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2010年4月

昭和町で昭和の日〜上方落語まつり/三枝一門・吉朝一門競演会

4月29日祝日、昭和の日。昭和町で開催された田辺寄席へ。

全五回公演。朝10時30分開始で最終公演は20時30分まで。うち苗代小学校で第一、二公演を聴く。入場無料

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第一回公演

  • 笑福亭智之介/桃太郎
  • りんりん亭りん吉/粗忽長屋
  • 桂米八/曲独楽
  • 桂文太/鷺取り

第二回公演

  • 笑福亭呂竹/狸賽
  • 桂文太/善哉公社
  • 桂珍念/あこがれのカントリーライフ(三枝 作)
  • 笑福亭鶴志/猫の災難

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第一回では冒頭に一番太鼓・二番太鼓の解説があり、第二回では出囃子の解説があった(文太・呂竹・智之介による実演あり)。前座の出囃子が「石段」なのは知っていたが、二つ目が「赤猫」というのは初耳だった。

りん吉さん(←上方落語協会・桂三枝会長 命名)は現在11歳。奈良の小学生である。しかし、この「どっぷり昭和町」に出演するのは今年で既に3年目。「昨年より身長が7cm伸びました」と→りん吉さんのブログへ。彼女が挑戦した「粗忽長屋」は不条理で、大変難しいネタ。

高座における成長も著しく、以前に比べ声が通るようになった。将来がとても愉しみな少女である。いや、もう既に彼女より下手なプロの落語家なんて沢山いる。

文太さんは飄々とした名人芸を披露し、鶴志さんは十八番である酔っ払いの噺。大酒飲みの具体例として師匠・松鶴の爆笑エピソード、そして春蝶(先代)、小つる(先代)、文我(先代)らの名前が挙がる。

昼過ぎ、昭和町を後に、新世界にある動楽亭(席亭:桂ざこば)へ。「三枝一門・吉朝一門競演会」を聴く。

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  • 桂三ノ助/お忘れ物承り所(三枝 作)
  • 桂よね吉/芝居道楽
  • 桂  三若/私がパパよ(三枝 作)
  • 桂あさ吉/鹿政談
  • 桂  吉弥/蛇含草
  • 桂  三風/三年一組同窓会(三風 作)客席参加型

「上方落語まつり IN ミナミ」で真っ先に、即日完売した公演。定員100名、全体の7-8割は女性客で、着物姿もちらほら。さすが”よね様”(+吉弥)人気は凄い。会場は文字通り、熱気ムンムンだった。

お茶子(楽屋番)は吉弥さんの二番弟子・弥生さんが担当された。

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よね吉さんは開口一番、「三枝一門と吉朝一門の組み合わせというのは、なんともビミョ~な感じですね」と。これには場内、大受け。「楽屋は殺伐としていて、今にもあさ吉兄さんと三風兄さんが掴み合いの喧嘩を始めそうな、一発触発の雰囲気です」(勿論、冗談である)。

芝居道楽」は「七段目」の短縮版。時間を考量しての選択だろう。

よね吉さんが高座を下りると、入れ替わりに登場したのがなんと普段着のざこばさん!これには客席からどよめきが起こる。「三若には孫を可愛がってもらわんといかんから」と座布団をひっくり返して退場。ちなみにざこばさんの愛娘・まいさんは三若さんと結婚し、この3月に子供が生まれたばかり。

続いて登場した三若さん、ざこばさんが忘れた名ビラを自分でめくり、高座へ。自らの体験を交え、実感のこもった「私がパパよ」を演じた。生まれたばかりの赤ん坊に向かって「怖いおじいちゃんからも、パパは君を守るからね」というくすぐりも。

吉弥さんは汗をダラダラ流しながらの熱演。「蛇含草」は夏の噺。だから敢えて、手ぬぐいで汗を拭かないという意図的な演出だったのかも知れない。よく雰囲気が出ていた。

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なお、先月この動楽亭で収録され、4月24日にテレビ東京で放送された吉弥さん出演の「情熱の系譜」が全編、番組のホームページで視聴出来る→こちら!(You Tube版はこちら

落語の演目は「ふぐ鍋」。また弥生さんが吉弥さんから鳴り物の指導を受けている場面も登場。この収録時、僕が生で聴いた感想は下記。

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開幕!第一回 上方落語まつり IN ミナミ

4月28日(水)、なんばグランド花月(NGK)へ。

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「上方落語まつり IN ミナミ」は米朝事務所、松竹芸能、吉本興業の三社が初めて結集し開催する、かつてない規模の大落語祭である。その記念すべき開幕公演を聴いた。

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  • 林家   花丸/時うどん
  • 桂      宗助/子ほめ
  • 桂小春團治/アルカトラズ病院(小春團治 作)
  • 桂    ざこば/子は鎹
  • 口上(米朝・春團治・福團治・仁鶴・ざこば・染丸)
  • 桂      文珍/ヘイ!マスター(文珍 作)
  • 笑福亭仁鶴/壺算

宗助さんは滑舌よく、軽妙。

ざこばさんは「今の若い人は鎹(かすがい)いうても、どんなもんか知らんでしょう?」と実物を取り出し、マクラで紹介。しかも大小二種類!「うちの娘なんか、鎹という程しっかりとした物じゃあらへん。ホッチキスくらいや」と聴衆を笑わせ、本編へ。

子は鎹」(子別れ)は本来、上・中・下に別れており、通常はのみ演じられることが多く、僕もそれしか聴いたことがない。ところが、ざこばさんはの後半部分、夫婦喧嘩の挙げ句に女房が子供を連れて出て行く場面から始めたので意表を突かれた。(僕が大嫌いな)湿っぽい人情噺になりがちなこの作品が、明るくカラッとしたものに仕上げらていたので、凄く良かった。生意気盛りな子供の描き方も秀逸。

仲入りを挟み、口上の司会は桂 吉弥さん。「ここに並んでおられるお師匠方と私にはキャリアとして200年くらいの違いがあり、緊張しております」と。

春團治さん「事務所の垣根を越え、このような祭りが開催されることは真に嬉しいことです。ミナミの街、そして上方落語のさらなる発展を願っております」

染丸さん「上方の噺家には人間国宝・文化勲章を受章された米朝師匠、紫綬褒章・旭日小綬章受章などを授与された春團治師匠のような方もいらっしゃるかと思えば、今度参議院議員に立候補する者もおります。しかし、その名前をここで言うのは《きんし》になっています」

次にざこばさんが喋り始めると、正座が出来なくなった米朝さん(84歳)が膝を崩し、次第に前のめりに。「大丈夫でっか!」と心配そうなざこばさん。吉弥さんが楽屋に「見台を!」と指示し、持ってこられたそれに寄りかかる米朝さん。進行役に戻った吉弥さんが「トントンとお願いします」と言うと、「オレの口上が長かった言うんか!むかつく」と切り返すざこばさん。

仁鶴さんが「ここNGKではしょっちゅう舞台に出ていますが、今日みたいな上品なお客さんは初めてです。かえってやりにくい」と、そこで床に崩れおれる米朝さん。慌てて「椅子を持ってこい!」とざこばさん。4人がかりで米朝さんを座らせると「紐でくくっとけ!」場内が笑いに包まれる。この辺りの臨機応変な対応が、さすがだなと感心した。

福團治さんは「私らは道路を隔てた向こう側の道頓堀で40年ほどやって来ましたが、こうしてここに一堂に会するなんて、夢のようです。私が枝雀さんと同じ年に入門した時に先輩の落語家は17人しかいませんでした。それが今や230人以上。隔世の感があります」

最後に米朝さんが一言。「私はこんなややこしいところに座らされて。口上もずいぶんいろんなところで言うてきましたが、腰掛けて言うのは初めてや」そして大阪締めとなり、ハラハラドキドキの口上は終わった。

続いて登場した文珍さん。「みなさん、ええもの見はりましたな。これが最後かも知れませんが」ときついジョーク。いかにも文珍さんらしい。「それにしても絶妙なチーム・プレーでした」……本当にその通り。笑いのプロフェッショナルたちの凄みを感じた。

ヘイ!マスター」は英語落語。最後はうどんが16ドルで、古典落語「時うどん」になるという趣向。知的な言葉遊びが面白かった。

落語会は充実していて大変聴き応えがあったが、客層には閉口した。ちゃんと並んで入場しているのに、別方向からやって来て列に割り込む人々。それを見て見ぬふりをする係員。「場内飲食禁止」と書いてあるのに平気でパンをむしゃむしゃ食べる客たち。僕はホールスタッフに苦情を言ったが、注意しようともしない。そして口演中に遅れて場内に入ってきて周囲の迷惑を顧みず着席する人々。吉本興業がこれから本格的に落語に取り組みたいと考えているのならば、まずは社員の教育を徹底するのが今後の最重要課題だろう。

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映画「アマデウス」から「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」へ

評価:B-

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フラメンコ三部作「血の婚礼」「カルメン」「恋は魔術師」で知られるスペインのカルロス・サウラ監督作品。

撮影監督はイタリアのヴィットリオ・ストラーロ。「地獄の黙示録」「レッズ」「ラストエンペラー」で3度、アカデミー撮影賞を受賞している巨匠である。サウラとストラーロは既に「タンゴ」など何作品かで共同作業を行っている。正に”光の魔術師”と言うべきで、その計算され尽くした色彩設計が圧巻である。これぞ映像芸術の極み。

映画公式サイトはこちら

オペラ「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」の台本を書いたロレンツォ・ダ・ポンテとモーツァルトの交流を描く。物語はヴェネツィアで暮らしたタ・ポンテの幼少期から始まり、やがてウィーンへと場所を移し、イタリア語とドイツ語が交差する。「ドン・ジョヴァンニ」という作品が成立する上でのカサノヴァの関与の仕方が面白い。確かにカサノヴァの女性遍歴とドン・ジョヴァンニの人物像は見事に重なる。またウィーンの場面では全て背景が書き割り(絵)なのもユニークな演出である。つまり空間そのものがオペラの世界なのだ。

モーツァルトやサリエリの描き方はアカデミー作品賞・監督賞などに輝いた「アマデウス」(1984)を踏襲している。モーツァルトの笑い方なんかそっくり。

「アマデウス」の時代との大きな差異は音楽のあり方だろう。映画「アマデウス」を担当したのはネヴィル・マリナー/アカデミー室内管弦楽団であった。これはしっかりヴィブラートを掛けたモダン楽器による演奏。しかし今回の映画ではノン・ヴィブラートでピリオド(古)楽器による演奏となった。この四半世紀の間にモーツァルトの音楽に対するアプローチ法、演奏様式はがらっと変わったのである。なお、映画冒頭で登場するヴィヴァルディ/「四季」~”夏”のアタックが効いた激しい解釈はファビオ・ビオンディ(Vn)/エウローパ・ガランテによる演奏である。

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PAC POPS!/パック・ポップス 2010

兵庫県立芸術文化センターへ。

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フロリダからやって来た指揮者、ピーター・ルバート/兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)のポップスコンサートを聴く。映画音楽を中心に据えたプログラム。

