高田泰治 with 延原武春/テレマン室内オーケストラのモーツァルト/ピアノ協奏曲大全 Vol.1
大阪倶楽部へ。高田泰治(フォルテピアノ)と延原武春/テレマン室内オーケストラを聴く。会場はぎっしり満席。
フォルテピアノとクラシカル(古)楽器で、モーツァルトのピアノ協奏曲を全曲演るという連続演奏会の第1回目。本邦初の試みである。会場には反響板が設置されマイクが林立、ライヴ・レコーディングも行われた。曲目は、
- ピアノ協奏曲 第5番 ニ長調 K.175
- ピアノ協奏曲 第6番 変ロ長調 K.238
- ピアノ協奏曲 第8番 ハ長調 K.246
1~4番はJ.C.バッハなどの作品を編曲したもので、第7番は3台のピアノの為の協奏曲だから今回は割愛された。ピッチはA=430Hz。現在のチューニング音(440-444Hz)より若干低い。
モーツァルトの人生は、丁度ピアノフォルテが産声をあげ、発展していった歴史と一致する。協奏曲 第5番が作曲された当時(モーツァルト17歳)、ザルツブルクにフォルテピアノがあった形跡はなく、チェンバロの為に書かれた可能性が高いという。これはシュタインのフォルテピアノで弾かれた。
鍵盤の上、中央にレバーがあり、それを引っ張ると音色が変わる仕組み。
また、鍵盤の下面に膝レバーがあり、これを太ももで押し上げることにより、音の余韻をコントロール出来る。
このコンチェルトは9年後にウィーンで再演され、その際モーツァルトは当時の流行にあわせ、第3楽章ロンド(K..382)を新たに書き下ろした。オーケストラの楽器はフルート、トランペット、ティンパニがさらに加わった。こちらも今回披露され、ヴァルターが製作したフォルテピアノ(レプリカ)で弾かれた。
ヴァルター・ピアノにはモダン楽器のように足ペダルがない代わりに、膝レバーが二つ付いている。
下方からピアノの裏面を写真に撮った。手前右方がダンパーを上げ下げして残響の有無を調整する膝レバー(ダンパー装置)。写真奥、奏者にとって左足側が弱音機構をオン・オフするためのモデラート装置。こちらを膝で押し上げると、ハンマーと弦の間にラシャなど薄い布が挟みこまれ、柔らかく、えも言われぬ美しい音色を奏でる。
高田さんの演奏は淡々として端正。華麗ではないが、気品に満ちたモーツァルトを聴かせてくれた。バロックから古典音楽のスペシャリストである延原さんとテレマンの面々も溌剌として好サポート。古(いにしえ)の鄙びた響きを愉しんだ。これが逆に、現代においては新鮮な体験となった。
ピアノ協奏曲大全の第2回目は10月1日(金)に予定されている。
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