ハート・ロッカー
評価:A
日本人が邦題の字面だけ見ると、「君のハート(心)にロックオン!」とか「心に滲みるロック・ミュージック」みたいなことを連想するかもしれないが、原題はheartではなくhurt、アメリカ兵の俗語でhurt=損傷(被害)をlocker=閉じ込めるもの、つまり「棺桶」を意味する言葉だそうである。
イラク・バグダッドに駐留するアメリカ軍・危険物処理班を描く映画。本作でアカデミー監督賞を受賞する(予定の)キャスリン・ビグローがメガホンを取った。
映画公式サイトはこちら。
映画冒頭、“War is a drug”(戦争は麻薬だ)というテロップが流れる(ジャーナリスト:クリス・ヘッジズの言葉)。これが本作の核を成すキーワードとなる。
爆弾処理という魔物に魅入られたジェームズ二等軍曹は、もうそこにしか生の実感を見出せない。それはまるで性交にも似た、エクスタシーを感じさせる行為である(そういえば、”エクスタシー”という通称を持つ合成麻薬もあった)。映画後半でアメリカに一時帰国した彼は、まるで廃人のようだ。
そういう意味において、これは”変態映画”と呼ぶことも出来るだろう。戦場という「男の世界」にエロティシズムを見出したところに、この女性監督の非凡な才能が感じられる。
生と死の狭間に立つ、戦場の張り詰めた緊迫感。誰が敵で、誰が一般市民なのか区別が付かない恐怖、閉塞感が凄い。じりじりと身を焦がされるようだ。
小気味よく、シャープな編集(モンタージュ)、ドキュメンタリー・タッチで、ザラザラした質感の映像も素晴らしい。
必見。
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