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まず《第1部》《第2部》で演奏されたのは、

  • ジョン・ウィリアムズ/「11人のカウボーイ」序曲
  • ジョン・バリー/007ゴールドフィンガー
  • ジョン・バリー/007ダイヤモンドは永遠に
  • ジョニー・マンデル/いそしぎ
  • ヘンリー・マンシーニ/「ひまわり」愛のテーマ
  • ヘンリー・マンシーニ/シャレード
  • マックス・スタイナー/カサブランカ組曲
  • エルマー・バーンスタイン/大脱走
  • アルフレッド・ニューマン/西部開拓史
  • バーナード・ハーマン/「めまい」より"Scene d'Amour"
  • バーナード・ハーマン/北北西に進路を取れ

11人のカウボーイ」はジョン・ウィリアムズがボストン・ポップス・オーケストラの常任指揮者を務めていた当時、コンサート用にアレンジしたもの。現在では吹奏楽でもしばしば取り上げられ、マーチングコンテスト等で演奏される。冒頭、ホルンの咆哮が気持ちいい。そしてジョンの曲の中でもアーロン・コープランド色の濃い西部劇の音楽が展開される。昔から僕がこよなく愛する名曲。

007の2曲はしっとりとしたアレンジ。「ゴールドフィンガー」なんかは、もっと賑やかでJAZZYな方が好みかな。

いそしぎ」はトロンボーンのソロがあり、「ひまわり」は叙情的なピアノがフィーチャー、「シャレード」はコンガを中心にパーカッションが大活躍した。

「キングコング」や「風と共に去りぬ」で有名な作曲家のマックス・スタイナーはウィーン生まれで、名付け親はリヒャルト・シュトラウス。ピアノの手ほどきをヨハネス・ブラームスから受け、ウィーン帝室音楽院ではグスタフ・マーラーから教えを受けたという超エリート。映画「カサブランカ」(1942)の音楽は当時のヒット曲"As Time Goes By"('31年にハーマン・フップフェルドがブロードウェイ・ミュージカル"Everybody's Welcome"のために作詞・作曲したもの)やフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」が繰り返し登場し、実に巧みに編曲されている。

西部開拓史」(1962)の音楽は勇壮で豪快。今回これを聴きながら同じアルフレッド・ニューマンの「大空港」('70)を想い出した。また僕は「嵐が丘」('39)とか「アンネの日記」('59)のためにニューマンが作曲した、切ない旋律も大好きである。

以前「聴いておきたい映画音楽 私的50選」で書いたことだが、バーナード・ハーマンは傑出した才能を持った作曲家であった。なかんずくアルフレッド・ヒッチコック監督とのコラボレーション「めまい」は最高傑作なのだが、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を彷彿とさせる官能と法悦の音楽"Scene d'Amour"(愛の情景)しか今回、演奏されなかったのは些か残念。ちゃんと組曲として"Prelude"(前奏曲)と"The Nightmare"(悪夢)も聴きたかった!……まあしかし、それは贅沢な要望というもの。生でこの曲を聴けただけでも本当に嬉しかった。緊迫感とユーモアが交差するファンダンゴ「北北西に進路と取れ」を含め、これらを選曲して下さったルバートさんに感謝!

さて、《第3部》ではエリック・ミヤシロのトランペットで、

  • ビル・コンティ/「ロッキー」のテーマ
  • アーヴィング・ゴードン/アンフォゲッタブル
  • ポール・サイモン/サウンド・オブ・サイレンス
  • レナード・バーンスタイン/「ウエストサイド物語」マリア
  • ジミー・ウェッブ/マッカーサー・パーク

エリック宮城さんはハワイ生まれ。テレビ「古畑任三郎」のソロを担当されている。他に「マツケンサンバII」「アントニオ猪木のテーマ」「必殺仕事人」も。

もう「ロッキー」の第一声からパンチのある”ごっつい"サウンドにノック・ダウン。トランペットってこんなに大きな音が出るんだ……。「アンフォゲッタブル」ではフリューゲルホルンによる甘い響きを堪能。節度ある程よいヴィブラートが美しい。「サウンド・オブ・サイレンス」ではPACのトランペット奏者ジョエル・ブレナンとのデュオ。PACのペットは大フィルより断然上手い。

本当に充実した愉しいコンサートだった。オケの人数は100名におよび、これで入場料金3,000円は安すぎる。

今回のゲスト・コンサートマスターは先日の定期に引き続き高木和弘さん。東京交響楽団と山形交響楽団のコンサートマスターを兼任される若き俊英。PACの弦もいい音を奏で、聴き応えがあった。素晴らしい演奏をありがとう!

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今年は快晴!大植英次/大フィルの「星空コンサート 2010」

大阪城西の丸庭園へ。

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大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の「星空コンサート」は今年で5回目。僕は皆勤である。去年は雨で凍えた。

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開演午後6時半、今年は快晴。でも気温は低く、やはり寒かった。

曲目は、

  • グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
  • J.シュトラウスII世/ワルツ「ウィーンの森の物語」
  • ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より”ダッタン人の踊り”
  • サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
  • 平尾昌晃/必殺仕事人
  • J.ウィリアムズ/映画「ジュラシック・パーク」テーマ
  • ホルスト/組曲「惑星」より"火星”
  • チャイコフスキー/序曲「1812年」
    (以下、アンコール)
  • ロッシーニ/歌劇「ウィリアム・テル」序曲
  • 夕やけこやけ〜七つの子〜ふるさと
  • 外山雄三/「管弦楽のためのラプソディ」より”八木節”

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4/21(水)アイスランドの火山噴火の影響で国際線の欠航が相次ぎ、関西空港に足止めされている人たちのために、コンサートマスターの長原幸太さんや佐久間聡一さんらが弦楽四重奏の編成でモーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジークなど数曲を関空の国際線フロアで演奏し、大変喜ばれたそうである。勿論ボランティア。何とも粋な趣向である。

大植さんによると、昨年のJ.シュトラウス/ワルツ「春の声」では「踊れない!」との声があがったそうで、今年は一定のゆったりとしたテンポで。でも、僕は踊れなくてもテンポが変幻自在のワルツの方が好きだな。

ツィゴイネルワイゼン」のヴァイオリン独奏は大阪府河内長野市在住の芝内もゆるさん、12歳。オーケストラとの共演は今回初めてとのこと。厚みのある豊かな音を奏で、見事だった。大植さんは暗譜で、9割方彼女が弾くのをじっと見ながらの指揮。ピタリと寄り添う伴奏はいつもながら上手い。

必殺仕事人」は先日、大阪府吹田市で亡くなった藤田まことさんの追悼で。大植さんは鬘を被り、時代劇の扮装で指揮。

大植さんはJ.ウィリアムズが大好きで、今までも「スター・ウォーズ」「スーパーマン」「E.T.」「ハリー・ポッター」などを取り上げてこられた。

ジュラシック・パーク」といえば、僕はこの曲をジョン・ウィリアムズ/ボストン・ポップス・オーケストラの生演奏で聴いた時のことを想い出す。当時僕は岡山に住んでいて、わざわざ大阪・フェスティバルホールまで来日公演を聴きに来たのである。1993年6月19日のことであった。「ジュラシック・パーク」が日本で公開されたのはその年の7月17日。つまり映画公開前に音楽に触れるという貴重な体験をしたのだった。

その時僕は高校吹奏楽部の親友・山本君と一緒だった。演奏会では「E.T.」〜”地上の冒険”も演奏され、その後で彼が僕の肩を叩いてそっと囁いた。「隣に座っている女の子が、音楽を聴きながら感極まって泣いていた」と。それを聞いて、音楽の持つ力の大きさに感嘆したことを今でも鮮明に憶えている。

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ホルストの「火星」はきりりと引き締まった演奏だった。

1812年」では大阪府立淀川工科高等学校(淀工)、近畿大学、箕面自由学園高等学校、明浄学院高等学校の吹奏楽部がバンダ(金管別働隊)として共演。その指揮は淀工の丸谷明夫先生(丸ちゃん)が担当。大植さんは丸ちゃんのことを「先生は日本の国宝、音楽の世界遺産です!」と絶賛。まこと、愛すべき人である。

ウィリアム・テル」序曲では大植さんが客席にいた平松・大阪市長を引っ張り上げ、市長が指揮。これは大植さんの恩師レナード・バーンスタインが米CBSで放送された「ヤング・ピープルズ・コンサート」でも取り上げた曲。僕はビデオで観たことがあるが、レニーが演奏した後で客席の子供達に「この曲を知ってるかい?」と尋ねると、一斉に「ローン・レンジャー」!という答えが返ってきたのが印象的だった。ちなみに「インディアン嘘つかない」という有名な台詞も、このテレビ西部劇(白黒)が由来だそうである。

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午前十時の映画祭/「フォロー・ミー」

「TOHOシネマズ なんば」へ。

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全国25の劇場で展開されているこの映画祭。三谷幸喜、おすぎら選定委員により「何度見てもすごい50本」に選ばれた作品リストはこちら。全てニュー・プリントで、映像が鮮明。「カサブランカ」「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」「ゴッドファーザー」「アマデウス」など泣く子も黙る不朽の名作に混じって、「フォロー・ミー」とか「ある日どこかで」みたいな、マニアックカルトな映画が入っているのがなんとも嬉しい。

この2作品に共通しているのは、007シリーズで有名なジョン・バリーが音楽を担当していること。しかもどちらも美しい名曲である。バリーがアカデミー作曲賞を受賞した「冬のライオン」や「愛と哀しみの果て」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」よりも、僕は「フォロー・ミー」や「ある日どこかで」の方が好き。

さて、「フォロー・ミー」(1972)は「第三の男」('49)でカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いたイギリスの巨匠、キャロル・リード監督の遺作である。

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イギリスでの原題は"Follow me !"だが、アメリカ公開時にタイトルが"The Public Eye"となった。

Piblic_eye

"the eye"とは探偵のこと。これはピンカートン探偵社のロゴに由来する。

Pinkerton

脚本を書いたのは、後に「アマデウス」('84)で一世を風靡するイギリスの劇作家ピーター・シェーファー。本作も元々は舞台劇のようである。

物語は妻の浮気を疑った夫が、探偵を雇い彼女を尾行させる。しかし、いつしか追うものと追われるものとの間に奇妙な”共犯関係”が生まれて……といった具合。観客はキャメラと一緒にロンドン散歩を愉しむことになる。不思議な味わいのある、愛すべき作品である。

周防正行監督の名作「Shall We ダンス?」で柄本明が演じる探偵事務所に、「フォロー・ミー」のポスターが貼られていたことは余りにも有名。

「フォロー・ミー」の探偵役はイスラエル出身の俳優トポル。映画「屋根の上のヴァイオリン弾き」で主人公テヴィエを演じ、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。飄々とした雰囲気がいい。

ヒロインを演じるのはミア・ファロー。フランク・シナトラと離婚後、この映画撮影当時、彼女は世界的な指揮者アンドレ・プレヴィンの夫人であった。プレヴィンとはプロコフィエフ/音楽物語「ピーターと狼」のレコーディングでナレーターを務めるなど、共同作業も行っている。

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ミアはプレヴィンと79年に離婚。80年代はウディ・アレンと共に過ごすようになるが、アレンがミアの養女スン=イーと関係を持ったことを知り彼女は激怒、泥沼の裁判沙汰となった(スン=イーは後にアレンと結婚した)。アレンとミアは蜜月時代に、映画「カイロの紫のバラ」「ハンナとその姉妹」といった傑作を生み出した。

ちなみにミアと別れたプレヴィンの方は、ヴァイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムターと2002年に再婚し、06年に離婚した。

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パペット落語「ゴジラ対モスラ」登場!/つるっぱし亭

大阪・鶴橋にある「雀のおやど」へ。

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  • 笑福亭生寿/うなぎ屋
  • 桂  雀三郎/くやみ
  • 笑福亭鶴笑/ゴジラ対モスラ
  • 桂  雀三郎/百年目

鶴笑さんのパペット落語が可笑し過ぎて、腹を抱えてのたうち回った。あー苦しかった!

