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オーケストラ・アンサンブル金沢×兵庫芸文オケの「大渓谷」!

兵庫県立芸術文化センターへ。

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渡り廊下は佐渡裕×バーンスタインの「キャンディード」一色に。

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兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)とオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)合同による大演奏会の幕開けである。指揮はミッキーこと井上道義さん(愛称の由来は→公式サイトへ)。

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  • モーツァルト/交響曲 第38番「プラハ」(OEK)
  • ベートーヴェン/交響曲 第8番(PAC)
  • グローフェ/組曲「グランド・キャニオン」(OEK+PAC)

プログラム前半はそれぞれのオケが単独で演奏。モーツァルトは指揮台を挟んで第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが向かい合う対向配置。バロック・ティンパニが使用され、ヴィブラートを極力抑えたピリオド奏法だった。ティンパニは菅原淳さん。読売日本交響楽団を定年退職後、鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンとも共演されている名手である。

ベートーヴェンは人数が増え、今度は第1、第2ヴァイオリンが舞台下手に仲良く並ぶ通常配置。バロック・ティンパニはそのまま。今度はヴィブラートの比率を増した奏法となった。

速めのテンポで颯爽とした解釈。要所でパンチが効いており、快感。「プラハ」の終楽章、ミッキーは指揮をしながら軽やかに踊った。

僕は5年ほど前に井上道義/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏でベートーヴェンの第九を聴いたが、あの時はバロック・ティンパニを使用したり、ピリオド奏法させたりしていなかった。つまりOEKの音楽監督になってから、ミッキーはスタイルを変えたということなのだろう。その柔軟性が素晴らしい(大植英次さんも見習って欲しいものだ)。ちなみにミッキーが就任する前からOEKは金聖響さんと共にピリオド奏法によるベートーヴェンに取り組んでいた。これはダニエル・ハーディングの後任としてドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンの音楽監督に就いた、パーヴォ・ヤルヴィのケースに似ていると言えるだろう。

最近になってピリオド・アプローチを積極的に取り入れ、スタイルをがらっと変えた指揮者として、チャールズ・マッケラスやクラウディオ・アバドの名前が挙げられる。アバドで特にびっくりしたのはモーツァルト管弦楽団とレコーディングした「ペルゴレージ/スターバト・マーテル」の新しいCD。小編成、古楽器によるノン・ビブラート奏法(ピュア・トーン)だった。24年前に同曲をロンドン交響楽団とレコーディングしたものは、モダン楽器でヴィブラートを掛けた演奏であり、全く印象が異なるものとなった。

こうした新しい潮流に取り残されることへの危機感を抱いた大フィルも、遂に重い腰を上げた。古楽奏法(ピリオド・アプローチ)の第一人者・延原武春さんと、いずみホールで3年間に及ぶプロジェクトを立ち上げたのである。5/27に開催される第一回目の詳細はこちら。大フィルを含め、生き残りを賭けた在坂オケの取り組みに関する日経の記事はこちら(センチュリーだけが意図的に外されているのが意味深である)。時代は動き始めた。風が強く吹いている。その躍動感が今回の演奏からも聴こえてきた。

OEKPACを続けて聴いた、両オーケストラの評価も書いておこう。弦楽器の音の美しさはOEKに軍配が上がる。木管は互角の勝負。しかしOEKのトランペットやホルンは大フィル並みに下手なので、金管に関してはPACの勝ち。PACのトランペットやホルンは外国人がトップ・プレーヤーなのが大きいだろう。もっと頑張れ、日本人!

ティンパニだが、さすがベテランの菅原さんは上手かった。それに対しPACの方はどうも頼りない。切れがなく、なんだか自身なさそうに叩いている印象を受けた。

さて、プログラム後半はいよいよ合同演奏。舞台上に所狭しと椅子が並べられ壮観。当然ティンパニはモダン楽器に。分厚いサウンド、スペクタクルな音の大パノラマがホール全体に展開した。

考えてみれば「グランド・キャニオン」を生で聴くのはこれが初体験。余りにも有名な作品だが、意外とコンサートでは取り上げられない曲なのかも。外面的効果を最大限に発揮し、精神性は皆無。でもそこが潔く、聴いていて清々しい。意味がないのが最高なんだ。音楽って所詮、束の間の快感にすぎないのだから。そういう観点から言うと、この曲はR.シュトラウス/アルプス交響曲に極めてよく似ている。あれもド派手で中身が空っぽの音楽だ。自然を描写していること、そして嵐の場面でウィンドマシーンやサンダーマシーンを使用するのも両者の共通項。ちなみにアルプス交響曲の初演が1915年、「グランド・キャニオン」は1931年である。

大音響が腹にズシリと応え、スカッとする演奏だった。OEKのアビゲイル・ヤングさんが見事なヴァイオリン・ソロを聴かせてくれた後、ミッキーが指揮台で最敬礼したのが可笑しかった。

聴衆は熱狂し、拍手喝さい。すると楽員が譜面をめくり始める。おっ、アンコールがあるのか!?これだけの大人数でしかも「グランド・キャニオン」の後。ということは……。ティンパニ奏者がスネアドラムに移動する。その瞬間、僕の脳裏に曲名が閃いた。そう、スーザ/星条旗よ永遠なれが演奏されたのである。客席は手拍子で参加し、大いに盛り上がる。奏者もノリノリ。最高に愉しいコンサートであった。ありがとう、ミッキー!

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