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2010年6月

2010年上半期映画ベスト20

早いもので2010年も前半戦が終了した。そこで今年、劇場公開された新作で僕のお気に入りを列挙してみよう。それぞれタイトルをクリックすれば、映画のレビューに飛ぶ。

  1. 告白
  2. ハート・ロッカー
  3. おとうと
  4. (500)日のサマー
  5. 第9地区
  6. シャネル&ストラヴィンスキー
  7. クレイジー・ハート
  8. プレシャス
  9. のだめカンタービレ 最終楽章(後編)
  10. パレード
  11. 17歳の肖像
  12. マイレージ、マイライフ
  13. フローズン・リバー
  14. インビクタス/負けざる者たち
  15. プリンセスと魔法のキス
  16. ラブリーボーン
  17. ゴールンデンスランバー
  18. NINE
  19. アリス・イン・ワンダーランド
  20. クロッシング

10年に1本の傑作「告白」はダントツの1位。さて、果たして来年の米アカデミー外国語映画賞部門の日本代表になれるか!?

役者で印象に残ったのはやはりアカデミー主演男優賞を受賞した「クレイジー・ハート」のジェフ・ブリッジス。「おとうと」の笑福亭鶴瓶も良かった。特に泥酔して蒼井優の結婚式を滅茶苦茶にする場面は最高。新人賞は「告白」の橋本愛で決まり。それから「のだめカンタービレ」の上野樹里が演奏するシーンに対しても、惜しみない拍手を送りたい。ブラボー!

音楽で印象深かったのは「プリンセスと魔法のキス」、歌はミュージカル「NINE」の映画のために書かれた新曲”シネマ・イタリアーノ”

それから上のリストに「川の底からこんにちは」が何故入っていないのか、東京の方は訝しく思われるかも知れない。実は大阪での公開は7月10日からなのです。観たらすぐレビューを書きますので、しばしのお待ちを。

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ブロードウェイの衰退/トニー賞授賞式2010

NHK-BSで放送されたアメリカ演劇界の祭典、トニー賞授賞式を見た。「ライオンキング」が最優秀ミュージカル作品賞、「キャバレー」(映画「シカゴ」「ナイン」のロブ・マーシャルと「アメリカン・ビューティ」「レボリューショナリー・ロード」のサム・メンデスが共同演出)がミュージカル・リヴァイヴァル作品賞を受賞した1998年以降、欠かさず見ている。

しかし、はっきり言って今年のトニー賞の中身は一番低調で、詰まらなかった。

パフォーマンスを見て興味を引かれたのはリヴァイヴァルの「ラグタイム」と「プロミセス・プロミセス」くらい。「ラグタイム」は既にクローズしている。

ミュージカル「ラグタイム」が初演されたのは1998年。トニー賞では「ライオンキング」との一騎打ちとなり、惜しくも敗れた。タイミングが悪かった。僕はオリジナル・キャストCDを持っているが、楽曲は大変素晴らしい。しかしこの作品、人種問題を扱っているので日本人キャストによる上演は難しく、未だに実現していない。そういう意味では今年、最優秀ミュージカル作品賞、楽曲賞を受賞した「メンフィス」も同様のことが言えるだろう。人種差別が根強く残る南部の街を舞台に、黒人音楽を世に広めようとする白人DJの物語だという。日本人が黒塗りしてもねぇ……。

プロミセス・プロミセス」はビリー・ワイルダー監督の映画「アパートの鍵貸します」を舞台ミュージカル化したもの。台本がニール・サイモン。作詞:ハル・デイビッド、作曲:バート・バカラックのコンビは映画「明日に向かって撃て!」の主題歌「雨にぬれても」や、「アルフィー」、カーペンターズが歌った"Close to You"(遥かなる影)などでお馴染みだろう。これは是非、日本でも再演して欲しい(出来ればニュー・ブロードウェイ版で)。

演技賞を受賞したのは、ディンゼル・ワシントン、スカーレット・ヨハンソン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズら。ハリウッド・スターが多いのはアメリカ演劇界の沈滞を如実に示しており、話題先行で頂けない。ゼタ=ジョーンズがスティーブン・ソンドハイムのミュージカル「リトル・ナイト・ミュージック」から名曲"Send in the Clowns"を歌うということで大変期待したのだが、風邪でも引いたらしく、ハスキー・ボイスで喉のコンディションが非常に悪かった。

今から考えると、「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などロンドン・ミュージカルが席巻した1980年代から既にブロードウェイ・ミュージカル凋落の兆しは見られていたと言えるだろう。

企画力・冒険心のなさは映画(アニメ)の舞台化という形で1990年代以降顕著となった。「美女と野獣」「ライオンキング」「プロデューサーズ」「モダン・ミリー」「ヘアスプレー」「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」等がそれに該当する。

そしてABBAの楽曲を大量投入した「マンマ・ミーア!」の大ヒット以降、ブロードウェイでいま流行っているのがジューク・ボックス・ミュージカル。つまり既成のヒット曲を並べ立てる手法である。2006年にトニー賞を受賞した「ジャージー・ボーイズ」がそうだし、今年ミュージカル作品賞にノミネートされた4作品のうち、何と3作品がジューク・ボックス・ミュージカルという情けなさ。パンク・ロックバンドのグリーン・デイを題材にした「アメリカン・イディオット」のパフォーマンスを見ながら「こんなコピー・バンドの演奏を聴いてもしょうがないじゃん。本物のライヴを聴きに行ったほうが断然、盛り上がるんじゃない?」という白けた気持ちになった。

だから今年、楽曲賞にノミネートされた4作品のうちミュージカルは「メンフィス」と「アダムス・ファミリー」の2作だけという寂しい結果に。残りの2つはストレート・プレイであった。

また、リヴァイヴァル作品賞・演出賞・主演男優賞を受賞した「ラ・カージュ・オ・フォール」は「市村正親さんがザザを演じた日本版のほうが断然いい」と感じたし、そもそもこれはロンドン発のプロダクション。アメリカ演劇界は一体どうしてしまったのか?

次々と新作を製作する宝塚歌劇があり、また「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」などウィーン・ミュージカルも愉しめる日本の方が、今はむしろ充実しているのではないかとさえ想われた。

今年のトニー賞の最大の見せ場は、結局スカーレット・ヨハンソンの大胆でセクシーなドレスだったのかも知れない→写真はこちら

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ショパン誕生200年記念/仲道郁代プレイエルを弾く

本当は葛藤があった。

この演奏会のチケットを購入した後に同日、「3000人の吹奏楽」が京セラドーム大阪で開催されることを知った。スペシャル・ゲストとして来年ベルリン・フィルに招聘された佐渡裕さんが登場、佐渡さんの指揮で「アルメニアンダンス・パート I」を演奏する人を一般公募していたのである。吹いてみたいという気持ちがなかったといえば嘘になる。しかし僕は昨年、淀工の丸谷明夫先生の指揮で大阪城ホールの《1000人のアルメニアンダンス》に参加した。あれで完全燃焼したので、今回はまあいいかと諦めることにした。

岸和田市の浪切小ホールへ。

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2007年にリリースしたベートーヴェンの後期ソナタ集CDでレコード・アカデミー賞(器楽部門)を受賞した仲道郁代さんによるオール・ショパン・プログラム。

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まず《第1部》はショパンが弾いていたのと同型の1842年製プレイエルによる演奏で、

  • 幻想即興曲
  • ワルツ 第6番「小犬」
  • ワルツ 第7番
  • 12の練習曲 op.10 第3番「別れの曲」
  • バラード 第1番

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休憩を挟み、《第2部》は現代のYAMAHAピアノ(CF III)で、

  • 夜想曲 第13番
  • 夜想曲 第14番
  • 12の練習曲 op.10 第12番「革命」
  • 12の練習曲 op.10 第5番「黒鍵」
  • 12の練習曲 op.25-1 第1番「エオリアンハープ」
  • スケルツォ 第2番
  • マズルカ 第13番
  • バラード 第4番
  • ポロネーズ 第6番「英雄」

ショパンは次のような言葉を残している。

「僕は気分のすぐれないときはエラールのピアノを弾く。このピアノは既成の音を出すから。しかし身体の調子の良いときはプレイエルを弾く。何故ならこの楽器からは自分の音を作り出す事が出来るから」

プレイエルはオーストリアのウィーン近郊で生まれ、パリへ移った。一方、セバスチャン・エラールはアルザス地方のストラスブール(現フランス、当時はドイツ領。ドーデ著「最後の授業」の舞台となった)に生まれ、パリにピアノ工房を開いた。エラールは幼少時から機械に対して興味を持ち、建築学などを学んでいたという。

ショパンコンクールに優勝したダン・タイ・ソンはショパンが生きた時代にエラール社が製作したピアノを弾き、ブリュッヘン/18世紀オーケストラとショパンの協奏曲をレコーディングしている。また今年は1848年製プレイエルを弾いたそうだ。

今回使用されたプレイエルは堺市在住のフォルテピアノ修復家・山本宣夫さんのコレクションで1842年パリ製。山本さんと仲道さんによるトークもあった。

山本宣夫さんについて紹介された記事は下記。

仲道さんによるとエラールのピアノはメカニック的に現代のピアノに近く、一定の音質が出る。一方、プレイエルはレスポンス(反応)がよく、指先のニュアンス、細やかな感情の動きがそのまま音になる。その分神経を使って弾かないといけない。大きなコンサートホールには不向きな楽器であり、プレイエルを弾くことでスラーなどショパンが楽譜に書いた記号の本当の意味を知ることが出来る。つまり作曲家の言葉、肉声に近づける。現在のものとはまったく違う楽器と言ってもよい。ピアノが進化する過程で失われたものは大きい。これからの自分の課題はプレイエルで学んだことを、どうモダン・ピアノに活かせるかである、といったお話があった。

山本さんは「今の仲道さんのお話を伺って、ショパンが言っていたこと(上述)の意味が理解出来ました」と語り始めた。プレイエルに張られた弦の張力はモダン・ピアノの半分以下。大きな音を出すように設計されていない。むしろピアノの周りに柔らかい音を奏でるためのものであるとのこと。

プレイエルは鍵盤の幅が違い、調律も異なるのだそう。

帰宅してそれぞれのピッチを調べてみると、1890年製エラールがモダン・ピアノと同じA=442Hzで、プレイエルが少し低い435Hzだった。

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YAMAHAのピアノが、大きく滑らかな音を奏でるのに対し、プレイエルはコロコロと丸みを帯びた、優しい音色であった。まるでガラス細工のようで、触れたら傷つけてしまうのではないかというような繊細さ。そこに病弱で青ざめた、青年ショパン像が浮かび上がってくる。そして僕は想った、「ショパンの音楽は甘くない」と。

仲道さんの演奏はお見事の一言。YAMAHAによる後半の演奏も、透明で硬質なバラード、そして毅然として格調高い英雄ポロネーズまで心ゆくまで堪能した。

アンコールは夜想曲 第20番(遺作)を再びプレイエルで。映画「戦場のピアニスト」に使われたことでも有名。涙が出そうになるくらい美しかった!このコンサートに来て良かったと、心からそう想った。

しかしこうやってピアノに限らずピッチが異なるオリジナル楽器が幅を利かせる世の中になると、幼少時に440Hzで「絶対音感」を獲得した音楽家たちにとっては生き辛い時代なのかも知れない。いま、音楽教育のあり方そのものの変革が求められているのだろう。

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冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

邦題、ちょっと凝り過ぎ。原題は「復仇」。英題がVengeanceだから、つまり「復讐」ね。

Vengeance

評価:B

映画公式サイトはこちら

ジョニー・トー監督は相変わらずスローモーションを駆使した、スタイリッシュな映像で魅せる。同じ香港ノワール出身のジョン・ウー(「男たちの挽歌」「レッドクリフ」)の作風と、だいぶ被るけれど。

まあこの人の作品は、サム・ペキンパーの映画(「ワイルドバンチ」、「ゲッタウェイ」)に江戸の人情噺を加味したような所があって、「エグザイル/絆」はその湿っぽさ、男の友情に酔っている様が鼻につき、好きになれなかった。でも意外と本作はすんなり受け入れられた。

主人公の記憶が次第に失われてゆく設定はもう無茶苦茶で、「そんなのあるかよ!」と突っ込み所満載だが、笑えたので許す。

黎明を彷徨うような、仄暗いノワールの世界を心地よく堪能した。

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イリーナ・メジューエワ/ショパン2010

いずみホールへ。

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イリーナ・メジューエワによるショパン名曲コンサート。

  • 夜想曲 第20番
  • 即興曲 第4番「幻想即興曲」
  • ワルツ 第6番「小犬」
  • ワルツ 第9番「告別」
  • 練習曲 op.25-1「エオリアン・ハープ」
  • 練習曲 op.25-2
  • 練習曲 op.10-3「別れの曲」
  • 練習曲 op.10-12「革命」
  • 夜想曲 第2番
  • ポロネーズ 第6番「英雄」
  • 夜想曲 第15番
  • ピアノ・ソナタ 第3番