冒頭、古典落語「時うどん」から始まるところから意表を突かれた。そこへ現われたゴジラ、そしてモスラとの激しい戦い。地球防衛軍も入り乱れ、クレイジーな芸が炸裂する。ちゃんとサゲがあったのにも驚かされた。

その後で登場した雀三郎さん。「いやぁ、面白いですね。どれを見ても演っていることは同じですけれど」にまたまた場内大爆笑。

雀三郎さんは口調のリズム感が良くない噺家だと僕は常々想っているのだが、「百年目」ではそれが全く気にならなかった。この噺は桂米朝さんの十八番で、米朝さんが「最も難しいネタ」と仰っている。物語の半ばに登場する、商家の親旦那の風格、人間の大きさを表現するのが極めて難しく、若手では歯が立たない。以前、小米朝(現・米團治)さんで聴いたが、物足りず、もどかしい想いがした。しかし、雀三郎さんはさすが含蓄のある親旦那を演じられ、しみじみとこの噺の面白さを味わった。

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桂ざこば一門会(4/19)

繁昌亭へ。

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  • 桂  そうば/うなぎや
  • 桂ちょうば/かぜうどん
  • 桂    都丸/天狗裁き
  • 桂 わかば/持参金
  • 桂  ざこば/鴻池の犬

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今回はなんと全員、ネタおろし。

正直言って、物足りなかった。やはりこういう趣旨の会は、ネタが熟(こな)れていないのでリスキーだなと想った。

その中で、一番良かったのは都丸さん。家主、奉行職、鞍馬の天狗といった登場人物の描き分けが上手く、さすがベテランの味。

「天狗裁き」は桂米朝さんが発掘・再構成し復活させたもの。広げた扇子を表にしたり裏にしたりすることで、天狗の「建前」と「本音」を表現する演出は実に面白い。

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霧矢大夢 主演/宝塚月組 ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」

宝塚大劇場へ。

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宝塚月組によるブロードウェイ・ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」を観る。演出・潤色は宝塚歌劇団のエース・小池修一郎さん。

このプロダクションは2008年に星組で上演され、読売演劇大賞優秀作品賞および菊田一夫演劇大賞を受賞。「月刊ミュージカル」誌の2008年度ミュージカル・ベストテンで堂々第1位に輝いた。

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今回のキャストは霧矢大夢(きりやひろむ)、蒼乃夕妃龍 真咲明日海りお 他。

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きりやんは持ち前の明るさと見事な歌唱力で、文句なしの”パーシー・ブレイクニー”(「スカーレット・ピンパーネル」のリーダー)を演じた。大スターのオーラが眩しかった。

フランス革命政府全権大使”ショーヴラン”は役代わりで、僕が観たのは龍 真咲さん。耽美系でビジュアル的には悪くないのだが、歌唱で低音が全然出ないのは困ったものだ。「コーラスライン」のナンバー"Dance: Ten; Looks: Three"をもじるなら"Looks: Ten; Song: Three" (ルックス10点、歌は3点)といったところか。そういう意味では彩輝なおさんに近いタイプの男役だなと感じた。この役は明日海りおさんの方で観たかったなぁ。

ヒロインを演じる蒼乃夕妃さんは可もなく不可もなし。フランク・ワイルドホーンの楽曲は転調に次ぐ転調が特徴的なのだが(そこが魅力でもあり、難しいところでもある)、その転調に彼女の音程が付いていけてない印象を受けた。しかしフィナーレでのデュエット・ダンスは回転が速く、切れがあったので、もしかしたら彼女はシンガーではなく、ダンサーなのかも知れないなと想った。

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それにしても久しぶりにスカピンを再見して、これは本当に見応えのあるミュージカルだなと感動を新たにした。何といっても曲が良いし、ゴージャスなコスチューム・プレイであるところも宝塚に似合っている。

宝塚版の為に書き下ろされた新曲「ひとかけらの勇気」も魅力的で、これが繰り返し登場することで物語と有機的に結びついている。

流れるように鮮やかな小池演出も傑出している。特に「炎の中へ(Into the Fire)」という1曲を歌う間に、ブレイクニー邸の図書室(イギリス)からドーバー海峡を渡るデイドリーム号甲板を経て、パーシーとその仲間たちがフランスに上陸するまでを一気に見せる場面は圧巻。

宝塚歌劇は正に”夢”の世界。そしてその究極のエッセンスが、スカピンに凝縮されている。必見。

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林家染二*原点回帰

繁昌亭へ。

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  • 笑福亭松五/道具屋
  • 桂    吉坊/馬の田楽
  • 林家  染二/七度狐
  • 月亭  遊方/たとえばこんな誕生日(遊方 作)
  • 林家  染二/らくだ

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吉坊さんは噺に登場する子供が可愛いらしい。

七度狐」は染二さんが師匠の染丸さんに同行して世界19カ国を旅したエピソードをマクラに。

「相変わらず雑な芸ですんません」と遊方さん。自作ネタでカンカンカーン!と、場内大爆笑に。

続いて登場した染二さん、「昔は遊方さんたちと創作落語の会をやっていました。もうかれこれ10年以上、新作を高座に掛けていませんが」

そして自作落語第1作「ビューティースカイメモリー」がどんな内容だったかを紹介された。ある日、少年が人間の言葉を喋る芋虫を発見する。やがてその妖精は蝶々に変身し、少年も蝶々の姿になって、妖精の導きでエルフの国へ旅立つ噺とか。手作りの羽を付け、タイツを履いて演じられたそう。いや~、奇想天外だが聴いてみたい。染二さん、是非いつの日にか新作に再チャレンジしてくださいね!

染二さんの「らくだ」を聴くのはこれが2回目。この噺を見事、自家薬籠中のものとされている。酔っ払って性格がどんどん豹変してゆく紙屑屋が絶品。また”弥猛(やたけた)の熊五郎”も乱暴な男の雰囲気が上手く醸し出されている。長い噺なので途中で切られることが多いが、”らくだ”の遺体を千日前の火屋(火葬場)に運び、願人坊主(乞食僧)が登場し「ヒヤでもえぇから、もぉ一杯」のサゲまで、染二さんはきっちり演じられた。

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京都の旅/大植英次と大フィルの「悲愴」

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴きに京都へ!

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折角なので1日有給休暇を取り、まずは松尾大社を訪ねる。  

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山吹が満開だった。

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仄かに、花の匂いが薫る。

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明治六年創業「三嶋亭」のすき焼きに”文明開化の味”を味わい、京都御所へ。

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とにかく広い!そこが気持ちいい。

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建物も見応えあったが、緑豊かな庭園も美しい。

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そして夕刻、いよいよ京都コンサートホールへ。

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曲目は、

  • ロッシーニ/歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
  • ショパン/ピアノ協奏曲 第2番
  • ショパン/子犬のワルツ(アンコール)
  • チャイコフスキー/交響曲 第6番「悲愴」
  • バーンスタイン/「オーケストラのためのディヴェルティメント」
    より、ワルツ(アンコール)

冒頭のロッシーニは緩急と、音の強弱のコントラストが鮮明な演奏。大植さんはレオポルド・ストコフスキーばりに大見得を切り、はったりをきかせる。ヨッ、千両役者!オペラはこれで○。

コンチェルトの独奏は菊池洋子さん。初めて聴いたが、日本にこんな優秀なピアニストがまた新たに育っていたのかと驚嘆した。大フィル定期はソリストがお粗末な人が多いのだが、過去2年間で大フィルと競演したピアニストの中でも彼女の実力がピカイチだろう。是非定期への出演を!

菊池さんのピアノは大胆にして繊細。特にppの美しさには息を呑む。滑らかで、流れ星のようにキラキラ輝く音の連なり。一方、ffでは力強く、情熱が迸る。

アンコールの「子犬のワルツ」も電光石火、畳み掛けるドライヴ感が凄かった。ブラーヴァ(Brava)!

今回のプログラム、オーケストラは全て対向配置。チャイコフスキーではコントラバスが最後方一列にずらりと並んだ。大植さんがベートーヴェンをする時と同じ趣向である。

僕は今まで、大植さんが振るコンサートを30回以上聴いてきた。もし、「彼の十八番(おはこ)は?」と問われたら、マーラーとチャイコフスキーと答えるだろう(バーンスタインやコープランドもいいが、如何せん大フィルの金管、特にトランペットが下手くそで聴くに堪えない)。さらに、「極めつけの名演は?」と問われれば、躊躇なく3年前に聴いた「悲愴」と即答する。

そして今回の「悲愴」も、あの時に勝るとも劣らないパフォーマンスを披露してくれた。

第1楽章。序奏と第1主題、そして第2主題の登場や、展開部が終わって再現部に移行する場面で、各々一瞬の静寂があった。つまりそれがブルックナーの交響曲における全休止(ゲネラル・パウゼ)を彷彿とさせる効果を醸し出し、実にユニークな解釈だと想った。夢見るような第2主題(懐かしい回想)の後、嵐のように昂ぶる展開部。何と劇的なチャイコフスキーだろう。

第2楽章、躍動するワルツ。しかし中間部はまるで葬送行進曲のように暗い影が忍び寄る。

第3楽章、何かに追い立てられるような焦燥感に満ちた行進曲。大植/大フィルは破壊的な推進力で聴衆を圧倒した。そして出ました!第3楽章終了時に興奮して思わず拍手してしまう人々。「大阪クラシック」と全く同じ現象が起こったのである。第4楽章の性格を考えれば、本来これは決してしてはならない行為である。しかし僕はそうしたくなる方々の気持ちも痛いほど理解出来た。それぐらい壮絶な演奏だったのである。

こうして迎えた終楽章。慟哭と絶望。終結部で銅鑼が鳴り、音楽は諦観を帯びる。そして静かに虚空へと消えてゆく……。

「大阪クラシック」ではここで間髪を入れずフライングの拍手をした馬鹿者がいたが、京都の聴衆は指揮者が手を下ろすまで、息を潜めて無音に聴き入っていた。そういう意味においても、素晴らしい演奏会であった。

アンコールは大植さんの恩師、バーンスタインの曲。以前東京定期のアンコールでエルガーの”ニムロッド”を披露した後に、大フィルと「エニグマ変奏曲」全曲に取り組んだ大植さん。これも一種の予告なのかも知れない。

