映画「プリンセスと魔法のキス」/そして、ディズニー・アニメ現代史
評価:B
今年のアカデミー賞では、長編アニメーション部門と、歌曲賞に2曲ノミネートされた。監督は「リトル・マーメイド」「アラジン」のジョン・マスカーとロン・クレメンツのコンビ。映画公式サイトはこちら。なお、歌曲賞にノミネートされた"Almost There"の視聴はこちら、"Down in New Orleans"はこちら。
JAZZのメッカ=ニューオーリンズを舞台に、ディズニー・アニメ初となるアフリカ系アメリカ人をヒロインに据えた。
ここ10年間のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの混乱については、下記記事に詳しく語った。
- 魔法にかけられて(2008/4/4)
- ディズニー王国復活の狼煙(2006/8/1)
要約すれば、アニメーション製作部門最高責任者であったジェフリー・カッツェンバーグがマイケル・アイズナー会長と仲たがいして、1994年にスタジオを飛び出し、ドリームワークスを設立したことが事の発端である。同時期にピクサー・アニメーション・スタジオの台頭でCGアニメーションが世間を席巻し、アイズナーがセル画アニメーションを捨てると宣言、優秀なアニメーターを大量解雇するという暴挙に出てディズニーの力は急速に衰退した。
その窮状を救ったのが、古巣ディズニーに帰ってきたジョン・ラセター(ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、「トイ・ストーリー」「カーズ」の監督でもある)なのだから、実に皮肉な話である(現在はディズニーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼任)。なお、アイズナーは2004年3月の株主総会において業績悪化などを理由に不信任投票が43%で可決され、退陣に追い込まれた。
宮崎駿監督の大ファンであるラセターはディズニーに乗り込むと直ちにセル画アニメーション復活を決断。漸くこの「プリンセスと魔法のキス」の登場となるのである。
TOHOシネマズなんばで字幕版を鑑賞。
映画冒頭、ミッキー・マウスがパラパラ漫画風に登場し、それが短編アニメ「蒸気船ウィリー」(1928年、白黒。ミッキーのデビュー作)の動画となる。ここに製作者たちの「初心忘るべからず」という並々ならぬ決意表明が感じられ、感動した。
「美女と野獣」のベルを彷彿とさせる、前向きな生き方をするヒロイン像、愛らしい動物たち、そして音楽に満ちた正真正銘のミュージカル・アニメーション(ランディ・ニューマンが作曲したディキシーランド・ジャズは圧巻)。これぞディズニー・ブランドの真骨頂!なんという心地よさだろう。改めて「絵が動くことの愉しさ」を満喫。原点回帰(Back To The Basics)、手書きアニメ復活のセレブレーションに相応しい作品であった。
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