PAC POPS!/パック・ポップス 2010
兵庫県立芸術文化センターへ。
フロリダからやって来た指揮者、ピーター・ルバート/兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)のポップスコンサートを聴く。映画音楽を中心に据えたプログラム。
まず《第1部》《第2部》で演奏されたのは、
- ジョン・ウィリアムズ/「11人のカウボーイ」序曲
- ジョン・バリー/007ゴールドフィンガー
- ジョン・バリー/007ダイヤモンドは永遠に
- ジョニー・マンデル/いそしぎ
- ヘンリー・マンシーニ/「ひまわり」愛のテーマ
- ヘンリー・マンシーニ/シャレード
- マックス・スタイナー/カサブランカ組曲
- エルマー・バーンスタイン/大脱走
- アルフレッド・ニューマン/西部開拓史
- バーナード・ハーマン/「めまい」より"Scene d'Amour"
- バーナード・ハーマン/北北西に進路を取れ
「11人のカウボーイ」はジョン・ウィリアムズがボストン・ポップス・オーケストラの常任指揮者を務めていた当時、コンサート用にアレンジしたもの。現在では吹奏楽でもしばしば取り上げられ、マーチングコンテスト等で演奏される。冒頭、ホルンの咆哮が気持ちいい。そしてジョンの曲の中でもアーロン・コープランド色の濃い西部劇の音楽が展開される。昔から僕がこよなく愛する名曲。
007の2曲はしっとりとしたアレンジ。「ゴールドフィンガー」なんかは、もっと賑やかでJAZZYな方が好みかな。
「いそしぎ」はトロンボーンのソロがあり、「ひまわり」は叙情的なピアノがフィーチャー、「シャレード」はコンガを中心にパーカッションが大活躍した。
「キングコング」や「風と共に去りぬ」で有名な作曲家のマックス・スタイナーはウィーン生まれで、名付け親はリヒャルト・シュトラウス。ピアノの手ほどきをヨハネス・ブラームスから受け、ウィーン帝室音楽院ではグスタフ・マーラーから教えを受けたという超エリート。映画「カサブランカ」(1942)の音楽は当時のヒット曲"As Time Goes By"('31年にハーマン・フップフェルドがブロードウェイ・ミュージカル"Everybody's Welcome"のために作詞・作曲したもの)やフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」が繰り返し登場し、実に巧みに編曲されている。
「西部開拓史」(1962)の音楽は勇壮で豪快。今回これを聴きながら同じアルフレッド・ニューマンの「大空港」('70)を想い出した。また僕は「嵐が丘」('39)とか「アンネの日記」('59)のためにニューマンが作曲した、切ない旋律も大好きである。
以前「聴いておきたい映画音楽 私的50選」で書いたことだが、バーナード・ハーマンは傑出した才能を持った作曲家であった。なかんずくアルフレッド・ヒッチコック監督とのコラボレーション「めまい」は最高傑作なのだが、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を彷彿とさせる官能と法悦の音楽"Scene d'Amour"(愛の情景)しか今回、演奏されなかったのは些か残念。ちゃんと組曲として"Prelude"(前奏曲)と"The Nightmare"(悪夢)も聴きたかった!……まあしかし、それは贅沢な要望というもの。生でこの曲を聴けただけでも本当に嬉しかった。緊迫感とユーモアが交差するファンダンゴ「北北西に進路と取れ」を含め、これらを選曲して下さったルバートさんに感謝!
さて、《第3部》ではエリック・ミヤシロのトランペットで、
- ビル・コンティ/「ロッキー」のテーマ
- アーヴィング・ゴードン/アンフォゲッタブル
- ポール・サイモン/サウンド・オブ・サイレンス
- レナード・バーンスタイン/「ウエストサイド物語」マリア
- ジミー・ウェッブ/マッカーサー・パーク
エリック宮城さんはハワイ生まれ。テレビ「古畑任三郎」のソロを担当されている。他に「マツケンサンバII」「アントニオ猪木のテーマ」「必殺仕事人」も。
もう「ロッキー」の第一声からパンチのある”ごっつい"サウンドにノック・ダウン。トランペットってこんなに大きな音が出るんだ……。「アンフォゲッタブル」ではフリューゲルホルンによる甘い響きを堪能。節度ある程よいヴィブラートが美しい。「サウンド・オブ・サイレンス」ではPACのトランペット奏者ジョエル・ブレナンとのデュオ。PACのペットは大フィルより断然上手い。
本当に充実した愉しいコンサートだった。オケの人数は100名におよび、これで入場料金3,000円は安すぎる。
今回のゲスト・コンサートマスターは先日の定期に引き続き高木和弘さん。東京交響楽団と山形交響楽団のコンサートマスターを兼任される若き俊英。PACの弦もいい音を奏で、聴き応えがあった。素晴らしい演奏をありがとう!
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