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雀々の春の噺を聴こうの会

動物園前の”秘密倶楽部”こと、動楽亭へ。桂雀々さんの会。定員100名、予約だけでぎゅうぎゅうの満席。

  • 優々/普請ほめ
  • 雀々/愛宕山
  • 雀々/花ねじ(隣の桜)

一番弟子の優々(ゆうゆう)さんが開口一番で、二番弟子の鈴々(りんりん)さんがお茶子。後者は若い女性である。最後まで女性の弟子を取らなかった枝雀一門に紅一点。

優々さんは初高座直後から何回か聴いているが、度胸がついて随分と上手くなった。前座ネタで結構、客席から笑いが起こっていたのだから大したものだ。抑揚があって弾むようなリズム感が心地よい。

事前のネタ出し(演目発表)はなかった。雀々さん最初の出囃子は「昼まま」。これを聴いた瞬間、掛けるネタが分かった。師匠・枝雀さんの十八番(おはこ)だった「愛宕山」。そういえば、今日19日は枝雀さんの命日である。

マクラは「米朝一門と行くハワイ旅行」や、台湾から京都への観光客相手にバス・ガイドした時のエピソードを。雀々さんが乗客を笑わせようと苦心惨憺する情景が、「愛宕山」に登場する幇間(太鼓持ち/男芸者)へと見事に繋がる。

山登りの場面では雀々さんが”必死のパッチ”で山と格闘する様子が圧巻。やはり枝雀さんの姿を彷彿とさせた(枝雀さんが「愛宕山」の高座から降りる時は、毎回ハーハー息を切らしながら全身汗だくだったという)。「師匠は《見せる落語》を創造しました」と雀々さん。

中入り後、2年間の内弟子修行中の失敗談、枝雀さんに怒られた内容などで会場を爆笑の渦に巻き込み、丁稚が活躍する噺「花ねじ」へ。マクラと本編の結びつけの巧さが光る。

むちゃくちゃ満足度の高い会であった。雀々さん、最高!

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ロッシーニとロイド=ウェバー/歌劇「ランスへの旅」

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開館20周年を迎えたいずみホールへ。

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ロッシーニの最高傑作、歌劇「ランスへの旅」を観る。

絶賛を博したプロダクションの再演である。2年前に初演を観た時のレビューはこ ちら。作品の詳しい背景などについても語っている。

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ロッシーニは76年の生涯で39のオペラを書いた。有名な「セビリアの理髪師」は23歳の作品であり、「ウイリアム・テル」を発表した37歳で彼は作曲家を引退、後半生は悠々自適の生活を送った。美食家であった彼は、「ロッシーニ風」と呼ばれるたくさんの料理のレシピを残した(詳しくは→こちら)。

詩人ハインリッヒ・ハイネは次のように賞賛した。

白鳥は死期が迫ると歌いますが、ロッシーニは人生の半ばにして歌うのをやめてしまいました。彼は天才ゆえにそうしたのです。(中略)天才は最高の仕事をやり遂げて満足し、世間やつまらない功名心を軽蔑するものなのです。
(「フィレンツェの夜」より)

ロッシーニのことを考えるとき、僕の脳裏に浮かぶのは「ジーザス・クライスト・スーパースター」「エビータ」「キャッツ」等で知られるミュージカルの巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーである。「オペラ座の怪人」が初演されたのが1986年、ウェバー38歳の時。作曲家としてのピークであったと言えるだろう。そして93年に「サンセット大通り」(日本未上演)がロンドンで初演され(ウェバー45歳)、これが彼にとって最後の傑作となった。

「サンセット・ブルーバード」で筆を折っていれば、ロイド=ウェバーは後世まで「モーツァルトの再来」「20世紀最高の天才作曲家」としての評価を失うことはなかったであろう。少なくとも現在の彼のように生き恥を晒すことはなかった筈だ。

2010年、ロンドンの劇場街ウエストエンドで「オペラ座の怪人」の続編、"Love Never Dies"が幕を上げた。僕はストーリーの概要を聞いて笑ってしまった(以下ネタバレあり)。舞台はニューヨークのコニーアイランド。最後はメグ・ジリーがクリスティーヌをピストルで撃ち、瀕死の重傷を負ったクリスティーヌは自分の息子を呼び「あなたの本当の父親はラウルではなくファントムなのよ」と告白して息絶えるとか……なんじゃ、そりゃ!?評判は推して知るべし。タワーレコードでこの「オペラ座の怪人2」のCDを試聴してみたが、音楽も惨憺たるもの。印象に残るメロディは全くない。

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さて、「ランスへの旅」の話に戻ろう。岩田達宗の演出は初演と大きな変更はない。いずみホールという空間を最大限駆使した完成度の高いものだけに、いじる必要がなかったのだろう。

ロッシーニ・クレッシェンドの悦楽。こんなに愉しいオペラが他にあるだろうか?10人にも及ぶ優れた歌手たちの饗宴、華やかな歌合戦を堪能した。特にソプラノの石橋栄実(容姿や演技もチャーミング!)、メゾ・ソプラノの福原寿美枝、テノールの清水徹太郎松本薫平、バリトンの井原秀人らが素晴らしかった。佐藤正浩/ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団も好演。

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大阪名物たこ焼きと、指揮棒を手にするロッシーニ。右肩に「ようこその おはこびで」の文字が。

ロッシーニの音楽に心地よく身をゆだねながら、フェデリコ・フェリーニ監督の映画「8 1/2」の名台詞、「人生はお祭りだ!一緒に過ごそう」を想い出した。フェリーニとロッシーニはどちらもイタリア人、やはり気質が似ているのだろう……と帰宅して2年前の僕の感想を読んでみると、同じことが書いてあったので笑ってしまった。

Viva Opera!!

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玉木宏・上野樹里 主演/映画「のだめカンタービレ最終楽章」後編

評価:B+

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前編について僕が書いたレビューはこちら!

今回はテレビ・シリーズの回想場面が何度も出てくる。だからそれを未見の人にとって、この映画が愉しめるかといえば甚だ疑問ではある。

しかし音楽映画として実に良く出来た作品である。武内英樹の演出も相変わらず冴えている。エンターテイメントとしての面白さに徹しながらも、クラシック音楽をしっかり聴かせようという姿勢には好感が持てる。

特に”のだめ”がラヴェル/ピアノ協奏曲を初めて聴き、彼女の妄想へと突入する場面はイマジネーションに富み、鮮烈だった。

 関連記事: ラヴェルって、ゲイ!?

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映画公式サイトはこちら

物語は”のだめ”がマンションの別の部屋から聞こえてくるテルミンの音にうなされ、悪夢を見る場面から始まる。これにリアリティを感じた。

電子楽器テルミンは手をアンテナに近づけたり離したりすることにより音程が決まるので、鍵盤みたいに音階のみで旋律を奏でることが出来ない。つまり音の高低がスライド式に(切れ目なく連続して)移行する。

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多くの音楽家がそうであるように、恐らく”のだめ”も絶対音感を持っているのであろう。そういう人にとって、正確なドレミを弾けない楽器は不快でしかない。

以前、大阪フィルハーモニー交響楽団の楽員が、バロック音楽を当時の楽器を用いて演奏しようとして出来なかったことがあった。現在の調律A音=440Hzと異なり、バロック・ピッチ(音程)は415Hzで約半音低い。幼少時の音楽教育により440Hzで絶対音感を身につけた弦楽奏者たちは、自分たちが弾いている指使いと、奏でる音のズレがどうしても違和感があって弾き辛かったという。

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また、映画の中でヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「冬」第2楽章が流れた時、超高速でかっ飛ばしたピリオド奏法(ノン・ヴィブラート)だったので、さすが飯森範親さんの指揮だと快哉を叫んだ。アーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによる(古楽器の)「四季」を初めて聴いた時の、天地がひっくり返るような衝撃を想い出した。

”のだめ”を演じる上野樹里の弾くピアノは全て世界的ピアニスト、ラン・ラン(中国出身)の吹き替えである。その演奏自体も研ぎ澄まされていて素晴らしいのだが、今回特に感心したのはショパン/ピアノ協奏曲 第1番の場面。ここで鍵盤上の上野の指の動きが、ピッタリとラン・ランの音に合っているのである!撮影の前に相当ピアノの特訓を受けたのだろう、彼女の女優魂を見せつけられ、圧巻だった(大林宣彦監督の映画「ふたり」で石田ひかりが弾いたシューマン/ノヴェレッテ 第1番の場面が脳裏をよぎった)。映画終盤、玉木宏演じる"千秋”とモーツァルト/2台のピアノのためのソナタを連弾する場面では彼女の顔が夕日に映え、神々しいまでに美しかった。

さて、その連弾の場面でシュトレーゼマン(竹中直人)のマネージャーから電話が掛かるのだが、彼らがその時滞在しているのがザルツブルク。よくよく考えてみたら、ザルツブルクはモーツァルトの生まれた街。してやられた!と唸った。

本作はとびきりロマンティックなラスト・シーンが用意されているので、こちらもお楽しみに。いやぁ、大満足でした。

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高田泰治 with 延原武春/テレマン室内オーケストラのモーツァルト/ピアノ協奏曲大全 Vol.1

大阪倶楽部へ。高田泰治(フォルテピアノ)と延原武春/テレマン室内オーケストラを聴く。会場はぎっしり満席。

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フォルテピアノクラシカル(古)楽器で、モーツァルトのピアノ協奏曲を全曲演るという連続演奏会の第1回目。本邦初の試みである。会場には反響板が設置されマイクが林立、ライヴ・レコーディングも行われた。曲目は、

  • ピアノ協奏曲 第5番 ニ長調 K.175
  • ピアノ協奏曲 第6番 変ロ長調 K.238
  • ピアノ協奏曲 第8番 ハ長調 K.246

1~4番はJ.C.バッハなどの作品を編曲したもので、第7番は3台のピアノの為の協奏曲だから今回は割愛された。ピッチはA=430Hz。現在のチューニング音(440-444Hz)より若干低い。

モーツァルトの人生は、丁度ピアノフォルテが産声をあげ、発展していった歴史と一致する。協奏曲 第5番が作曲された当時(モーツァルト17歳)、ザルツブルクにフォルテピアノがあった形跡はなく、チェンバロの為に書かれた可能性が高いという。これはシュタインのフォルテピアノで弾かれた。

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鍵盤の上、中央にレバーがあり、それを引っ張ると音色が変わる仕組み。

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また、鍵盤の下面に膝レバーがあり、これを太ももで押し上げることにより、音の余韻をコントロール出来る。

このコンチェルトは9年後にウィーンで再演され、その際モーツァルトは当時の流行にあわせ、第3楽章ロンド(K..382)を新たに書き下ろした。オーケストラの楽器はフルート、トランペット、ティンパニがさらに加わった。こちらも今回披露され、ヴァルターが製作したフォルテピアノ(レプリカ)で弾かれた。

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ヴァルター・ピアノにはモダン楽器のように足ペダルがない代わりに、膝レバーが二つ付いている。

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下方からピアノの裏面を写真に撮った。手前右方がダンパーを上げ下げして残響の有無を調整する膝レバー(ダンパー装置)。写真奥、奏者にとって左足側が弱音機構をオン・オフするためのモデラート装置。こちらを膝で押し上げると、ハンマーと弦の間にラシャなど薄い布が挟みこまれ、柔らかく、えも言われぬ美しい音色を奏でる。

高田さんの演奏は淡々として端正。華麗ではないが、気品に満ちたモーツァルトを聴かせてくれた。バロックから古典音楽のスペシャリストである延原さんとテレマンの面々も溌剌として好サポート。古(いにしえ)の鄙びた響きを愉しんだ。これが逆に、現代においては新鮮な体験となった。

ピアノ協奏曲大全の第2回目は10月1日(金)に予定されている。

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息もできない

評価:B

韓国映画。公式サイトはこちら

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暴力の連鎖は断ち切れない。色々な意味で「痛い」映画である。

俳優ヤン・イクチュンの監督デビュー作。主演と演出を兼任する点、主人公が暴力団まがいの構成員であり、全編がバイオレンスに彩られている点など、北野武の映画を彷彿とさせる(結末も似ている)。

人間が良く描けており確かに優れた作品であるが、後は好みの問題かな。僕はこの後味の悪さが、どうも好きになれなかった。

ワン・パターン(自己模倣)の北野映画にも飽き飽きしたし、まあそういうこと。

余談だが、北野武の最新作「アウトレイジ(OUTRAGE)」(→公式サイト)はカンヌでどういう評価を受けるのだろう?

