柳家喬太郎×柳亭市馬 二人会 (2010年1月)
昨年12月、523人の大アンケートに基づく「今おもしろい落語家ベスト50」(文春MOOK)という本が出版された。ここで第1位に選ばれたのが柳家喬太郎、第9位が柳亭市馬であった(ちなみに東京主体のアンケートだったようで、上方からは南光、春團治、三枝、米團治、吉坊、鶴瓶、雀三郎の7人しかランクインしていない)。
「ここ数年で、ライブを聴いた落語家について一番面白かった噺家は誰ですか?1位から3位まで3人挙げてください」という質問に答え、「鷺と雪」で直木賞を受賞した北村薫は喬太郎ただひとりを選んだ(この本には北村薫と喬太郎の対談も掲載されている)。
北村薫はデビュー作「空飛ぶ馬」で五代目 春桜亭円紫(しゅんおうていえんし)という噺家を登場させ、探偵役を務めさせるほどの落語通。この《円紫師匠とわたし》シリーズの一篇、「夜の蝉」は日本推理作家協会賞を受賞している。その作家が喬太郎を「天才」と呼び、THE ONE AND ONLYと太鼓判を押すのだ。これはただ事ではない。
関連記事:(断っておくが、こちらの企画の方が文春MOOKの出版より先である)
トリイホール(大阪)へ。人気の二人なので予約で早々に完売。
- 桂あさ吉/子ほめ
- 柳亭市馬/粗忽の釘
- 柳家喬太郎/次郎長外伝 小政の生い立ち
- 柳家喬太郎/初音の鼓
- 柳亭市馬/淀五郎
市馬さんのマクラは朴訥な喋りで、「えー」とか「あー」、「うー」を連発。ある意味拙いのだけれど、それが親しみやく独特な味にもなっている。ところが、本編(ネタ)に入ると滑らかな口調に早変わりするのだから面白い。
「粗忽の釘」は上方落語の「宿替え」。江戸版を聴くのは初めてなので、細部の違いが興味深い。市馬さんは途中、歌を挿入して自慢の喉を披露。なかなか愉しい趣向である。人情噺「淀五郎」はネタがネタだけに退屈だった(情がToo Much)。僕は桂九雀さん脚色による噺劇(しんげき)版の方が好き。
喬太郎さんは白髪だし、どっしりと貫禄があるのでとても46歳には見えない。桂きん枝さん(59歳)が喬太郎さんに初めて会った時、てっきり自分より年上だと勘違いして「師匠」と呼んだというエピソードも頷ける。
喬太郎さんは喉の調子が悪いようだったが、いつも通り緩急自在、才気煥発の高座で聴衆を笑いの渦に巻き込んだ。
(桂)枝雀には間に合わなかったが、喬太郎には間に合った。その至福を今、改めて噛み締めた。
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