« 雀々の春の噺を聴こうの会 | トップページ | 林家染二*原点回帰 »

2010年4月21日 (水)

京都の旅/大植英次と大フィルの「悲愴」

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴きに京都へ!

M01

折角なので1日有給休暇を取り、まずは松尾大社を訪ねる。  

M02

山吹が満開だった。

M03

M04

仄かに、花の匂いが薫る。

M05

M07

明治六年創業「三嶋亭」のすき焼きに”文明開化の味”を味わい、京都御所へ。

M12

M13

とにかく広い!そこが気持ちいい。

M08

M09

建物も見応えあったが、緑豊かな庭園も美しい。

M10

M11

そして夕刻、いよいよ京都コンサートホールへ。

M14

曲目は、

  • ロッシーニ/歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
  • ショパン/ピアノ協奏曲 第2番
  • ショパン/子犬のワルツ(アンコール)
  • チャイコフスキー/交響曲 第6番「悲愴」
  • バーンスタイン/「オーケストラのためのディヴェルティメント」
    より、ワルツ(アンコール)

冒頭のロッシーニは緩急と、音の強弱のコントラストが鮮明な演奏。大植さんはレオポルド・ストコフスキーばりに大見得を切り、はったりをきかせる。ヨッ、千両役者!オペラはこれで○。

コンチェルトの独奏は菊池洋子さん。初めて聴いたが、日本にこんな優秀なピアニストがまた新たに育っていたのかと驚嘆した。大フィル定期はソリストがお粗末な人が多いのだが、過去2年間で大フィルと競演したピアニストの中でも彼女の実力がピカイチだろう。是非定期への出演を!

菊池さんのピアノは大胆にして繊細。特にppの美しさには息を呑む。滑らかで、流れ星のようにキラキラ輝く音の連なり。一方、ffでは力強く、情熱が迸る。

アンコールの「子犬のワルツ」も電光石火、畳み掛けるドライヴ感が凄かった。ブラーヴァ(Brava)!

今回のプログラム、オーケストラは全て対向配置。チャイコフスキーではコントラバスが最後方一列にずらりと並んだ。大植さんがベートーヴェンをする時と同じ趣向である。

僕は今まで、大植さんが振るコンサートを30回以上聴いてきた。もし、「彼の十八番(おはこ)は?」と問われたら、マーラーとチャイコフスキーと答えるだろう(バーンスタインやコープランドもいいが、如何せん大フィルの金管、特にトランペットが下手くそで聴くに堪えない)。さらに、「極めつけの名演は?」と問われれば、躊躇なく3年前に聴いた「悲愴」と即答する。

そして今回の「悲愴」も、あの時に勝るとも劣らないパフォーマンスを披露してくれた。

第1楽章。序奏と第1主題、そして第2主題の登場や、展開部が終わって再現部に移行する場面で、各々一瞬の静寂があった。つまりそれがブルックナーの交響曲における全休止(ゲネラル・パウゼ)を彷彿とさせる効果を醸し出し、実にユニークな解釈だと想った。夢見るような第2主題(懐かしい回想)の後、嵐のように昂ぶる展開部。何と劇的なチャイコフスキーだろう。

第2楽章、躍動するワルツ。しかし中間部はまるで葬送行進曲のように暗い影が忍び寄る。

第3楽章、何かに追い立てられるような焦燥感に満ちた行進曲。大植/大フィルは破壊的な推進力で聴衆を圧倒した。そして出ました!第3楽章終了時に興奮して思わず拍手してしまう人々。「大阪クラシック」と全く同じ現象が起こったのである。第4楽章の性格を考えれば、本来これは決してしてはならない行為である。しかし僕はそうしたくなる方々の気持ちも痛いほど理解出来た。それぐらい壮絶な演奏だったのである。

こうして迎えた終楽章。慟哭と絶望。終結部で銅鑼が鳴り、音楽は諦観を帯びる。そして静かに虚空へと消えてゆく……。

「大阪クラシック」ではここで間髪を入れずフライングの拍手をした馬鹿者がいたが、京都の聴衆は指揮者が手を下ろすまで、息を潜めて無音に聴き入っていた。そういう意味においても、素晴らしい演奏会であった。

アンコールは大植さんの恩師、バーンスタインの曲。以前東京定期のアンコールでエルガーの”ニムロッド”を披露した後に、大フィルと「エニグマ変奏曲」全曲に取り組んだ大植さん。これも一種の予告なのかも知れない。

 関連記事:

| |

« 雀々の春の噺を聴こうの会 | トップページ | 林家染二*原点回帰 »

クラシックの悦楽」カテゴリの記事

旅への誘ひ」カテゴリの記事

コメント

菊池洋子はすでに05年に大フィル定期に出ています。
今は録音の関係もあってオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)との共演が増えています。
9月にザ・シンフォニーホールでOEKとラヴェルを演奏します。

投稿: 通りすがり | 2010年4月22日 (木) 12時18分

書き込みありがとうございます。5年前ですか。是非ともそろそろ定期への再登場も期待したいです。

OEKと菊池さんが共演されるラヴェル/ピアノ協奏曲も聴きに行くつもりです。

投稿: 雅哉 | 2010年4月22日 (木) 22時58分

雅哉さんこんばんは。京都まで行かれたのですね。

悲愴、これで多分3回目の演奏かと記憶していますが、残念ながら私は聴く機会がなくここまで来ています。雅哉さんの前回の記事を拝見して、今回こそは、と思っていましたが、かないませんでした(涙)。

チャイコフスキー、ここまで定期では4番と5番が掛っているのに、悲愴だけが掛っていない・・・・邪推すれば、今期ブラームスチクルス、来期はひょっとすると、チャイコフスキーか?そこへの布石なのでしょうかねえ。

平日の火曜、大阪からの聴衆にはかなりきついコンサートだったと思います。

投稿: ぐすたふ | 2010年4月23日 (金) 01時45分

ぐすたふさん、コメントありがとうございます。

昨年の京都特別演奏会も3ヶ月前から申請して、有給休暇を取りました。そうでもしないと仕事の後で大阪から駆け付けるのは不可能ですもんね。

僕個人としてはチャイコフスキー・チクルスは望みません、大植さんで第1-3番の交響曲を聴きたいとは大して想わないんです。

むしろマーラーのチクルスなら願っても無いことです。ただマーラーの場合、合唱や独唱者が必要ですから、今の大フィルの台所事情を考えると難しいでしょうね。

ショスタコーヴィチやプロコフィエフのチクルスなんかも面白いかも知れません。しかし東京ならともかく、大阪での集客力を考えると……。

投稿: 雅哉 | 2010年4月23日 (金) 19時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 京都の旅/大植英次と大フィルの「悲愴」:

« 雀々の春の噺を聴こうの会 | トップページ | 林家染二*原点回帰 »