週間がやって来た!大阪フィルハーモニー交響楽団の楽員が主に出演するこのイヴェント、今年で5年目。僕は初回から参加している。

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第3公演》、スターバックス コーヒー 淀屋橋odona店に群がる人、人。

大阪市中央公会堂で行われた《第4公演》を聴く。この日、これのみ500円の有料公演(他は全て無料)。400席の予定でチケットを発売したらあっという間に売り切れ、急遽500席に増やしたそう。それでも満席。

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近藤浩志(チェロ)、中井由貴子(ピアノ)で、

  • シューマン/トロイメライ
  • チャイコフスキー/ただ憧れを知る者だけが
  • フォーレ/夢のあとに
  • ショパン/チェロ・ソナタ(全曲)
  • ピアソラ/オブリビオン(忘却)

切々と訴えかける、情熱的な演奏であった。哀切なピアソラも良かった。

第7公演》@相愛学園本町講堂

田中美奈(ヴァイオリン)、田中麻貴(ピアノ)で、

  • プロコフィエフ/ヴァイオリンソナタ 第1番
  • ラフマニノフ/ヴォカリーズ

プロコフィエフの機知と、何かに抗うような強い意志が印象的だった。

「アンコールは涼しい曲がええなぁ」というお客さんからのリクエストで、ヴォカリーズが演奏された。

第9公演》@三菱東京UFJ銀行 大阪東銀ビル

井上登紀(フルート)、吉田陽子(ヴィオラ)、今尾淑代(ハープ)で、

  • ドビュッシー/フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ
  • 成田為三/浜辺の歌

ドビュッシーは幻想的な名曲なのだけれど、編成が特殊なので中々聴く機会に恵まれない。嬉しかった。

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第12公演》@京阪神不動産 御堂筋ビル 1F

吉田陽子(ヴィオラ)、庄司 拓(チェロ)、ロイド・タカモト(トロンボーン)で、

  • ディッタードルフ/DUO より メヌエット(ヴィオラ&チェロ)
  • パッヘルベル/CHORALE PRELUDE
  • パーシケッティ/セレナーデ 第6番

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パーシケッティ(1915-1987)はアメリカの作曲家。吹奏楽曲は比較的有名だが、吉田さんは「ロイドから今回、声を掛けられるまでパーシケッティと いう名前も知らなかった」と。複雑な変拍子もあったりして練習ではアンサンブルが合わなかったそうだが、「ちゃんとやると、いい曲やね」と庄司さん。珍し く、面白い体験をさせてもらった。

第15公演》@大阪市役所正面玄関ホール

クラリネット:金井信之、ホルン:村上 哲、ヴァイオリン:今城朋子、松川朋子、ヴィオラ:岩井英樹、チェロ:松隈千代恵 で、

  • アイアランド/六重奏曲

アイアランド(1879-1962)はイギリス(スコットランド系)の作曲家。六重奏曲は彼が19歳、王立音楽大学時代の習作だそうで、これが高く評価され奨学金を貰ったのだとか。ブラームス風だったりフランス印象派的だったり、オーソドックな楽曲だった。

アイアランドが日本で演奏される機会は滅多にない。こういう出会いも大阪クラシックの醍醐味であろう。

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第77回 創作落語の会/現在派 復活!

9月3日(金)繁昌亭へ。

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復活した創作落語の会。第1回目は1981年3月7日。チラシによるとその時の演者及び演目は以下の通り。

  • 桂 文福/パチンコ・国技館
  • 桂べかこ(現・南光)/テレビトンネル
  • 桂 文珍/ザ・フェイム
  • 笑福亭福笑/福笑の新・おもろい夫婦
  • 桂 三枝/仁義なき
  • 三遊亭円丈/スペースギャンブラー