メジューエワはロシア生まれ。モスクワでピアノを学び、97年からは日本を拠点に活動している。今年リリースしたショパンの練習曲集、前奏曲集、夜想曲集のCDはいずれも「レコード芸術」誌の特選盤に選ばれ、しかも音楽評論家が手放しで絶賛している。今年のレコード・アカデミー賞は、きっと彼女が受賞するだろう。

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僕は日頃から、ショパンの音楽を主観的・自己陶酔的に弾くのは間違いだと考えている。だから思いっきりテンポ・ルバート(テンポを自由に動かすこと)をかけたショパンの演奏は大嫌いだ。先日聴いたダン・タイ・ソンの演奏にはそれがなく小気味よかったし、機械的とも言えるポリーニの演奏も好きだ。「抑制」があってこそ、「自由」が活きるのである。

メジューエワの弾くショパンは、ほのかな翳りや哀しみの色はあるが、決して感傷に溺れない。彼女の演奏には節度と、洗練された抒情がある。

そのしなやかな指から紡ぎ出される一音一音は磨き上げられ、しっかり自己主張する。どんなに速いパッセージでも疎かにされる音はなく、それぞれが均一で、明快に響く。

例えば英雄ポロネーズ。彼女はフォルテッシモでも決して力任せに鍵盤を叩かない。しっかり制御された、繊細な表現力がある。しかし左手は強靭なリズムを刻み、ポロネーズが元々ポーランドの舞曲であった事を、鮮烈に描出するのである。

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聴き応えのある充実した演奏会だった。メジューエワはぴょこぴょこお辞儀して、アンコールも3曲と大サービス。日本語も上手で、とっても感じのいい女性だった。

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Twitter始めました。

今ひとつ仕組みを理解出来ていないところはあるのですが、とりあえずTwitterをやってみることにしました。試行錯誤しながらの船出です。性に合わないと想ったら、やめちゃうかも知れません。悪しからず。とりあえず、一日一回はつぶやいてみようかな。

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桂吉弥・柳家三三/ふたり会(6/23)

6月23日(水)、天満天神繁昌亭へ。

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二日間開催される「ふたり会」の一日目。

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  • 桂弥太郎/軽業
  • 桂   吉弥/みかん屋
  • 柳家三三/船徳
  • 柳家三三/たらちね
  • 桂   吉弥/鴻池の犬

この日、同時刻に米朝一門の「尼崎落語勉強会」があり、吉弥さんの二番弟子・弥生さんら若手は皆そちらの方に出払っていたそう。だから「軽業」の鳴り物はベテランの雀松さんや吉弥さんが担当されたとか。また笑福亭たまさんが「勉強させて下さい」と楽屋を訪れていたとのこと。たまさんは東京での三三さんの落語会に出演し、今度はたまさんの会@ワッハ上方に三三さんがゲストで登場することもあり、挨拶がてら来られたのだろう。

若草色の着物で登場した吉弥さん、「繁昌亭昼席にこれを着て出た時、(桂)あやめ姉さんから『ケロヨンみたい』と言われました」と。笑顔が魅力的な「みかん屋」で、吉弥さんらしい明るい一席だった。

三三さんは飄々とした持ち味で、手練手管に長けた高座。上手いっ!「船徳」は体を前後に揺らすリズム感が心地いい。

たらちね」は上方落語「延陽伯」の江戸版。また違った味わいがあって、すこぶる面白かった。これが江戸っ子の気っ風だね。

鴻池の犬」は吉弥さんのマクラの作り方の上手さが光った。「上方落語まつり in ミナミ」の話題を振りながら、そこに本編に繋がる伏線をしっかり張っているのである。やっぱり大した才能だ。

なお二日目の木曜日、僕は大フィル定期に行ったのでこちらは断念したのだが、なんと大のサッカーファンである吉弥さんが即興で「蹴球W杯 決戦前夜」という新作をされたとか!うわぁ、聴きたかった……。

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フルシャ/ 大フィル定期 with 中村紘子

先日の延原武春/大阪フィルハーモニー交響楽団によるウィーン古典派シリーズに ついて、ある音楽評論家が「ミスが多い等の表層的理由で大フィルの金管は上手くない、と思いこんでいる人はこのシリーズを聴くべき」という旨を書いていた。ではウィーン・フィルやベルリン・フィルのトランペットはミスを連発するのか?と僕は問いたい。古典派の音楽はそもそもピストンのないナチュラル管を想定して作曲されている。だからモダン楽器なら後期ロマン派の曲と比べて吹き易い。これだけで技術的な良し悪しは評価できないと想うのだが。

さて、ザ・シンフォニーホールへ。

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大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会。指揮はヤクブ・フルシャ、1981年チェコ生まれ。まだ20代の俊英。今年の「プラハの春」のオープニングで「わが祖国」を指揮した。

プログラムは、

  • ショパン/ピアノ協奏曲 第1番(独奏:中村紘子)
  • マーラー/交響曲 第1番「巨人」

ショパンはピアノが入る冒頭、まるで打楽器のように指を鍵盤を叩き付ける荒々しさに仰天した。繊細さの欠片もない。ミスタッチが多く、音が濁る。テンポを気ままに動かす弾き方(テンポ・ルバート)にも閉口した。兎に角、中村さんの力任せのショパンは頂けない。先日聴いたダン・タイ・ソンとは雲泥の差。

フルシャ/大フィルが好サポートしていただけに勿体なかった。

そもそもショパンのオーケストレーションは単純・稚拙であり、これを定期演奏会ですること自体如何なものかと想うが、どうせ演るならせめてソリストを仲道郁代、菊池洋子、イリーナ・メジューエワ(←日本在住)あたりの実力派にして欲しかったなぁ。まあ、メジューエワのショパンは明日、いずみホールで聴くのだが。

しかし、プログラム後半のマーラーは打って変わって申し分なかった。第1楽章冒頭はゆっくりとしたテンポで始まる。しかし次第に加速して終結部では快速球に。フルシャという指揮者はリズム感の良さに抜群のセンスを感じさせるのだが、それが際だっていたのが第2楽章。アクセントが強調され、躍動するダンスが展開された。そして第3楽章、4楽章はppとpの違いが明瞭で、豊かなニュアンスの表現力が素晴らしい。瑞々しいマーラーであった。

日本のオケでこれだけ充実した「巨人」が聴けるのなら、ゲルギエフ/ロンドン交響楽団の来日公演は聴かなくても良いかなと想った夜であった。

そうそう、大阪センチュリー交響楽団の首席フルート奏者ニコリンヌ・ピエルーが今回客演していたので驚いた。しかもショパンはなんと1st!(マーラーは2nd)。異例の事態である。榎田さんがこの3月で定年退職されたので、名手ニコリンヌが近い将来大フィルに来てくれるのなら大歓迎なんだけれど……。ちなみに産経の記事によると、今月28日に開催される財団の理事会でセンチュリーの存続か解散かが大方決まるようである。

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アイアンマン2

評価:C+

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結論から先に言うと、この続編の出来は一作目「アイアンマン」(←クリックしてレビューへ)に及ばなかった。評価の + は、セクシーなスカーレット・ヨハンソン(スカヨハ)への祝儀である。

映画公式サイトはこちら

このシリーズの魅力は何と言っても主役のロバート・ダウニー・Jrに負うところが大きい。何ともすかした奴だ。「アイアンマン」の主人公が他と違って特異な点は自らカミングアウトし、ヒーロー気取りであるところ。意気揚々とド派手なショーに出演したりもするのだから愉快である。他のアメコミのヒーロー、例えばスーパーマン、スパイダーマン、バットマンらは普段自分が何者であるかを隠し、正義と悪との狭間で苦悩したりする。「アイアンマン」にはそれが一切ない。担わされた業(ごう)を肯定している。実にあっけらかんとしたものだ。

2作目で初登場したスカヨハ演じる赤毛の謎の美女、そして悪役のミッキー・ロークなどそれぞれのキャラクターが立っている。スカヨハが敵地に乗り込み展開するアクション・シーンの何と色っぽく、格好いいこと!

ただ今回、ストーリー展開がごちゃごちゃしていて散漫な印象を受けたのも事実。それからアイアンマンの飛行スピードが速すぎて、戦闘シーンが何がなんだかよく分からないのも難点だ。

結局、この映画はスターの演技やセックス・アピールを愉しむために存在するのだと、端から割り切って観れば腹も立たないだろう。

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延原武春/日本テレマン協会 クラシカル楽器によるモーツァルト

いずみホールへ。

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延原武春/テレマン室内オーケストラ・合唱団の演奏で、オール・モーツァルト・プログラム。

  • フルート協奏曲 第1番
  • 戴冠式ミサ ハ長調
  • 交響曲 第41番「ジュピター」

クラシカル(古)楽器を使用。ガット弦にバロック弓。

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フルート(フラウト・トラヴェルソ)はコピーではなく、当時の楽器だそうだ。

フルート協奏曲は古楽器に慣れていない管楽器奏者たちのミス(音を外す、出ない)が目立ったのが残念。解釈どうこうという以前の問題。

その点、合唱曲は美しくて良かった。長調から短調へ転じる時の陰影の妙。弾むような生き生きした演奏だった。

「ジュピター」も傷だらけだったが、延原さんの指揮はお見事の一言。速めのテンポ、バロック・ティンパニの壮絶な強打。覇気に満ち、筋肉質でリズミカルな解釈。あたかもダンス・ミュージックの如し。ベートーヴェン/交響曲 第7番に通じるものが感じられ、ローマ神話における最高神「ジュピター」の名前がこのシンフォニーに冠せられた意味が、初めて理解できた気がした。

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クレイジー・ハート

評価:B+

Crazyheart

感動した。兎に角、アカデミー主演男優賞を本作で受賞したジェフ・ブリッジス演じるカントリー・シンガーの「男の生き様」が格好いい。また彼の弟子で現在はスター歌手役のコリン・ファレルも味があって素晴らしい。ふたりがデュエットを歌う場面には痺れた。

映画公式サイトはこちら

これはアウトローが主人公の、ある意味「現代の西部劇」と言う事も出来るだろう。

物語はアカデミー歌曲賞を受賞した"The Weary Kind"が生まれる瞬間に向かって収束してゆく。主題歌とはかくあるべきというお手本のような作品であり、音楽映画としても秀逸。

余韻が残るラスト・シーンは実に鮮やか。何と美しいことか!アメリカの雄大な自然が目に染みる。

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二日間、柳家喬太郎三昧+サントリー山崎蒸留所(2010年6月)

いま旬で面白い上方落語の噺家を20人選べと言われれば、すらすらと名前が出てくる。それを10人、あるいは5人に絞ることも容易い。では、トップランナー1人を挙げろと言われたら、ここではたと困ってしまう。十数年前なら可能だったろう。だが桂枝雀亡き後、上方に突出した才能、スーパースターが不在であることは否定しようのない事実である。

しかし、上方に限定せず「全ての落語家」に対象を広げれば、答えはひとつしかない。柳家喬太郎、THE ONE AND ONLY.問答無用、これで決まりだ。

喬太郎さんは文春MOOK「今おもしろい落語家ベスト50 -523人の大アンケートによる-」で第1位に選ばれた。アンケートはそれぞれ3人の噺家を選ぶ形式だったが、直木賞作家でデビュー作「空飛ぶ馬」に落語家探偵”春桜亭円紫”を登場させた北村薫は、柳家喬太郎ただ一人を記入した。

そんな喬太郎さんが久しぶりに大阪で落語会をされたので聴きに行った。

一日目、土曜日。難波のトリイホールで「柳亭市馬・柳家喬太郎 二人会」。昼・夜二回公演とも、チケットは早々に完売。

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  • 旭堂南青/荒大名の茶の湯(講談)
  • 柳家喬太郎/夜の慣用句(喬太郎 作)
  • 柳亭市馬/厩火事
  • 柳亭市馬/二人旅
  • 柳家喬太郎/井戸の茶碗

市馬さんという噺家は、そもそもオーソドックス(端正)な芸風で、その温厚な人柄が滲み出す高座に味がある。そして声がよく、歌が上手い。しかしそれ以上のものを求めるべきではないというのが僕の結論。そういう意味において、今回も市馬さんらしい内容だった。

