京大 VS 阪大 対決落語会(6/30)
天満天神繁昌亭へ。
- 桂 福丸(京大)/米揚げ笊
- 笑福亭たま(京大)/彼女と僕と教頭先生(たま 作)
- 林家 染左(阪大)/七段目
- 旭堂 南海(阪大)/坂本龍馬(講談)
- 対決トーク
- 林家 染雀(阪大)/仔猫
福丸さんは縁起を担ぐ噺家のエピソードから。”摺鉦(すりがね)”では験(げん)が悪いので”当たり鉦”と言い換える。「だから”スリッパ”ではなく”アタリッパ”、マイケル・ジャクソンの歌も”スリラー”じやなく”アタリラー”にしなければなりません」彼を聴くのはこれが初めてだったが、非常に切れとスピード、高揚感のある高座で感心した。将来、ポスト枝雀の位置を担うのは彼なのかも知れない。繁昌亭輝き賞は間違いなし。2007年11月入門。驚異の若手出現である。
完璧に、そつなくこなした福丸さんの後、稽古不足だというたまさんはやりにくそう。「僕の落語はジェット機みたいなものなんです。お客を乗せずにビューンと飛び立とうとする。離陸直前に何人か拾い上げる。でも大半は取り残して去ってゆく」この喩えの妙に腹を抱えて笑った。たまさんの新作は6/19の繁昌亭レイトショー「ナイトヘッド」で初演されたもの。奇想天外な展開がたまさんらしく、新鮮で面白い。福笑師匠譲りのラディカルなギャグも冴える。
「七段目」は今まで吉朝の型でしか聴いたことがない。こごろうさん、銀瓶さん、米左さんも似たような感じで、特徴がない。だから芝居噺は吉朝一門(吉弥・よね吉)だけで十分だと想っていた。ところが、染左さんのは一味違った。台詞、所作、ハメモノ(お囃子)の各々が独特だった。これが林家の型なのか……。いいものを見せてもらった。
対決トークでは《後輩(福丸)潰し》にかかる、たまさんが滅茶苦茶可笑しかった。「僕なんかしどろもどろであれが精一杯の高座なのに、彼(福丸)は軽く八分目くらいの力しか出していないんです。新人だから先輩に遠慮して今は猫を被っていますが、十年で豹変しますね。したたかなんです」と。これ以上の褒め言葉はない。それだけたまさんが福丸さんを高く評価しているということなのだろう。
福丸さんは灘中・灘高を経て京大に入学したエリート。学校では落研に属していたのかと思いきや、なんとずっと硬式テニス部だったそう。「似合わへん」と仰け反る他の噺家たち。なお、卒業後は6年間フリーターをしてたとのこと。
たまさんは福笑師匠に電話で入門志願したそう。その時酔っ払っていた福笑さん「お前、気違いやろ!」と繰り返し叫んだとか。染雀さんがその後で福笑さんに会ったとき、「今度京大卒の奴がうちに来るねん。どないしょ」とうろたえていたとの証言も。
また染雀さんの卒論は「落語のお囃子について」、染左さんが「近世の芸能」に関するもので、その過程で師匠である染丸さんにお世話になったというお話もあった(一方、京大は卒論がないそう)。
トリの「仔猫」は染雀さんがもともと怪談噺を得意とされているだけに、聴き応えのある一席に。女の哀れが滲み、妖しささえも感じさせる高座だった。
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