開幕!第一回 上方落語まつり IN ミナミ
4月28日(水)、なんばグランド花月(NGK)へ。
「上方落語まつり IN ミナミ」は米朝事務所、松竹芸能、吉本興業の三社が初めて結集し開催する、かつてない規模の大落語祭である。その記念すべき開幕公演を聴いた。
- 林家 花丸/時うどん
- 桂 宗助/子ほめ
- 桂小春團治/アルカトラズ病院(小春團治 作)
- 桂 ざこば/子は鎹
- 口上(米朝・春團治・福團治・仁鶴・ざこば・染丸)
- 桂 文珍/ヘイ!マスター(文珍 作)
- 笑福亭仁鶴/壺算
宗助さんは滑舌よく、軽妙。
ざこばさんは「今の若い人は鎹(かすがい)いうても、どんなもんか知らんでしょう?」と実物を取り出し、マクラで紹介。しかも大小二種類!「うちの娘なんか、鎹という程しっかりとした物じゃあらへん。ホッチキスくらいや」と聴衆を笑わせ、本編へ。
「子は鎹」(子別れ)は本来、上・中・下に別れており、通常は下のみ演じられることが多く、僕もそれしか聴いたことがない。ところが、ざこばさんは中の後半部分、夫婦喧嘩の挙げ句に女房が子供を連れて出て行く場面から始めたので意表を突かれた。(僕が大嫌いな)湿っぽい人情噺になりがちなこの作品が、明るくカラッとしたものに仕上げらていたので、凄く良かった。生意気盛りな子供の描き方も秀逸。
仲入りを挟み、口上の司会は桂 吉弥さん。「ここに並んでおられるお師匠方と私にはキャリアとして200年くらいの違いがあり、緊張しております」と。
春團治さん「事務所の垣根を越え、このような祭りが開催されることは真に嬉しいことです。ミナミの街、そして上方落語のさらなる発展を願っております」
染丸さん「上方の噺家には人間国宝・文化勲章を受章された米朝師匠、紫綬褒章・旭日小綬章受章などを授与された春團治師匠のような方もいらっしゃるかと思えば、今度参議院議員に立候補する者もおります。しかし、その名前をここで言うのは《きんし》になっています」
次にざこばさんが喋り始めると、正座が出来なくなった米朝さん(84歳)が膝を崩し、次第に前のめりに。「大丈夫でっか!」と心配そうなざこばさん。吉弥さんが楽屋に「見台を!」と指示し、持ってこられたそれに寄りかかる米朝さん。進行役に戻った吉弥さんが「トントンとお願いします」と言うと、「オレの口上が長かった言うんか!むかつく」と切り返すざこばさん。
仁鶴さんが「ここNGKではしょっちゅう舞台に出ていますが、今日みたいな上品なお客さんは初めてです。かえってやりにくい」と、そこで床に崩れおれる米朝さん。慌てて「椅子を持ってこい!」とざこばさん。4人がかりで米朝さんを座らせると「紐でくくっとけ!」場内が笑いに包まれる。この辺りの臨機応変な対応が、さすがだなと感心した。
福團治さんは「私らは道路を隔てた向こう側の道頓堀で40年ほどやって来ましたが、こうしてここに一堂に会するなんて、夢のようです。私が枝雀さんと同じ年に入門した時に先輩の落語家は17人しかいませんでした。それが今や230人以上。隔世の感があります」
最後に米朝さんが一言。「私はこんなややこしいところに座らされて。口上もずいぶんいろんなところで言うてきましたが、腰掛けて言うのは初めてや」そして大阪締めとなり、ハラハラドキドキの口上は終わった。
続いて登場した文珍さん。「みなさん、ええもの見はりましたな。これが最後かも知れませんが」ときついジョーク。いかにも文珍さんらしい。「それにしても絶妙なチーム・プレーでした」……本当にその通り。笑いのプロフェッショナルたちの凄みを感じた。
「ヘイ!マスター」は英語落語。最後はうどんが16ドルで、古典落語「時うどん」になるという趣向。知的な言葉遊びが面白かった。
落語会は充実していて大変聴き応えがあったが、客層には閉口した。ちゃんと並んで入場しているのに、別方向からやって来て列に割り込む人々。それを見て見ぬふりをする係員。「場内飲食禁止」と書いてあるのに平気でパンをむしゃむしゃ食べる客たち。僕はホールスタッフに苦情を言ったが、注意しようともしない。そして口演中に遅れて場内に入ってきて周囲の迷惑を顧みず着席する人々。吉本興業がこれから本格的に落語に取り組みたいと考えているのならば、まずは社員の教育を徹底するのが今後の最重要課題だろう。
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