ボッセのハイドンは音楽の世界遺産だ!/神戸市室内合奏団 定期
3月5日(金)、神戸文化ホールへ。
ゲルハルト・ボッセ/神戸市室内合奏団の定期演奏会を聴く。
ボッセは御年88歳。それでも矍鑠(かくしゃく)とした指揮ぶりである。1955年から定年までライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターを務め、現在は指揮者として主に日本で活躍し、2000年から大阪府高槻市に在住。
今回の曲目は、
- J.S.バッハ/ブランデンブルク協奏曲 第4番
- ハイドン/交響曲 第49番「ラ・パッショーネ」
- ベートーヴェン/交響曲 第2番
なお、ヴァイオリン独奏:吉村知子、ブロックフレーテ(リコーダー)独奏:太田光子、宇治川朝政 であった。
同じ内容で、3月7日(日)に紀尾井ホールにおいて東京公演も予定されている。
ボッセが嘗て所属していたライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は、大バッハがカントル(音楽監督)を務めていた聖トーマス教会で毎週末のミサ演奏を、19世紀からしているオーケストラである。だからブランデンブルク協奏曲は自家薬籠中のもの。
比較的ゆったりとしたテンポで始まり、歯切れがよい。「18世紀以前の考え方として、音が伸びるときには減衰しないといけない」というボッセの信念が、楽員一人一人に徹底されていることが窺える。また、ブロックフレーテの音色が爽やか。瑞々しい演奏だった。
基本的にボッセのハイドンに対する姿勢は、以前僕が書いた記事と同様のことが言える。
全楽章がヘ短調という暗い調性の「ラ・パッショーネ」(受難)は力強く、教会音楽的な厳しさの中に、温もりも感じられる。嘗てのアーノンクールがそうだったような、「攻撃的な演奏」はそこにない。緊迫した哀しみ。ピンと張った糸は終始切れることはない。
モダン楽器を使用し、ピリオド奏法ではなく、バロック・ティンパニも用いない。しかし、紛れもなく疾風怒濤(Sturm und Drang)の雰囲気が醸し出され、ハイドン固有の響きがする。これは凄いことである。今、日本でハイドンのシンフォニーを聴くなら、鈴木秀美(オリジナル楽器)かボッセに止めをさす。これに異論を唱える人は恐らく、誰もいないであろう。
プログラム後半のベートーヴェンは気迫に満ち、若々しい。揺るぎない推進力があり、充実した響きに満ちている。こんなに「気高い」ベートーヴェンは滅多にお目にかかれるものではない。
ボッセという桁外れの才能を持つ指揮者が日本にいる。しかも関西で演奏してくれることの悦びを、噛み締めた一夜であった。
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