喬太郎さんは新作も古典も抱腹絶倒、ただただ圧倒されるのみ。現代若者気質など、その観察眼の鋭さがキラリと光る。じいっと客席を見渡す、醒めた目。選ばれし者のみが与えられた孤高の雰囲気。これぞ至芸。また、しょーもない江戸の人情噺を決してされないという点も好感度大。

井戸の茶碗」は宮崎アニメ「ルパン三世 カリオストロの城」の名台詞じゃないけれど、登場人物全てが「何と気持ちのよい連中だろう」という噺だが、この美談にはひとつの大きな穴がある。そこを喬太郎さんは「百五十両でお嬢さんを売り飛ばしちまうんですか!?」というギャグで見事にクリアしてしまった。いやはや、恐れ入った。

二日目、日曜日は喬太郎を聴く前に京都のサントリー山崎蒸留所へ。

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仕込→発酵→蒸溜→貯蔵庫と見学し、最後は試飲。

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さらにバーで「山崎 18年」や「響 21年」をショットで味わう。

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芳醇な薫り、背徳の匂い。

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山崎を後にして、大阪府・高槻市の亀屋旅館へ。

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今度は喬太郎(文字通りの)独演会。二回公演で、どちらも予約で満席。東京の噺家が亀屋寄席に登場するのは、これが初めてだそう。

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  • 初音の鼓
  • 寿司屋水滸伝・発端(喬太郎 作)
  • 死神

初音の鼓」は前回の「柳亭市馬・柳家喬太郎 二人会」でも演じられたが、何度聴いても新鮮で面白い。絶品。

寿司屋水滸伝」は梁山泊に集まった108人の豪傑たちを描いた中国の古典小説「水滸伝」を基にしているが、「うなぎ屋(素人鰻)」のパスティーシュにもなっている。

死神」のタイトルロールには凄みが感じられた。まるで怪談噺を聴いているような息詰まる緊張感。そして時折訪れる《緊張の緩和》(=笑い)。何とこの人は引き出しの多い噺家なんだろう。

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今回聴いた喬太郎さんのシュールでナンセンスなギャグの数々は、赤塚不二夫の漫画を想い出させた。そこで帰宅し調べてみると、やはり彼が赤塚ファンであることが判明。日本列島落語化計画「三題噺の会」で赤塚不二夫のキャラクターをボードにたくさん描いたというのだ。→こちら。イラストの写真はこちら。滅茶苦茶絵が上手い!

柳家喬太郎という天才と同時代に生き、寄席というひとつの空間を共有出来ることの奇跡。「枝雀には間に合わなかったけれど、喬太郎にはめぐり会えた」という至福を、改めて噛み締めた二日間であった。

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桂雀々/秘密倶楽部「五十歳五十ヶ所地獄巡り」

大阪市、南船場にあるYOSHUホールへ。

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謎めいた秘密の匂い。このサロンは元々、クラシック・コンサート(室内楽)を楽しむためのものらしい。マンスリーで開催されていると聞く。

米朝事務所や雀々さんのHPに記載された電話番号に何度掛けても誰も出ない。どうやらファックスしかなく、電話が置いてないらしい。恐るべし、YOSHUホール。定員60名のところ、予約が殺到し100名ギュウギュウ詰めに。熱気が漲る。

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ロビーでは雀々さんの二番弟子、鈴々さんが本「必死のパッチ」やDVDなど、雀々グッズを売っていた。彼女の口上を聴きながら、落語「蝦蟇(がま)の油」を想い出した。こうした経験も、しっかり落語の稽古に繋がっているんだなぁ。

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上の写真右の名ビラ(めくり)、よくよく見れば譜面台に貼り付けてある!手作り感いっぱいの高座。全国五十ヶ所巡り、ここが七番目だそう。最終目的地は来年八月、東京とのこと。

雀々さんの「地獄八景亡者戯」、最高!長講90分、休憩なし。汗を流しながら「一生懸命のお喋り」。畳み掛けるリズム感が心地よい。「耳あて」を使った瞬間芸の連続技がユニークで、腹を抱えて笑った。

落語の後はドリンク・サービス(ビール、ジュース)と軽食あり。なかなか"at home"な会だった。

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忘れられた作曲家”タニェエフ”~児玉宏/大阪交響楽団 定期

大阪交響楽団の音楽監督・児玉宏さんはミシュランで三ツ星に選ばれたレストランのシェフに喩えることが出来るだろう。客はシェフを信頼し、全てを委ねればいい。お任せコースを頼めば、「こんな料理、食べたことがない!」という品々が次々と目の前に供され、そのどれもが極上の美味しさなのである。客の食欲は満たされ、幸福感のうちに店を後にすることになる。今回もそんな《小さな奇跡》が起こった。

ザ・シンフォニーホールへ。

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  • バーバー/管弦楽のためのエッセイ 第1番
  • バーバー/ヴァイオリン協奏曲
  • タニェエフ/交響曲 第4番

ヴァイオリン独奏は竹澤恭子さん。

管弦楽のためのエッセイ」の冒頭はヴィオラ、チェロ、コントラバスが息の長い、内証的な旋律を奏でる。有名な「弦楽のためのアダージョ」を髣髴とさせる雰囲気。

コンチェルトの第1楽章は咽ぶような、濃密な浪漫が漂う。竹澤さんのヴァイオリンは才気迸り、その官能性に陶酔した。第2楽章は冒頭オーボエの叙情的旋律が限りなく美しい。そして第3楽章、ヴァイオリンが無窮動で駆け回る。悪魔的超絶技巧。オーケストラとの丁々発止の掛け合いも素晴らしい。息を呑む名演であった。

休憩を挟み、プログラム後半。いよいよ未知の作曲家、19世紀後半ロシアに生まれたセルゲイ・タニェエフ(タネーエフ)の登場である。タニェエフはピアニストとしても著名であり、チャイコフスキー/ピアノ協奏曲 第1番のモスクワ初演や、ピアノ協奏曲 第2番の世界初演を担当している。作曲はチャイコフスキーに学び、自作をチャイコフスキーにしか見せていなかったという。

第1楽章。ロシア的な歌心、春への憧れに満ちた旋律から始まる。ここら辺りはチャイコフスキーの交響曲を髣髴とさせる。ところが展開部から対位法が前面に押し出され、バッハのオルガン曲を想わせるような荘厳な響きがホールを包み込む。ある意味、ブラームスが交響曲第4番 第4楽章で用いた、シャコンヌに近い楽想である(ブラームスもバッハのカンタータから着想したといわれる)。タニェエフは対位法の権威であり、オケゲム、ジョスカン・デュプレなどルネッサンスのポリフォニー音楽も深く研究したそうだ。つまりこの第1楽章で試みられているのはロシア(東欧)的なものと、ルネッサンス&バロック期の西欧音楽との融合であると言えるだろう。

第2楽章は穏やかで、慰めに満ちた楽想。

第3楽章はメンデルスゾーン的スケルツォ。考えてみれば、忘れ去られていたバッハの「マタイ受難曲」を100年ぶりに蘇演したのはメンデルスゾーンであった。

そして第4楽章。いきなりスネア・ドラムが鳴り渡り、吃驚した。それにシンバルが随伴するので、まるでトルコの軍楽隊みたい。児玉さんは前へ前へと、強力な推進力でオケを引っ張り、大阪交響楽団も一瞬たりとも弛緩しない、引き締まった演奏でそれに応える。そして再び対位法のがっちりした構築性で圧倒的迫力のうちに曲は終結を迎えた。

知られざる名曲(秘曲)をじっくりと堪能。”日本のカルロス・クライバー”(その鋭い感性と知的コントロール、切れのある解釈から僕はそう呼ぶ)児玉宏、恐るべし。

なおこの演奏会はNHKにより録画収録され、秋に教育テレビ「オーケストラの森」やBS「クラシック倶楽部」で放送される予定。

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上映中止相次ぐ問題作、アカデミー賞受賞「ザ・コーヴ」を観る

今年の米アカデミー賞で最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞した時から観たいと想っていた映画「ザ・コーヴ」(入り江)だが、和歌山県太地町(たいじちょう)のイルカ漁を題材にしていることから、日本国内で様々な軋轢が発生した。

まず太地町からの要請で、漁師の顔などにモザイクを入れることが決められた。この時点で不穏な空気が漂っていたが、その後配給会社への抗議・嫌がらせなどが相次ぎ、東京や大阪の一部の映画館での上映が中止に追い込まれた。これまでの経緯は「まどぎわ通信」に詳しい。

そこで僕はどうしようかと考えあぐねた結果、アメリカ製DVDを入手した。Amazon.co.jpで1,919円。ただしリージョン1が再生可能なプレーヤーが必要。

映画公式サイトはこ ちら

Thecove

評価:C+

まず僕の立場を明確にしておきたい。小学生の頃から学校給食に出ていた鯨のから揚げが大好物だった。今でも鯨の肉は食べる。だから食用の捕鯨は賛成であり、欧米諸国の日本批判は食文化の違いを無視した、いわれなきバッシングであると考える。鯨を食べることは食物連鎖の頂点にある人間に与えられた、正当な権利である。

「ザ・コーヴ」を観ながら感じた違和感は、この製作者たちが全ての生物の中でイルカを特別視していることだ。

欧米人は大量に牛や豚を屠殺し、食用にしているのに、何故鯨やイルカを殺してはならないか?という疑問に対して、彼らが自分たちを正当化するために用いている理屈は「鯨やイルカは他の哺乳類より知能が高いから」ということである。では逆に「知能指数の低い人間、痴呆老人なら殺してもいいのですか?」と僕は問いたい。それは精神病院の患者を大量虐殺したナチス・ドイツにも繋がる、危険な思想だと想う。

イルカを大量に捕獲して「イルカ・ショー」に売り飛ばすのは可哀想という彼らの理屈は理解できる。でもイルカだけに限定するのは変じゃない?どうせなら地球上にある全ての動物園・水族館の廃絶を訴えるべきであろう。生命に優劣をつけるべきではない。

またこのドキュメンタリーは食物連鎖の上位に位置するイルカに水銀が蓄積していることを警告する。ご丁寧にも水俣病患者の記録映画まで引用して。彼らの主張によると、日本ではイルカの肉を鯨肉と偽装して販売しているそうだ。知らず知らずのうちに消費者はイルカの肉を食べているというのだ。それがもし事実ならば、由々しき事態である。ただ問題なのは、偽装疑惑はあくまで彼らの推論であって、映画の中でなんら証拠が提示されるわけではない。

というわけで、映画の製作者たちの主張は決して首肯出来るものではない。しかし一方で、この作品がプロパガンダ映画として出来がいいことも確かである。それはレニ・リーフェンシュタール監督がナチスの党大会を撮った「意思の勝利」(1935)や、ベルリン・オリンピックの記録「オリンピア(民族の祭典・美の祭典)」(1938)が優れたドキュメンタリー映画であるのと同じ意味である。

まず前半で、イルカがどれほど愛らしい動物であるかが描かれる。そして後半になると太地町の立ち入り禁止地帯「入り江」で何が起こっているか?に焦点が当てられる。

ここからはチーム・プレイで、いかにして現場に潜入し、隠し撮りをするかが丹念に描かれる。リモコンのヘリコプターとか、鳥の巣を偽装したカメラThe Nest Cam、岩を偽装したThe Rock Camsなど秘密兵器が登場。特にThe Rock Camsは「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス率いる特撮工房ILM特製というのだから恐れ入る。このあたりはまるで「ミッション・インポッシブル」か「オーシャンズ11」のノリ。

そしてクライマックスは文字通り「入り江」が血の海と化す衝撃の映像が用意されている。確かに思考回路が停止した人間がこれを観れば、「日本人はなんて残虐なんだ!イルカが可哀想だ」と思うだろう。さすが構成の上手さ、敵ながら天晴れである。だからこそオスカーを獲得できたのだろう。

まあとにかく、この作品の是非を議論するためにもちゃんと日本国内で公開され、多くの人々が観て、考える機会が与えられる日が来ることを僕は強く希望する。

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シリーズ《映画音楽の巨匠たち》 第1回/ニーノ・ロータ 篇

キネマ旬報社から「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇」という本が出版された。これは映画評論家、音楽評論家、映画監督、作曲家、文化人らにアンケートし、集計したもの。

