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2010年7月 8日 (木)

「木の器コンサートシリーズ」Ensemble Les nations/バッハとテレマンの協奏曲

ザ・フェニックスホールへ。

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Ensemble Les nationsは古楽器によるアンサンブル。2005年ブルージュ国際古楽コンクールでの出会いを契機に、2006年より活動を始めた。公式サイトはこちら。演奏会によりメンバーは異なるようだが、今回出演した9人のうち日本人は7人。古楽の本場はオランダ、ベルギーだけに、ハーグ、アムステルダム(以上オランダ)やブリュッセル(ベルギー)の音楽院で学んだ音楽家が6人を占める。

リコーダーの宇治川朝政さんは2005年ブルージュ国際古楽コンクール第2位(管楽器では最高位)受賞、2009年国際テレマンコンクールでは第1位と聴衆賞を受賞した実力派。

木製のフラウト・トラヴェルソ(バロック・フルート)を担当する管きよみさんはバッハ・コレギウム・ジャパンやオーケストラ・リベラ・クラシカのメンバーとして有名。

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プログラム前半は、

  • J.S.バッハ/管弦楽組曲 第2番より「序曲」
  • テレマン/ヴィオラ協奏曲
  • J.S.バッハ/フルート、ヴァイオリン、チェンバロのための協奏曲

休憩を挟み後半が、

  • テレマン/組曲 イ短調 より「序曲」
  • テレマン/リコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲
  • テレマン/4つのヴァイオリンのための協奏曲
  • テレマン/リコーダーとフルートのための協奏曲

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古楽器だから当然ガット弦を張り、現在より短いバロック弓。ヴァイオリンに顎当てはなく、チェロにはエンドピンがない。また4弦のチェロに対し、ヴィオ ラ・ダ・ガンバは通常6弦(今回は7弦のもの)。弓の持ち方も異なり、チェロはオーバーハンドなのに対し、ガンバはアンダーハンド(掌を上に向けて持つ)。

特にバロック・ヴィオラを担当したアダム・レーマー(ハンガリー)とバロック・チェロ及びヴィオラ・ダ・ガンバを担当したロバート・スミス(イギリス)の腕前が見事だった。力強く弾む低音部。

全体としても自発性に富むアンサンブルで、「リコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバのための協奏曲」における丁々発止の掛け合いはスリリングだった。

僕が特に感銘を受けたのは「リコーダーとフルートのための協奏曲」。バロック音楽の終焉と共に役割を終えようとしていた縦笛=リコーダーと、古典派の台頭でこれから大活躍をすることになる横笛=フルート(フラウト・トラヴェルソ)の束の間の邂逅、ほんの一瞬のクロスオーバー。それは奇跡のように美しく、そして切ないハーモニーであった。

この終楽章プレストはポーランドの民族舞曲。バグパイプやハーディ・ガーディーの響きまで聞こえてくる。何と愉しい音楽だろう!

バッハの眼差しは厳しい。それはあくまで神の身許に近付くためのストイックな道程である。それに対してテレマンはより人間的であり、音楽の歓びに満ちている。どちらが優れているという問題ではない。両者は全く別ものであるということを、この演奏会を通して深く理解することが出来た。

新進気鋭の若い音楽家で構成されるEnsemble Les nationsは恐らく、現在メンバーが相当入れ替わってしまったラ・プティット・バンドより実力は上だろう。必聴。

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