南光さんが昔は新作をされていたんだ!と驚いた。

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さて今回の演目は、

  • 桂三金/理由なき理容所
  • 桂あやめ/シックス・アンドウジ・シティ
  • 桂小春團治/ものうげな放課後
  • 月亭八方/神風
  • 笑福亭仁智/こちら公園前派出所
  • 桂 三枝/ニャンマイダブツ

全員、ネタおろし。

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デブ・ネタの創作落語をシリーズにしている三金さんだが、今回はハゲ・ネタ。ヅラのまま散髪に行くとどうなるかという噺。

あやめさんによると梅田バーボンハウスで開催されていた初期の「創作落語の会」は見台が透明だったとか!お洒落。

「シックス・アンドウジ・シティ」は谷町六丁目、安堂寺町を舞台に展開される「セックス・アンド・ザ・シティ」(アメリカ・ケーブルテレビ局HBOで放送されたドラマ)のパロディ。登場人物4人の演じ分けがごちゃごちゃしていて、聴いてて途中で混乱してきた。もう少し整理が必要かも。

小春團治さんの噺は小学校を舞台に色々な達人が登場。例えば「給食の達人」とか。

さんの創作落語はこれが初体験。貧乏神と恵比寿さんとの会話から始まり、意表を突かれる。時事ネタを盛り込んだり、阪神タイガースの話題が飛び出したり、さすがの面白さ。サゲも上々。ベテランの上手さを堪能。

仁智さんは文句なしの爆笑落語。警察官ふたりが、飛び降り自殺しようとする男を説得するために、色々な歌を歌う場面が秀逸。ちゃんとBGMも流れる。

三枝さんは抜群の安定感。妻が飼っていた猫が死に、お葬式をあげる物語。ほのぼのとして生活のリアリティある落語。

木戸銭2,500円という安さで、大変内容の濃い会だった。上方新作派の底力を感じさせた。大満足。次回は12月3日(金)に予定されている。


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「ノルウェイの森」を訪ねて/砥峰・峰山高原、映画ロケ地への旅

今回の旅は、先日映画館で観た「ノルウェイの森」(トラン・アン・ユン監督)の特報が契機となった。映画公式サイト(こちら!)でも観ることが出来る。

何と言っても、その「緑」の圧倒的美しさに魅了された。「夏至」「花様年華」「空気人形」で知られる名撮影監督、リー ・ピンビンの面目躍如である。

兵庫県・神河町(かみかわちょう)の北西部に位置する標高800~1000mの高原地帯、砥峰・峰山(とのみね・みねやま)高原が中心的ロケ地となった。

神河町役場へ。

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映画公開に向け、垂れ幕も。

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ロケ地マップなどパンフレットを色々貰い、いざ高原に向け出発!

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まずメインスタッフ・キャストが宿泊した峰山高原 ホテルリラクシアへ。

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洒落た外観である。

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内装も洗練されており、ここのレストランでランチをいただく。

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ワタナベ役の松山ケンイチ、直子役の菊池凛子、レイコ役の霧島れいからのサイン色紙も飾られていた。

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ホテル中庭の風景。開放感がある。

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ホテルから歩いてリラクシアの森へ。

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撮影現場まで標識が案内してくれる。

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写真付きで解説も。

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ここで冬の撮影が行われた。

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こちらは夏のシーン。

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爽やかな森林浴を満喫した。

続いて砥峰高原へと車を走らせた。

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眩いばかりの「緑」が目の前に広がる。

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とのみね自然交流館では映画撮影風景がパネル展示されていた。

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高原を散策。

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なんという清々しさ!高原を渡る風が心地よい。

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ここはススキの名所でもあるらしい。是非また、秋にも来てみたいと想った。

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ここは元々撮予定になかったが、沢(谷川)の美しさに監督が気付き、急遽撮影をはじめた場所だそう。

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そして山道を歩いて黒岩の滝へ。

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自然に癒された素敵な一日であった。映画公開日(12月11日)が待ち遠しい!

