大阪クラシック 2010 《4日目》ピアノ・スペクタキュラー!大植英次、奮闘記
《第47公演》@相愛学園本町講堂
田本摂理(クラリネット)、松隈千代恵(チェロ)、水垣直子(ピアノ)で、
- ベートーヴェン/ピアノ三重奏 第4番「街の歌」
- ツェムリンスキー/クラリネット、チェロとピアノのための三重奏曲
濃厚な浪漫を感じさせるツェムリンスキーが良かった。この曲はブラームスが主催するコンクールで入選し、その推薦で出版までこぎつけたそうだ。
第1楽章は秋の憂愁。そして第2楽章にはあこがれや、慰めといった情感が匂い立つ。
ツエムリンスキー、大フィル定期でも是非取り上げて欲しい作曲家である。
《第50公演》@ザ・シンフォニーホール
満席。補助席や、立ち見も出る大盛況。
ピアノ:伊藤恵、野原みどり、岡田将、大植英次、ヴァイオリン:神埼悠美、チェロ:近藤浩志、そして大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、
- モーツァルト/3台のピアノのための協奏曲(伊藤・野原・大植)
- モーツァルト/ヴァイオリンソナタ 第28番(神崎・大植)
- サンサーンス/動物の謝肉祭より「白鳥」(近藤・岡田・大植)
- ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」(岡田・大植)
- ホルスト/組曲「惑星」より”火星”と”木星”(伊藤・野原・岡田・大植)
なんと大植さんは最初から最後まで出ずっぱり!
コンチェルトでは大植さんがピアノと指揮を担当。モーツァルト20歳の作品で、溌剌とした演奏。第3楽章では音符がコロコロ転がるよう。
ヴァイオリン独奏の神埼さんは第1回星空コンサートで「チゴイネルワイゼン」を弾いた。現在大学生で、この10月からケルンに留学するそう。美音で雄弁な演奏だった。
名手・近藤さんのチェロは深い音色に魅了された。
「春の祭典」と「惑星」は作曲家自身の手による2台のピアノ版。どちらも日本で滅多に演奏されないバージョンであり、ザ・シンフォニーホールでは勿論初演である。
大植さんは「春の祭典」の一部をピアノで弾きながら「これは不協和音に聴こえますが、実は完全三度なんです」などと解説。さらに続けて、次のようなことを語られた。
「春の祭典」は1913年に初演されたが、客席から怒号と罵倒が飛び交い、殴り合いの喧嘩になるなど大混乱になったことは余りにも有名。その場にココ・シャネルも居合わせた。
1920年に再演された際、初演のスキャンダルのせいでストラヴィンスキーに支援しようとする人は誰もいなかった。その時、ココが彼に白紙の小切手を差し出し、「ここに貴方が必要な金額をお書きなさい」と言った。「ただし条件があります」
その条件とは、
- ココ・シャネルの名前を一切出さないこと。
- シャンゼリゼ劇場の5つの部屋(化粧室)にシャネルの香水NO.5を置くこと。
こうして「春の祭典」の上演と共に、シャネルNO.5の噂はあっという間にパリ中に広まったとか。
そして何と、大植さんから「本日ザ・シンフォニーホールにも5ヶ所、シャネルNO.5を置きました!是非香りを愉しんでください」と。
大植さんの弾く「春の祭典」は荒々しいがダイナミックで、マグマが噴出するような、すこぶる面白い演奏だった。途中激しく足踏みしたり、ピアノのサイドを手で叩いたりといったパフォーマンスも。
4人で弾いたホルストの「惑星」もド迫力!な、何なんだ、一体これは??もう二度と体験出来ない見世物だった。
最後に大植さんがピアノの上に水の入ったコップを置き、グレン・グールドの真似をしながら、2008年に新発見され、翌年に公開演奏されたモーツァルトのピアノ曲を弾かれた。本邦初演とのこと。
いやぁ、ただただ唖然として、興奮した夜だった。
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