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ミュージカル映画「NINE」と冬季オリンピック

今年の冬季オリンピック、フィギュアスケート日本代表・高橋大輔選手はフリーの演技でイタリア映画「道」のテーマ曲”ジェルソミーナ”を使用し、話題となった。この「道」を監督したのがフェデリコ・フェリーニ、作曲がニーノ・ロータ。そして、そのフェリーニ&ロータの最高傑作と呼ばれるのが米アカデミー外国語映画賞および衣装デザイン賞を受賞した「8 1/2(はっか にぶんのいち)」(1963)である。

8 1/2」は英国映画協会(British Film Institute)が2002年に選定した映画史上のベスト10で評論家選出の第9位(1位は「市民ケーン」、5位に「東京物語」)、監督選出では第3位にランク・インしている(1位は「市民ケーン」、9位に「羅生門」「七人の侍」)→詳しくはこちら

物語の主人公はフェリーニをモデルにした映画監督グイド・コンティーニ。タイトルはこれがフェリーニにとって8 1/2本目の作品という意味である(共同監督作品、オムニバス映画は分数で計算)。

映画の終盤、グイドは言う。「人生はお祭りだ、一緒に過ごそう」……この台詞こそ作品の核であり、全てのフェリーニ映画を貫くテーマとなっている。そしてサーカス(=お祭り)が大好きだったフェリーニに寄り添うように、ロータは祝祭的で、どこか物寂しいサーカスの音楽を書いた。

で、これをブロードウェイ・ミュージカルにしたのが「ナイン」。1/2増えたのは歌の要素だという説がある。作詞・作曲はモーリー・イェストン。大沢たかお主演ミュージカル「ファントム」の作曲家でもある。僕はこの舞台「ナイン THE MUSICAL」をトニー賞でベスト・ リバイバル・ミュージカル賞に輝いたデヴィッド・ルヴォー演出版で観た(出演は別所哲也、大浦みずき、池田有希子、純名りさ ほか)。ちなみにロータの楽曲は一切使われていない。

そして今回、そのミュージカル版が映画になった。「映画」→「舞台ミュージカル」→「ミュージカル映画」という経緯を経た作品は他に「プロデューサーズ」「オペラ座の怪人」「ヘアスプレー」、そして日本未公開の「フェーム」などがある。そうそう、フェリーニの映画「カビリアの夜」もブロードウェイで「スイート・チャリティ」というミュージカルとなり、ボブ・フォッシー監督で映画化された。

NINE」は映画のためにケイト・ハドソンが歌う"Cinema Italiano"と、マリオン・コティヤールによる"Take It All"が新たに書き下ろされ、後者はアカデミー歌曲賞にノミネートされた。

Nine_2

評価:B (公式サイトはこちら

ダニエル・デイ=ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ニコール・キッドマン、ソフィア・ローレンとオスカー受賞俳優が6人、さらにアカデミー助演女優賞にノミネートされたことのあるケイト・ハドソンも出演。もう、これ以上ないという豪華キャストである。

Nine_1_2

映画の脚色を担当したのが「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー監督賞を受賞したアンソニー・ミンゲラ(2008年没)。主人公がパパラッチに追いかけられたり、愛人が自殺未遂するエピソードなどはフェリーニの映画「甘い生活」(1960)からの引用と推察される。ちなみに”パパラッチ”という言葉は「甘い生活」に登場する報道カメラマンの名前”パパラッツォ”が由来である。

映画「NINE」は「8 1/2」とも、舞台ミュージカル版ともかなり印象が異なる。正直、ミンゲラの脚色が成功しているとは言いがたい。グイドの人物描写が薄っぺらで、これではただの女たらしにしか見えない。「夢の女」を演じるニコール・キッドマンが何故涙を流すのか、その台詞も意味不明。またミュージカル・シーンを全て登場人物の妄想(あるいは幻影)として封じ込める方法論は、ロブ・マーシャル監督「シカゴ」(アカデミー作品賞受賞)の二番煎じに過ぎない。

ただ、そのミュージカル・シーンはさすがロブ・マーシャル(振付も兼任)、華麗で目を瞠る。特にグイドの愛人を演じたペネロペ・クルスのダンスはセクシーで完全にノック・アウトされた。また娼婦サラギーナ役のファーギーが砂を撒きながら歌う場面はド迫力で圧巻だった。イタリア・ロケの映像が美しく、アカデミー賞にノミネートされた美術装置・衣装デザインも洗練されており、素晴らしい。

結局、物語とかフェリーニのオリジナルのことは忘れて(目を瞑って)細部を愉しむことが、本作の正しい鑑賞法なのかも知れない。

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