ラブリーボーン
評価:B
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脚色はピーター・ジャクソン、フィリッパ・ボウエン、フラン・ウォルシュら、「ロード・オブ・ザ・リング」「キングコング」のチームが担当。しかしこのトリオ、内容を書き込みすぎる傾向があり、果たしてこの内容で135分の上映時間が必要だったか甚だ疑問である。もっと簡素化することが可能だったのではなかろうか。
主演は「つぐない」(2007)で13歳にしてアカデミー助演女優賞にノミネートされたシアーシャ・ローナン(現在15歳)。ちなみにシアーシャはアイルランド語で「自由」を意味する言葉。結局、この映画は彼女の魅力に尽きる。
「ロード・オブ・ザ・リング」や「キングコング」を観れば分かる通り、ピーター・ジャクソン監督は大人の女性を描くのことが余り上手くない。しかし、「ラブリーボーン」のシアーシャは素晴らしい。カメラは彼女を、まるで舐めるように撮っている。本作はシアーシャのプロモーション・フィルムと言い切っても過言ではない(原田知世/大林宣彦「時をかける少女」、広末涼子/原将人「20世紀ノスタルジア」、蒼井優/岩井俊二「花とアリス」、チャン・ツィイー/チャン・イーモウ「初恋のきた道」などと同類)。つまりこの監督は、移ろいゆく少女の輝きしか捉えることが出来ない感性の持ち主なのだということを今回、悟った。そういう意味でスティーブン・スピルバーグの資質に近い。スピルバーグが製作総指揮としてこの映画に参加しているのは象徴的である。
「シアーシャって可愛いよね」「今度彼女を主演に映画を一本撮りたいな」「そうだね。やろう、やろう!」とふたりで盛り上がっている姿が眼に浮かぶようだ。
だからシアーシャが好きになれるか、否かで本作の評価は真っ二つに分かれることになる(世間的にはどちらかと言えば、否定的意見に傾いている)。僕は前者だったということだ。
些か冗長で緩い映画だが、ヒロインが殺され、この世とあの世の狭間に彷徨する場面は幻想的でとても美しい。さすがファンタジーを撮らせたら、ピーター・ジャクソンの右に出るものはいない。
アカデミー助演男優賞にノミネートされたスタンリー・トゥッチの演技も特筆に価する。殺人犯の不気味さが巧みに醸し出されている。つい先日観た「ジュリー&ジュリア」におけるメリル・ストリープの理解ある夫役とは完全に別人。役者って、やっぱりすごいな。
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