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2010年6月17日 (木)

シリーズ《映画音楽の巨匠たち》 第1回/ニーノ・ロータ 篇

キネマ旬報社から「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇」という本が出版された。これは映画評論家、音楽評論家、映画監督、作曲家、文化人らにアンケートし、集計したもの。

ベストテンは以下の通り。

  1. 男と女(フランシス・レイ)
  2. ゴッドファーザーニーノ・ロータ
  3. 第三の男(アントン・カラス)
  4. ニュー・シネマ・パラダイス(エンニオ・モリコーネ)
  5. ウエストサイド物語(レナード・バーンスタイン)
  6. シェルブールの雨傘(ミシェル・ルグラン)
  7. スター・ウォーズ(ジョン・ウィリアムズ)
  8. 太陽がいっぱいニーノ・ロータ
  9. 仁義なき戦い(津島利章)
  10. 死刑台のエレベーター(マイルス・デイビス)

ここでイタリアの作曲家、ニーノ・ロータが2作品ランクインしているのが目を惹く。さらに20位までにフェデリコ・フェリーニ監督とロータのコラボレーション「8 1/2」と「」の2作品も入選している。また「好きな映画音楽作曲家」ベストテンにおいて、ロータは堂々第1位に輝いた。

Nino

「ニーノ・ロータは天使のような人だった」……フェリーニの言葉である。

ロータの音楽の魅力は一言で語るなら、その美しくも哀しみに満ちた旋律にあるだろう。ルキノ・ヴィスコンティ監督のイタリア映画「山猫」に代表される、格調高いシンフォニックなクラシック音楽を基調にしながら、時に「カビリアの夜」や「甘い生活」のようにJAZZの風味を盛り込んだりもする。また特にフェリーニ作品で顕著なのだが、「」や「8 1/2」などサーカス音楽で賑やかに騒いだりもする。しかし一見陽気な音楽の中に、ロータ特有の孤独感、哀愁が失われることはない。

ロータとフェリーニは映画「白い酋長」(1951)で出会い、意気投合した。そしてロータが亡くなる直前の「オーケストラ・リハーサル」(1979)まで、その共同作業は続いた。映画監督と作曲家のこれだけ長きに渡る協力関係は非常に稀で、僕が思いつくのはスティーブン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズくらいだろうか(1974年スピルバーグの映画監督デビュー作以来、現在まで)。

僕はそうだなぁ、「カビリアの夜」もお気に入りだし(試聴はこちら)、「ゴッドファーザー PART II」の切ない”移民のテーマ”も好きだ(少年時代のヴィト・コルレオーネがシチリアからニューヨークに移民船で渡り、初めて自由の女神像を目の当たりにする場面。試聴はこちら)。イタリア古楽の風味が付けられた「ロミオとジュリエット」もいい。

そして忘れられないのが小学生のとき映画館で観た「ナイル殺人事件」。僕は当時アガサ・クリスティの大ファンだったので、親にねだって連れて行ってもらったのである。ニーノ・ロータの音楽は雄大なナイル川のように滔々と流れ、そして美しかった。亡くなる前年の傑作である(試聴はこちら)。当時サントラのLPレコードを小遣いで買い、現在はCDで所有している。

ロータは「本業はあくまでクラシックの作曲であり、映画音楽は趣味に過ぎない」と語っていた。生涯に4つの交響曲、2つのピアノ協奏曲、弦楽のための協奏曲、そしてオペラ「フィレンツェの麦わら帽子」などを書いた。

現在ロータの音楽に熱心に取り組んでいるのが名指揮者リッカルド・ムーティである。彼はミラノ・スカラ座管弦楽団とロータのアルバムを何枚かレコーディングしているし、ウィーン・フィルとの来日公演でも映画「山猫」の音楽と、トロンボーン協奏曲を取り上げている。ムーティは南イタリアのナポリに生まれ、バーリ音楽学校へ入学した。この時校長をしていたのがニーノ・ロータだった。

さて、児玉宏/大阪交響楽団は2011年3月の定期演奏会でニーノ・ロータ/交響曲 第4番「愛のカンツォーネに由来する交響曲」を取り上げる。これは第1楽章の主題がイギリス映画「魔の山」(The Glass Mountain,1948)のテーマ曲となり、第3,4楽章は映画「山猫」(1963)に転用された(試聴はこちら)。限りなく美しい旋律、浪漫的で芳醇な香りに満ちた名曲である。「魔の山」のクライマックス・シーンはこちら(「愛のカンツォーネ」という意味がこれを見れば分かる)。そしてピアノ協奏曲風にアレンジしたものはこちら

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