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世にも奇っ怪なオケ・コン!世界一ユニークなバルトーク現る〜大植英次/大フィル定期

ザ・シンフォニーホールへ。大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴く。

D01

プログラムは、

  • バルトーク/管弦楽のための協奏曲(Concert for Orchestra)
  • シューマン/交響曲 第2番

ハンガリーの作曲家バルトークは晩年、ナチスから逃れ、亡命先のニューヨークの片隅で白血病と極貧生活に喘いでいた。そんな彼の窮状を見かねたフリッツ・ライナーやヨーゼフ・シゲティら仲間たちがクーセヴィツキーに掛け合い、クーセヴィツキー財団からの委嘱という形で作曲されたのがこのオケ・コン(Concert for Orchestra)である(1944年、ボストン交響楽団が初演)。

まず第1楽章「序奏」。大植さんはストコフスキーばりにテンポを動かし、グロテスクな音楽を展開する。弦は粘り腰で、納豆が糸を引くよう。作曲家の内面にあるドロドロしたものを吐き出すかのようだ(僕は「千と千尋の神隠し」に登場する、ヘドロを溜め込んだ河の神”オクサレ様”のことを連想した)。バルトークがまるでマーラーの様に響いた。

第2楽章「対の遊び」でも大植さんは極端にテンポを動かす。ピチカートは大きな手振りで弦が弾かれ、リズムのアクセントが強調される。結果、曲調のおどけた滑稽さが浮き彫りにされる。こんなユニークな解釈は、いまだかつて聴いたことがない。

第3楽章「エレジー」からは悲痛な慟哭が聞こえてくる。押しては引く波。弦の強奏が鮮烈な印象を与える。

第4楽章「中断された間奏曲」は夜の音楽。梟(ふくろう)や鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい。そこへ突如、けたたましい骸骨踊りが始まる!

そして音楽はアタッカで怒涛のごとく終曲(終極?)へと雪崩れ込む。これはハンガリーの民族舞曲。しかし大植/大フィル版は決して普通のダンスじゃない。皆が狂ったように踊る、踊る!酔っ払っているのか、はたまたハッシュシュかマリファナでもやってラリっているのか??兎に角、尋常ではない熱狂的雰囲気のうちに幕切れとなった。そこに僕はバルトークがあたかもフェリーニの如く、こう叫んでいるのを聞いた。「人生は祭りだ!一緒に過ごそう」いやぁ、エキサイティングな体験をさせて貰った。

さて、プログラム後半。大植さんにとってシューマン/交響曲第2番がどれくらい重要な意味を持つかは、下記ブログに詳しい。

あれから20年、大植さんはシューマンの2番を封印されてきたわけだ。しかし遂に、それが解かれる日が来た。

第1楽章。柔らかい響き。まろやかな手触りに魅了される。大フィルはライン川の流れのようにゆったりと、伸びやかに歌う。大植さん、入魂の指揮ぶりである。

第2楽章、まるでメンデルスゾーン(「真夏の夜の夢」)のようなスケルツォ。軽やかに妖精たちが飛び跳ねる。緩急自在なドライブ感が実に爽快。

第3楽章アダージョ。息の長い旋律のうねり。内に燻ぶる情熱の炎が燃え、浪漫の芳香に満ち溢れた演奏。それは明らかにワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」に繋がっている。帰宅して調べてみると案の定、「トリスタン」のオペラ化は当初シューマンのために計画されたものだったようだ。しかし実現に至らず、その後ワーグナーに持ちかけられたという。このシンフォニーが初演されたのが1847年、「トリスタンとイゾルデ」が1865年である。

そして気宇壮大な第4楽章へ。生命の讃歌。大植さんは万感の想いを込め一心にタクトを振り、大フィルもそれによく応えた。

しばしば優秀な弦の足を引っ張る金管だが、今回大きな傷は皆無。やれば出来るじゃないか。これからもこの気概で頑張って欲しい。

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コメント

バルトークは最近PACで聴いたのですが、今回全く違った趣にきこえたのですが・・雅哉さんの解説で納得いきました。
かなり泥臭い、こってり感のある演奏という感じですね。

投稿: jupiter | 2010年7月10日 (土) 13時23分

jupiterさん、コメントありがとうございます。

仰る通り、「泥臭い」="オクサレ様”といった感じです。

今シーズンの大フィル定期、現時点で僕が気に入った順は
 
1.大植/オケ・コン
2.フルシャ/巨人
3.大植/シューマン2番

そんなところです。

投稿: 雅哉 | 2010年7月11日 (日) 00時45分

私も、Jupiterさんと同じく、PACと大フィルと、二つオケコンを聴いたくちです。全く違う曲でしたね。

大フィルがこの曲をここまで弾けるとは、正直思っていませんでしたが(笑)。

シューマンは、感動的でした。今回の演奏が、録音されていなかったのは、少し残念です。

投稿: ぐすたふ | 2010年7月11日 (日) 00時51分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

僕も今回、ライヴ・レコーディングされていたら良かったのにと想いました。2年前なら毎回されていましたが、現在はCD業界も不況で大変なのでしょう。

それにしても「あの」物議を醸したマーラー5番のライヴは世に問わないんでしょうか?勿体ないです。

投稿: 雅哉 | 2010年7月11日 (日) 00時58分

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