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ブロードウェイの衰退/トニー賞授賞式2010

NHK-BSで放送されたアメリカ演劇界の祭典、トニー賞授賞式を見た。「ライオンキング」が最優秀ミュージカル作品賞、「キャバレー」(映画「シカゴ」「ナイン」のロブ・マーシャルと「アメリカン・ビューティ」「レボリューショナリー・ロード」のサム・メンデスが共同演出)がミュージカル・リヴァイヴァル作品賞を受賞した1998年以降、欠かさず見ている。

しかし、はっきり言って今年のトニー賞の中身は一番低調で、詰まらなかった。

パフォーマンスを見て興味を引かれたのはリヴァイヴァルの「ラグタイム」と「プロミセス・プロミセス」くらい。「ラグタイム」は既にクローズしている。

ミュージカル「ラグタイム」が初演されたのは1998年。トニー賞では「ライオンキング」との一騎打ちとなり、惜しくも敗れた。タイミングが悪かった。僕はオリジナル・キャストCDを持っているが、楽曲は大変素晴らしい。しかしこの作品、人種問題を扱っているので日本人キャストによる上演は難しく、未だに実現していない。そういう意味では今年、最優秀ミュージカル作品賞、楽曲賞を受賞した「メンフィス」も同様のことが言えるだろう。人種差別が根強く残る南部の街を舞台に、黒人音楽を世に広めようとする白人DJの物語だという。日本人が黒塗りしてもねぇ……。

プロミセス・プロミセス」はビリー・ワイルダー監督の映画「アパートの鍵貸します」を舞台ミュージカル化したもの。台本がニール・サイモン。作詞:ハル・デイビッド、作曲:バート・バカラックのコンビは映画「明日に向かって撃て!」の主題歌「雨にぬれても」や、「アルフィー」、カーペンターズが歌った"Close to You"(遥かなる影)などでお馴染みだろう。これは是非、日本でも再演して欲しい(出来ればニュー・ブロードウェイ版で)。

演技賞を受賞したのは、ディンゼル・ワシントン、スカーレット・ヨハンソン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズら。ハリウッド・スターが多いのはアメリカ演劇界の沈滞を如実に示しており、話題先行で頂けない。ゼタ=ジョーンズがスティーブン・ソンドハイムのミュージカル「リトル・ナイト・ミュージック」から名曲"Send in the Clowns"を歌うということで大変期待したのだが、風邪でも引いたらしく、ハスキー・ボイスで喉のコンディションが非常に悪かった。

今から考えると、「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などロンドン・ミュージカルが席巻した1980年代から既にブロードウェイ・ミュージカル凋落の兆しは見られていたと言えるだろう。

企画力・冒険心のなさは映画(アニメ)の舞台化という形で1990年代以降顕著となった。「美女と野獣」「ライオンキング」「プロデューサーズ」「モダン・ミリー」「ヘアスプレー」「ビリー・エリオット(リトル・ダンサー)」等がそれに該当する。

そしてABBAの楽曲を大量投入した「マンマ・ミーア!」の大ヒット以降、ブロードウェイでいま流行っているのがジューク・ボックス・ミュージカル。つまり既成のヒット曲を並べ立てる手法である。2006年にトニー賞を受賞した「ジャージー・ボーイズ」がそうだし、今年ミュージカル作品賞にノミネートされた4作品のうち、何と3作品がジューク・ボックス・ミュージカルという情けなさ。パンク・ロックバンドのグリーン・デイを題材にした「アメリカン・イディオット」のパフォーマンスを見ながら「こんなコピー・バンドの演奏を聴いてもしょうがないじゃん。本物のライヴを聴きに行ったほうが断然、盛り上がるんじゃない?」という白けた気持ちになった。

だから今年、楽曲賞にノミネートされた4作品のうちミュージカルは「メンフィス」と「アダムス・ファミリー」の2作だけという寂しい結果に。残りの2つはストレート・プレイであった。

また、リヴァイヴァル作品賞・演出賞・主演男優賞を受賞した「ラ・カージュ・オ・フォール」は「市村正親さんがザザを演じた日本版のほうが断然いい」と感じたし、そもそもこれはロンドン発のプロダクション。アメリカ演劇界は一体どうしてしまったのか?

次々と新作を製作する宝塚歌劇があり、また「エリザベート」「モーツァルト!」「レベッカ」などウィーン・ミュージカルも愉しめる日本の方が、今はむしろ充実しているのではないかとさえ想われた。

今年のトニー賞の最大の見せ場は、結局スカーレット・ヨハンソンの大胆でセクシーなドレスだったのかも知れない→写真はこちら

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