大阪クラシック 2010 《5日目》大植英次、最初で最後のドヴォルザーク/交響曲 第8番
《第53公演》@中之島ダイビル
ヴァイオリン:崔 文珠(客演コンサートマスター)、田中美奈
ヴィオラ:上野博孝、松本浩子
チェロ:近藤浩志、石田聖子 で、
- ブラームス/弦楽六重奏曲 第1番
ヴァイオリンの崔さんとチェロの近藤さんがなんてったって名手なので、そのふたりが全体を引き締め、豊かな音色で深みのある素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
アンコールは第2楽章を再び演奏。近藤さんが「この楽章は映画『ベニスに死す』で使われ、有名になりました」と仰ったが、近藤さん、正しくはルイ・マル監督のフランス映画「恋人たち」(1958)です。「ベニスに死す」はマーラー/交響曲第5番 第4楽章アダージェット。
ここで大植さん登場。
「僕はこの楽章が大、大好きなんです!」と感極まって、泣き出す大植さん。まことに愛すべき人だ。そして各楽員にシャネルの香水をプレゼント。何故シャネルなのか?は、大阪クラシック《4日目》の記事をお読み下さい。
《第57公演》@カフェ・ド・ラ・ペ
佐久間聡一、田中美奈(ヴァイオリン)、鈴木華重子(ピアノ)で、
- モシュコフスキー/2本のヴァイオリンとピアノのための組曲
- J.S.バッハ/2つのヴァイオリンのための協奏曲 第2楽章(アンコール)
モシュコフスキー(1854-1925)という作曲家、初めて聴いた!こういう体験も大阪クラシックの醍醐味。ロマンティックで情熱的な曲だった。
《第62公演》@ザ・シンフォニーホール
満席、またまた補助席と立ち見が出た。
土岐祐奈(ヴァイオリン)、大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団で、
- メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
- ドヴォルザーク/交響曲 第8番
- ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 第10番(アンコール)
土岐さんは1994年生まれの15歳。現在、桐朋女子高等学校音楽科の1年生。既にいくつかの国際コンクールで優勝している。これが日本デビューだそう。
大植/大フィル、コンチェルトでは柔らかい響きでニュアンス豊かな音楽を構築した。大植さんは要所要所でしっかりと独奏者を見つめ、完璧に寄り添う。お見事の一言。
ドヴォルザーク/第8シンフォニーは大植さんが桐朋学園で斉藤秀雄に指揮法を師事した時、恩師が最後に学生オケを振ったのがこの曲だったそう。だから今までこれを指揮するのを封印して来たし、これからも二度とないだろうと聴衆に語られた。
またこの第3楽章は8分の3拍子で、このリズムが用いられるのは他に、ドヴォルザークが尊敬していたブラームス 交響曲第3番 第3楽章があるというお話も。
第1楽章から大植さんの熱い想いが込められた気迫の演奏だった(勿論暗譜で指揮)。展開部は畳み掛ける勢いがあり、嵐の如し。このシンフォニーはまさに”生命の讃歌”だと、僕には感じられた。
第2楽章もボヘミアの自然が感興豊かに音のパレットで描かれる。
そして、清流のように美しい第3楽章を経て、第4楽章はずっしり重々しいテンポで開始される。「おっ、大植さん、またやる気だな!」と直感したとおり、終結部ではアクセル全快で音楽が大爆発。熱狂のうちに終わりを迎えた。ハッタリかまして大見得を切る、大植英次の面目躍如。ヨッ、千両役者!
アンコールはテンポを大きく動かし、デフォルメしたスラヴ舞曲。ここでは大植さん、やりたい放題。
それにしてもドヴォルザークのシンフォニーは名演だった。これが一回限りというのは余りにも勿体ない。是非また定期で聴きたいな。
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コメント
記事、興味深く拝見しました。そうでしたか、大植さん、ドヴォルザークのシンフォニーをこれまで一度も振っておられませんが、そういう理由があったんですね。
だから、今回、ドヴォルザークの8番を大阪クラシックの中に見たとき、これは何かそれなりの理由があるのだろう、そしてこの公演、一番に売り切れるだろうと思っていました。
いろんな配慮を忘れない、大植さんらしいエピソードだと思いました。レポートありがとうございました。
投稿: ぐすたふ | 2010年9月11日 (土) 22時40分
ぐすたふさん、そういう言葉を頂けると、一生懸命時間を掛けてこの記事を書いた甲斐があったというものです。こちらこそありがとうございます。
投稿: 雅哉 | 2010年9月11日 (土) 23時51分