待ってました!なにわ《オーケストラル》ウィンズ 2010
ザ・シンフォニーホールへ。
年1回、プロのオーケストラ楽員(オケメン)による吹奏楽の祭典、なにわオーケストラルウィンズ(NOW)を聴く。過去の感想は下記。
指揮は淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部顧問の丸谷明夫先生(丸ちゃん)と、今年のゲストとして光ヶ丘女子高校の日野謙太郎先生。
「なにわ」といっても現在では東京のオケ奏者がなんと20人も参加している。2003年に始まった頃は殆どが関西在住のプロの音楽家で構成されていたが、評判が評判を呼び、丸谷先生の指揮で演奏したいという人々が東方からも多数、手を挙げたという次第。
16時開場、17時開演だが、16時前から長蛇の列。JR福島駅から走ってくる高校生たちも。
入場すると既に階段前で(告知のない)ロビーコンサートが始まっていた。
まずは榎田さんのフラウト・トラヴェルソ(バロック・フルート)、内藤さんのヴィオラ・ダ・ガンバ、松村さんのハープでトリオ。昨年の吹奏楽コンクール課題曲「16世紀のシャンソンによる変奏曲」の主題も演奏された。
さらにトランペット六重奏、12人のクラリネットで「花の謝肉祭」、ホルン四重奏で「ディスコ・キッド」、ベートーヴェンのオーボエ三重奏曲(オーボエ2,イングリッシュホルン1)と続く。
ロビーが撤収され、いよいよ客席へ。メイン・プログラムは下記。なお各々の指揮者は(M)=丸谷、(H)=日野を示す。
- ライニキー/鷲の舞うところ(M)
- C.ウィリアムズ/献呈序曲(M)
- 長野雄行/吹奏楽のための民謡「うちなーのてぃだ」
(課題曲III)(H) - 高橋宏樹/オーディナリー・マーチ
(課題曲 II)(M) - 広瀬正憲/迷走するサラバンド
(課題曲 I )(H) - オリヴァドーティ/薔薇の謝肉祭(M)
- マッキー/翡翠(かわせみ)(H)
《休憩》 - リード/音楽祭のプレリュード(M)
- 田嶋 勉/潮風のマーチ
(課題曲IV)(M) - 鹿野草平/吹奏楽のためのスケルツォ第2番《夏》
(課題曲V)(指揮者なし) - チャンス/朝鮮民謡の主題による変奏曲(H)
- レスピーギ/ハンティングタワー(M)
- マー/ノーブル・エレメント(H)
ライニキーは冒頭のファンファーレが格好いい!リズムが小気味よく、爽やかに一陣の風が吹き抜けるよう。
C.ウィリアムズは一言で言うと"noble"(高貴)。コラール風のメロディに、力強いマーチが続く。
課題曲IIIは沖縄らしい旋律で軽快。陽光が燦々と降り注ぐような音楽。ここで恒例の実験。まず曲の受け渡しがしやすい配置に変えての演奏。下手側、クラの中にサックスが混じっている。またファゴット、バスクラやチューバが1列目(上手)に!
課題曲 IIは丸ちゃんらしい引き締まったマーチ。作品自体は曲想の変化に乏しく平板な印象。コンクールで正当な評価を得られにくい鬼門の曲と見た。実験は少子化に伴い13人の演奏に挑戦。クラリネット1人、フルート(ピッコロのみ)1人。これはこれですっきりした響きがして、中々いい。
課題曲 I は変拍子の難しい曲。でも聴いていて面白い。
「バラの謝肉祭」は僕も中学生の頃に吹いたことがある曲。当時、部内では通称「バラニク」と呼ばれていた。柔らかく美しいハーモニー、シンプルだが優しい旋律が魅力的。聴いていると学校の教室、開いた窓、風にゆれる白いカーテンなど懐かしい情景が瞬時に目の前に蘇ってくるようだ。
「翡翠」はマッキーの「レッドライン・タンゴ」を聴いて感動した日野先生ら、日本の吹奏楽指導者7人がニューヨークに於いて本人に委嘱した作品だそう。都会的で洗練された響き、躍動するリズム。僕も大好きな作曲家である(ただし現時点で、マッキーを自由曲に選び、全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞した団体はない)。指揮者の熱い想いが奏者にも伝播し、極めつけの名演が生まれた。
休憩時間中にも金管七重奏のパフォーマンスが。何というサービス精神!
さて、プログラム後半である。「音楽祭のプレリュード」は金管の輝かしい響きが素晴らしい。
課題曲IVは颯爽として、ある一面では可愛らしい曲。こちらは大人数、メンバー全員(約60名)で吹くという実験。厚みのある音。
課題曲Vはおもちゃ箱をひっくり返したような、ごちゃごちゃした、けったいな曲。指揮者なしでの演奏。途中ドラムセットのソロがあり、アドリブではなく譜面通りに叩かないといけないのが厄介なのだそう。東京都交響楽団パーカッション奏者の安藤さん、終わっての感想は「あーもうこれで、(二度と)演らなくていいんだな!」と。前日の東京公演で「この曲を書いた奴がムカツク!」と言っていた安藤さん、実は作曲者が聴きに来ていて、丸ちゃんがステージに招くと「いい曲ですねぇ」と手のひらを返したそう。そのエピソードに客席大受け。
続いてローマ三部作や「シバの女王ベルキス」で有名なレスピーギが書いた唯一の吹奏楽オリジナル作品。「ハンティングタワー」とは15世紀に建てられたスコットランドの古城の名前だそう。調べてみると、詳細な写真を見つけた →こちら。暗い影が差し込む、重々しく荘厳な曲だった。へぇ、レスピーギにはこういう曲もあったんだ!
「ノーブル・エレメント」はリズムの面白さ、ハーモニーの美しさが光った。
アンコールはまず、NOWに初回から参加しながらも、今回出番がなかったハープの松村さんをフィーチャーし、丸ちゃんの指揮でJ.S.バッハ(リード編曲)のコラールを。
日野先生の指揮で2曲目が演奏された後、ウルトラセブンの被り物をした下野竜也さん(読売日本交響楽団正指揮者)が登場し、「ウルトラセブン」や「帰ってきたウルトラマン」を振った……というか、指揮台で踊りまくり、ホール全体が爆笑の渦に巻き込まれた。
最後に丸ちゃんが「指揮者の仕事とは何ですか?」と下野さんにふると、きっぱりと「こういうことです!」
実に愉快で充実した3時間であった。最後にNOW代表、金井さんに伏してお願いする。来年こそは是非とも丸ちゃんの指揮でジェイムズ・バーンズ/アルヴァマー序曲の決定版を!
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