ベストテンは以下の通り。

  1. 男と女(フランシス・レイ)
  2. ゴッドファーザーニーノ・ロータ
  3. 第三の男(アントン・カラス)
  4. ニュー・シネマ・パラダイス(エンニオ・モリコーネ)
  5. ウエストサイド物語(レナード・バーンスタイン)
  6. シェルブールの雨傘(ミシェル・ルグラン)
  7. スター・ウォーズ(ジョン・ウィリアムズ)
  8. 太陽がいっぱいニーノ・ロータ
  9. 仁義なき戦い(津島利章)
  10. 死刑台のエレベーター(マイルス・デイビス)

ここでイタリアの作曲家、ニーノ・ロータが2作品ランクインしているのが目を惹く。さらに20位までにフェデリコ・フェリーニ監督とロータのコラボレーション「8 1/2」と「」の2作品も入選している。また「好きな映画音楽作曲家」ベストテンにおいて、ロータは堂々第1位に輝いた。

Nino

「ニーノ・ロータは天使のような人だった」……フェリーニの言葉である。

ロータの音楽の魅力は一言で語るなら、その美しくも哀しみに満ちた旋律にあるだろう。ルキノ・ヴィスコンティ監督のイタリア映画「山猫」に代表される、格調高いシンフォニックなクラシック音楽を基調にしながら、時に「カビリアの夜」や「甘い生活」のようにJAZZの風味を盛り込んだりもする。また特にフェリーニ作品で顕著なのだが、「」や「8 1/2」などサーカス音楽で賑やかに騒いだりもする。しかし一見陽気な音楽の中に、ロータ特有の孤独感、哀愁が失われることはない。

ロータとフェリーニは映画「白い酋長」(1951)で出会い、意気投合した。そしてロータが亡くなる直前の「オーケストラ・リハーサル」(1979)まで、その共同作業は続いた。映画監督と作曲家のこれだけ長きに渡る協力関係は非常に稀で、僕が思いつくのはスティーブン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズくらいだろうか(1974年スピルバーグの映画監督デビュー作以来、現在まで)。

僕はそうだなぁ、「カビリアの夜」もお気に入りだし(試聴はこちら)、「ゴッドファーザー PART II」の切ない”移民のテーマ”も好きだ(少年時代のヴィト・コルレオーネがシチリアからニューヨークに移民船で渡り、初めて自由の女神像を目の当たりにする場面。試聴はこちら)。イタリア古楽の風味が付けられた「ロミオとジュリエット」もいい。

そして忘れられないのが小学生のとき映画館で観た「ナイル殺人事件」。僕は当時アガサ・クリスティの大ファンだったので、親にねだって連れて行ってもらったのである。ニーノ・ロータの音楽は雄大なナイル川のように滔々と流れ、そして美しかった。亡くなる前年の傑作である(試聴はこちら)。当時サントラのLPレコードを小遣いで買い、現在はCDで所有している。

ロータは「本業はあくまでクラシックの作曲であり、映画音楽は趣味に過ぎない」と語っていた。生涯に4つの交響曲、2つのピアノ協奏曲、弦楽のための協奏曲、そしてオペラ「フィレンツェの麦わら帽子」などを書いた。

現在ロータの音楽に熱心に取り組んでいるのが名指揮者リッカルド・ムーティである。彼はミラノ・スカラ座管弦楽団とロータのアルバムを何枚かレコーディングしているし、ウィーン・フィルとの来日公演でも映画「山猫」の音楽と、トロンボーン協奏曲を取り上げている。ムーティは南イタリアのナポリに生まれ、バーリ音楽学校へ入学した。この時校長をしていたのがニーノ・ロータだった。

さて、児玉宏/大阪交響楽団は2011年3月の定期演奏会でニーノ・ロータ/交響曲 第4番「愛のカンツォーネに由来する交響曲」を取り上げる。これは第1楽章の主題がイギリス映画「魔の山」(The Glass Mountain,1948)のテーマ曲となり、第3,4楽章は映画「山猫」(1963)に転用された(試聴はこちら)。限りなく美しい旋律、浪漫的で芳醇な香りに満ちた名曲である。「魔の山」のクライマックス・シーンはこちら(「愛のカンツォーネ」という意味がこれを見れば分かる)。そしてピアノ協奏曲風にアレンジしたものはこちら

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月亭遊方/とくとくレイトショー(6/15)

難波の徳徳亭へ。21時20分開演、月亭遊方さんの会。新作派の彼としては珍しく、今回は古典二席。

  • 干物箱
  • うなぎや

干物箱」はつい先日、月なみ(^o^)九雀の日でも聴いた。「2日前はこのネタでコケました」と遊方さん。そんなこと全然ない、十分受けていたけどなぁ。

その日の打ち上げで「お前は武士顔じゃないから武士が登場する噺は似合わないんじゃないか」と九雀さんからの助言されたこと、また上方落語の噺家も200人を越え、その様々なタイプの人間と接する時の心構えについて指南を受けたことなどをマクラで語られた。

放蕩が過ぎて家に軟禁状態にされた若旦那。親父から「銭湯にでも行ってきなされ」と言われ大興奮。ここで勢い余った遊方さんが「膝隠し」を高座の前に落としてしまうという愉快なハプニングも。ライヴならではの醍醐味である。

うなぎや」の後半はほとんど台詞もなく、主人とうなぎの格闘がダイナミックなアクションで描かれた。「座布団に体の一部がタッチさえしていればセーフ(何をやってもよい)」という桂枝雀さんの理論(?)を実践する、七転八倒の大熱演!これは見応えがある。

帰り際、遊方さんから新しく出来たという繁昌亭の名刺を頂いた。

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この昼席のどこかで、「はてなの茶碗」を演じられる予定だそう。

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大阪交響楽団に快哉を叫ぶ

児玉宏さんが音楽監督に就任以降、ブルックナーの演奏で文化庁芸術祭「大賞」を受賞するなど、大阪交響楽団の躍進には目を瞠るものがある。

つい先日発表された来年度の定期演奏会、および名曲コンサートのプログラムにも痺れた。

名曲コンサートにライネッケ!見たことも聞いたこともない作曲家である。定期ではミャスコフスキー、プフィツナー、グラズノフ、ヘンゼルトなど面白そうな名前がずらりと並ぶ。未知なる音楽への旅。ワクワクするではないか。

それに引き換え情けないのが、今年の大阪フィルハーモニー交響楽団定期の体たらくぶり。選曲が完全に守りに入っていて、冒険心の欠片もない。

府からの補助金が全額カットされ、大フィルの台所事情は厳しい。大阪センチュリー交響楽団が今後どうなろうと知ったことではないが、大フィルまで共倒れになっては困る。大植英次という指揮者に惚れ、この3年間、僕は欠かさず大フィル定期に通い、ブログに感想を書き、微力ながら支えて来たつもりである。星空コンサートだって皆勤した。しかし今年のラインアップを見て、心が折れた。そろそろ潮時かも知れない。

そこで次のような記事を書いた。

そうしたら何と、このリストに載せた代秋雄/ピアノ協奏曲が下野竜也さんの指揮で来年の大阪交響楽団定期に取り上げられているではないか!どうして大フィルの時は下野さんも保守的な選曲なのか……。

そこで僕は決心した。もし来シーズンの大フィル定期に今年のような陳腐な曲が並ぶのなら、もうこのオケを見限ろうと……そうしなくて済むよう、魅力的なラインアップをよろしくお願いしますね。

僕たちが大植さんで聴きたいのはベートーヴェンやブルックナーなんかじゃない。マーラー、ツェムリンスキー、プフィツナー、シュミット、コルンゴルトなど、濃密な後期ロマン派の音楽をもっと振って欲しいのだ。

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月なみ(^o^)九雀の日(6/13)/チェーホフで落語??

堺市「ザビエル寄席」の後、電車を乗り継いで豊中市立伝統芸能館へ。

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九雀さんの会。自由料金制(お代は見てのお帰りに)。60人くらいの大入り。

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  • 桂   弥生/煮売屋
  • 桂   九雀/後家の本心
  • 月亭遊方/干物箱
  • 桂  九雀/釜盗人

吉弥さんの二番弟子・弥生さんを聴くのはこれが4回目(どれだけファンやねん!?)。演目は「東の旅・発端」(初高座)、「子ほめ」、「狸賽(たぬさい)」、そして今回の「煮売屋」。なんと全て違う。まだ入門して半年に満たないのにすごい。来月彼女は動楽亭昼席に出演するのだが、もしかしたら5日間全部ネタを変えるつもりなんだろうか??

後家の本心」はロシアのチェーホフ誕生150年記念にちなみ、東京のシアターX(カイ)で開催された「ちぇほふ寄席」のためにチェーホフ原作「熊」を九雀さんが上方落語に直したもの。ところがこの「ちぇほふ寄席」、なんとノーギャラだったそう!それを会当日になって知らされたという。交通費+宿泊代しめて32,490円、自腹を切った九雀さん。何とお気の毒な……。もう二度と高座に掛けるつもりはないそうで、憶えているうちにと今回特別に聴かせて下さった。貴重な体験をさせてもらい、とても嬉しかった。

噺の冒頭に「小犬を連れた貴婦人」(落語版では女衆=おなごし)が登場したりして、成る程チェーホフ・トリビュートに仕上がっている。その後は立川談志さんの言うところの「落語とは人間の業の肯定である」的展開に。中々良かった。これが今後、封印されてしまうのは惜しい気がする。ただ確かに笑いは少ないので、繁昌亭に掛けたりするのは難しいかも。

新作派の遊方さんが古典をされるのは珍しい。2年ほど前にこの会に出演された時は「はてなの茶碗」をされたとか。「干物箱」自体初めて聴いたし、すこぶる面白かった。遊方さんは古典もいかしてることを再認識。

トリで再登場した九雀さん、マクラで「盗人の噺をします」と仰ったので、「オッ、これは繁昌亭でも大評判だった噂の『A型盗人』(小佐田定雄 作)か?」と期待したら、別のネタだった。

釜盗人」はWikipediaで落語作家・小佐田定雄さんの脚色に分類されている。また、調べてみると2006年に小佐田+九雀による「落語の定九日」@雀のおやどでこのネタが演じられているので、Wikiの記述は多分事実なのだろう。初めて聴いた。へぇ、こんなのもあるんだ。九雀さんは二席とも、眼鏡を掛けて (JAZZ型で)演じられた。

上方落語って奥深いなぁと感じる、今日この頃でございます。

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ザビエル寄席

堺市へ。

  • 笑福亭喬介/つる
  • 笑福亭喬若/禁酒関所
  • 桂  こごろう/七段目
  • 笑福亭三喬/月に群雲(小佐田定雄 作)
  • 笑福亭喬若/野ざらし

結論から言うと、一番良かったのはさすがベテラン、三喬さん。そして弟子の喬介くん(2005年入門)がその次にくる。

「上方で若旦那を演じさせたら米團治さん、丁稚をさせたら雀々さん、そして泥棒なら三喬と言われています」とは三喬さんの弁。僕はそれに”喜六”(アホの喜ぃ公)を演じさせたら喬介くんが今は一番じゃないかと想っている。まるで落語の中から飛び出してきたような天然の可笑しさ、愛嬌が彼にはあるのだ。今回の会でも一番笑いを取っていた。今まで生で聴いた「つる」の中でもずば抜けた面白さだった。

こごろうさんは確かに上手い。でも一方で、いわゆる”正統派”の限界も感じた。彼は2011年に桂南天を襲名する予定だと聞くが、襲名に向け(ネタの選定など)どのように独自色を打ち出していくのかが今後の課題ではないだろうか。

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桂文我はなしの世界/幻の「柿ノ木金助」連続口演!

前にも書いたが、桂文我さんの魅力は、もう誰も演らない「けったいなネタ」を発掘し、披露してくれること。上方で貴重・稀少な噺家である。

未知の体験を味わうべく、ワッハ上方へ。

Kaki

  • 桂さん都/二人癖
  • 桂文我/柿ノ木金助(その一)
  • 桂まん我/豆炭
  • 桂文我/月宮殿星の都

さん都さんは今度師匠の都丸さんが塩鯛を襲名するに当たり、鯛蔵を襲名する予定。先代の鯛蔵は満州に巡業した後、岡山で祈祷師に転業し生涯を終えたとか。「僕も将来、祈祷師への道が開かれました!」と。ちなみに彼は広島市出身、岡山のお隣である。

柿ノ木金助」というネタは、以前文我さんが大師匠・桂米朝さんにどんな内容なのか訊ねたら、「それが全然知らんのや」との回答だったとか。速記もなく、長年探求してきたところ、五年前に「柿ノ木金助実伝」という本を入手され、漸く全容がつかめたそう。

物語の展開は三遊亭圓朝の作品に近いものを感じた。「牡丹灯篭」の”お峰殺し”を髣髴とさせるいい所で今回は終わり。文我さんが高座を降りると、さん都さんが「この続きはどうなるんですか!?」と食い付いてきたそう。う~ん、確かに気になる。第二回口演は今のところ、日時も場所も決まっていないようだ。なお、最後は芝居噺になるらしい。

仲入り後、文我さんの弟子・まん我さん登場。「豆炭」と言われてもイメージが沸かない人も多かろう。こんな感じ。

Mame

豆炭を愛した男の噺。明治ごろの新作落語とか。いやぁ、これぞ正に非常識の肯定。こういうヘンテコな噺があるから僕は落語が好きなんだ。是非まん我さんも、師匠のような方向性にこれからどんどん突き進んでもらいたい。いわゆる”正統派”じゃ詰まんないし、そもそもライバルが多すぎる。

上方落語の中心をなすものに旅ネタがあるが、冥土の旅が「地獄八景亡者戯」、海底が「小倉船」、そして天空の旅が「月宮殿星の都」である。今回初めて聴いたが、やっぱりけったいな噺だった。でも面白い。大満足で帰途についた。

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どっかんBROTHERS !

