大阪市音楽団 定期/リハーサル見学会
大阪市音楽団(市音)の記念すべき第100回 定期演奏会は6/12(土)午後4時、ザ・シンフォニーホールで開催される(当日券あり)。指揮は市音の特別指揮者・芸術顧問の秋山和慶さん。
吹奏楽を代表する名曲中の名曲が演奏される。これら抜きで20世紀の音楽は語れないし、この絶好の機会を逃す手はない。
- ヨハン・デメイ/交響曲 第1番 「指輪物語」
- ジェイムズ・バーンズ/交響曲 第3番
上記2つの交響曲は市音により日本初演され、特にバーンズの方は世界初演となった。満を持して、待望の再演である。
「指輪物語」は5楽章形式で、
- 魔法使いガンダルフ
- エルフの森”ロスロリエン”
- ゴラム(スメアゴル)
- 暗闇の旅(モリアの坑道〜カザド=デュムの橋)
- ホビット
という構成。原題が"THE LORD OF THE RINGS"で、ピーター・ジャクソン監督で映画化され、アカデミー作品賞・監督賞などを総なめにしたことは記憶に新しい。なお、映画版の作曲はハワード・ショア(アカデミー作曲賞受賞)でまったく別物。
デ=メイはオランダの作曲家。本作はアメリカで開催された吹奏楽曲コンクールで世界27ヶ国から集まった143作品の中から1位に選ばれた。両者を聴き比べてみるのも一興だろう。
今回のリハーサルではバーンズのみ聴かせて貰った。この作曲家は「アルヴァマー序曲」があまりにも有名。テレビ朝日「題名のない音楽会」の吹奏楽人気ランキングでも堂々第2位となった。
交響曲 第3番は特に第3楽章”ナタリーのために”が白眉。生後半年で亡くなった娘へのエレジー(悲歌)である。
第1楽章は重々しいファンファーレから始まる(レント)。金管の悲痛な叫び。それは愛娘を失ったことへの作曲家の慟哭にも聴こえる。そしてアレグロの主部は嵐が吹き荒ぶ激情の音楽が展開される。
第2楽章は一転しておどけた、グロテスクなスケルツォ。妖怪が跋扈する、百鬼夜行の世界。秋山/市音はカチッとしたテンポで、歯切れのよい演奏を聴かせる。
第3楽章冒頭。ハープと打楽器が、まるでオルゴールのようにピュアな音色を奏でる。赤ちゃん部屋の情景が目に浮かぶよう。それに乗ってオーボエ、イングリッシュホルンが胸を打つ、天国的に美しい旋律を奏でる。そして「ナタリーのテーマ」はホルンやサクソフォン、トランペット、トロンボーンなどに歌い継がれてゆく。感動的な楽章である。
第4楽章は輝かしい響きでグングン前へと進む、生命力と躍動感に溢れた楽章。市音の妙技が圧巻!この交響曲が作曲された直後、バーンズには3人目の子供が生まれている。終楽章はその希望の光を反映していると言えるだろう。
こうして通して聴いてみると、この傑作が「苦悩を突き抜け、歓喜へ!」という、ベートーヴェンの交響曲から脈々と受け継がれてきた音楽的構造に則っているいることが理解出来る(ブラームスの交響曲 第1番、チャイコフスキーの5番、そしてマーラーの5番も同様のコンセプトである)。
金管の編成はトランペット(+コルネット、フリューゲルホルン)が8本、ホルン6本、トロンボーン(バス・トロンボーン含む)5本、チューバ3本、ユーフォニアム2本。そのド迫力のサウンドを、当日はザ・シンフォニーホールで堪能しよう!
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コメント
本番、聴いてきました。バーンズ、すごかったです。
いやあ、オケばっかり聴いてると、近代音楽の果実を味わい損ねかねませんね。再認識しました。
投稿: ぐすたふ | 2010年6月12日 (土) 22時47分
ぐすたふさん、コメントありがとうございます。
これは当ブログでも何度も書いている持論なのですが、20世紀のオーケストラ曲はシェーンベルク以降、十二音技法や無調に突き進みました。そして調性音楽の伝統は映画音楽と吹奏楽にしっかり受け継がれてきたのです。
是非これを機会に、今後もどんどん市音の演奏をお聴き下さいね!
投稿: 雅哉 | 2010年6月13日 (日) 00時14分