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なお、「ノルウェイの森」は9月2日夜にヴェネチア国際映画祭でプレミア上映され、既に世界36カ国に配給されることが決まっているそうである。

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TORII 寄席/文三・吉弥ふたり会 (9/1)

大阪・難波のTORII(トリイ)ホールへ。

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  • 桂弥太郎/千早ふる
  • 桂文三/宿替え
  • 桂吉弥/皿屋敷
  • 桂吉弥/ちりとてちん
  • 桂文三/莨の火

宿替え」は陽気で、ちょっと抜けたところのある”徳さん”が文三さんのニンに合っている。愛すべき登場人物。

(たばこ)の火」は珍しい話で驚いた。調べてみると文枝師匠が得意としたネタらしい。”旦那”の鷹揚さ、懐の広さ、そして”お茶屋の伊八”の人の良さなど描き分けが巧み。さすが風格。

吉弥さんは瞬きを繰り返す・目を見開く・眉毛を動かす・「ヒュー」と口笛を吹くなど、ありとあらゆる手練手管を弄する、したたかな芸。彼の「ちりとてちん」は繁昌亭らいぶシリーズDVDでしか接したことがなかったので、ようやく生で観られて本当に良かった。確実に進化している。明るく華やかな高座を堪能した。

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大植英次/大阪フィル「青少年のためのコンサート 2010」

NHK大阪ホールへ。

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で、第8回となる「青少年のためのコンサート」。今年のテーマは ~シンフォニック・サウンド in スポーツ~

会場には多くの中高生たちが詰めかけていた。

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曲目は、

  • ロッシーニ/歌劇「ウィリアム・テル」序曲より”スイス軍隊の行進”
  • メンデルスゾーン/交響曲第4番「イタリア」より第1楽章
  • アンダーソン/トランペット吹きの休日
  • R.シュトラウス/ホルン協奏曲 第1番より第1楽章
  • ビゼー/歌劇「カルメン」前奏曲
  • ティルザー/私を野球に連れてって
  • 古関裕而/六甲おろし
  • シュニトケ/タンゴ
  • チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」より”花のワルツ”
  • ホルスト/組曲「惑星」より”木星”
  • ヴァンゲリス/炎のランナー
  • コープランド/バレエ音楽「ロデオ」より”ホーダウン”
  • ヴェルディ/歌劇「アイーダ」より”凱旋行進曲”
  • エルガー/威風堂々 第1番(アンコール)

まずアーチェリーに関連した「ウィリアム・テル」序曲。この曲は大植さんの恩師レナード・バーンスタインがアメリカCBSでテレビ放送された"Young People's Concert"で取り上げた楽曲でもある。レニーが客席の子供たちに向かって「この曲は何か分かるかい?」と問うと、一斉に「ローン・レンジャー!」という答えが返ってきたのが印象的であった。1949-1958年にテレビ放送された西部劇のテーマ。弦の刻みが小気味よい。

「イタリア」は自転車レースをテーマにしたアメリカ映画「ヤング・ゼネレーション」(BREAKING AWAY,1979)で使用された。燦々と降り注ぐイタリアの陽光。新鮮で軽やか。第1主題は勢いがあり、第2主題は歌心に満ちていた。

ワクワク感ある「トランペット吹き」を経て、R.シュトラウスは現在、京都市内の高校2年生である山本愛沙子さんがホルン・ソロを務めた(使用楽器は”アレキサンダー”)。彼女は中学1年生の時、吹奏楽部でホルンに出会ったそうで「その形が好きになりました。シルエットが可愛いんです!」と。今回の起用については「お話を頂いたときから長い夢を見ているようでした。明日から現実に戻ります」彼女は大フィルの村上哲さんに師事しており、今回先生は出演せずに客席で彼女の演奏を聴いていた。