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春風亭昇太/落語会@兵庫芸文

兵庫県立芸術文化センターへ。

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春風亭昇太さんの独演会はこのホール初とのこと。

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以前ワッハホールで昇太さんを聴いた時の感想は下記。

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  • 春風亭昇々/子ほめ
  • 春風亭昇太/権助魚
  • 春風亭昇太/宴会の花道(昇太 作)
  • 鏡味正二郎/太神楽曲芸
  • 春風亭昇太/花筏

ちょっとマイクの音が大きすぎるんじゃないかと想った(米朝一門はもっと音量を抑える)。

昇太さんは弟子の昇々さんに「手短に頼むよ」とリクエストしたそうなのだが、内容をカットするでもなく、丸ごと早口で捲し立てたものだから驚いたとのこと。

権助魚」は初めて聴いたが、いやぁ、滑稽ですこぶる面白い。噺の構成がよく出来ている。これが古典の強みだな。昇太さんは「これを書いた人に抱きつきたいくらい好きなんです」と仰っていたが、その気持ちがすごく理解できる。

1席目と2席目の間で、舞台上で着替えだす昇太さん。会場のお客さんたちがどよめく。「以前ある落語会のアンケートで、『着替えが一番面白かった』と書かれたのはショックでした」に爆笑。

初めてのホール、しかも慣れない兵庫県ということで昇太さんも手探り状態だったのだろう。全体としてのレベルは高かったが、ワッハで聴いた時ほどの「狂気」が感じられなかったのがちょっと残念。次回の「オレスタイル」に期待したい。

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大植英次/大フィルのコープランド

ザ・シンフォニーホールへ。

大植英次/大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴く。

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今シーズンの大フィル定期は「これは名曲コンサートか!?」というような初心者向き、ありきたりなプログラム編成で大いに失望した(詳細は→こちら)。まあ、大阪センチュリー交響楽団の命運が風前の灯であり、補助金をカットされた大フィルの苦しい台所事情は理解できる(集客力を考えることも勿論、重要である)。しかしこのようなプログラムで、真のクラシック音楽ファンが本当について来てくれるのか?大植・音楽監督には是非その辺を真剣に考えて頂き、児玉宏/大阪交響楽団の意欲的な攻勢を見習って欲しいものである。そうそう、武満徹を積極的に取り上げる予定の佐渡裕/PAC(兵庫芸文)オケも偉い!定期演奏会とは本来、オーケストラと定期会員との真剣勝負の場である筈だ。

まあそんな中で今回は珍しいコープランドが入っている分、些かましな内容だった。

  • ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」
  • コープランド/交響曲 第3番

ピアノ独奏はスイス出身のアンドレアス・ヘフリガー

この人は達者なテクニックを持ち、力みなく自然体の弾き方でとても良かった。

大植/大フィルも好サポート。レガート気味の滑らかな演奏で、生き生きとして馥郁たるベートーヴェン像を描いた。

後半のコープランドは近代アメリカを代表する作曲家であり、このシンフォニーを聴いているとどうしても雄大な西部開拓史のイメージが目の前に広がってゆく。それは結局、ハリウッド製西部劇の音楽がコープランドを起源としているためであろう。エルマー・バーンスタインの「荒野の七人」や「アラバマ物語」、ジェローム・モロスの「大いなる西部」、そしてジョン・ウィリアムズの「11人のカウボーイ」「華麗なる週末」、そして「7月4日に生まれて」も明らかにコープランドの影響を受けている。またレナード・バーンスタインの「波止場」にもコープランドの片鱗が聴かれる。

大植さんは長らくアメリカのオーケストラの音楽監督を務めていただけに、さすがコープランドは自家薬籠中の物。都会的で洗練されたオーケストレーションを鮮やかな手綱捌きで乗りこなし、歌うところでは豊かに歌い、締めるところではビシッと決める。

ただ、大フィル金管楽器奏者たちがその足を引っ張っていた感は否めなかった。特にトランペットとホルンは音を外しまくり。ホルンのピッチも怪しい(いつものことだが)。実に情けない。このセクションの補強がこれからの大きな課題だろう。

最後に、大植さんの指揮で今後僕が聴きたい曲を列挙しておく。

  • コープランド/バレエ音楽「アパラチアの春」、「ロデオ」
  • ハワード・ハンソン/交響曲 第2番「ロマンティック」
  • エーリッヒ・W・コルンゴルト/交響曲、ヴァイオリン協奏曲
  • ツェムリンスキー/抒情交響曲、交響詩「人魚姫」

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月亭遊方・林家染弥の蔵出し!うちわ話(第9回)

高津の富亭へ。

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ゲストに事情通の林家染雀さんを迎え、楽屋の裏話をあれこれと愉しく。

ちょっとここには書けないアブナイ話が色々飛び出し、飽きさせない2時間たっぷりの”ボーイズトーク”を堪能。

遊方さんの結婚にまつわるあれこれ、染弥さんが昔しくじったときの師匠への言い訳、今は古典一筋の林家染二さんの意外な過去(遊方さんが落語家を辞めようかと悩んでいた26歳の頃、創作落語の会「ごちそう倶楽部」に誘ってくれたのは染二さんだったとか)……。いや~面白かった!

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繁昌亭創作賞受賞者の会 (4/12)

繁昌亭へ。

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繁昌亭創作賞の受賞者、三風(第一回)、遊方(第二回)、たま(第四回)が出演する落語会。第三回受賞の三金さんは三枝師匠のお供でハワイへ(朝日放送「新婚さんいらっしゃい!」の収録のため)。

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全員、自作の落語を披露。

  • 桂三四郎/17歳
  • 笑福亭たま/胎児
  • 月亭遊方/クレーマー・クレーマー
  • 桂三風/あぁ定年
  • たま、遊方、三風/受賞記念トーク
  • 笑福亭福笑/宿屋ばばぁ(半ば)

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「マンスリーよしもと」で特集された男前ランキング2010の落語家部門では次のような結果になったそう(吉本の劇場に来たお客さんによる投票)。

  1. 桂三四郎
  2. 笑福亭たま
  3. 桂米團治

前座の三四郎さんは未だ若い(28歳)ので、忌憚ない意見を書かせてもらう。彼の創作落語は聴いていて無駄が多いと感じた(ギャグが有効に機能していない)。それから女性の演じ方が下手。このあたり、さらなる精進が必要だろう。

たまさんの新作は双子の胎児が会話し、演者が逆立ちしたり、帯をへその緒に見立てたりとシュールで斬新。これを聴くのは2回目だが、やはり新鮮な面白さがあった。

遊方さんは自分が製菓会社にクレームをつけた体験を基にした新作。主人公の情けなさにリアリティがあり、秀逸。

三風さんの作品は、定年を迎えた男の哀感を描きながら後半はカラオケの噺となり、サゲは定年と無関係。テーマがぼやけた感あり。「長崎は今日も雨だった」を歌う場面で下座からバック・コーラスが入ったり、「大阪ラプソディ」では客席参加型に。

座談会では、大阪で受けるネタでも、地方では”炎上する”(シーンと静まり返る)ことがあるという話で盛り上がる。特に新作は難しいらしい。たまさんは秋田の温泉地で10日間連続、昼夜計20回高座に上がったが、「全部すべりました」と。落ち込んで、毎日のように大阪の遊方さんにメールしたとか。また繁昌亭に限っても、昼席と夜席では客層が異なり(昼は団体客が多い)受けるポイントが違うので、工夫が必要という苦労話も興味深かった。また遊方さんから、この日入籍したとの報告あり。

福笑さんの新作は「リング」の貞子みたいに這いつくばって登場する温泉宿の婆さんが爆笑ものだった。帰宅して調べてみると、どうやらこの噺には続きがあるらしい。今回福笑さんは特別ゲストという立場なので、時間を考えて後半部をカットされたのだろう。是非次回は《完全版》を聴きたいと想った。

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第9地区

評価:B+

プロットといい、ノリといい、あくまでB級映画以外の何ものでもないが、畳み掛ける展開、息もつかせぬアクション・シーンの連続に驚愕。アイディアがぎっしり詰まった極上のエンターテイメントに仕上がっている。

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アカデミー賞では作品・脚色・編集・視覚効果賞の4部門にノミネートされた。映画公式サイトはこちら

ニール・ブロムカンプ監督の短編「アライブ・イン・ヨハネスブルグ」をセルフ・リメイクしたもの。これが長編デビュー作となる。オリジナル版はこちらで観ることが出来る。

この6分半たらずの短編を観て監督の非凡な才能を見抜き、劇場映画プロジェクトにGOサインを出した、プロデューサーのピーター・ジャクソンはさすがである。ゆえに「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズでオスカーを受賞した特撮工房WETAが全面協力し、万全のバック・アップ体制を敷く。

主演のシャールト・コプリーは監督の高校時代の友人。短編オリジナル版にも出演している。

エイリアンは南アフリカの首都ヨハネスブルクに流入する難民のメタファーであり、主人公を巡る壮絶な争奪戦は、ブラッド・ダイアモンドを彷彿とさせる。ヨハネスブルクという舞台装置(=カオス)が生きているのがお見事!これは必見。

それにしても主人公のDNAが変異して体の一部(左手)だけエイリアンになるという設定には笑った。その馬鹿馬鹿しさはヴィンセント・プライス主演のB級SF映画「ハエ男の恐怖」(1958)のノリである(頭が蠅で体が人間の状態になる)。ちなみに「ハエ男の恐怖」をリメイクしたのがデヴィッド・クローネンバーグ監督の名作「ザ・フライ」(1986)であり、こちらは主人公の体全体が徐々に変化してゆく。

なお、「第9地区」のオーケストレーション(編曲)にAiko Fukushimaという名前を見つけた。調べてみると、彼女のHPを発見→こちら。日本人の作曲家も世界を舞台に頑張っている。

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坂本龍一の箏協奏曲 世界初演!〜佐渡裕/PAC定期

兵庫県立芸術文化センターへ。

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佐渡裕/兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオケ)の定期演奏会を聴く。

