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新世界南光亭/師匠・枝雀の作品に挑む!

大阪・新世界にある動楽亭へ(席亭:桂ざこば)。定員100名、予約の時点で満席。

N01

  • 桂吉の丞/千早ふる
  • 桂   南光/算段の平兵衛
  • 桂   南光/夢たまご(桂枝雀 作)初演

吉の丞さんは兵庫県播磨町での仕事のエピソードをマクラに。これを聴くのはもう3回目。

南光さんは最近、碁を始められたそうで、9歳の女の子と対戦したとか。また、宝塚に住む96歳になるガール・フレンドの運転で、フレンチを食べに行ったことなどをマクラで。年齢は関係ない、これからも色々なことに挑戦していきたいとの決意を表明された。南光さんは現在58歳。考えてみれば師匠・枝雀さんの亡くなった年齢(59歳)に近づいておられる。

月亭八方さんの演じる「算段の平兵衛」は狡賢くて《悪い男》っぷりが魅力なのだが、南光さんの場合、好色な庄屋のいやらしさに何ともいえない可笑しみがあった。

仲入りを挟み、南光さんは枝雀さんが創られたSR(ショート落語、SF落語の意もあり)をいくつか紹介された。また梅田の太融寺で開催されていた「SRの会」を高校生の頃、手伝った想い出を語られた。その頃集っていた作者(投稿者)たちは現在、行方知れず・音信不通になっている人が多いとか。そのSRを具体的にご紹介しておこう。

《流れ星》

「あ、お母ちゃん、流れ星」
「さ、今のうちにお願いごとを言いなさい」
「一日も早く、お父さんに会えますように」
「そんなこと言うもんじゃありません。お父さんには私たちのぶんも長生きしていただかなくちゃ」

《犬》

「おっちゃん、そこどいてんか?」
「あっ、この犬もの言うてる……そんな訳ないわな。犬が人間の言葉喋るわけないわな」
「おっちゃん、そこにおると日陰になって寒いちゅうねん」
「あっ、やっぱりこの犬もの言うてるで!」
「お父さん、さっきから何ワンワンワンワン言うてんの?」

《定期券》

「あっ、こんな所に定期券が落ちてる。誰が落としたんやろ?…どこからどこ、と駅の名前も何も書いてへんがな。ああ、期限が切れてほかし(捨て)よったんやな……しかし、期限も何も書いてへんなあ……??わし、何でこれが定期券やと分かったんやろ……」

ちなみに立川談志さんは昨年11月に出版された「談志最後の落語論」の中で、「落語を突き詰め、自分を追い込む」という項にこの《定期券》を取り上げた。さらに、枝雀さんの芸風がある日突然オーバーアクションに変化したことについて触れ、

「受けるために演った」と枝雀は言っているが、ことによると、発狂しないために演っていたのかもしれない。

と書かれている。つまり、ここには落語の狂気があるということだ。

そういう意味では枝雀さんが創作した落語「夢たまご」にも静謐な狂気の凄みがあって、僕はとても好きだ。

それは自己完結した、閉じられた世界である。枝雀さんがポツリと、ひとり座っている。行き交う人との会話はあるが、それは水面に写った自分の姿、木霊として聴こえてくる己の声でしかない。《桂枝雀の内的宇宙》と言い換えてもいいだろう。不思議な味わいのある、心に残る作品である。

枝雀さんの新作を受け継いでいる噺家は今のところ他にいないので、南光さんにはこれからも色々期待したい。「いたりきたり」もいいが、僕が是非、生で聴きたいのは「春風屋」と「山のあなた」である。

N02

上の写真は、動楽亭に飾られた枝雀さんの色紙。「萬事(ばんじ)気嫌よく」と書かれている。

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