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2010年6月 6日 (日)

午前十時の映画祭/神様が降りてきた映画「ある日どこかで」

2007年12月18日よみうりホール、立川談志さんは落語「芝浜」を演じ、「ミューズ(芸の神様)が降りてきた」と言わしめた伝説の高座となった(10枚組みDVD「談志大全 上」に収録)。

カルト・ムービー「ある日どこかで」(Somewhere in Time)もまた、「神様が降りてきた映画」としか表現しようがない。その不朽の名作がスクリーンで、しかもニュープリントで観れるということで、TOHOシネマズなんば「午前十時の映画祭」(実施の詳細はこちら)に足を運んだ。もう何度となくビデオで観て、今はDVDも所有しているが、映画館は初体験である。びっしり満席。

G01

「ある日どこかで」はリチャード・マシスンのSF小説を原作者自身が脚色を担当し、1980年に映画化されたもの。マシスン原作で映画化されたものとして、他に「奇跡の輝き」「アイ・アム・レジェンド(地球最後の男)」「運命のボタン」などがある。

Somewhere_in_time_1980

監督はヤノット・シュワルツ。この人は他に「ジョーズ2」や「スーパーガール」などを撮っており、まあ言ってしまえば二流監督に過ぎない。

主演は「スーパーマン」ことクリストファー・リーヴ、そしてヒロインをジェーン・シーモアが演じる。リーヴは後に落馬事故で脊髄損傷を起こし、首から下が麻痺してしまう(2004年死去)。また、クリストファー・プラマー(サウンド・オブ・ミュージック、ビューティフル・マインド)がいぶし銀の味わいでしっかり脇を固め、往年の清純派スター、テレサ・ライト(疑惑の影、我らの生涯の最良の年)がちらっと登場するのも嬉しい。

一体何がこの映画に化学反応を引き起こしたのか解らない。しかし何か特別なことが起こった。そして作品は永遠の生命(奇跡の輝き)を得て、世界中に熱狂的なファンを獲得することになる(「ある日どこかで」のファンサイトはこちら)。僕もその魔法の虜になった一人である。原田知世主演、大林宣彦監督の「時をかける少女」(1983)、そして仲里依紗が主演した谷口正晃監督によるリメイク版(2010)にも「ある日どこかで」は多大な影響を与えている。

また、こちらのビクター製S-VHSのCMをご覧頂きたい。これは明かな「ある日どこかで」へのオマージュである。

Somewhere

恐らく、本作以上にロマンティックで切ない映画はこの世に存在しない。そしてその情感を、いやがうえにも高めているのがジョン・バリーの音楽である。彼なくして、この映画は傑作になり得なかったであろう(バリーは「野生のエルザ」「冬のライオン」「愛と哀しみの果て」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」で4度アカデミー作曲賞を受賞)。オリジナルのテーマ曲も傑出しているが、特筆すべきは挿入曲ラフマニノフ/「パガニーニの主題による狂詩曲」第18変奏。もうまるで、この映画のために作曲されたのではないかというくらい物語に寄り添っている。実はマシスンの原作では、この音楽はマーラー/交響曲第9番であった。しかし監督のシュワルツはこの小品にマーラーは相応しくないと考え、バリーがラフマニノフを提案した。マシスンはこの変更に不満だったという。そしてバリーの判断は正しかった。今や、この映画にマーラーが流れるなんて絶対に考えられない。

今回初めて気が付いたことがいくつかあった。まず映画の序盤、主人公リチャードの仕事部屋にマーラー/交響曲のLPレコードが置いてあったこと。これは原作者に敬意を表してのアイディアなのだろう。それから冒頭で老婦人が亡くなる部屋と、ラストシーンでリチャードが死を迎えようとする部屋が同一であることも判明した。

大好きな作品を、映画館の暗闇にゆったりと身を委ね、心地よい涙を流しなら鑑賞する……正に至福の時間であった。そして場内の明かりが点いた時は、もう殆ど放心状態であった。

大阪での上映は今週一杯。地域によりスケジュールが異なるのでご確認を。

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