  • 坂本龍一/箏とオーケストラのための協奏曲(世界初演)
  • グバイドゥーリナ/「樹影にて」アジアの箏とオーケストラのための
  • プロコフィエフ/バレエ音楽「ロミオとジュリエット」

箏の独奏は宮城道雄の最後の弟子、沢井一恵さん。

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プログラム前半の2曲は、いずれも沢井さんが演奏することを念頭に書かれたもの。

坂本龍一さんの協奏曲は4つの楽章から構成される。

  1. still (冬、静止、薄明、再生への胎動、etc.)
  2. return from the death (春、命、芽、上昇、etc)
  3. firmament (夏、天空、陽気、横溢、etc)
  4. autumn (秋、黄昏、予感、死、黄泉、闇、etc)

つまりこれは人間を含めた生命の一生、輪廻を描いていると考えられる。オーケストラの前面に箏が4つ並べて置かれ、楽章ごとに奏者が移動して弾いていくという趣向。

ミニマル・ミュージックの手法を基本としながら、そこにたおやかで日本的抒情を加味した美しい楽曲に仕上がっていた。現代音楽というイメージを裏切り、明快。これは傑作である。

上昇気流のような熱気を帯びた第3楽章では箏の絃が切れて、駒が飛ぶというハプニングも。実にスリリングな体験だった。

また、死のイメージに満ちた第4楽章は坂本さんがベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「シェルタリング・スカイ」のために書いた音楽(名曲!)を彷彿とさせた。

マイクが林立し、ライヴ・レコーディングされていた。さらに坂本龍一さんは佐渡/PACと共にテレビ朝日「題名のない音楽会」に出演される予定なので、いずれ耳にされる機会もあるだろう(4月15日東京オペラシティ コンサートホールで公開収録予定)。

グバイドゥーリナは弦が左右2群に分かれ、右側がチューニングのピッチ(音程)を1/4音低く設定し、音で光(左)と影(右)のコントラストを生み出すという手法が用いられ、すこぶる面白かった。ここでは十三絃箏、十七絃箏、そして21本の絃を持つ中国のツェン(箏)が並べられ演奏された。コップやヴァイオリンの弦を使って絃をこするという奏法もあり、実にユニークな作品であった。

沢井さんは一曲目は和服で登場し、2曲目は洋装で爪弾かれた。 成る程、east meets west(東洋と西洋の出会い)だなぁと感じ入った。

プログラム後半のプロコフィエフも見事な演奏だった。佐渡さんはリズム感の悪さが目立つことが多く、しばしばもっさりした(鈍重な)演奏になりがちだが、マーラーとかこういう近・現代音楽を振らせると巧みだなぁと見直した。

「モンタギュー家とキャピレット家」は弦楽セクションの粘り腰が素晴らしかった。一転、「少女ジュリエット」は軽やかに舞い、「仮面」はおどけて滑稽な雰囲気が上手く醸し出されていた。ロマンティックな「ロメオとジュリエット(バルコニー・シーン)」では英国ロイヤル・バレエによるケネス・マクミランの名振付を想い出し、陶然となった(映画「センターステージ」にもこのシーンは登場)。「ティボルトの死」で音楽は激昂、鬼気迫り、「ジュリエットの墓の前のロメオ」は慟哭し、重量級の行進をする。

今回のゲストコンサートマスターは大阪出身の高木和弘さん。2002-2006年の間、ドイツヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団の第1コンサートマスターを務め、現在は東京交響楽団、山形交響楽団のコンサートマスターを兼任。また、いずみシンフォニエッタ大阪のメンバーとしても指揮者の飯森範親さんと常に行動を共にし、その懐刀として大活躍されている。

ヴィオラのトップが宮川彬良/アンサンブル・ベガやいずみシンフォニエッタ大阪のメンバー、馬渕昌子さん。チェロのトップがソリストとして名高く、いずみシンフォニエッタ大阪のトップでもある林裕さん。

このあたりの優れた奏者が牽引し、若いPACオケの弦楽セクションが、今までにないくらい充実した響きを生み出していたことは特筆に価する。

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大阪シンフォニカーから大阪交響楽団へ!/ロシア革命に翻弄された作曲家たち

ザ・シンフォニーホールへ。

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外山雄三/大阪交響楽団(4月1日より大阪シンフォニカー交響楽団から名称変更)の定期演奏会を聴く。ヴァイオリン独奏はドイツ人の父と日本人の母を持つ有紀 マヌエラ・ヤンケ

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  • ショスタコーヴィチ/交響曲 第9番
  • プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲 第1番
  • ラフマニノフ/交響的舞曲

ショスタコーヴィチは1917年のロシア革命後も祖国ソヴィエトに留まり、生涯を終えた。プロコフィエフはアメリカ亡命後、何を想ったか1935年にソ連へ戻った。一方、貴族として生まれたラフマニノフは全財産を没収され、二度と祖国に戻ることが出来ずにカリフォルニア州ビバリーヒルズの自宅で没した。三者三様の人生を歩んだのである。

僕が学生時代にショスタコ第9番を初めて聴いたときは、「なんと軽薄で、ふざけた音楽なのだろう」と感じたものだ。しかし年齢を重ね、次第にこの曲に秘められた作曲家の意図が見えてくるようになった。

アイロニー(皮肉)とパロディ精神に富み、諧謔(かいぎゃく)を弄すショスタコの音楽を理解するためには、彼がスターリンと格闘してきた日々のことを知る必要があるだろう。

交響曲第3番の後に発表された、オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」はレニングラードやモスクワで2年間に83回も上演されるなど、センセーショナルな成功を収めた。しかしこれを観たスターリンは内容に激怒し、途中で退席。その2日後に「プラウダ」紙に「音楽のかわりに荒唐無稽」という批判が掲載され、ショスタコは生命の危機を感じるほどの状況に追い込まれた(当時処刑された芸術家は多い)。オペラはその後20年間上演禁止となり、彼は第4交響曲を封印、代わりに革命を賛美する第5交響曲を発表した。これで作曲家の名誉は一気に回復されるのだが、ベートーヴェンのシンフォニー「合唱付き」のような壮大な曲が期待される中、発表された軽妙で小ぶりな第9交響曲は見事聴衆に肩透かしを食らわせ、再びスターリンの逆鱗に触れる。そしてそれはソビエト連邦共産党中央委員会による「ジダーノフ批判」に直結した。

スターリンの死後書かれた交響曲第10番や弦楽四重奏第8番にはドミートリイ・ショスタコーヴィチのイニシャル「D-S(Es)-C-H」の音形が頻繁に登場し、抑圧された自己の内的告白となっている。また弦楽四重奏の方には「KGB(ソ連の秘密警察)がドアを叩く」ことを音で表現した戦慄のモチーフが出てくることでも注目される。

ショスタコの音楽は時に戯けてみせても、常に「屈折」している。これが第9交響曲を聴く上でも、キーワードとなる。作曲家の本音は隠蔽され、表面に浮かび上がってくることはない。

外山さんの指揮は知的で冷静な解釈で、音楽の見通しがいい。テンポは中庸で、軽すぎもせず重すぎもしない演奏だった。

続くビロードのように艶やかなプロコフィエフのコンチェルトは有紀 マヌエラ・ヤンケのやや線が細いが、しなやかで美しく磨かれた音色に魅了された。大阪交響楽団の定期は毎回、ソリストが素晴らしい。これは音楽監督・児玉宏さんのセンスの賜物だろうか?それに引き換え、大阪フィルハーモニー交響楽団のソロ選定は本当にお粗末である。ヴァイオリンのルノー・カプソンクリストフ・バラーティ、ピアノのジャン=フレデリック・ヌーブルジェフランチェスコ・ピエモンテーシ……何でわざわざ外国からこのように凡庸な2流アーティストたちを招くのか、大フィル(大植 音楽監督)の意図が僕にはさっぱり理解出来ない。

閑話休題。ソリストのアンコールはバッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番より第3楽章「ガヴォット」だった。バッハでは装飾音以外ヴィブラートを抑え、音尻はノン・ヴィブラートのピュア・トーン。しっかりピリオド(古楽)奏法も踏まえた彼女のテクニックは大したものだ(大フィル定期のクリストフ・バラーティによるヴィブラート垂れ流しのバッハは正に悪夢だった)。

プログラム後半のラフマニノフ、ヴィオラが伊福部昭の作曲した「ゴジラ」を彷彿とさせる旋律を奏でる第3楽章が僕は特に好きだ。ちなみに「交響的舞曲」が作曲されたのは1940年、映画「ゴジラ」の公開は54年である。

交響的舞曲」の第3楽章はグレゴリオ聖歌「怒りの日(Dies irae)」をモチーフにしている。そこで何故、これが「ゴジラ」のテーマに似ているのか、こんな珍説をふと思い付いた。

「怒りの日」のメロディはこうだ。

ドシドラシソララドドレドシラソシドシラ

そして「ゴジラ」のテーマは、

ドシラドシラドシラソラシドシラ(繰り返し)、レドシレドシレドシラシドレドシ(繰り返し)

つまり両者はソラシドまでの5音だけを行き来して成り立っている。故に「ゴジラ」は「怒りの日」のメロディを換骨奪胎したものと言えるのではないだろうか?

人類が水爆実験(核兵器)により生み出した怪獣「ゴジラ」の登場こそ、神からの最後の審判が下される「怒りの日」であると解釈出来なくもない。

外山さんのラフマニノフはロシアの土の匂いとか、切実な望郷の想いといった感情を感じさせない、客観的で純音楽的な内容。ただ今、絶好調の大阪交響楽団も好演し、大変充実したコンサートとなった。

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この胸に深々と突き刺さる矢を抜け

2010年「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞した、白石一文が2009年に山本周五郎賞を受賞した小説、「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」を読んだ。

大体、最近の直木賞山本周五郎賞の後追いが多すぎる。今年、白石と直木賞を同時受賞した佐々木譲も、「エトロフ発緊急電」で既に山本周五郎賞を受賞している。しかも1989年、何と21年前のことである!遅きに失したと言わざるを得まい。実に情けない……。

閑話休題。「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」に、僕はとても共感した。特に気に入ったのが、次の一文である。

僕たちは自分が過去から未来へと連綿と生き長らえる何物かの一部だと感じた瞬間に自分自身を見失う。そして無責任で怠惰になる。

是非この言葉を、師匠に教えられた通り一言一句再生し、古典落語さえやっていれば「本格派」だと信じている噺家や演芸ライターたちも聞いてほしい。

僕たちは今の中にしか生きられない。歴史の中に僕たちはもうどこにもいないのだ。過去の中にもこれからの過去の中にも僕たちはどこにもいない。今、この瞬間の中にしかいない。この瞬間だけが僕たちなのだ。時間に欺かれてはならない。

(中略)

この胸に深々と突き刺さる時間という長く鋭い矢、偽りの神の名が刻まれた矢をいまこそこの胸から引き抜かねばならない。その矢を抜くことで、僕たちは初めてこの胸に宿る真実の誇りを取り戻すことができるのだから……。