「カルメン」前奏曲は野球映画「がんばれ!ベアーズ」(THE BAD NEWS BEARS,1976)に使用された。

大リーグでホームチームが7回裏の攻撃に入る前に観客全員で歌う「私を野球に連れてって」はプログラムに英語歌詞と楽譜が添付されており、客席も歌った。「これでは休憩に入れませんね!」と大植さん。そしてプログラムに記載がなかった「六甲おろし」へ。聴衆は全員立ち上がり、大フィルの伴奏で斉唱。コンサートマスターの長原幸太さんは広島県呉市出身なので、ここでおもむろに広島カープの帽子を被り、弾いていた。

シュニトケ「タンゴ」は映画音楽。2010-2011年のシーズンに浅田真央選手がフィギュアのショート・プログラムで使用予定だそう。チェレスタで始まり、それがヴァイオリン・ソロに受け継がれ全体の合奏へ。最後はヴァイオリン・ソロからチェレスタに手渡され、シンメトリーな構造を持った素敵な小品であった。

「花のワルツ」はゴルフ場を舞台に展開されるコメディ映画「ボールズ・ボールズ」(CADDYSHACK,1980)で使用されたそう。開放感とロマン漂う演奏。

「木星」は2007年世界陸上大阪大会でサラ・ブライトマンが歌った「ランニング(ジュピター~栄光の輝き)」の原曲。大植さんらしい、変幻自在なテンポであった。

オリンピック選手を主人公にしたアカデミー作品賞・作曲賞受賞作「炎のランナー」を経て、「ロデオ」は弾けるリズムと躍動感が魅力的。

そしてアイーダ・トランペットが6本登場して華やかな「凱旋行進曲」と、アンコールで「威風堂々」というサッカーに因んだ音楽が並び、パワフルで推進力のある演奏を聴かせ〆となった。中々充実したコンサートだった。

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生誕200年 手紙と演奏で紡ぐ/ ロベルト-クララ、シューマン愛の軌跡

いずみホールで秋から冬にかけて開催される「シューマン 2010」の全6公演プレミアム・セット券を購入したら、今回の招待券が付いてきたので行ってみた。

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出演は熊本マリ(ピアノ)、石田純一(朗読)。

まず第一部ではロベルト・シューマン作曲「子供の情景」(含む「トロイメライ」)が演奏され、その合間にロベルトとクララの書簡が朗読された(出会いから結婚まで)。

第二部は《作曲家たちの恋愛模様》と題され、ふたりのトークと共に以下の曲が演奏された。

  • ショパン/ノクターン 第20番 遺作
  • ブラームス/間奏曲 作品118-2
  • シューマン(リスト編)/献呈
  • シューマン/ウィーンの謝肉祭の道化芝居「幻想的情景」
  • シューマン/「3つのロマンス」より第2曲(アンコール)

ふたりが初めて出会ったのがロベルト18歳、クララ9歳の時という事実に驚いた。クララの父フレドリック・ヴィークによる数々の嫌がらせ、妨害工作にめげず、裁判にまで訴えて結婚に至ったのがロベルト30歳の年であった。

後にシューマンの前に現れたブラームスが生涯、クララに想いを寄せていたことは有名だが(ブラームスは独身を通した)、クララは14歳年長であった。なんとブラームスの母は父より17歳も年上だったそうで、「これは遺伝ではないか」という話が面白かった。

ブラームスの間奏曲は彼が60歳の作品で、青春の頃の情熱を懐かしむような、クララへの想いが満ちた楽曲である(実際、クララに献呈されている)。

はっきり言って石田純一の恋愛談義はどうでもよかったが、熊本マリさんの演奏が良かったし、シューマンという作曲家がより身近に感じられるようになった。

現在、ロベルト・シューマン後半生における数々の神経症状、行動異常は脳梅毒が原因であることが判明している。そのあたりについては今回一切触れられなかったが、まぁ、会の趣旨から考えれば当たり前か。

ロベルトの晩年、精神病院で書かれた彼の作品や手紙はクララの手で破棄されたという。作曲家としてのロベルトの名誉を、彼女は必死で守ろうとしたのだろう。

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