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2010年7月18日 (日)

これぞミュージカルの原点!「ファンタスティックス」あれこれ(亜門版も)

2001年8月末、僕はニューヨーク・タイムズスクエアにあるTKTS(チケッツ)のブースで迷っていた。

ここはブロードウェイ・ミュージカルの当日券を格安価格で販売しているところ。「プロデューサーズ」(この年にトニー賞を総なめにしたばかり)「オペラ座の怪人」「キャバレー」「42nd Street」などのチケットは日本で既に押さえてやって来たのだが、滞在期間中、一日だけマチネの時間が空いていた。

選択肢は二つ。オフ・ブロードウェイ作品の「ファンタスティックス」を観るか、「プロデューサーズ」のスーザン・ストローマンが振付・演出したリヴァイヴァル「ザ・ミュージック・マン」を観るか。

そこで僕は考えた。「ファンタスティックス」は1960年5月3日の初演以来、実に40年以上の長きに渡りロングランされている作品(ロンドンの「ねずみとり」みたいなもの)。今度ブロードウェイに来るときでも観る事は出来るだろう。でも「ザ・ミュージック・マン」は間もなく終わってしまう……。一期一会、答えは決まった。

……しかし、この判断は間違いだった。「ザ・ミュージック・マン」はお子様向けで、あまり面白くなかった(オリジナル・キャストによる映画版の方はとても好きなのだが)。そして僕が日本に帰国して約二週間後、あの同時多発テロがニューヨークを襲ったのである。9月11日のことであった。

その後ブロードウェイに足を運ぶ観光客は激減、「ファンタスティックス」の公演はあえなく翌年の2002年1月13日に閉幕してしまう。こうして僕がブロードウェイでこの作品を見る機会は永遠に失われてしまった。

そんな中、2003年に宮本亜門 演出、井上芳雄 主演による日本版「ファンタスティックス」が幕を開けた。

舞台装置は質素で、出演者はたった8人。青年マットと少女ルイザをめぐる、穏やかで、純朴、シンプルな物語。

オーケストラも小編成で、優しくピュアな旋律に心が洗われるよう。そして「トライ・トゥ・リメンバー」という歌の何という美しさ!

胸を打たれる舞台であった。別に巨大なヘリコプターとか、バリケード、落下するシャンデリアといった大掛かりなセットがなくても、それなりのストーリー、そして素敵な音楽と踊りさえあればいい。そんなミュージカルの原点を感じさせてくれる珠玉の作品であった。

「ファンタスティックス」の脚本・作詞を担当したトム・ジョーンズがこの亜門版を観て大いに気に入り、彼の推薦でロンドンのウエストエンドでの「ファンタスティックス」の演出も宮本亜門が任されることとなった。そして今年、約1ヶ月の公演が実現した。その亜門版が日本でも再演される。

東京公演の詳細は→こちら

大阪公演は→こちら

今回の出演者は鹿賀丈史、田代万里生、神田沙也加ら。田代万里生は「マルグリット」でミュージカル・デビューした美声のテノール歌手。神田沙也加の初舞台「イントゥ・ザ・ウッズ(Into the Woods)」を僕は東京で観たが、とても素直な歌い方で好印象だった。

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