シャネル&ストラヴィンスキー
評価:B+
いや~面白かった!音楽映画の傑作。製作国はフランスで、監督はオランダ生まれのヤン・クーネン。映画公式サイトはこちら。
ストラヴィンスキーが作曲したバレエ音楽「春の祭典」は1913年初演時のスキャンダルが余りにも有名である。僕は小学生の頃からその伝説的エピソードは知っていたが、それが今回初めて具体的な映像として描かれ、ワクワクした。
演奏中に立ち上がり叫び出す聴衆。「静かに聴け!」と応酬する人々。慌てた裏方が会場の明かりを点灯し、それに対し「照明を消せ!」という怒号。そんな騒動は我関せずとダンサーに指示を送り続ける振付のニジンスキー。会場に乱入する警官隊。想像を絶する大混乱に絶句した。
バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の興行主・ディアギレフが同性愛者でニジンスキーが恋人だったという事実はこの映画を通して初めて知った(後にニジンスキーは同団のバレリーナと結婚、これに激怒したディアギレフは二人を解雇する)。また、ストラヴィンスキーが「春の祭典」を何度も改訂していたことも今回初めて知った。
ストラヴィンスキーがシャネルの館に招かれてからの二人の不倫関係は大して興味がそそれられるものではないが、シャネルの洗練されたファッションは見ていて愉しい。彼女が恋をしている時は白い服を着て、そうでない時は黒に替わるという趣向は何だか可笑しかった。
本作で感心したのはシャネルらはフランス語を喋るが、ストラヴィンスキー家の人々やバレエ・リュスの連中はロシア語で会話する。それが実にリアルだった。つい先日観た映画「NINE」はイタリアが舞台なのに、出演者全員が英語で喋るので鼻白んだ。
急性骨髄性白血病で若くして亡くなった僕の親友・山本君は「春の祭典」が大好きだった。彼は「春の祭典」のCDをコレクションしていた。「一番好きな演奏は?」と僕が聴くと「シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団」という答えが即座に返ってきたことを今でも懐かしく想い出す。彼とこの映画について、酒でも飲みながらとことん語り合いたかった!そのことが返す返すも残念である。
クラシック音楽ファンは必見。
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