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2010年5月21日 (金)

イオン・マリン/大フィルのムソルグスキー&ラヴェル

ザ・シンフォニーホールにて大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴く。

指揮者はルーマニア出身のイオン・マリン。今年6月にベルリン・フィルのワルトビューネ(野外)コンサートを振ることが決まっており、2011年の定期演奏会も出演が予定されているとか(佐渡裕さんと同じ)。

D1

  • ムソルグスキー/交響詩「はげ山の一夜」(原典版)
  • ラヴェル/組曲「クープランの墓」
  • ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」

禿山の一夜」は(原典版)と書いてあったからてっきり、(クラウディオ・アバドのレコーディングで知られるようになった)ムソルグスキー自身のオーケストレーションによるオリジナル版(作曲後100年以上を経た1968年に初演)が聴けるのかと愉しみにしていた。ところが、リムスキー=コルサコフの手で再構成され、洗練された華麗なオーケストレーションを施された改訂稿が演奏の大半を占めたのでがっかりした。結局、リムスキー=コルサコフが勝手に付け加えた終結部「夜明けの鐘と、魔女たちの退散」を省き、最後だけ土俗的で粗野なオリジナル版に戻すという中途半端な構成で、統一性に齟齬をきたし違和感が残った。

はっきり言ってムソルグスキー(原典版)のオーケストレーションは野暮で泥臭い。現在よく聴かれるリムスキー=コルサコフ版とは文字通り雲泥の差。到底同じ曲とは思えない。それでも滅多に触れることが出来ない、磨かれる前のごつごつした原石だからこそ、この機会に全曲生で聴きたかった。

しかし、イオン・マリンのシェフとしての采配は見事だった。歯切れが良くメリハリのある演奏で、ラヴェルも響きが曖昧模糊に沈むことなく明晰な解釈だった。「展覧会の絵」冒頭のプロムナードは淡々と始まるが、グロテスクな「小人」、颯爽とした「テュルリーの庭」、重々しく足を引きずるような「ビドロ」、そしてどっしりと構えて荘厳な「キエフの大門」に至るまで、各曲の個性の描き分けが非常に巧みであった。

ここ数年、大フィル定期に登場するソリストは「何でこんな人を起用するの?」と首を傾げたくなるケースが多い(次回なんか中村紘子だぜ!?)。

ただ、指揮者に関する限りしっかりと実力がある人が選ばれているように想われる。昨年のヤクブ・フルシャしかり、クリストフ・アーバンスキしかり。そして今回のイオン・マリンにも、確かな(本物の)手応えが感じられた。

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コメント

イオン・マリン、存外に良かったですよね。今回、ソリストがいなかったのは、この人のギャラが存外に高かったからかも(笑)。欲をいえば、もっとキャラの立ったプログラムで聴かせてほしかったですね(オール・ムソルグスキープロ、とか)。

中村紘子さんには、雅哉さん、なかなか辛口のコメントですが、僕自身は、この人のショパンの1番は以前に聴いており、流石だ、という評価です。指揮は去年の鮮烈な印象がいまだ残るフルシャ君ですし、次回も期待できそうですね。

投稿: ぐすたふ | 2010年5月21日 (金) 22時19分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

イオン・マリンに対する、僕たちの高評価は一致していますが、一方で音楽評論家・出谷啓さんはボロクソに貶されていたので笑ってしまいました→こちらです。

しかし「はげ山」に対する違和感は僕と同様のことを書かれています。

イオン・マリンがワルトビューネで振る曲目が発表になっていますが(こちら)、ベルリンでも「はげ山」を演るんですね。

文句を言いながらも次回の定期には足を運びます。しかし何も中村さんを起用しなくても、例えば日本在住の人に限ったって仲道郁代、上原彩子、河村尚子、菊池洋子、イリーナ・メジューエワなど、活きのいい旬のピアニストが沢山いるのにと歯痒い想いがします。フルシャの指揮には期待していますが……。

投稿: 雅哉 | 2010年5月21日 (金) 23時13分

私も「禿山の一夜」は(原典版)と書いてあったから聴きに行ったのに、終結部だけ原典版というのは看板に偽りありだと思いましたね。
あとの2曲も彼の解釈には首を傾げたくなる部分も多かったです。

投稿: | 2010年5月28日 (金) 01時17分

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