立川談志さんの言う「伝統を現代に」の意味も、正にこのことなのであろう。

僕も常に「今を生きる」という姿勢を貫きたいと想う。

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吉野の桜咲く

毎年恒例となった、吉野山の桜を訪ねて旅をした。

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願わくば
花の下にて
春死なむ
その如月(きさらぎ)の
望月のころ

と、詠んだのは西行法師である。吉野の奥千本には西行庵もある。

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またここは、義経と静御前の逃避行の場所としても有名である。

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上の写真は吉水神社。ふたりはここに匿われていたという。またここは、豊臣秀吉が「見渡しのいとよきところ」と花見の本陣にしたことでも有名。

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現在、下千本と中千本は満開。上千本が7部咲きといったところか。

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圧倒的な美。言葉は要らない。とにかく見て下さい。

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忘れないでね笑子

繁昌亭へ。

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笑福亭笑子さんのオーストラリア人の夫がシンガポールで就職することとなり、彼女も移住することになった。その壮行会とも言うべき落語会が開催された。

そもそも笑子さんはラジオ・パーソナリティーとしてシンガポール滞在中、世界的に活躍する笑福亭鶴笑さんのパペット落語を見て感動、弟子入り志願するが(本気かどうか判断がつかないと)その場では聞き入れられなかった。その後師匠がロンドンに拠点を移した際、一日早く現地に到着しヒースロー空港で再び願い出て、やっと入門が許されたという経歴の持ち主。

Show

  • 桂ぽんぽ娘/十徳
  • 笑福亭たま/憧れの人間国宝(たま 作)
  • 林家染雀/宗論
  • 笑福亭笑子/グローバルな腹話術
  • 桂あやめ/義理ギリコミュニケーション(あやめ 作)
  • 笑福亭鶴笑/パペット落語「ザ・サムライザ!忍者
  • 三金・ぽんぽ娘・たま・あやめ・染雀・文福/座談会
  • 笑福亭笑子/ザ・宿替え

たまさんの新作は一年前のネタおろしから聴いている。初演時になかった噺の前半部が付け加えられ、くすぐり(ギャグ)がさらに工夫され、聴く度にどんどん面白くなっていっている。「らくだ」「算段の平兵衛」等、古典落語をちゃんと踏まえた構成になっているのもお見事!

最近、中国の楽器・二胡を習っているという染雀さん。「宗論」のマクラ、幽霊が妖しい雰囲気があってよかった。また、あやめさんとコンビを組み音曲漫才「姉様キングス」をやっているだけに、歌も上手い。

笑子さんの腹話術はマイケル・ジャクソンの人形が登場し、「スリラー」の音楽に合わせてムーン・ウォークを披露。骸骨・妖怪(ゾンビ?)の類が出てきたり、釣竿で宙を舞ったりと、鶴笑さんの芸をしっかり受け継いだものに仕上がっていた。

義理ギリコミュニケーション」はあやめさんの最高傑作ではなかろうか?エコや有機農産物が大好きな嫁と、そんなことに頓着しない姑との確執を面白おかしく描く。噺の終盤に出てくる捕鯨問題は丁度今、長編ドキュメンタリー部門でアカデミー賞を受賞した「The Cove」(入り江)の日本公開をめぐって(和歌山県太地町の抗議など)話題になっている所なので、タイムリーと言えるだろう。

鶴笑さんのパペット落語は、七転八倒の大爆笑コメディ。なんと今回は特別に英語バージョン!でも単語と内容はシンプルなので、客席のお年寄りたちも腹がよじれるほど笑っていた。いやはやCrazyで圧巻。

座談会では世界三大コメディ・フェスティバルの一つ、スコットランド・エディンバラでの想い出を。なんとここでは色々な芸人が1500もの公演で競うとか。鶴笑・笑子の師弟と共に、あやめ・染雀も「姉様キングズ」として参加したそう。

ここで桂文福さんが登場し、笑子さんの為にお目出度い相撲甚句を披露。

トリの古典落語「宿替え」は登場人物を替え、”綾子”(笑子さんの本名)と”ゴンザレス”の国際結婚夫婦の噺(グローバル・バージョン)に。中々ユニークなアレンジで愉しめた。

笑子さんは今後も時々帰国し、5月の繁昌亭昼席などに出演する予定。

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レスキュー遊方!/月亭遊方と仲間たち

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4月4日、大阪天満宮の桜は満開だった。

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天満宮の敷地内にある繁昌亭へ。

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半ば強制的にマンションを引っ越すはめになった遊方さん(45歳)。何かと、もの入りな彼を経済的に応援しようという趣旨で開かれた落語会。プログラムは全て遊方作であり、トリビュート仕立てに。補助席も出て超満員。

  • 笑福亭たま/マッシュルーム
  • 林家花丸/GORO
  • 桂三風/戦え!サンダーマン
  • 遊方&染弥/蔵出し!うちわ話
  • 笑福亭鶴笑/パンチ!パンチ!パンチ!
  • あやめ&染雀&三金&?/遊方出世大作戦!
  • 月亭遊方/憧れのひとり暮らし

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マッシュルーム」は遊方さんが2回ほど高座に掛けて、「あかん、受けへん」と演らなくなったネタだそう。遭難した登山者が、生き残るために毒キノコを食べてしまう噺。エキセントリックで十分面白く、場内爆笑に。

GORO」は野口五郎、前田五郎など”五郎”のつく有名人が色々登場。「野口英世やあらへん、五郎や」と花丸さんが突っ込むところの、手の仕草がなんとも可笑しい。

戦え!サンダーマン」はヒーローもの。三風さん得意の客席参加型で。顔芸が愉しいので、これは是非、遊方さん本人の高座で聴きたい。

蔵出し!うちわ話」では噺家が高座ですべった時の言い訳のあれこれを。

パンチ!パンチ!パンチ!」は手書きの紙芝居+パペットで。鶴笑さんにしか出来ないユニークな手法が鮮やか。

遊方出世大作戦!」はシークレット・ゲストとして月亭方正(山崎邦正)さんが登場。東京で売れる条件のひとつとして「顔が小さいこと」を挙げる。成る程、方正さんの顔は他の人と比べて小振りである。

トリの遊方さんは引越しネタ。初めて聴いたがこれもなかなかの佳作。最後に「実はこの度、結婚することになりました!」とサプライズな発表があり、祝福の拍手に包まれた。

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遊方のうた「Wブッキングブルース」CDの当日限定発売もあり、サインを頂いた。これは桂あやめさんが脚本・監督した映画「あなたのためならどこまでも」の挿入歌である(劇中、遊方さんが天王寺の路上でギターの弾き語りをする)。

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大阪桐蔭、淀工、市音 IN スプリング・コンサート2010

大阪城野外音楽堂へ。「スプリング・コンサート2010 ~吹奏楽トップ・イン・オオサカ~」を聴く。

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まずは、初登場となる大阪桐蔭高等学校吹奏楽部から。昨年、全日本吹奏楽コンクールおよび全日本マーチング・コンテストで金賞を受賞した。新一年生を含め、総勢166名。指揮は梅田隆司先生。

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祝典序曲」(ショスタコーヴィチ)~「パリの喜び」( オッフェンバック)の後は、「ウインドオーケストラのためのマインドスケープ」で一世を風靡した、高 昌帥(こう ちゃんす)/ウインドオーケストラのための「ディテュランボス」が演奏された。変拍子で難易度が高い。音楽はうねり、厚みのある音が客席へ押し寄せる。今年の桐蔭はこの曲をコンクール自由曲に考えているのだろうか?

ここで男子生徒と女子生徒が一人ずつ前に出て"Time To Say Goodbye (Con te partiro)"を爽やかにイタリア語+英語で歌った。

そしてNHK大河ドラマ「龍馬伝」オープニングテーマ、「東京ブギウギ」、「サーカス・ビー(Circus Bee)」「銀河鉄道999」が続く。

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サーカス・ビー」は四分音符=200くらいの超高速テンポでかっ飛ばし、度肝を抜かれた。

銀河鉄道999」は樽屋雅徳さんのアレンジが変幻自在で素晴らしかった。

以前の桐蔭はステージ・パフォーマンスが地味で生真面目さが目立ったが、今回は演奏中に立ち上がってクルッと廻ったり、前に出てきたり、歌ったりしたので驚いた。最後は決めポーズで「ヤッ!」と宝塚歌劇みたいに。しっかり「聴衆の心を掴む」術をマスターし、洗練されたエンターテイメントに進化していたのである。恐らく梅田先生はここ数年、淀工の「ザ・ヒットパレード」や伊奈学園の「オーメンズ・オブ・ラブ」などのパフォーマンスを徹底的に研究し、いいとこどりしたのだろう。桐蔭のパワー、恐るべし。今年も大暴れしてくれそうだ。期待したい。

続いて、丸谷明夫先生(丸ちゃん)率いる大阪府立淀川工科高等学校(淀工)吹奏楽部が登場。2,3年生全員(130数名)が出場し、暗譜で吹いた。

定番の行進曲「ハイデックスブルグ万歳!」からアルフレッド・リード作曲「アルメニアンダンス パートI」へ。「この曲がベートーヴェンの第九交響曲のように、子供からお年寄りまで誰もが知っている音楽になるよう願いを込めて、どこへ行っても演っているんです」と丸ちゃん。それだけの想いがこもった、白熱の演奏であった。

僕は一度、丸谷先生の指揮でこの「アルメニアンダンス パートI」を吹いたことがある。その時の先生の言葉を想い出しながら聴いた。

ジャパニーズ・グラフィティXIV(嵐セレクション)」は(A・RA・SHI~We can make it !~Beautiful days~One Love~a Day in Our Life~きっと大丈夫~風の向こうへ~Happiness~サクラ咲ケ~WISH~Love so sweet)と大盤振る舞い。何度か淀工で聴いているが、今までで一番曲数が多かった。

故郷(ふるさと)」は、歌詞のパネル(丸ちゃん曰く、「電光掲示板」)を生徒が掲げて。

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なお、これを編曲した立田浩介さんは淀工OB(トロンボーン)である。

そして十八番の真島俊夫 編「カーペンターズ・フォーエバー」で〆。

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お次は近畿大学吹奏楽部。4年生の学生指揮で。

2001年宇宙の旅」(岩井直溥 編)は途中からJAZZ風にスウィング。

オペラ座の怪人」はヨハン・デ=メイ編版。”マスカレード(仮面舞踏会)”がないのが寂しい。

スターウォーズ トリロジー」(J. ウィリアムズ / D. ハンスバーガー)は帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)~ヨーダのテーマ~スターウォーズのテーマの3曲だった。

そして伊勢敏之/創価学会関西吹奏楽団の出番となった。ここも昨年、全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞している。

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曲目は、

  • ヴァンデルロースト/アルセナール
  •  リード/春の猟犬
  •  酒井 格/森の贈り物
  •  真島 俊夫 編/あの日聞いた歌
    ふるさと~浜辺の歌~椰子の実~赤とんぼ~春の小川~花

酒井さんの優しくて、可愛らしい名曲が生で聴けたのが良かった。

トリは吉田行地/大阪市音楽団(市音)の登場。

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曲目は、

  • リード/音楽祭のプレリュード
  • ヘンデル/「水上の音楽」から序曲~ホーンパイプ
  •  バッハ(リード )/教会カンタータ第140番から
    目覚めよ、と呼ぶ声あり
  • ドヴォルジャーク/スラヴ舞曲 第8番
  • 高 昌帥 編/フォークソング・メドレー
    (花嫁 ~ 虹と雪のバラード ~ 風 ~ 戦争を知らない子供たち ~ 白いブランコ ~ あの素晴らしい愛をもう一度)
  • デューク・エリントン/キャラバン
  • 「クラシック・デューク
    コットン・テイル~ソフィスティケイテッド・レディ~スウィングしなけりゃ意味がない

高 昌帥さんは、オリジナル作品とは全然違って平明なアレンジ。意外な一面を見た。

キャラバン」はパンチが効いており、「クラシック・デューク」はJAZZYでノリのいい演奏。指揮者のセンスが冴える。

たっぷり3時間半。アマチュアのトップを極めた楽団と、プロの演奏を堪能した。これが無料(ただ)なのだから、何と贅沢なことか!

