鈴木秀美と仲間たち/オリジナル楽器による究極の室内楽
大阪倶楽部へ。
バロック・チェリストで指揮者としても活躍されている鈴木秀美さんと、彼が率いるオーケスト・リベラ・クラシカ(OLC)のメンバーを中心とした室内楽を聴く。
会場はぎっしり満席。
今回のプログラムは、
- ベートーヴェン/七重奏曲
- シューベルト/八重奏曲
演奏者は以下の通り(*はOLCのメンバー)。
- 若松夏美(ヴァイオリン)*
- グーヤ・マルティニーニ(ヴァイオリン)
- 成田 寛(ヴィオラ)*
- 鈴木秀美(チェロ)*
- 今野 京(コントラバス)*
- ロレンツォ・コッポラ(クラリネット)*
- 村上由紀子(ファゴット)*
- ディレーノ・バルディン(ホルン)
なお、若松さんはOLCおよび、バッハ・コレギウム・ジャパンのコンサート・ミストレスである。
勿論、弦楽器はガット弦を張ったピリオド楽器で、弓も現代のものとは異なる。木管もベートーヴェンが生きていた時代のもののコピー。ホルンは実際当時に製作されたオリジナル楽器(ナチュラル管)で、バルブ(ピストン)を持たず自然倍音のみ発音でき、右手のこぶしを出し入れすることにより音階を作るゲシュトップ(フト)奏法だった。ホルン開口部に花の模様があしらわれ、優雅である。
クラリネットは現在の黒檀ではなく柘植(つげ)製。秀美さんの解説によると、モダン楽器より軽量とのこと。
古楽器は音域により異なった音色を奏でる。「楽器が改良され、今では高音から低音まで均一な音色が出るようになりましたが、それが果たして音楽にとって良いことなのかどうかは疑問が残ります」と秀美さん。僕も全く同感である。
モダン楽器(スチール弦)による演奏が、滑らかで取り澄ました、冷たい音色(ステンレスの肌触り)がするとしたら、古楽器によるそれは、節くれだってごつごつした、木目の温もりを感じさせるものと言えるかも知れない。
オリジナル楽器による、これら2曲の演奏はほとんど日本で初めての試みだそう。このコンサートのためにイタリア・スペイン・オランダそして日本から集まった精鋭たちが紡ぎ出す音楽だけに、まことに申し分のないものであった。
歯切れよく、生き生きと弾むリズム。自発性に富み、伸びやかに歌う旋律が聴く者に音楽的感興を呼び起こす。恐らくこれ以上の演奏で同曲を聴く機会は、今後一生ないだろうなと想った。
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