川の底からこんにちは
評価:A
文句なしに面白い!今年あの、《神の領域》に達したと評しても過言ではない世紀の大傑作「告白」さえなければ、日本映画のベストワンに押せるのに……。
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貧富の差が激しいアメリカには《負け犬(Loser)映画》と呼ぶべき、確固たるジャンルがある。
その代表的傑作が「サイドウェイ」「リトル・ミス・サンシャイン」「レスラー」「サンシャイン・クリーニング」「その土曜日、7時58分」などである。
日本では成瀬巳喜男監督の作品(「浮雲」「女が階段を上る時」)が《負け犬映画》と呼べるんじゃないだろうか?でも成瀬亡き後、ここ50年くらいはこういったタイプの作品はなかったように想う。
「川の底からこんにちは」は、日本では珍しい《負け犬映画》である。ヒロインは上京して5年のOL。自分を「中の下」と言い、「だって、しょうがないですよね」が口癖。
人生どん詰まりの彼女がひょんなことから故郷に帰ることとなり、最終的には開き直ってがむしゃらに頑張る。そして己の業を肯定するーそんな彼女を思わず応援したくなる、爽やかな映画である。
ヒロインを演じる満島ひかりは評判通り素晴らしい。なにより存在感がある。若い頃の大竹しのぶみたい。今年の映画賞は昨年に引き続き、「告白」の松たか子が席巻しそうな勢いだが、僕は断固満島ひかりを支持する。彼女が昨年、主演した映画「愛のむきだし」も是非観てみたい(しかし、「愛のむきだし」は上映時間237分かぁ……)。
ぴあフィルムフェスティバル(PFF)アワード受賞者に長編映画を撮る機会を与えるPFFスカラシップにより製作された作品。石井裕也監督の商業映画デビュー作である。
映画冒頭から意表を突かれる。エッ、こんなシーンあり!?(どんなのかは、あなた自身が映画館でお確かめ下さい)大いに笑った。とぼけた会話の間がいい。「木村水産」の社歌も傑作!そしてラストシーンではジーンときた。
それにしても今時、音声がモノラルの映画なんて久しぶりに観たなぁ。自主映画(手作り)感があって、大いによろしい。
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