トリイホールへ。

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  • 座談会(鶴笑・遊方・文華)
  • 桂     文華/天狗さし
  • 月亭   遊方/隣人(ネイバーズ)(遊方 作)
  • 笑福亭鶴笑/時うどん+ゴジラ対モスラ
  • クイズ・ショー

新たに始まった三人の会。途中、座談会をはさみながらそれを落語のマクラとし、二人が下がって残った一人が直ぐネタに入るというユニークな構成。

とにかく座談会で鶴笑さんが弾けていて、めちゃくちゃ面白かった!特に定員オーバーで乗っていた車が警察の検問にあい、鶴笑さんがマネキンの真似をして切り抜けたというエピソードには大爆笑。

文華さんは前日の繁昌亭爆笑賞受賞者の会に引き続き、天狗ネタ。その関連性が愉しい。

鶴笑さんは古典「時うどん」にパペット落語「ゴジラ対モスラ」をドッキングさせるという実験精神に溢れた離れ業。クレイジーな芸が炸裂し、痺れた。

古典派、新作派、そして?派(パペット落語)というタイプの異なる三人が組み合わさり、ドッカン!と未曾有の化学反応を起こす。看板に偽りなし。次回も見逃せない。

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吹奏楽版「ロード・オブ・ザ・リング」!/大阪市音楽団 定期

ザ・シンフォニーホールへ。

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秋山和慶/大阪市音楽団(市音)の記念すべき第100回定期演奏会を聴く。

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宮川彬良さんから花が届いていた。

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吹奏楽のために書かれた究極の名曲がプログラムに並び、会場はびっしり満席。

まず、平松邦夫・大阪市長が登場し、挨拶。アナウンサー出身だけに口調は滑らか。そして市長の指揮でオープニング・ファンファーレ(A. リード)〜大阪市歌(中田章 作/大栗裕 編)。

そして秋山さんとバトンタッチして、オランダの作曲家ヨハン・デ=メイの代表作、交響曲 第1番「指輪物語」(The Lord of the Rings)が始まる。

  1. 魔法使いガンダルフ
  2. エルフの森”ロスロリエン” 
  3. ゴラム(スメアゴル) 
  4. 暗闇の旅(モリアの坑道〜カザド=デュムの橋) 
  5. ホビット 

第1楽章で提示される気高い「ガンダルフのテーマ」は第4楽章にも再現され、ガンダルフと悪鬼バルログの戦いを描く。

そして終楽章でもこのテーマは登場し、ガンダルフとホビットとの再会、そして「灰色港」(the Gray Havens)から不死の国への旅立ちが描かれる。なおhaven(港)であってheaven(天国)ではない(プログラムに書かれた曲目解説は間違い)。

第1楽章後半は躍動感溢れる速いテンポとなり、白馬シャドウファックスが疾走する。

秋山/市音は切れ味鋭く、表情は繊細。精緻な演奏だった。金管の輝かしい響きに痺れた。また第3楽章ソプラノ・サクソフォーン(コンサートマスター:長瀬さん)のソロが素晴らしかった。

後半のジェイムズ・バーンズ/交響曲 第3番については先の記事に書いたので、ここで繰り返さない。

「苦悩を突き抜け、歓喜へ!」という作品コンセプトが余すところなく表現された、極めつけの名演だった。第3楽章"ナタリーのために”の心洗われる清浄さ、天国的美しさ。そして第4楽章の生命力漲る"動"。聴衆は熱狂した。

アンコールは行進曲「旧友」

吹奏楽史に永遠に記憶されるであろうこの感動的演奏会はNHKによりテレビ収録され、9月以降BS「クラシック倶楽部」で放送される予定。

 記事関連blog紹介:

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ウィーン・ミュージカル「レベッカ」

イギリスの女性作家ダフネ・デュ・モーリアの小説「レベッカ」は1938年に出版された。1940年にはアルフレッド・ヒッチコック監督の手で映画化され、アカデミー作品賞および撮影賞を受賞。これはヒッチコックの渡米第一作となった。

「レベッカ」という作品の大きな特徴は、タイトルロール、つまりレベッカが最後まで登場しないことである。物語の発端から既に彼女は死んでおり、登場人物たちの想い出として語られるのみ。しかしそれでもなお、彼女の影響力は絶大であり、全てを支配している。

僕は「レベッカ」という作品のことを考える時、上方落語の”爆笑王”こと、桂枝雀さんのことを連想する。枝雀さんが亡くなって既に十年以上経つが、未だに上方の噺家たちの多くが彼に囚われている。落語のマクラで話題に上るのは、現役の噺家のエピソードよりも枝雀さんのことの方が多い。それだけ存在感が大きかったということなのだろう。

梅田芸術劇場へ。

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ミュージカル「レベッカ」は2006年ウィーン・ライムント劇場で幕を開けた。「エリザベート」「モーツァルト!」「マリー・アントワネット」で一世を風靡したミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽)の名コンビによる作品。

いやぁ、とにかく面白かった!サスペンス・ドラマとして秀逸だし、楽曲がいい。ワクワクする。ただ「モーツァルト!」もそうだったのだが、前半不必要なまでにソロが多く、冗長な感は否めない。「こんな脇役の心情吐露なんかどうでもいいのに……」と時折、苛々した。2、3曲カットすればすっきりするだろうに。

しかし後半は怒涛の展開。屋敷が燃え上がるシーンは本物の炎も使ってスペクタクル感たっぷり。

クンツェ&リーヴァイは特に合唱曲が素晴らしい。劇的で迫力がある。また、「わたし」や夫のマキシムの歌は比較的転調が少ないが、家政婦頭ダンヴァース夫人や他の人がレベッカについて語る時には目くるめく転調をする。それにより妄執・狂気の雰囲気が巧みに醸し出されるのである。

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「わたし」を演じる大塚ちひろは容姿が可憐で、発声が素直。伸びのある澄んだ歌唱で申し分ない。マキシム役の山口祐一郎はもともと演技が単調なのだが、この役では余りそれが気にならなかった。そして何と言っても特筆すべきはダンヴァース夫人の演技で第34回菊田一夫演劇賞を受賞したシルビア・グラブ。怖いくらいの気迫があり、堂々として力強い歌唱も圧巻。また、小悪党ジャック・ファヴェル役の吉野圭吾が軽妙な演技と愉快な踊りで好演した。

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大阪市音楽団 定期/リハーサル見学会

大阪市音楽団(市音)の記念すべき第100回 定期演奏会は6/12(土)午後4時、ザ・シンフォニーホールで開催される(当日券あり)。指揮は市音の特別指揮者・芸術顧問の秋山和慶さん。

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吹奏楽を代表する名曲中の名曲が演奏される。これら抜きで20世紀の音楽は語れないし、この絶好の機会を逃す手はない。

  • ヨハン・デメイ/交響曲 第1番 「指輪物語」
  • ジェイムズ・バーンズ/交響曲 第3番

上記2つの交響曲は市音により日本初演され、特にバーンズの方は世界初演となった。満を持して、待望の再演である。

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指輪物語」は5楽章形式で、

  1. 魔法使いガンダルフ
  2. エルフの森”ロスロリエン” 
  3. ゴラム(スメアゴル) 
  4. 暗闇の旅(モリアの坑道〜カザド=デュムの橋) 
  5. ホビット 

という構成。原題が"THE LORD OF THE RINGS"で、ピーター・ジャクソン監督で映画化され、アカデミー作品賞・監督賞などを総なめにしたことは記憶に新しい。なお、映画版の作曲はハワード・ショア(アカデミー作曲賞受賞)でまったく別物。

デ=メイはオランダの作曲家。本作はアメリカで開催された吹奏楽曲コンクールで世界27ヶ国から集まった143作品の中から1位に選ばれた。両者を聴き比べてみるのも一興だろう。

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今回のリハーサルではバーンズのみ聴かせて貰った。この作曲家は「アルヴァマー序曲」があまりにも有名。テレビ朝日「題名のない音楽会」の吹奏楽人気ランキングでも堂々第2位となった。

交響曲 第3番は特に第3楽章”ナタリーのために”が白眉。生後半年で亡くなった娘へのエレジー(悲歌)である。

第1楽章は重々しいファンファーレから始まる(レント)。金管の悲痛な叫び。それは愛娘を失ったことへの作曲家の慟哭にも聴こえる。そしてアレグロの主部は嵐が吹き荒ぶ激情の音楽が展開される。

第2楽章は一転しておどけた、グロテスクなスケルツォ。妖怪が跋扈する、百鬼夜行の世界。秋山/市音はカチッとしたテンポで、歯切れのよい演奏を聴かせる。

第3楽章冒頭。ハープと打楽器が、まるでオルゴールのようにピュアな音色を奏でる。赤ちゃん部屋の情景が目に浮かぶよう。それに乗ってオーボエ、イングリッシュホルンが胸を打つ、天国的に美しい旋律を奏でる。そして「ナタリーのテーマ」はホルンやサクソフォン、トランペット、トロンボーンなどに歌い継がれてゆく。感動的な楽章である。

第4楽章は輝かしい響きでグングン前へと進む、生命力と躍動感に溢れた楽章。市音の妙技が圧巻!この交響曲が作曲された直後、バーンズには3人目の子供が生まれている。終楽章はその希望の光を反映していると言えるだろう。

こうして通して聴いてみると、この傑作が「苦悩を突き抜け、歓喜へ!」という、ベートーヴェンの交響曲から脈々と受け継がれてきた音楽的構造に則っているいることが理解出来る(ブラームスの交響曲 第1番、チャイコフスキーの5番、そしてマーラーの5番も同様のコンセプトである)。

金管の編成はトランペット(+コルネット、フリューゲルホルン)が8本、ホルン6本、トロンボーン(バス・トロンボーン含む)5本、チューバ3本、ユーフォニアム2本。そのド迫力のサウンドを、当日はザ・シンフォニーホールで堪能しよう!

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屋比久勲/鹿児島情報高校の「金と銀」

屋比久勲 先生(吹奏楽の神様)と鹿児島情報高等学校が出演した日本テレビ「笑ってコラえて」吹奏楽の旅を見た。

僕の手元に2008年に鹿児島情報高が初出場した、第56回全日本吹奏楽コンクールの点数表がある。全国大会は前半の部と後半の部に分かれ、それぞれ5校が金賞を受賞した。ちなみにこの年、最高得点だったのは淀川工科高等学校(淀工)の137点、次点は精華女子高等学校の128点だった。高校後半の部で出場した鹿児島情報高校の得点は93点。後半6位で銀賞だった。ところが、前半の部で5位だった岡山学芸館高等学校は92点だったのである。つまり金賞を受賞した岡山学芸館より、鹿児島の方が点数が上回っていたのだ。なお、前半・後半で審査員の入れ替わりはない。もし出場順が異なり、鹿児島が前半の部だったら(創部2年目にして)金賞だったことになる。僕は実際に普門館で生演奏を聴いたのだが、鹿児島情報高等学校はに値する演奏だった。

このことが問題となったのであろうか?2009年は前半の部の金賞が6校、後半の部が4校受賞で点数の歪みはなくなった。なお、この年の最高得点は大阪桐蔭高等学校の123点、次点は習志野市立習志野高等学校の122点であった。

全日本吹奏楽コンクールにも様々な問題がある。たとえば出場順が朝1番の学校が審査上、圧倒的に不利であることは紛れもない事実だ。天下の淀工や習志野が1番くじを引いた年は両校とも銀賞に終わった(DVD「淀工吹奏楽日記~丸ちゃんと愉快な仲間たち~」には銀賞で落ち込んでいる生徒たちを、丸谷先生が「今年は出場順が1番だったから仕方がない。運が悪かった」と慰める場面が収録されている)。

しかし一方で、吹奏楽コンクールが日本人の演奏技術を高め、音楽的質の向上に貢献してきた功績は計り知れない。この制度のおかげで、今や日本が世界一の吹奏楽大国になったことは誰も否定できないだろう。ビリー・ワイルダー監督「お熱いのがお好き」の名台詞じゃないけれど、"Nobody's perfect."(完璧な人間なんていないさ)ということが、コンクールにも当てはまるんじゃないだろうか?