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福笑と異常な仲間たち ~アブノーマル人物伝~

繁昌亭へ。

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  • 笑福亭たま/くっしゃみ講釈
  • 笑福亭福笑/刻うどん
  • 加川良/唄
  • 笑福亭福笑/宗教ウォーズ (福笑 作)

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一時期、喉の調子が悪かったたまさんだが、現在は絶好調の様子。以前聴いた「くっしゃみ」より、一段と工夫が凝らされ面白かった。

福笑さんの「刻うどん」は抱腹絶倒の爆笑高座。先にサゲ(落ち)を言ってしまうところに、自信の程が伺える。

また、フォークシンガーの加川良さんを「アブノーマル」と表現するのは、何とも非凡なセンスである。

大阪市・帝塚山近くにあった「姫松園(ひめまつえん)」という伝説のアパートで加川さんと福笑さんは知り合ったそう(帝塚山には福笑さんの師匠・松鶴の家があった)。 加川さんには「姫松園」という歌もあるらしい。また同時期に、音楽プロデューサー福岡風太氏もここに住んでいたとか。さらに戦前に遡ると「夫婦善哉」の作家・織田作之助が暮らしていたこともあるという。フォーク・ソングで1970年代にタイムスリップ。なんだか、「絶滅危惧種を見た!」というような、不思議な感覚に陥った。

トリは新作落語。神社とお寺の宗教戦争を描く。福笑さんらしく過激で、《落語の狂気》が詰まった一席。本当に希少な噺家である。

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「ちりとてちん」と「篤姫」の再放送!

空前の上方落語ブームを巻き起こしたNHK朝ドラ「ちりとてちん」が4月4日(日)深夜よりBSハイビジョンで再放送される。毎回6本連続(1週間分)の放送となるようだ。

このドラマの桁外れの面白さについては、下記記事で大いに語った。

上方落語のことを全く知らない人でも分かりやすく、十分愉しめるし、知っているならなおのことエキサイティングである。僕はつい先日、完全版DVD-BOXで2回目の鑑賞を済ませたところだが、全く飽きることなく一気に見直した。もう、本当に凄い作品としか言いようがない。

落語の監修をされているのが、文化庁主催「平成21年度芸術選奨」大衆芸能部門で、文部科学大臣賞を受賞した林家染丸さん。吉朝一門の桂吉弥さんやよね吉さんらが落語家役として大活躍される。

また、大河ドラマアンコールとして宮崎あおい主演「篤姫」も4月9日(金)より毎週金曜日午後2時からBShiで再放送される。

篤姫」の底知れぬ魅力については、下記記事に書いた。

未見の方は、この機会をゆめゆめ逃されませぬよう。

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桂吉弥 二席!/get's 待っツ 動楽亭

3月31日、動楽亭へ。19時開演。客の入りは40人弱。

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  • 吉弥/ふぐ鍋
  • 佐ん吉/阿弥陀池
  • 吉弥/七段目
  • 仲入りトーク(全員)
  • 紅雀/隣の桜(鼻ねじ)
  • 吉の丞/天神山

吉弥さんが出演するテレビ収録があり(関東ローカル)、カメラが入った。当日は年度末ということで上方落語協会の総会が朝から繁昌亭で行われたそうで、一番弟子・弥太郎さんの紹介もあったとか(えっ、二番弟子の弥生さんは?)その後、吉弥さんはサンケイホールブリーゼで戸田恵子さんの一人芝居「なにわバタフライ」(三谷幸喜 作)千秋楽を鑑賞。考えてみたら彼は6年前、三谷幸喜脚本の大河ドラマ「新選組!」に出演、戸田さんとも共演している(でも多分、同じ画面に登場することはなかった筈)。

ふぐ鍋」は明るくて、軽いフットワークが魅力。吉弥さんの眉毛の動かし方が愉しい。時折声のトーンを高くして、調子の変化をつけている。面白いなと想ったのは見台+膝隠しが使われたこと。同じ吉朝一門・よね吉さんの「ふぐ鍋」の場合、これらは無しで演じられる。

佐ん吉さんの「阿弥陀池」はトントンと調子よく。

前回は欠席でとても残念だったが、今回は吉弥さんの高座を二席も聴けて得した気分。しかもテレビ収録を意識してか十八番の芝居噺「七段目」を掛けてくれるなんて、なんたる贅沢!

仲入りでテレビのクルーはサッサと撤収。紅雀さんは「みなさん、後ろを見てください。カメラがいなくなってしまいました。吉弥さんが羨ましい。僕なんか《人気なし、仕事なし、お金なし》の三重苦。落語界のヘレン・ケラー状態です」と自虐ギャグ。これに会場は大爆笑で、拍手喝采が巻き起こる。

時間が押して吉の丞さんが登場した時、既に21時。「手短に演ります」と早口で捲し立て、最後まで一気に23分。そのさらっと流した高座が小気味よいリズムを生み、却ってプラスに作用したかも。彼は吉朝に入門する前、鳶職などを経験していたそうで、「天神山」に登場する《変ちきの源助》や《胴乱の安兵衛》が吉の丞さんのニンに合っていた。今まで聴いた彼の高座の中で一番光っていたと想う。余談だが、よね吉さんの「天神山」には吉朝版同様、《レレレのおじさん》が出てくるのだが、吉の丞さんは登場しないバージョンだった。

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フェデリコ・フェリーニ監督の「道」

今年のバンクーバー冬季オリンピックでフィギュアスケート男子の高橋大輔選手が、イタリア映画「道」の主題曲”ジェルソミーナ”(ニーノ・ロータ作曲)を採用し、見事銅メダルに輝いたことは記憶に新しい。

フェデリコ・フェリーニが1954年に監督した「道」(原題:"La Strada")は56年にアカデミー外国語映画賞を受賞した。

ニーノ・ロータは1952年の「白い酋長」以降、79年の「オーケストラ・リハーサル」で自身が亡くなるまで、全フェリーニ作品の音楽を担当している。

「道」や「カビリアの夜」(アカデミー外国語映画賞受賞)に主演したジュリエッタ・マシーナはフェリーニ夫人である。二人は「魂のジュリエッタ」('66)撮影中に別居し、イタリアの民法が改正され離婚が自由になった1971年に離婚した。しかしジュリエッタは結局、93年にフェリーニが病死するまで連れ添い、彼女が他界したのはフェリーニの死から5ヶ月後のことであった。

Lastrada1

僕が「道」を初めて観たのは中学生の時である。NHK教育テレビ「世界名画劇場」のオン・エアだった。頭の弱い主人公ジェルソミーナの純粋さに心打たれ、哀しい物語にボロボロ泣いた。

この度、高橋大輔選手のことや、ミュージカル映画「NINE」の公開を契機に、「道」を観直したくなった。恐らく20年ぶりくらいの邂逅である。そして、全く物語が別の様相を帯びてきたので驚いた!フェリーニが映画に散りばめたメタファー(暗喩)の数々が、初めて見えてきたのである。

物語の半ばから綱渡り芸人が登場し、彼はジェルソミーナの心の支えとなる。しかし結局、彼は旅芸人ザンパノに殺されてしまう。

サーカスの場面で、この綱渡り芸人が背中に羽を背負っていることに、僕は今回初めて気が付いた。つまり彼は「天使」として描かれているのである。登場シーンも綱を渡っている場面であり、彼はジェルソミーナのもとへ「天から降りてくる」のだ。

イメージとしてはこんな感じである↓

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(エル・グレコ「受胎告知」)

映画のラスト・シーンでジェルソミーナの死を知ったザンパノは海岸で慟哭し、慙愧の涙を流す。

ザンパノのZampaとはイタリア語で「悪」の意味。そしてジェルソミーナはイノセンス(無垢)の象徴である。そこに綱渡り芸人(= 天使)が現れ、「どんな物でも何かの役に立っている。この石ころだって」と語り、彼女に神へと続く「道」を示す。そして物語の最後、悪人ザンパノは悔悛し、その魂は浄化されるという構造を持っているのだ。

ザンパノとジェルソミーナは旅の途中、修道院に泊めてもらう。その深夜、ザンパノは鉄格子に手を突っ込み、中にある銀製の十字架を盗もうとする。 そしてそれを咎めるジェルソミーナを振り向き、「お前が代わって取れ。お前なら十字架に手が届くはずだ」と言う。このエピソードも象徴的である。つまり彼女の方が神に近づける存在であることを示していているわけだ。

そしてラストシーン。ザンパノは海岸で頽れ、号泣する直前に、一瞬天を見上げる。そこにジェルソミーナがいるからなのだろう。

また今回、実はジェルソミーナには何度か選択のチャンスが与えられていることも分かった。サーカスの芸人たちは移動する際、彼女に「ザンパノみたいな男はさっさと見限って、私たちと一緒に行かないか」と誘う。さらに修道女も「ここに残らない?」と尋ねる。その度にジェルソミーナはザンパノのもとに留まることを選び取っていたのである(彼の魂を救済するために)。

フェリーニが「道」を監督した当時、彼は34歳。なんと早熟な天才だろう。

Strada2

それにしても久しぶりに「道」を聴いて、ロータの音楽はパーフェクトだなぁと改めて感嘆した(試聴はこちら)。一分の隙もない。僕が特に大好きなのは、ジェルソミーナとザンパノが旅路につくときの、あの哀愁を帯び、何かに急き立てられるように疾走する旋律である。

児玉宏/大阪交響楽団は2011年3月17日の定期演奏会でニーノ・ロータ/交響曲 第4番「愛のカンツォーネに由来する交響曲」を取り上げる(同時にライヴ・レコーディングされる予定)。また、リッカルド・ムーティ/ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団は2009年の来日公演でロータの作品を演奏した。遂に彼の時代が来たのである。

「ゴッドファーザー」の作曲家としても知られるニーノ・ロータはゲイであり、生涯独身を貫いた。彼の来日コンサートでも若い男性の恋人を連れてきていたそうである。バイセクシャルだったルキノ・ヴィスコンティ監督とロータは「山猫」などでいくつか仕事を共にし、またアラン・ドロン主演のゲイ映画「太陽がいっぱい」の音楽も担当しているなど、色々と興味が尽きないエピソードがあるのだが、残念なことにそろそろお時間です。この続きはいずれまた。

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