「らくだ」登場!/鶴瓶と誰かと鶴瓶噺@河内長野
河内長野ラブリーホールへ。
先月、鶴瓶さんが「鶴瓶と笑子と三四郎 落語会」でネタおろしした、くまざわあかね作の私落語について、タイトルが書き辛かったので僕は記事の中で○○○と表現した。
今回鶴瓶さんは「ネタ帳にこの演題をひらがなで書いたら、いやらしいやん!だから僕はローマ字で書くようにしているんです。そしたらアホな噺家がそれを”チェンジ”(CHANGE)と読んだんや」(ここで春蝶さん爆笑)と仰っていたので、僕もそれに準じることにする。なお、このネタは3回目の口演だそう。もちろん大受けだった。
- 笑福亭鶴瓶/鶴瓶噺
- 桂 春蝶/山内一豊と千代
- 笑福亭鶴瓶/私落語"CHINGE"(くまざわあかね 作)
- 笑福亭鶴瓶/らくだ(古典)
鶴瓶噺では映画「おとうと」で共演した吉永小百合を「ねえちゃん」と呼んでいること、「ディア・ドクター」で共演した瑛太から先ほど携帯に電話がかかり、カエラとの結婚や妊娠の話を聞いたことなどを披露された。
「僕の携帯にはね、1000人くらい(芸能人の)電話番号が登録されているんです」と言うと、客席のおばちゃんが「落として!」と反応し、爆笑に。「いやぁ、大阪のおばちゃんは本当におもろいわ」鶴瓶さんは古典落語「死神」に登場する死神(原作はヨボヨボの爺さん)を若い女に変えて演じているが、噺の中で主人公が「綺麗やなぁ」と言うと、その目線の先に座っていたおばちゃんが「ありがとう」と答えたとか。「この後で落語しますけれど、途中で絶対喋ったらあかんで」
8年前から本格的に落語に取組み始めた鶴瓶さん。「現在レギュラー8本持ってますが、年間120回は落語しています。繁昌亭にもできる限り月1回は出たいと思っているんです」と。
春蝶さんは昨年の襲名以降、「山内一豊と千代」「大阪城の残念石」など講談ネタに積極的に取組んでいる。このネタは春蝶さん以外する噺家はいない。しっかり独自の個性を打ち出しているのだから立派である。よく練られた高座だった。
中入りを挟み、後半。何が飛び出すのかワクワク。会場の照明が落とされ、高座の背景は障子。笑福亭の紋「五枚笹」がその中央に浮かび上がる。この演出は「死神」か?
そして鶴瓶さんが登場し、何と僕が前から聴きたかった「らくだ」が始まった。まさかここで演ってくれるとは!(二日前に演目を決めたそうである)
「らくだ」は鶴瓶さんの師匠、六代目・笑福亭松鶴が十八番にしていたネタ。
どぶさっとぉる思たら、ゴネてけつかる。
といった、大阪独特の古い言い回しが出てくる。
「どぶさる」は「伏せる=寝る」に下品な接頭語「ど」を付けたもの(現代でも「どたま《頭》かち割ったろか」という風に用いられる)。「ごねる」とは「御涅槃(ごねはん)る」から来ていて「死ぬ」という意。
鶴瓶さんの「らくだ」は紙屑屋の笑顔とひょこひょこした歩き方の表現が秀逸。弥猛(やたけた)の熊五郎が紙屑屋を威嚇するために、片足で床をドン!と踏みならす演出も効いている(反対の足はちゃんと座布団にタッチしている)。そして酔っ払いの凄み。これぞ笑福亭のお家芸。
最後は死んだ「らくだ」を紙屑屋と熊五郎が漬け物樽に入れて、千日前の火屋(ひや=火葬場)へと運ぶ。サゲが「火屋(冷や)でもいいから、もう一杯」なのだが、この火屋が死語なので現代人には通じず、最後まで演る噺家は少ない。
鶴瓶さんはこの二人の珍道中をしっかり描き(途中、寄り道もする)、本来のサゲまできっちり演じられた。しかし、何と鶴瓶版にはその続きがあったのである!大どんでん返しのエピローグ。呆気にとられた。しかし、決して違和感はない。今まで聴いた最高の「らくだ」であった。エンディングにはスクリーンが降りてきて準備から本番までを映像で見せる演出も。いやぁ、面白かった。
もしあなたが落語ファンなら、鶴瓶版「らくだ」は機会があれば万難を排し、絶対観るべきである。僕もまた足を運びたい。
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