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繁昌亭爆笑賞受賞者の会

天満天神繁昌亭へ。

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歴代の繁昌亭爆笑賞を受賞した四人が集った。

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  • 林家染左/商売根問
  • 桂かい枝/青菜
  • 桂春蝶/紙入れ
  • 桂文華/高宮川天狗酒盛(脚色:小佐田定雄)
  • 受賞記念トーク
  • 笑福亭鶴笑/酒の粕(古典)→くもんもん式学習塾(三枝 作)

青菜」は屋敷の旦那とその奥方にもっと気品が欲しかった。どうもかい枝さんにこのネタは向いてないんじゃないかなぁ。

逆に文華さんは結構下品な噺で、これは彼のニンに合っていた。「高宮川天狗酒盛」は「東の旅」シリーズの中でも珍品に属す。演者がなく廃れた噺を小佐田さんが脚色し、復活させたもの。下ネタ満載だが、面白い。どうしてこれが滅びかけたのか分からないが、小佐田さんの腕のなせる業なのかも。考えてみたら僕が文華さんを初めて聴いたのが「勘定板」。あれも汚い噺だったが、爆笑ものだった。

鶴笑さんは前半、古典落語「酒の粕」をウィスキーボンボンに変えてされ、後半は三枝さん創作の「くもんもん式学習塾」に移行するという離れ業。ユニークで興味深かったけれど、やっぱりちょっと、パペット落語を観たかったなぁという残念感があったのも確か。

秀逸だったのは何と言っても春蝶さん。僕は正直「どうして彼が爆笑賞に!?」という気持ちがずーっとあったのだが、今回ようやく納得できた。とにかく噺の中に登場する奥方が色っぽい!師匠の三代目・春團治が描く女性像をさらにデフォルメした感じ。力が抜けた絶品の高座だった。

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アッコルドーネ/ナポリと南イタリアの歌

兵庫県立芸術文化センターへ。

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アッコルドーネはハイ・テナーのマルコ・ビーズリーと、チェンバロ&オルガン奏者のグイード・モリーニらが創立したイタリアの古楽グループ。内容によって編成が変わるが、今回は歌、チェンバロ&オルガン、バロック・ギター、テオルボ、リュート、フレーム・ドラムという6人による演奏だった。

18世紀のナポリを中心に南イタリア農民の「生きた伝承曲」だけで構成されたプログラム。ほとんどの歌曲が作者不詳である。

  • 単声のストルネッロ~ブーリア地方の伝承歌詞より
  • 高らかに響け(イスキテッラ)~ブーリア地方の伝承舞踊
  • いのちなくして(歌詞:フランチェスコ・スピネッロ、15世紀)
  • バラの小道~バジリカータ地方の伝承歌謡
  • カタランタ(フレーム・ドラムによる即興演奏)
  • モンテヴェルジネに捧げる歌
    ~ナポリに伝わる儀式のタンムルリアータ

    ー休憩ー

  • ~アプーリア地方の伝承歌謡
  • この胸はチェンバロになった~アプーリア地方の伝承歌謡
  • タランテッラ第1、2、3番~ナポリの伝承歌謡の断片をもとに再構成した
  • オリーヴの小枝~アプーリア地方の伝承歌謡
  • カルピーノ娘~プーリア地方の伝承歌謡
  • 高らかに打ち鳴らせ
    ~カラーブリア地方に伝わるルッフォ枢機卿の軍隊の歌
  • 馬車引きの歌~カラーブリア地方の伝承歌謡

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ビーズリーの高く、澄んだ歌声。テオルボやリュートの味わい深い古(いにしえ)の響き。全てが絶品であり、じっくりと聴き入りながら遠い過去へと思いを馳せた。

特にマウロ・デュランテによるフレーム・ドラムのソロが素晴らしかった。多彩な音がして、まるでドラム・セットを叩いているかのようであった。

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「笑ってコラえて!」吹奏楽の旅に、”神”降臨

2010年6月9日(水)、日本テレビ「笑ってコラえて!」のコーナー、「吹奏楽の旅」にいよいよ、鹿児島情報高校が登場する。その番組ホームページにこんな煽り文句が書かれていたから笑ってしまった。

この学校にはなんと、“吹奏楽の神様”がいるんです!
創部わずか3年ながら全国大会へ2年連続で導いた“吹奏楽の神様”とは一体どんな人なんでしょうか?

さて、その屋比久勲(やびくいさお)先生について以前僕が書いた記事は下記。

普門館で生で聴いた、屋比久/鹿児島情報高の感想は下記。

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淀工サマーコンサート 2010

大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部のお膝元、守口市市民会館(モリカン)へ。

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まずは2010年吹奏楽コンクール課題曲から。淀工はコンクール全国大会3年連続出場につき、今年は規定によりお休みの年(3出休み)。

オープニングは「潮風のマーチ」。丸谷明夫先生(丸ちゃん)の指揮で快速球。

2曲目は「オーディナリー・マーチ」。「頭は軍艦マーチで、他にも『旧友』とか『祝典序曲』を思わせる箇所もあります」と丸ちゃん。ゆっくり目のテンポでカチッと引き締まったリズム。これぞマーチの王道である(ただ、コンクールでは不利な曲だと思う)。

吹奏楽のための民謡「うちなーのてぃだ」は淀工の卒業生で、同校で教鞭を執る出向井誉之先生の指揮。すっきり、スマートな演奏。

迷走するサラバンド」について丸ちゃんは「この曲を指揮するのは嫌やなぁ」と、神戸市立有馬中学校の岡本浩志先生に依頼。リハーサルは10分しかなかったそう。「生徒がついてこれるか……」との丸ちゃんの心配をよそに、破綻のない演奏だった。岡本先生の感想は「死ぬほど緊張しました」と。

ここで会場へのアンケートで課題曲に選ぶ学校が最も多いことが判明した「潮風のマーチ」をもう一度。今度は指揮希望者を客席に募ると、全く楽器経験がなく、譜面も読めないという一般男性が手を挙げた。丸ちゃんが「こんなに長いマーチとは思っていなかった」と言うくらい超スローテンポで演奏され、場内は笑いの渦に。男性の感想は「死ぬほど足が震えました。でも気持ち良かったです。病みつきになりそう」

ここまでは星組の演奏。そして2・3年生全員がステージに座り「アルメニアンダンス・パート I」(A.リード)。これは6月27日に京セラドーム大阪で開催される「3000人の吹奏楽」において、佐渡裕(指揮)/1300人の学生たちで演奏される。

「吹奏楽を出来るだけ一般の人々に知ってもらいたいと佐渡さんにお願いしました。佐渡さんは来年ベルリン・フィルの定期演奏会の指揮台に立たれますが、忙しいスケジュールをやり繰りして快諾して下さいました。アルメニアンダンス・パート I がベートーヴェンの第九シンフォニーやグレン・ミラーのイン・ザ・ムードみたいに誰もが口ずさむ曲になってほしいとの願いを込めて、これから演奏します」と丸ちゃん。終曲"Gna, Gna"《行け、行け》の畳み掛ける加速が凄かった。

休憩を挟み第2部はOB登場。約1700名の卒業生のうち60名による演奏。まずは灼熱のスペイン音楽「アムパリト・ロカ」(J.テキシドール)。丸ちゃんは容赦ないテンポでぶっ飛ばし、OBも軽々とそれについてゆく。

続いて「お楽しみコーナー」は曲当てクイズとOB紹介。淀工を卒業してすぐ就職する人が大半だが、中には中学や高校の先生になったり、大阪音楽大学在学中の人も。ちなみに佐渡さんが芸術監督を務める兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)クラリネットのコア・メンバー、稲本渡さんも淀工出身者である。一体ここは、本当に工業高校なのか??

岩井直溥編曲による「サウンド・オブ・ミュージック」メドレー(サウンド・オブ・ミュージック~ドレミの歌~ひとりぼっちの羊飼い~さようなら、ごきげんよう~エーデルワイス~すべての山に登れ)で第2部は〆。

第3部は2・3年生全員で淀工十八番の「カーペンターズ・フォーエバー」(真島俊夫 編)から。

大序曲「1812年」(木村吉宏 編)は大砲の代わりに大太鼓4つ。2つがステージ上で残る2つが客席中央左右。そしてOBによるバンダ(金管別働隊)が客席後方にずらりと並ぶ。ド迫力のサウンドに痺れた。

ザ・ヒットパレード」は(パラダイス銀河~ホップ・ステップ・ジャンプ~嵐メドレー~幸せなら手をたたこう~3-3-7拍子~六甲おろし~明日があるさ~We Are The World)という構成。

これは新一年生全員が踊りで参加。数えてみると男子生徒がざっと40人、女子生徒が26人くらい。今年も元気な子たちが沢山入った。

アンコールは「ジャパニーズ・グラフティIV」(お嫁においで~サライ)、そして客席全員が歌に参加して「ふるさと」、そして最後は賑やかに「星条旗よ永遠なれ」。

18時半開演で、終わってみれば21時20分。長丁場だったが、途中飽きることなく堪能させてもらった。

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松たか子主演/映画「告白」

評価:AA

打ちのめされた。もの凄い映画だ。もうただただ、中島哲也監督にひれ伏すのみ。今年の日本映画ベストワンは早々にこれで決まり。

全編悪意に満ちた内容だから観るには相当の覚悟が必要だが、僕は来年の米アカデミー外国語映画賞の日本代表は絶対これにすべきだと声を大にして言いたい。いや、むしろ今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門にどうして本作が選ばれず、北野武の「アウトレイジ」なんかがエントリーされたのか?責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。

聞くところによるとハリウッドのメジャー・スタジオ3社から既にリメイクのオファーが殺到しているという。当然だろう。ちなみにリメイク版についての中島監督のご指名は、松たか子→ニコール・キッドマン、岡田将生→ダニエル・ラドクリフ、木村佳乃→サラ・ジェシカ・パーカーだそうだ。

映画公式サイトはこちら

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僕は湊かなえが書いたこの原作を、2009年に本屋大賞を受賞した時点で読んでいる。しかし、余り好きにはなれなかった。後味は悪いし、プロットのご都合主義と、整合性のなさを受け入れられなかったのである。

しかし、映画版はそんなことを微塵も感じさせなかった。映画が原作を超えるーそんな希有なことが、「告白」では起こったのである。上映時間106分。こんなコンパクトなサイズにあの小説をまとめ、しかも物足りなさは皆無なのだから、中島監督の脚色はお見事としか言いようがない。ラストの松たか子の台詞にも参った。

映画はブルーを主体とする寒色系に画質が統一され、正にこの世の地獄が描かれる(神も仏もあるものか)。しかし時折、想い出の場面などに暖色系の画面が紛れ込んだりする。その計算された色彩設定が素晴らしい。そして映画のエンド・クレジットでは次第に空が晴れてきて、救いの光が差し込んでくるのである。実にスタイリッシュ。

スローモーションの的確な使用、水が弾けるシーンの美しさ、そして鮮烈な俯瞰ショット。文句のつけようがない。選曲のセンスも光る。

中島監督が2004年に撮った「下妻物語」(キネマ旬報ベストテン第3位)はとても好きな映画だったが、「告白」は軽くそれを超えてしまった。

能面のように無表情で、淡々と台詞を(意図的に)棒読みする松たか子が怖ろしい。狂気を孕んだ木村佳乃の演技も凄みがある。また”北原美月"役を演じた橋本愛が本当に美少女で、時めいた……なーんてね。

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午前十時の映画祭/神様が降りてきた映画「ある日どこかで」

2007年12月18日よみうりホール、立川談志は落語「芝浜」を演じ、「ミューズ(芸の神様)が降りてきた」と言わしめた伝説の高座となった(10枚組みDVD「談志大全 上」に収録)。

カルト・ムービー「ある日どこかで」(Somewhere in Time)もまた、「神様が降りてきた映画」としか表現しようがない。その不朽の名作がスクリーンで、しかもニュープリントで観れるということで、TOHOシネマズなんば「午前十時の映画祭」(実施の詳細はこちら)に足を運んだ。もう何度となくビデオで観て、今はDVDも所有しているが、映画館は初体験である。びっしり満席。

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「ある日どこかで」はリチャード・マシスンのSF小説を原作者自身が脚色を担当し、1980年に映画化されたもの。マシスン原作で映画化されたものとして、他に「奇跡の輝き」「アイ・アム・レジェンド(地球最後の男)」「運命のボタン」などがある。

Somewhere_in_time_1980

監督はヤノット・シュワルツ。この人は他に「ジョーズ2」や「スーパーガール」などを撮っており、まあ言ってしまえば二流監督に過ぎない。

主演は「スーパーマン」ことクリストファー・リーヴ、そしてヒロインをジェーン・シーモアが演じる。リーヴは後に落馬事故で脊髄損傷を起こし、首から下が麻痺してしまう(2004年死去)。また、クリストファー・プラマー(サウンド・オブ・ミュージック、ビューティフル・マインド)がいぶし銀の味わいでしっかり脇を固め、往年の清純派スター、テレサ・ライト(疑惑の影、我らの生涯の最良の年)がちらっと登場するのも嬉しい。

一体何がこの映画に化学反応を引き起こしたのか解らない。しかし何か特別なことが起こった。そして作品は永遠の生命(奇跡の輝き)を得て、世界中に熱狂的なファンを獲得することになる(「ある日どこかで」のファンサイトはこちら)。僕もその魔法の虜になった一人である。原田知世主演、大林宣彦監督の「時をかける少女」(1983)、そして仲里依紗が主演した谷口正晃監督によるリメイク版(2010)にも「ある日どこかで」は多大な影響を与えている。

また、こちらのビクター製S-VHSのCMをご覧頂きたい。これは明かな「ある日どこかで」へのオマージュである。

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恐らく、本作以上にロマンティックで切ない映画はこの世に存在しない。そしてその情感を、いやがうえにも高めているのがジョン・バリーの音楽である。彼なくして、この映画は傑作になり得なかったであろう(バリーは「野生のエルザ」「冬のライオン」「愛と哀しみの果て」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」で4度アカデミー作曲賞を受賞)。オリジナルのテーマ曲も傑出しているが、特筆すべきは挿入曲ラフマニノフ/「パガニーニの主題による狂詩曲」第18変奏。もうまるで、この映画のために作曲されたのではないかというくらい物語に寄り添っている。実はマシスンの原作では、この音楽はマーラー/交響曲第9番であった。しかし監督のシュワルツはこの小品にマーラーは相応しくないと考え、バリーがラフマニノフを提案した。マシスンはこの変更に不満だったという。そしてバリーの判断は正しかった。今や、この映画にマーラーが流れるなんて絶対に考えられない。

今回初めて気が付いたことがいくつかあった。まず映画の序盤、主人公リチャードの仕事部屋にマーラー/交響曲のLPレコードが置いてあったこと。これは原作者に敬意を表してのアイディアなのだろう。それから冒頭で老婦人が亡くなる部屋と、ラストシーンでリチャードが死を迎えようとする部屋が同一であることも判明した。

大好きな作品を、映画館の暗闇にゆったりと身を委ね、心地よい涙を流しなら鑑賞する……正に至福の時間であった。そして場内の明かりが点いた時は、もう殆ど放心状態であった。

大阪での上映は今週一杯。地域によりスケジュールが異なるのでご確認を。

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直木賞vs.山本周五郎賞/いま、一押しの作家はこの人!

今や直木賞(文藝春秋社)の権威は地に落ちた。山本周五郎賞(新潮社)との比較で受賞作を見てみよう。

  • 佐々木譲 「エトロフ発緊急電」(1990、山本賞)→「廃墟に乞う」(2010、直木賞)
  • 宮部みゆき 「火車」(1993、山本賞)→「理由」(2002、直木賞)
  • 船戸与一 「砂のクロニクル」(1992、山本賞)→「虹の谷の五月」(2000、直木賞)
  • 天童荒太 「家族狩り」(1995、山本賞)→「悼む人」(2009、直木賞)
  • 白石一文 「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(2009、山本賞)→「ほかならぬ人へ」(2010、直木賞)

つまり、直木賞は常に後だしジャンケンなのである。しかも北村薫など、既に評価が定まった作家(安全パイ)を選出する。特に佐々木譲のケースは呆れた。山本周五郎賞の実に20年後の受賞である。例えて言うなら、村上春樹に今更、芥川賞を与えるようなものである。

上記小説を読まれた方は大方同意されると思うが、その作家の代表作と言えるのは、はやり山本周五郎賞受賞作の方である。

それにしても白石一文の「ほかならぬ人へ」は酷かった。デビュー作「一瞬の光」の完全な自己模倣。こんな駄作に直木賞を与えるなら、むしろ「一瞬の光」が受賞すべきだった。その点、山本賞を獲った「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」は優れた作品であった。こちらは選考委員の目が高い。

しかし困ったことに山本賞を受賞しても本は大して売れないが、直木賞だと爆発的に売れる。知名度が全然違うのである。

ここ最近、直木賞を受賞した小説20作品のうち、文藝春秋社から出版されたものは13冊。つまり65%を占めている。いくら本が売れない時代とはいえ、これは公平性を欠いたあからさまな選考としか言いようがない。

だから僕は直木賞を信用しない。むしろ読んでみたいなと食指が動くのは山本周五郎賞や書店員が選ぶ本屋大賞受賞作である。こちらはまず、ハズレがない。

そんな中、最近山本周五郎賞を受賞した作品の中で、僕が一番お気に入りなのが「夜は短し歩けよ乙女」(2007年)である。

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著者の森見登美彦は1979年奈良県生まれ。京都大学農学部を卒業し2003年「太陽の塔」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞、作家デビューした。第2作「四畳半神話大系」はアニメ化され、現在フジテレビ系列で放送中である。

夜は短し歩けよ乙女」は2007年本屋大賞の第2位。この年、第1位「一瞬の風になれ」の得点が 475.5点で「夜は短し歩けよ乙女」が455点だから僅差だったと言えるだろう(第3位「風が強く吹いている」は247点)。また森見の「有頂天家族」は2008年本屋大賞第3位にランクインしている。

さらに「夜は短し歩けよ乙女」は今年、大学の文芸部員が大学生に向けた推薦図書を選ぶ文学賞「大学生読書人大賞」も受賞した。

この小説の魅力は、摩訶不思議なめくるめく青春ファンタジーであること。そして森見作品は全て京都が舞台となっているのも特徴的である。

また各小説間の関連性も興味深い。例えば「夜は短し歩けよ乙女」に登場する三階建て《偽叡山電車》や《偽電気ブラン》は「有頂天家族」にも出てくるし、「夜は短し歩けよ乙女」のゲリラ演劇プロジェクト《偏屈王》や(京都)大学工学部校舎屋上に建設された《偏屈城》は、その美術監督や裏方が「宵山万華鏡」に登場する。

宵山万華鏡」を読んでいて、押井守監督のアニメーション映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」や「迷宮物件」に凄く似ているなと想った。そしてよくよく調べてみると、森見が押井ファンであることが判明した→こちら。もし押井が「夜は短し」をアニメ化したら、大傑作になるかも。

落語との関連性も指摘しておこう。「有頂天家族」は上方落語でお馴染みのキャラクター、狸や鞍馬の天狗が登場し、「宵山万華鏡」の《地獄の宵山巡り》は落語「地獄八景亡者戯」を彷彿とさせる。

森見登美彦の小説はライトノベルみたいに気軽に読めるし、とにかく面白い!未体験の方は是非、まずは文庫本「夜は短し歩けよ乙女」を手に取ってみて下さい。

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「アリス・イン・ワンダーランド」3D字幕版

評価:B

ティム・バートン監督は今年、カンヌ国際映画祭で審査委員長を務めた。彼が賢いのは、北野武監督「アウトレイジ」に賞を与えなかったこと。日本人もそろそろ、北野武の才能が枯渇した(蓄えを使い果たした)ことに気付くべきである。それにしてもことごとく興行的に失敗している彼に、いまだ出資しようという奇特なプロデューサーがいることが、僕には信じられない。

さて、「アリス・イン・ワンダーランド」映画公式サイトはこちら

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プロローグとエピローグの現実シーンは演出が生彩を欠いたが、不思議の国に入るやいなや、ティム・バートン節炸裂!クレイジーで、「おかしなおかしなおかしな世界」が展開される。これぞ真骨頂。3D効果もワンダーランドで初めてその威力を発揮した。愛嬌があるクリーチャーの造形、奇妙奇天烈な美術、そして洗練された衣装(「シカゴ」「SAYURI」でアカデミー衣装デザイン賞を受賞したコリーン・アトウッド)が素晴らしい。

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音楽のダニー・エルフマンが久しぶりにいい仕事をした。児童合唱が入るテーマ曲が秀逸。「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」とか「チャーリーとチョコレート工場」など、この人はティム・バートン作品でこそ、その本領を発揮する。朋友とのコンビなら、遠慮なく大暴れできるのだろう。

アラン・リックマン(「ハリー・ポッター」のスネイプ先生)やクリストファー・リー(「スター・ウォーズ」のドゥークー伯爵、「ロード・オブ・ザ・リング」のサルマン)が声の出演をしているのも嬉しい。

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「らくだ」登場!/鶴瓶と誰かと鶴瓶噺@河内長野

河内長野ラブリーホールへ。

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先月、鶴瓶さんが「鶴瓶と笑子と三四郎 落語会」でネタおろしした、くまざわあかね作の私落語について、タイトルが書き辛かったので僕は記事の中で○○○と表現した。

今回鶴瓶さんは「ネタ帳にこの演題をひらがなで書いたら、いやらしいやん!だから僕はローマ字で書くようにしているんです。そしたらアホな噺家がそれを”チェンジ”(CHANGE)と読んだんや」(ここで春蝶さん爆笑)と仰っていたので、僕もそれに準じることにする。なお、このネタは3回目の口演だそう。もちろん大受けだった。

  • 笑福亭鶴瓶/鶴瓶噺
  • 桂     春蝶/山内一豊と千代
  • 笑福亭鶴瓶/私落語"CHINGE"(くまざわあかね 作)
  • 笑福亭鶴瓶/らくだ(古典)

鶴瓶噺では映画「おとうと」で共演した吉永小百合を「ねえちゃん」と呼んでいること、「ディア・ドクター」で共演した瑛太から先ほど携帯に電話がかかり、カエラとの結婚や妊娠の話を聞いたことなどを披露された。

「僕の携帯にはね、1000人くらい(芸能人の)電話番号が登録されているんです」と言うと、客席のおばちゃんが「落として!」と反応し、爆笑に。「いやぁ、大阪のおばちゃんは本当におもろいわ」鶴瓶さんは古典落語「死神」に登場する死神(原作はヨボヨボの爺さん)を若い女に変えて演じているが、噺の中で主人公が「綺麗やなぁ」と言うと、その目線の先に座っていたおばちゃんが「ありがとう」と答えたとか。「この後で落語しますけれど、途中で絶対喋ったらあかんで」

8年前から本格的に落語に取組み始めた鶴瓶さん。「現在レギュラー8本持ってますが、年間120回は落語しています。繁昌亭にもできる限り月1回は出たいと思っているんです」と。

春蝶さんは昨年の襲名以降、「山内一豊と千代」「大阪城の残念石」など講談ネタに積極的に取組んでいる。このネタは春蝶さん以外する噺家はいない。しっかり独自の個性を打ち出しているのだから立派である。よく練られた高座だった。

中入りを挟み、後半。何が飛び出すのかワクワク。会場の照明が落とされ、高座の背景は障子。笑福亭の紋「五枚笹」がその中央に浮かび上がる。この演出は「死神」か?

そして鶴瓶さんが登場し、何と僕が前から聴きたかった「らくだ」が始まった。まさかここで演ってくれるとは!(二日前に演目を決めたそうである)

らくだ」は鶴瓶さんの師匠、六代目・笑福亭松鶴が十八番にしていたネタ。

どぶさっとぉる思たら、ゴネてけつかる。

といった、大阪独特の古い言い回しが出てくる。

「どぶさる」は「伏せる=寝る」に下品な接頭語「ど」を付けたもの(現代でも「どたま《頭》かち割ったろか」という風に用いられる)。「ごねる」とは「御涅槃(ごねはん)る」から来ていて「死ぬ」という意。

鶴瓶さんの「らくだ」は紙屑屋の笑顔とひょこひょこした歩き方の表現が秀逸。弥猛(やたけた)の熊五郎が紙屑屋を威嚇するために、片足で床をドン!と踏みならす演出も効いている(反対の足はちゃんと座布団にタッチしている)。そして酔っ払いの凄み。これぞ笑福亭のお家芸。

最後は死んだ「らくだ」を紙屑屋と熊五郎が漬け物樽に入れて、千日前の火屋(ひや=火葬場)へと運ぶ。サゲが「火屋(冷や)でもいいから、もう一杯」なのだが、この火屋が死語なので現代人には通じず、最後まで演る噺家は少ない。

鶴瓶さんはこの二人の珍道中をしっかり描き(途中、寄り道もする)、本来のサゲまできっちり演じられた。しかし、何と鶴瓶版にはその続きがあったのである!大どんでん返しのエピローグ。呆気にとられた。しかし、決して違和感はない。今まで聴いた最高の「らくだ」であった。エンディングにはスクリーンが降りてきて準備から本番までを映像で見せる演出も。いやぁ、面白かった。

もしあなたが落語ファンなら、鶴瓶版「らくだ」は機会があれば万難を排し、絶対観るべきである。僕もまた足を運びたい。

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ウィーン・フィルが「スター・ウォーズ」!?/大フィル定期で聴きたい曲

驚天動地のニュースが飛び込んできた。何と、天下のウィーン・フィルがウェルザー=メスト(今年9月より、小澤征爾の後任としてウィーン国立歌劇場音楽監督に就任)の指揮で、「スター・ウォーズ」を演奏するというのである!!詳細は→こちら

それにしても、凄い時代になったものである。20世紀には絶対考えられなかった大事件だ。

僕は昨年、こんな記事を書いた。

ウィーン・フィルは来日公演でニーノ・ロータを取り上げたが、ロータは既に故人であった。まさかジョン・ウィリアムズの目が黒いうちにこんなことが実現しようとは……。

映画音楽がちゃんとしたコンサート用の楽曲として認められたわけで、こんな喜ばしいことはない。日本のオケも今後、積極的にこのジャンルに目を向けて貰いたいものである。それは間違いなくファン層の拡大に繋がるし、集客にも結びつくだろう。

ところで今シーズン、大阪フィルハーモニー交響楽団・定期演奏会の保守的なプログラムが物議を醸している。

しかし批判するだけでは何も生まれない。そこで僕ならこんなオーケストラ曲が生で聴いてみたいという具体例を示したいと思う。

今までの大フィル定期の内容を見ると、余りにも20世紀以降のレパートリー(12音技法や無調音楽を除く)が欠落しているのではないか?という気がして仕方がない。そこで映画音楽を含め、列挙していきたい。

まず、日本の作曲家から。邦人作品を取り上げないオケは「日本の文化」と呼べない。

  • 芥川也寸志/交響三章「トリニタ・シンフォニカ」、
    エローラ交響曲
  • 黛敏郎/涅槃交響曲、曼荼羅交響曲
  • 伊福部昭/シンフォニア・タプカーラ、日本組曲
  • 早坂文雄/ピアノ協奏曲、古代の舞曲、
    左方の舞と右方の舞、交響的組曲「ユーカラ」
  • 武満徹/ノヴァンバー・ステップス(これに限らず、何でも)
  • 矢代秋雄/交響曲、ピアノ協奏曲
  • 三善晃/レクイエム
  • 吉松隆/交響曲(どれでも)、ギター協奏曲「天馬効果」、
    ピアノ協奏曲「メモ・フローラ」、サイバーバード協奏曲
  • 久石譲/交響的変奏曲"Merry-go-round"
    (「ハウルの動く城」より)
    オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」

オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」はナレーターを要するので、例えば武満徹「系図(ファミリー・トゥリー)」~若い人たちのための音楽詩と組み合わせても面白いかも。早坂文雄は映画「羅生門」「七人の侍」の音楽で有名。

データベースを調べてみると、過去に大フィルは黛敏郎伊福部昭を一度しか取り上げたことがないようだ。武満徹は何度か演奏されているが、「ノヴァンバー・ステップス」は皆無である。芥川也寸志、早坂文雄、矢代秋雄もない。

20世紀イタリアを代表する作曲家ならニーノ・ロータとエンニオ・モリコーネにトドメを刺す。

  • ニーノ・ロータ/バレエ音楽「道」

スペイン

  • マヌエル・デ・ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」「恋は魔術師」
    交響的印象「スペインの庭の夜」(準 ピアノ協奏曲)

イギリス

  • マルコム・アーノルド/交響曲(どれでも)
  • エドワード・エルガー/オラトリオ「ゲロンティアスの夢」
  • フレデリック・ディーリアス/「丘を越えて遥かに」「夏の庭で」「夏の歌」「楽園への道」「海流」「日没の歌」「別れの歌」など
  • ウィリアム・ウォルトン/交響曲 第1番、2番
  • マイケル・ナイマン/ピアノ協奏曲(映画「ピアノ・レッスン」より)

フランス

  • フランシス・プーランク/ピアノ協奏曲、
    オルガン・弦楽とティンパニのための協奏曲
  • ジャン・フランセ/クラリネット協奏曲、チェンバロ協奏曲
  • オリヴィエ・メシアン/トゥーランガリラ交響曲
  • ミッシェル・ルグラン/交響組曲「シェルブールの雨傘」「恋」

ルグラン「恋」は立派なピアノ協奏曲である。そして美しい!お洒落で軽妙洒脱なプーランクピアノ協奏曲こそ最高傑作だと僕は信じて疑わない。データベースを見ると大フィルは過去にオルガン・弦楽とティンパニのための協奏曲と、2台のピアノのための協奏曲を取り上げたことはあるが、ピアノ協奏曲は一度もない。

ロシア

  • セルゲイ・プロコフィエフ/アレクサンドル・ネフスキー
  • アラム・ハチャトゥリアン/交響曲 第3番
  • ドミトリー・カバレフスキー/交響曲(どれでも)
  • ヴァシリー・カリンニコフ/交響曲 第1番、2番

ちなみにカバレフスキーのシンフォニーは大植英次さんが北ドイツ放送フィルで全曲レコーディングされている。「道化師のギャロップ」は小学校の運動会でも使用される有名曲。カリンニコフは19世紀末の作曲家。

アメリカ

  • アーロン・コープランド/クラリネット協奏曲、
    バレエ音楽「ロデオ」「アパラチアの春」
  • ハワード・ハンソン/交響曲 第2番「ロマンティック」、
    ディエス・ナタリス
  • バーナード・ハーマン/映画「サイコ」組曲
    (弦楽合奏のための)
  • レナード・バーンスタイン/映画「波止場」交響組曲
  • ジョン・ウィリアムズ/トランペット協奏曲、チューバ協奏曲
  • ハワード・ショア/交響組曲「ロード・オブ・ザ・リング」

アルゼンチンはやっぱりタンゴでしょう。

  • アストル・ピアソラ/バンドネオン協奏曲、
    プンタ・デル・エステ組曲

チェコ、プラハ生まれでアメリカ在住の作曲家の代表作も挙げておこう。

  • カレル・フサ/プラハのための音楽1968

これは元々、吹奏楽曲として作曲されたが、ジョージ・セルの依頼で管弦楽に編曲されたもの。ソ連軍に蹂躙された「プラハの春」を題材にしている。

ポーランド

  • ヘンリク・グレツキ/交響曲 第3番「悲歌のシンフォニー」

ハンガリーからは敢えて、バルトークを外して、

  • ミクロス・ローザ/ヴァイオリン協奏曲 第2番

ミクロス・ローザ(ロージャ・ミクローシュ)は戦火を避けハリウッドに渡り、映画「ベン・ハー」や「白い恐怖」でアカデミー作曲賞を受賞。ヴァイオリン協奏曲は大フィルのコンマス・長原幸太さんが尊敬するヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツが初演した名曲。後にビリー・ワイルダー監督の映画「シャーロックホームズの冒険」に流用された。

ドイツ、オーストリアの作曲家からは、

  • ツェムリンスキー/抒情交響曲、交響詩「人魚姫」
  • アルノルト・シェーンベルク/グレの歌
  • クルト・ワイル/交響曲第1番、2番、七つの大罪
  • フランツ・シュミット/オラトリオ「七つの封印」
  • エーリヒ・W・コルンゴルト/交響曲、ヴァイオリン協奏曲

「グレの歌」は1990年大フィル定期で演奏されているが、そろそろ再演されてもよいのでは?信じ難いことだが、ツェムリンスキーはどうやら一度も取り上げられたことがないみたい。

ワイルは「三文オペラ」で有名。ウィーンでのオペラ作曲家として名を馳せたコルンゴルトはハリウッドに渡り、映画「風雲児アドヴァース」「ロビン・フッドの冒険」でアカデミー作曲賞を受賞した。

思い付くままに書き綴ってきた。読者の皆さんも、ご意見があればどしどしコメント欄にお書き下さい。

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吉朝一門の攻勢/get's 待っツ 動楽亭(5/31)

今、上方の噺家で一番チケットが取りにくいのは間違いなく笑福亭鶴瓶さんだろう(東京なら柳家喬太郎さん)。そして恐らくその次は吉朝一門(特に吉弥よね吉)と思われる。6/13(日)に動楽亭(定員100名)で開催される「吉朝一門 全員集合!」という会は、なんと電話予約受付開始20分で完売してしまった(僕は入手できなかった)……。5/30(日)に動楽亭で開催された「吉の丞進学塾」もいっぱいの盛況だったそうである。吉朝一門、恐るべし。

31日月曜日、その新世界・動楽亭へ。入りは五十数名。

K02

  • 桂   弥生/狸賽(たぬさい)
  • 桂吉の丞/軽業
  • 桂   紅雀/青菜
  • 桂佐ん吉/始末の極意
  • 桂   吉弥/短命

なお、紅雀さんは枝雀一門、他の4人が吉朝一門である。

番組表になかった弥生さん(吉弥の二番弟子)の登場に場内どよめく。

「こんにちは」
「誰やと思たらおまはんかいな、まぁこっち入り」

と始まり、「子ほめ」かな?と思った瞬間、弥生さんが突然口をつぐむ。深々と頭を下げて「申し訳ありません、間違えました」と。温かい笑いが起こり、「頑張って!」の声援が飛ぶ。気持ちを切り替えて、

「お前かいな、昼間の狸は?」

と「たぬさい」が始まった。よどみなく完走。初々しく爽やかな高座であった。こういうハプニングもライヴならではの愉しさだろう。

続いて吉の丞さん。いきなり、

「こんにちは」
「誰やと思たらおまはんかいな、まぁこっち入り」

と入り、「アッ、間違えました!」で場内爆笑。その後、開始10秒で詰まった自分の初高座や、ネタを忘れて途中で舞台を降りたエピソードなどを語り、しっかり弥生さんをフォロー。

紅雀さんは知り合いの歌手に招待され、堺市民会館に初めてオペラを観に行った感想を披露。「ブラボー!」の歓声にびっくりしたと。「(関西弁は喋れても)標準語も喋れない堺市民が、イタリア語で叫ぶなんて変じゃないですか!?おぞましい」成る程、一理ある。延々と続くカーテンコールにも閉口したそう。オーバーアクションで軽やかな「青菜」はやはりどこか、師匠の枝雀さんを彷彿とさせるものがあった。

ここで仲入り。出演者全員によるトークあり。「get's 待っツ 動楽亭」の仲間・桂ひろばさんが現在、インドに「自分探しの一人旅」に出かけている話題で盛り上がる。これが三回目だそう。「何時になったら自分が見つかるねん!」

佐ん吉さんはマクラの作り方がまだまだ。雑談じゃないんだから。何と彼は5月1日から31日まで、一日の休みもなく仕事があったそう。

トリの吉弥さん、仕事があって沢山客も入る若手を羨む。「僕が駆け出しの頃は、ワッハ7Fレッスンルームで落語会して、高座とか全部自分で準備して、それでも人が全然集まらず苦労しました」と。「現在彼らがこれだけ忙しく活躍しているのも、全て(自分が出演した)『ちりとてちん』のおかげです!」ここで拍手喝采となる。現在NHK「ちりとてちん」はBS-hiで毎週日曜深夜に再放送中で「昨夜も観てしまいました。懐かしいですねぇ」

吉弥さんの「短命」は文句なしに上手いし、面白いのだけれど、実は聴くのがこれで5回目。その反面、何と吉弥さんの「ちりとてちん」は一度も生で聴いたことがない(多分ここ数年、大阪では殆ど演ってないのだろう)。さて、僕が彼の「ちりとてちん」にめぐり逢えるのは何時の日のことか……。

K01

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